【文化祭準備編18】僕達は亜優美を無視する
今回は亜優美を無視する話です
親の都合に付き合わされて怒り心頭の光晃。表には出しませんが
では、どうぞ
邪魔者を排除するのはいい。だけど、当の邪魔者は僕の住む家にいるし、僕が泊まっている場所にいる。どうしたものか……
「とりあえず、ここを出て行くのなら亜優美を精神的に追い詰める必要はない。だけど、ここに滞在するのであれば亜優美は精神的に追い詰めておく必要があるな……」
僕は自分達のくだらない夢を叶える為に本人達の了承を得ずに許嫁にした事もそうだけど、それ以上にその夢を叶える為に彼女と別れさせる亜優美と元・母の根性が気に入らない
「邪魔者を排除する為には父と元・母を離婚させる必要があるけど、まずは亜優美からだね」
僕は頭がいい方ではない。そんな僕がない頭を使って必死に考える。どうすれば邪魔になる連中を排除できるかを
「当面は亜優美をガン無視でいいか」
考えたけど、何も思いつかなかった僕は亜優美を無視。つまり、いないものとして扱う事に決めた
「さて、葵衣と優奈の喧嘩も収まっただろうし、部屋に戻るか」
部屋に戻ってまだ喧嘩してたら呆れるけど、さすがにもう喧嘩してないだろう
「ただいま」
僕は迷うことなく優奈の部屋の襖を開ける。喧嘩してようがしてなかろうが僕には関係ない。だって、僕は今、虫の居所が悪い
「「おかえり、光晃」」
よかった、喧嘩はしてないみたいだ
「ただいま。葵衣、優奈」
2人が喧嘩してないから邪険に扱う必要はない
「光晃、どこ行ってたの?」
葵衣が心配そうに声を掛けてくれる。やっぱりいないと心配になるのかな?
「ちょっと亜優美さんと話をしにリネン室にね」
別に隠す事じゃないので正直に話す。ま、内容を聞いたら信じられないというか、亜優美にも僕の元・母にも幻滅するだろうけど
「私のお母さんと何を話してたのかな?」
僕が何を話していたか気になる様子の優奈だけど、これを言っていいものか……葵衣には隠す事じゃないけど、優奈に話すとなると迷うところはある
「葵衣には話せるけど、優奈には正直に話していいものか……」
僕は自分に害のある人間本人の事は全く考えないけど、その人間の身内でも関係ないのであれば思うところはある
「私には正直に話せて宮下さんには話せない内容なの?」
「そうなの?光晃?」
キョトンとした顔で僕を見つめる葵衣と優奈。優奈には話すかどうか迷うけど、いずれは知る事になる。それが早いか遅いかの違いだ
「うん、許嫁の話に関わる事だから葵衣には全部話せても優奈にはキツイ部分も出てくるんだよ」
いずれは全て正直に話すんだ。今のうちにキツイ部分もあるくらい言っておいてもいいだろう
「光晃、話して」
「でも、優奈には精神的にキツイ部分があるよ?それでもいいの?」
「いいよ。いずれは私も知る事になるんでしょ?」
「優奈……」
真剣な表情の優奈。2日しか関わってなくても覚悟ができているって事くらい理解できる
「光晃、宮下さんにも話してあげて」
珍しく優奈に助け舟を出す葵衣。覚悟が決まっているのなら全て話そう。そして、話した後でどうするかを決めよう
「わかったよ。葵衣、優奈、これから話す事はとてもじゃないけど気持ちのいい話じゃない。言うならば大人のエゴだけど最後まで聞いてほしい」
「「うん!」」
彼女達を信じてみよう。少なくとも母親達よりはマシだろうし
「じゃあ、話すけど、まずは僕と優奈がどうして許嫁になったかから」
「「うん!」」
「僕と優奈が許嫁になった理由は簡単に言えば母親同士のエゴだよ」
「「母親同士のエゴ?」」
葵衣と優奈はエゴの意味を理解できないんじゃない。母親同士のエゴがどのようなものかを理解してないんだ
「母親同士のエゴがどういったものか理解してないのは無理はない。じゃあ、それを今から話すけど、葵衣と優奈だって軽いノリで約束する事ってあるかどうかを最初に聞いておこうか」
僕には軽いノリで約束する友達がいないからそんな機会ないけど、優奈と葵衣は違う。きっと僕よりも友達は多いはず
「わ、私は大学の友達と口約束くらいするけど、それがどうかしたの?」
「私もこの町に住んでる友達と口約束くらいはするよ。軽いノリかどうかはその時によるけど」
葵衣も優奈もノリはともかく、口約束くらいはするみたいだ。今はそれでいいか
「ノリはともかく、2人とも口約束はするみたいって事がわかったところで話を続けるけど、僕の元・母親と優奈の母親は自分達が親戚同士になりたいが為に僕と優奈を許嫁の関係にした。それが僕と優奈が許嫁になった理由だよ」
世の中で許嫁の関係にある男女がどれだけいるかは知らないけど、僕と優奈が許嫁の関係になった理由は多分、珍しい事じゃないと思う
「光晃、ちょっといい?」
話を区切ったところで葵衣が手を挙げた
「何かな?葵衣」
「光晃の雰囲気が怖いのはお母さん達が親戚同士になりたいから許嫁にした事じゃないよね」
僕は普通にしてたつもりだけど、葵衣には怖いと感じたのか……
「僕は普通にしてたつもりだけど、葵衣には怖いって感じたのか……ま、僕の虫の居所が悪いのは許嫁にした理由じゃないよ。その手段が気に入らないから虫の居所が悪いんだよ」
この場合、手段と言ってよいものかは知らない。だけど、聞くにしても話すにしてもクソみたいな話には変わりはない
「光晃、手段って?」
僕とは違い、綺麗な目の優奈。なんだか話すのには気が引けるなぁ……
「優奈に彼氏がいた場合の話は聞いてないけど、僕に彼女がいた場合、別れさせてでも優奈と結婚させる。それが、母親達の手段だよ」
