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【文化祭準備編20】僕は葵衣と優奈の幸せを考える

今回は葵衣と優奈の幸せを真剣に考える光晃です

連載当初は周囲に対し辛辣だった光晃ですが、ここにきてようやく周囲の人の幸せを真剣に考える用です

では、どうぞ

 昨日、丈一郎さんに『優奈と駆け落ちしてくれないか?』と言われ、その事を葵衣と優奈に伝え相談した結果、何もいい案が出てこなかった。僕達はそのまま寝落ちしてしまい、今日に至る。


「僕1人だったらサボりスポットでも構わないんだけど、そこに葵衣と優奈も付いて来るとなるとそうもいかなくなるんだよなぁ……」


 僕1人が家出する分には期間を決め、それまでの間は食事はコンビニ弁当でいいし、トイレと風呂はその時に考える。それでいいけど、それはあくまで僕1人の場合だ


「え!?本当にいいの!?」


 先程から誰かと電話していた葵衣の驚いたような声。反応から察するに誰かに何かを使っていいと言われたみたいだけど、誰だろう?


「うん!わかった!友達にはそう伝えておくね!うん、ありがとね!じゃあ」


 電話の相手にお礼を言って電話を切った葵衣。友達って僕達の事かな?まぁ、いいや。葵衣から詳しい事を聞けばいいし


「葵衣、さっきの電話は?」

「あ、うん、友達に電話してたんだけど、それより、光晃!行く宛て見つかったよ!」

「え?本当?」

「うん!友達にダメ元で電話してみたんだけど、ある条件付きで1か月の間、そこに住んでいいって言ってたよ!」


 どんな場所で風呂やトイレ、キッチンが付いてるかすらもわからない。それに、条件ってのも気になる


「そう。住むところが決まったのはよかったけど、条件って何かな?」


 葵衣と出会った頃もそうだったけど、僕は手放しで他人を信用しない。優奈の場合はいきなり声を掛けられたってのもあるけど、宿を探していたからとりあえず付いて来た。だけど、今回は違う。


「条件は1か月の間、そこに住む事だよ」

「なるほど、条件はとしてはいいと思う。だけど、住む場所は?どんなところなの?」


 僕達が1か月住む事が条件なのはいいけど、問題は場所だ。


「住む場所はここだよ。宮下さんも荷造りを中断して見てくれない?」


 さっきから家出の荷物を纏めていた優奈にも声を掛け、一緒にこれから住む場所を確認する


「どれどれ?私達の家出先はどんなところになるのかな?」

「僕も気になる」

「ふっふっ、ここだよ!」


 僕と優奈の視線が葵衣の携帯に集中する。っていうか、画像があるなら最初から出してほしかったんだけど


「「分譲マンション!?」」


 葵衣が見せたのは分譲マンションの広告画像。しかも、新築の


「そ、実はここ私の友達のお父さんの会社が建てたんだけど、入居者がいなくて困ってたらしいんだよ。入居者がいなくて困っていたところに私が電話したら『場所は提供するから1か月の間、そこに住んで感想を聞かせてくれ』って言われてOKしたんだけど……ダメだった?」


 丈一郎さんからはどれくらいの間、身を隠していればいいかは言われていない。もしかすると3日間かもしれないし、1週間かもしれない。とにかく、身を隠す期限が決められてない以上、1か月の間だけでも住む場所が決まったのは願ったりかなったりだ


「僕はいいよ。丈一郎さんからは身を隠す期限を聞かされてないし。それに、1か月の間だけでも安定して住める場所があるなら願ったりかなったりだし」


 僕はいいとして、優奈はどうだろう?やっぱり嫌かな?


「そう。光晃はいいとして、宮下さんはどう?分譲マンションには住みたくない?」

「私は住める場所があるならどこでもいいよ。それに、1回マンションに住んでみたかったし」


 優奈もOKなら話は早い。満場一致でマンションに住む事が決定したなら後は移動するだけだし


「満場一致で住む事に決定って事で、宮下さん、家出の準備はできてる?」


 僕と葵衣は元々カバン1つでこの町に来たし、風呂道具は丈一郎さん達のご好意により貸してもらえてるので僕達のカバンから出す事はない。それに、寝間着も。つまり、僕と葵衣は携帯の充電器を取り出す以外はカバンを開けていない


「できてるよ。後は家を出るだけ」


 優奈を見るとすでにカバンを持って家出の準備は万端といった感じだった


「じゃあ、丈一郎さんはいいとして、亜優美さんや従業員の方達には見つからないように出なきゃいけないけど……どこから出たらいい?」


 丈一郎さんは事情を知っているからいいとして、事情を知らない人に見られたらマズイ。なので、見つからないように出て行かないと


「この時間帯なら従業員達はみんな客室の掃除で動き回ってるから普通にロビーから出ても問題ないよ」

「そう。じゃあ、早く行こう。見つかって誰かに何か聞かれたら面倒だし」


 僕達は見つかる前に旅館を出る事にした。葵衣と優奈は家出なんてした事ないだろうけど、家出常習犯と言っても過言じゃない僕の経験で言うと見つかって行先を聞かれたら終わりだ


「そうだね。ここは私達より家出に慣れてる光晃の指示に従った方がよさそうだし、早くでよっか」


 僕達は見つからないように旅館を出て、そして──────────


「いや~、家出って初めてだからワクワクするよ~」

「宮下さんも?実は私もなの!」


 大海町駅。初めての家出でテンションが上がりまくってる優奈と葵衣


「家出ごときでワクワクしないでよ……」


 そんな年上女性2人に対し、冷めた態度の僕。この温度差はきっと、慣れているか初めてのことかの違いだと思うけど……家出ってそんなにワクワクする事かな?


