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【文化祭準備編13】僕たちの関係は複雑な気がする

今回は優奈と葵衣の話し合いと光晃のこれからです

優奈と葵衣は平和的解決ができるのか

では、どうぞ

「はぁ、僕はこれからどうすれば……」


 優奈に連れられて大海町を案内してもらっていた。そして、夕暮れの駅前で優奈との関係を聞き、その途中で葵衣が乱入。そこはいい。いずれは葵衣と優奈は鉢合わせる事になる。それが遅いか早いかの違いだから


「鉢合わせるのはいいんだけど、葵衣と優奈はどんな話をしているのかな?」


 鉢合わせるのはいい。修羅場になるのも優奈に僕が恋人である葵衣の事を言ってなかったから、葵衣には許嫁である優奈の事話していなかったし、それを聞こうともしなかった。全部とは言わないけど、ある意味では僕の自業自得な部分がある


「葵衣と優奈に限って殴り合いになっているとは思わないけど、やっぱり気になる」


 どんな話し合いをしているのかは知らないけど、中身は気になる


「少しくらい盗み聞きしてもいいよね?」


 僕は葵衣と優奈に気配を消して近づいた


「それで?水沢さんでしたっけ?私に話って何かな?」

「聞きたい事はいろいろあるけど、とりあえず、今は休戦しない?どうかな?宮下さん」


 近づいてみたはいいけど、雰囲気もそうだけど、優奈と葵衣はとても穏やかな話し合いじゃなく、どちらかがキレたら即座に殴り合いをするんじゃないか?ってくらい険悪な雰囲気だった


「仕方ないね。こんなところで言い争ったらウチの評判が落ちるかもしれないから話だけでも聞くよ」


 許嫁である優奈からしてみれば葵衣の存在は気に入らないだろうけど、ここで殴り合いの喧嘩をしていても何の得にもならないと理解しているのか、今はまだ穏やかだ


「そう。私も許嫁であるあなたの存在は気に入らないけど、光晃の為に今は我慢してあげる」


 葵衣も僕の為に我慢するみたいだけど、就職を控えた身であり、多分、教員になるであろう人間がこんなところで殴り合いの喧嘩なんてしたら全てがパーになる。僕の為と言うよりは自分の就職の為なんじゃないかな?


「それで?話は何かしら?水沢さん」

「宮下さん、ここは一時休戦しない?」


 葵衣が提案したのは一時休戦だった。僕としてはそのまま永久に休戦していてほしいけど、いつかはブチ当たる問題だからそうもいかない


「そうね。ここで私達が争ったら光晃は私達の元からいなくなってしまう。いいわ、その提案を受けましょう」


 優奈と葵衣は僕より年上だから雰囲気は一触即発でも殴り合いにはならなかった。これが同年代の女子同士だったらどうなっていた事か……


「さて、じゃあ、話し合いはここで終わりにしましょうか。宮下さん」

「そうね。そうしましょうか。水沢さん。それより……」

「それより?どうしたの?宮下さん?」


 優奈が僕の方を向き、満面の笑みを浮かべる


「盗み聞きはよくないよ?光晃」


 僕は優奈と葵衣の話が聞こえる範囲にはいたけど、本人達にバレる位置にはいなかったのにどうしてバレたんだろう?


