【文化祭準備編15】僕は父のしょうもない嘘を本気にした
今回は光晃が父親のしょうもないというか、意味のわからない嘘に振り回されます
しょうもないというか、意味のわからない嘘とは一体・・・・・
では、どうぞ
僕は岩崎光晃。つい最近まで普通の高校生だったけど、文化祭準備が嫌で逃げ出したら許嫁がいました!意味解らないでしょ?僕もそう思う。ついでに言うと、逃げた先で彼女と再会。そして、現在、その許嫁と彼女に追いつめられてます
「「光晃……」」
「いや、そんなに迫られてもキスしないからね」
優奈の事はあんまり知らないけど、葵衣の考えている事くらいはわかる。この捨てられた子犬みたいな顔はキスしてほしい時の顔だ
「光晃、どうして私達の考えてる事がわかるの?」
優奈は自分達の考えてる事がわかってると思っているだろうけど、それは違う。正確には葵衣の表情を見てわかったと言った方が正しい
「優奈と葵衣は似てるからね。そんな2人の考えている事なんて簡単に読めるよ」
優奈の事は大して知らないとは言えないので優奈と葵衣は似ているから考えてる事は簡単に読めるなんて言ったけど、本当は葵衣の表情から大体の事が理解できたなんて言えない
「光晃、私ってそんなに読みやすいのかな?」
「葵衣と僕は恋人同士だし、考えてる事なんて手に取るようにわかるよ」
「光晃……」
葵衣と出会ったのは葵衣が教育実習で北南高校に来た時で今は10月だから出会って3か月くらいか。言うほど葵衣の事を知っているというわけじゃない
「むぅ~、私は光晃の許嫁なのに……」
僕と葵衣が恋人同士だと言ったら優奈が剥れた。世の男性諸君、ハーレムは否定しないけど、複数の女性を同じように愛せる人じゃないと苦労するよ
「優奈と出会ったのは昨日でしょ?葵衣と出会ったのはつい3か月前。つまり、僕は2人の事をよく知らないからね?優奈と葵衣の間に大した差なんてないよ」
どちらかに愛があるように見せればどちらかが拗ねる。かと言ってどちらにも興味がないように振る舞えば僕がどうなるか……
「「むぅ~」」
フォローしたつもりが2人揃って剥れてしまった。僕にどうしろと?
「はぁ……剥れない剥れない」
「「ふん!!」」
優奈と葵衣は揃ってそっぽを向いてしまった
「いい大人が揃って拗ねないでよ……」
優奈と葵衣が揃って拗ねてしまったけど、僕は2人の機嫌を治す術を知らない
「光晃……」
「私達を抱きしめてくれたら許す」
葵衣と優奈の要求をキスから変更させる事ができたのはいいけど、抱きしめろと来たか……
「それって絶対にやらないとダメ?」
せめてもの抵抗としてやらないとダメか聞いてみる。何となく答えは決まってると思うけど
「こ、光晃が嫌ならやらなくてもいいけど……
「ダメ!!」
優奈は嫌ならしなくていい、葵衣はしなきゃダメ。性格は似ているけど、僕に対する考え方が違う2人
「優奈は嫌ならしなくていい、葵衣はしなきゃダメ。僕としてはハグくらいならどうって事ないけど、順番がねぇ……」
そう、ハグくらいならいくらでもするけど、問題はその順番だ。葵衣と優奈、どちらを先にハグするべきか……
「「2人同時!!」」
ですよねー、こういう時は葵衣も優奈も意見が合うんだから
「わかったよ、2人ともおいで?」
自分から歩み寄って抱きしめるって選択もできるけど、どうせなら2人の方から来てくれた方がいい
「「うん!!」」
僕が広げた両腕にスッポリと収まる葵衣と優奈
「2人とも僕より年上なのに甘えん坊なんだね」
皮肉ではない僕の素直な感想だ。年上の人間が年下の人間に甘えるなとは言わないけど、葵衣と優奈に限って言えば年上という事実を忘れそうになる
「私は会いたかった許嫁にやっと会えたからね。少しくらい甘えてもいいでしょ?」