「いつも家出している光晃には理解できない事だろうけど、初めての事って結構ワクワクするんだよ!」


 駅の改札で人聞きの悪い事をサラッと言ってのける葵衣。今の言い草だと僕が常に家出して葵衣に迷惑を掛けているように聞こえるんだけど?


「葵衣、人聞きの悪い事を言わないの。今の言い方だと僕が常日頃から家出しているみたいに聞こえるから」

「違うの?」


 僕は今後葵衣との付き合い方を考えるべきなのかもしれない。うん、きっとそうだ


「葵衣と同棲してからは一切家出なんてしてないでしょ」

「うん」


 どうやら本当に葵衣との付き合い方について考える必要があるみたいだ


「光晃って実家にいた時は家出が日常茶飯事だったんだ……」


 葵衣の発言により優奈に誤解されてしまったじゃないか……


「いやいや、僕が家出の常習犯みたいな感じで話しが進んでるけど、僕は葵衣が言っているほど家出してないからね!?」


 ここは僕の名誉の為に言っておくけど、僕は家出の常習犯じゃない!


「ほ~う、私が実習生の頃に2回ほど家出して、今回も女装が嫌で大海町まで逃げてきた光晃が家出の常習犯じゃないとか……冗談でも笑えないんだけど?」


 葵衣さん?何か辛辣なんですけど、どうかしました?


「いや~、葵衣が実習で来てた時って僕もまだ若かったから」

「ふ~ん……じゃあ、2週間という短い期間で家出したのは若気の至りって事?」

「う、うん、いや~、あの頃は若かったから」


 このまま若気の至りで誤魔化せればいいけど、正直、若気の至りで押し通すのは難しいと思う


「ふ~ん……じゃあ、今回の鬼ごっこで私が寂しい思いをしたのも若気の至りが原因って事でいいのかな?かな?」


 満面の笑みを浮かべる葵衣。表情はにこやかだけど、内心はすごく怒っているみたいだ


「ごめん、滞在先に着いたら全力で甘えさせてあげるから許して」


 今の僕は葵衣の言う事を聞くしかない。そんな事は教えられるまでもない


「ふ~ん……ま、今回はそれで許してあげる」

「よかった……」


 僕が葵衣を甘えさせるという事で許してもらえた。葵衣との事は1件落着してよかった。だけど、何でだろう?すごく嫌な予感……


「ねぇ、光晃?」

「何かな?優奈」


 葵衣の次は優奈。優奈には特に寂しい思いをさせた覚えはないから何かを要求される事はないと思うけど……


「光晃って私の家の仕事を手伝うって約束で家に泊まったよね?」

「どうだけど?」

「でも、実際に手伝ったのはたった1日だけだよね?」

「そうだね」

「私の家って一晩泊まるといくら料金が掛かるか知ってる?」


 うん、これは僕にとって悪い事が起こる予感


「い、いや知らないけど……」


 僕は優奈に案内されたから料金表を見ていない。そもそもが、大海町に来たのだって偶然なんだし、優奈の家に一晩泊まった時の料金を知るはずがない


「一晩泊まると10000円。で、光晃は家にどれくらいいるつもりだったの?」


 一晩で10000円は安いのか高いのかわからない。だけど、僕の当初の予定としては1週間はいるつもりだったから……70000円で2週間だと……考えたくもない


「1週間か2週間くらいお世話になろうと思ったけど……」

「つまり、安く見積もっても70000円は掛かるのは解るよね?」


 そりゃ一泊10000円って言われれば嫌でも解る。そこへいろいろサービスを追加するともっと掛かるだろうけど


「うん」

「光晃、私の言いたい事、理解できるよね?」

「うん」

「よろしい」


 優奈が何も言わなくても何を言いたいか理解できる。葵衣と同じように自分も甘えさせろって言うんでしょ?知ってたよ!!


「はぁ……僕は疲れたから葵衣、マンションのある街までの切符を買ってきて。財布は渡すから」

「わかったよ」

「あ、私も行くよ」


 葵衣と優奈は2人揃って切符を買いに行った。これを機に仲良くなれたらいいんだけど……僕と葵衣は彼氏、彼女の関係で優奈とは許嫁の関係。いずれ僕は彼女である葵衣か許嫁である優奈のどちらかを選ばなきゃいけない。でも、葵衣は僕が好きで付き合ったからいいけど、優奈は母親達のバカみたいな夢の為に許嫁にされてしまった。普通の恋愛ならどちらかを振って終わりなんだけど……


「今回はバカな母親2人のせいでもしかしたら葵衣も優奈も悲しむかもしれない。最終的に決めるのは僕だけど、どうしたらいいんだよ……」


 亜優美と元・母が将来、親戚になりたいだなんてバカな事を言いださなければ僕がこんなに悩む事はなかった。それに、優奈はおそらくだけど、碌に恋愛すらしてこなかったんだろうと思う


「それも考えると優奈を選びたい。でも……」


 優奈を選んだら葵衣はどうなる?葵衣は今までの教育実習生とは違い、ドジで指導案も1人で作れないような実習生だったけど、今までの教育実習生とは違い、一緒にいて居心地がよかった。そんな葵衣を悲しませる事が僕にできるのか?いや、できない。じゃあ、どうしたらいい?


「母親達のバカな考えを潰しつつ、葵衣と優奈を悲しませない方法か……」


 僕は全てを叶える方法を必死に考える。今までだったら誰が傷つこうがどうでもよかったけど、今は葵衣も優奈も傷つけたくない。どちらも幸せになってほしいし





今回は葵衣と優奈の幸せを真剣に考える光晃でした

彼女と許嫁、どちらを選んだらどちらかが傷つく。当たり前の事ですが、光晃は葵衣か優奈を傷つける道を選ぶのか、それとも、誰も傷つかない道を選ぶのか・・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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