「べ、別に盗み聞きしたつもりはないんだけど」


 本当は盗み聞きしてたけど、あえてそれを言わずに何とか取り繕うとする


「光晃、許嫁である私を誤魔化そうとしても無駄だよ?ちゃんと知ってるんだから」


 僕が盗み聞きしていた事を知っている理由が強引過ぎるよ……優奈


「光晃!彼女である私も光晃が盗み聞きしてたの知ってるよ!」


 葵衣は葵衣で何か対抗しようとしているし


「優奈も葵衣も理由が強引だよ。まぁ、盗み聞きしてたのは謝るけどさ」


 盗み聞きがバレている以上、誤魔化しは効かないから素直に謝るけどさ……


「光晃が将来の嫁である私が他の人とどんな話をしてたか気になるのは仕方ない事だけど、それなら直接聞いてくれたら教えたのに」


 優奈の中では僕が優奈と結婚するのは決定事項なんだ……


「許嫁の事はとりあえず親に確認しておくから一旦忘れてくれると助かる」

「わかった。だけど、私は光晃の事を誰よりも想っているからね」


 許嫁の件は親に確認するって事で折り合いがついた。次は葵衣か……どうしよう


「光晃!心配したんだからね!」


 見ての通り葵衣はご立腹だった。


「悪かったよ。でも、僕は文化祭前で男子と乳繰り合う気はないよ」


 授業をサボった僕にも非はあるけど、だからといって劇の練習で男子と乳繰り合う趣味はない


「それは光晃が授業をサボるのがいけないんでしょ!?」


 それはそうだけど……だからって忙しいを言い訳にして補習授業をしなくていいという理由にはならないでしょ


「水沢さん、あなた本当に光晃が好きなの?」


 僕と葵衣の言い合いに割って入ってきた優奈


「宮下さん、それはどういう意味?」

「言った通りの意味だけど?」


 一触即発の空気が再び駅前に流れる。だけど、周囲の人達はそれを全く気にした様子はない。いや、見て見ぬフリをしているのかな?


「何?宮下さんは私の光晃への想いを疑うの?」

「ええ。あなたがとても光晃を好きだと思えないの」

「どこを見てそう思うのか聞かせてもらってもいい?」

「そうね、あなたが光晃を好きなら光晃が嫌がるような事を強要するはずがないもの」


 確かに僕は女装する事を嫌がった。だけど、強要されたかと言われればそれはわからない


「そ、それは……悪かったと思うけど、で、でも、女装しなければ光晃は進級できないかもしれないんだよ!?」

「授業の単位が足りないなら補習授業をすればいいだけの事でしょ?それくらい教育の事を知らない私でもすぐに思いつくよ?」

「そ、それは……」

「それに、女装させるにしても光晃の意見はちゃんと聞いたの?光晃本人が女装してもいいって言ったの?」

「そ、それは……言ってない……けど」


 優奈の言うことにタジタジで返す葵衣。悪いけど僕は優奈と葵衣の言い合いに口を挟む気はない


「言ってないのに光晃に女装させようとしたの?それでよく光晃が好きだなんて言えたものね。笑わせないで」

「で、でもッ!」

「でももへったくれもないの。確かに授業をサボった光晃も悪いけど、それだってちゃんと学校の先生が対応しなきゃいけない事だって言うのは解るでしょ?接客で不備があった場合はその店の店員または店長が対応しなきゃいけないようにね」


 優奈の意見は正しい。授業の単位が足りないのであれば教師が補習授業をして対応しなきゃいけない。接客ならば不備はその店の店員か店長が対応しなきゃいけない


「宮下さんの言う通りだけど、教員は忙しいんだよっ!」


 葵衣は僕の嫌いな教師の言い訳を使い始めた。口を挟む気は全くないけど、優奈はどう切り返す?


「忙しいを言い訳にするなっ!私の家は旅館だけど、少なくともウチの従業員は忙しさを言い訳にお客様を蔑ろにはしないわ!!」


 そりゃ優奈の家の仕事ってお客様あって成り立つものだし、そんなお客様を蔑ろにしたら評判はガタ落ちになるし、客なんて来なくなる


「で、でも……私は……」


 泣くのを何とか堪え反論しようとする葵衣


「でも私は何?」


 そんな葵衣の事はお構いなしに責め立てる優奈


「でも、私は光晃が好き。光晃がいなくなった時すごく不安だった……すごく寂しかった」

「それで?今の水沢さんの言い分じゃ光晃を好きな人じゃなく、責任逃れした人の言い訳に聞こえるわよ?」

「ごめんなさい……」


 この口げんかは優奈の勝ちと見ていいのかな?


「謝るのは私にじゃなくて光晃にでしょ?」


 優奈は僕に謝るべきだと言うけど、僕だって謝られても困るんだけど?