「大好きな彼氏とたった2日とはいえ、離ればなれになってたんだよ?甘えたいと思うのは当たり前でしょ」
優奈は長い間会えなかった許嫁に、葵衣は離ればなれになってた彼氏に会えた反動なんだと理解したけど、僕はまだ両親に優奈の許嫁の件をまだ何も聞いていない
「優奈、葵衣、僕は両親に電話してくるから少し待っててくれないかな?」
優奈と葵衣を一旦開放する。優奈と葵衣の目の前で許嫁の話はできないし、父に至っては葵衣と付き合う事に対して反対しなかった。優奈が僕の許嫁だって知ってたのなら反対してもいいはず
「「うん、待ってるね」」
優奈と葵衣を残し、廊下に出る
「さて、どっちに電話しようかな?」
電話をするにしても父と母、どちらに電話するかが問題だ。こういう時にテレビ電話が使えればいいけど、仕事中だといけないからそれはしない
「父に電話して場合によっては母を出してもらうか」
結局、父に電話して場合によっては母を出してもらう。ま、母がその場に一緒にいる場合に限るけど
『もしもし、光晃?どうした?』
毎度の事ながらワンコールで父は電話に出た
「ちょっと聞きたい事があって電話したんだけど、今大丈夫?」
ワンコールで電話に出る事はもう何も言わない。だけど、今の僕には関係ない。それよりも質問だ
『大丈夫だが、何だ?聞きたい事って』
「うん、宮下優奈さんの事なんだけど」
『宮下優奈?ああ、お前の許嫁の』
母親同士が決めた事だって優奈は言ってたけど、父が知っているという事はある程度の話は聞いているのかな?
「うん、ちょっと事情があって今、宮下さんのお宅にお邪魔してるんだけど、宮下さんが僕の許嫁だって言うんだ」
事情と言うのはもちろん、文化祭準備をサボって逃げてきた事だけど、今それを話すとその話だけで長くなりそうだから今はいい
『お前の言う事情というのを詳しくは聞かないが、優奈さんがお前の許嫁と言うのは本当だ』
「そう……」
優奈が言った通り、僕と優奈は許嫁だってのは間違いないみたいだ。
『ああ、黙ってて悪かった。だが、それには理由がある』
「理由?許嫁の事を優奈だけが知っていて僕が知らないのにどんな理由があるって言うの?」
優奈が知っていて僕が知らないのは納得いかない。どうして僕だけが知らなかったの?どうして葵衣と付き合う──────いや、葵衣を意識し始めた時に許嫁の存在を伝えてくれなかったの?
『優奈さんの家は旅館だろ?』
「うん」
『で、お前の家は旅館じゃない』
「そうだね、僕の家は普通の一般家庭だね」
何が言いたいかサッパリわからない
『跡継ぎが必要な優奈さんの家は許嫁の存在を幼い頃から教えておく必要があった。だが、光晃、お前はある程度の年齢まで普通に過ごし、結婚できる年齢になるまで許嫁の存在を隠し、お前が結婚できる年齢になったら優奈さんを紹介する。そういう計画だったんだ』
父が何を言っているか理解できない。僕が結婚できる年齢になったらいきなり許嫁を紹介して結婚させるつもりだって言っているようなものだから
「僕はアンタ等の言いなりにはならない。それに、僕が葵衣を意識し始めた時にどうして言ってくれなかったの?」
僕が葵衣を意識し初めて相談した時にどうして言わなかったんだ?まさか、葵衣と付き合ってから別れろとか言わないよね?
『別に光晃は光晃の人生を生きればいい。それに、今まで黙ってたのはな……』
「黙ってたのは?」
『将来的にはお前と付き合った彼女さん、それに優奈さんに俺の仕事を継いでほしかったからだ』
いよいよ本格的に意味がわからなくなってきた。僕が父の仕事を継ぐのはいいけど、どうして僕の彼女と優奈が父の仕事を継ぐ事になるのやら……それに、さっきは僕の人生は僕が決めろみたいな事を言ってたし、僕の両親の仕事は跡継ぎが必要なタイプの仕事だったっけ?