僕はあえて結婚させる為のとは今まで言わなかった。葵衣も優奈もバカじゃない。今までの話で何をさせる為の手段かは大体理解できるだろうし
「光晃、話の文脈から何をさせる為の手段かは大体わかるよ。わかった上で聞くけど、私はどうなるの?」
「葵衣……」
泣きそうな顔の葵衣をただ見つめるしかできない僕。母親達のくだらない夢で1人の女の子が泣きそうになってる。表には出さないけど、元・母も亜優美もただでは済まさないよ……
「光晃……」
優奈も泣きそうな顔で僕を見つめる。僕の本意じゃないけど、僕は2人の女の子に悲しい思いをさせてしまっている。どうして葵衣と優奈が泣きそうになっている?葵衣と優奈は何か悪い事をしたのかな?違う、悪いのは全て母親達だ
「優奈、葵衣、ごめん。悲しい思いをさせてしまって……」
僕が悲しませたわけじゃない。だけど、僕には謝る事しかできない
「「光晃……」」
悲しそうにするのも泣くのも葵衣と優奈じゃない。母親達だ。僕にこんな思いをさせた償いはしてもらおうか
「このまま許嫁の話をしていても悲しみを生み出すだけだからしないけど、僕が考えた当面の対策を話していいかな?」
許嫁の話をしていてもここにいる全員が悲しい思いをするだけだ。それより、葵衣と優奈と協力して亜優美を精神的に追い詰めた方がいい
「「うん、聞かせて、光晃の考えた対策を」」
葵衣の目にも優奈の目にも光はない。あるのは大人に対しての失望だけ
「わかった。僕の考えた対策は───────」
僕はリネン室で考えた案と母親達をこれからどうするかを話した。葵衣はともかく、優奈が実行できるかは知らないけどね
「光晃、私はやるよ!」
葵衣はやる気だけど、優奈はどうだろう?自分の母親に非道な事ができるのかな?
「そう。葵衣はやるようだけど、優奈はどうする?別にやらなくても僕は何も言わないし、これからの対応を変えるつもりはないけど」
僕の考えた対策はイジメと何ら変わらない。だから強制はしない
「私もやる。光晃の事は好きだけど、だからと言って自由に恋愛する事すらできないのはおかしい!」
優奈もやる気になってくれてよかった
「じゃあ、晩御飯の時間から実行開始って事でいいかな?」
「「うん」」
それから、亜優美に対してどう対応するかが決まり、特に何をするわけでもなく時間が流れ、夕食の時間になった。さて、当事者達の気持ちを考えずに結婚させようとした罪を償ってもらおうか
「優奈、醤油取って」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
僕達は現在、夕食を食べている。丈一郎さんとは多くはないけど会話はしている。だけど、亜優美と僕達は一言も会話をしていない。
「水沢さん、そこのソース取って」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
僕達のやり取りを居心地が悪そうに見つめる丈一郎さん。これは後呼び出されて話をされるかもしれない
「亜優美、光晃君達に何かしたのか?」
僕達の様子がおかしい事を察して丈一郎さんが亜優美に尋ねる。まぁ、さっきから亜優美だけ僕達が話し掛けていないところを見たら聞きたくなるのも当たり前か
「い、いえ、私は特に何も……」
僕が不機嫌な理由が自分にあるとはさすがに言えない亜優美。だけど、優奈と葵衣が亜優美を無視している原因までは知らないだろう
「そうか……」
丈一郎さんは亜優美にも僕達にも必要以上に言及はしてこなかった。この日の夕食は暗い雰囲気のまま終わった
「ね、ねえ、光晃」
「何?」
部屋に戻ってすぐに優奈が声を掛けてきた
「夕飯の時の事なんだけど……お父さん、すごく怪しんでたよ?」
そんな事は言われなくてもわかっている。
「そうだね。でも、自分達の都合で子供の自由を奪う奴と何を話せばいいの?」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、気にしなくていいじゃん」
亜優美がどんな思いをしてようが僕の知った事ではない。子供は親の人形じゃないし
「光晃、亜優美さんはいいとして、光晃のお母さんはどうしたの?」
「葵衣、何気に酷いこと言ってるからね?で、僕の元・母をどうしたかってどういう意味で聞いてるの?」
僕の元・母をどうしたかの意味がわからない。それは、許したのか?って意味なのか、それとも、親子の縁をどうしたか的な意味なのか
「親子の縁をどうしたの?」
「切ったよ。当たり前じゃん」
夕食前に聞いてくれてもよかったのに、どうして今聞くんだろう?
「そう……」
どこか腑に落ちないといった様子の葵衣。僕と元・母の関係がそんなに気になるのかな?
「うん。あ、僕は少し夜風に当ってくるね」
僕は葵衣と優奈に一声掛けて部屋を出た。葵衣も優奈も思うところがあったのか、黙って頷いたけど、今更何を思うのかな?
「光晃君、少しいいかね?」
部屋を出てすぐに丈一郎さんに捕まってしまった。ま、今日中に来るだろうなとは思ってたけどね
「ここじゃなんですから移動しましょうか?」
丈一郎さんの話は多分、亜優美の事だろうと思い、移動する事にした。さてと、この人は亜優美にされた話をそのまましてどうするか見ものだね
今回は亜優美を無視する話でした
表には出しませんでしたが、怒り心頭の光晃でした!次回は丈一郎と光晃の話ですが、どんな話をするのでしょうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