「僕は自分の両親がどんな仕事をしているか知りもしない。それに、仕事を継ぐのであれば僕だけでいいはずなのにどうして優奈と葵衣まで……」
この際、僕の両親がどんな仕事をしていて僕の家が一般家庭なのか、それとも、金持ちなのかはどうでもいい。だけど、どうして葵衣と優奈を巻き込むのか、父の話から推測するに僕が仕事を継いだら優奈は多分、旅館を継ぐ事ができなくなるのか否かを聞いておこう
『うむ、その理由を話すには少し長い話になるが、いいか?』
別に話が長くなろうがどうでもいいけど、理由を聞いて納得できるかは別問題だ
「僕が納得できるのであれば長くなってもいいけど、ちゃんと僕が納得できるように頼むよ」
『わかっている。さて、どこから話したらいいものか……』
できれば優奈と僕が許嫁になった経緯から話してくれると助かるんだけど
「僕と優奈がどうして許嫁の関係になったか?から」
『そうだな、では、そこから話すか』
「当たり前だよ」
僕は今日、優奈から許嫁だって聞かされてショート寸前まで追い込まれた。許嫁になった経緯から話してもらわないと困る
『優奈さんと光晃が許嫁になった経緯はお前も聞いて知っているとは思うが、母さん達が決めた事だからだ』
「それは知っているよ。僕が聞きたいのはその理由だよ」
今の父の話じゃ優奈から聞いた話と何ら変化はない。僕が聞きたいのは優奈と許嫁になった理由だ。まさか、母親同士が親友同士で将来、子供達が結婚したら私達親戚になれるね!なんてしょうもない理由じゃないだろうね?
『ああ、母さん達が将来、自分達の子供が結婚したら親戚同士になれるねって言って決めた』
僕の嫌な予感は高確率で当たる。今回もできれば外れてほしかったけど、現実って厳しいな
「そう……優奈と許嫁になった理由は母親同士の軽いノリだっていうのは理解できたけど、どうして僕が父の仕事を継ぐ事になるのかな?しかも、優奈と葵衣を巻き込んで」
僕1人が仕事を継ぐのならまだしも、どうして優奈と葵衣まで……
『ああ、それ嘘』
は?今なんて言った?嘘?
「は?」
『だから、仕事の件は嘘だって』
「う……そ?」
『ああ、俺の仕事は子供に継がせるものでも何でもないからな!許嫁の話はともかく、俺の仕事を継ぐと言うのは嘘だ』
僕はこの時ほど父親を殴りたいと思った事はないだろう。
「どうして嘘なんて……」
殴りたいという気持ちをグッと抑え、嘘を吐いた理由を尋ねる
『暇だったから』
この野郎ぉ……あった時はぶん殴ってやる!!
「あ、そう。じゃあ、僕が優奈と結婚する必要は……」
『あー、別に優奈さんと結婚するのは光晃の自由にすればいい。母親同士が勝手に決めた事だ。お前は本当に好きな人と結婚すればいいさ』
「…………わかった」
僕はもう、何もかもどうでもよくなってきた。結局、許嫁の話は母親同士の軽いノリで決まった事だってわかったし、優奈と許嫁だからといって別に無理して優奈と結婚する必要はないって事がわかっただけでも収穫はあった
『あ、でも、優奈さんと結婚しなきゃ母さん達が怒るかもな』
脅迫のつもりだろうけど、そんなの僕には関係ない。母親同士が軽いノリで決めた事で今まで黙っていたんだ。僕が優奈と結婚せずとも僕が恨まれる謂れはない
「別に母さん達が軽いノリで決めた事でしょ?僕には関係ないよ」
『そうか、でもな、光晃』
「何?」
『今、付き合ってる彼女とこれからもずっと付き合っていけるなんて保証はないぞ』
「知ってるよ。そんな事は。絶対に別れないって言ってるカップルほど別れるって言うし」
『ま、彼女を大切にするのはいいが、優奈さんの事もちゃんと考えてあげなさい』
「はいはい」
僕は父との通話を終了したけど、どうしてだろう?何かドッと疲れた。結局、僕と優奈の許嫁関係は母親同士の願望だったし、父は話の途中で意味の全くない嘘を吐くし。本当に疲れた……
今回は光晃が父親のしょうもないというか、意味のわからない嘘に振り回されました
今回の矛盾は『人生を好きなように生きてほしい』って言っているのに『光晃と彼女と許嫁と一緒に仕事を継いでほしい』という何とも意味のわからないところでした。無駄な話してないで許嫁の事だけ聞いて電話きればよかったのに・・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