「そうだね」


 葵衣は僕の方を向いた。そして───────────


「ごめんね、光晃。私は光晃の事をちゃんと考えるべきだった」


 謝ってきた。僕自身は教師の見苦しい言い訳には慣れたからどうでもいいんだけど


「いいよ別に。教師の見苦しい言い訳は慣れっこだし、そんな教師達がしでかした事ついて葵衣に謝られても困る」


 教師がしでかした事に対して葵衣に謝られても困る。だって、許すとも許さないとも言えないんだから


「で、でも……」

「いいんだよ。別に。それに、僕はもうすぐ葵衣とも優奈ともお別れなんだからさ」

「「え……?」」


 僕の言葉に優奈と葵衣は目を丸くする。だけど、僕にとっては当たり前の事だよ。教師の都合にも親同士の都合にも付き合う気は全くないんだから


「当たり前でしょ?葵衣は教師の都合で僕を連れ戻しに来た、優奈は親同士の都合で僕と結婚しようとしている。悪いけど、僕は教師の都合にも親同士の都合にも付き合う気は全くない。やりたければ勝手にしてよ。じゃあね」


 僕は今度こそ優奈と葵衣の元から立ち去った。優奈と葵衣が悲しむ?そんなこと知った事か。大人の都合に僕を巻き込むな


「「嫌……」」


 立ち去ろうとした僕の腕を掴む優奈と葵衣。


「嫌じゃなくて腕を離してくれると助かるんだけど?」

「「嫌っ!!」」


 ここで怒鳴り散らすわけにもいかないし、かと言って無理やり引き剥がすと騒ぎになりそうだし、どうしようもない


「嫌って言われても僕は大人の都合に付き合う気はないよ?優奈の方は親達が勝手に決めた事だし、葵衣の方は戻ったらまた僕は女装させられそうだし。ほら、僕にとってはデメリットしかない」


 そう、僕にとってはデメリットしかない。優奈の方にも葵衣の方にもデメリットしかない。じゃあ、どうする?答えは優奈も葵衣もいない場所に行く


「光晃は私とした約束を破るの?」


 優奈とした約束は優奈の家の手伝いをするという約束。親同士が勝手に僕と優奈が結婚するなんて約束をしなきゃ僕は優奈の家に戻っただろう


「それは……」


 僕は優奈の家にタダで泊めてもらっている立場だから約束を破るなんてできない


「ね?約束はちゃんと守らなきゃね?だから、光晃、帰ろう?」


 僕に手を差し伸べる優奈。親同士が勝手にした約束を僕は守る気はないけど、僕個人がした約束は違う。ちゃんと守らなきゃいけない


「親同士が勝手にした約束は僕には関係ないけど、僕個人がした約束はちゃんと守らなきゃいけない……」

「うん!だから、帰ろう?別に家の手伝いなんてしなくていい。ただ、私と一緒にいてくれるだけでいいんだよ?光晃」


 優奈は家の手伝いをするんじゃなくてただ自分と一緒にいてくれるだけでいいと言ってくれた。つまり、僕の事を無条件で必要としてくれている


「光晃が宮下さんと一緒に行ったら私はどうなるの!?1人で帰れって言うの!?」


 優奈との話が落ち着いたと思ったら今度は葵衣が悲痛な叫び声を上げた


「葵衣……僕は教師の都合や好奇心を満たすために女装するつもりはないよ」

「じゃあ、じゃあ私はどうすればいいの!?このまま帰りたくない!光晃と離れるのはもう嫌!!いや……なの……」

「葵衣が僕から離れたくないって言っても僕は北南高校に通うつもりはないよ」

「何でもするッ!光晃の為になんでもするから……だから、一緒にいて……」


 一緒にいてと言われても僕は家に帰るつもりはない。少なくとも文化祭が終わるまでは


「光晃……どうするの?」


 不安そうな表情の優奈。どうして葵衣じゃなく優奈が不安そうな表情を浮かべるんだろう?


「どうするって言われてもねぇ……僕は文化祭準備もしくは文化祭が終わるまで家に帰るつもりはないし」

「そう、じゃあ、このまま水沢さんにも家に来てもらうしかないわね」

「「え?」」


 優奈の提案に僕と葵衣の声が重なる。どうして僕が家に帰りたくないと言ったら優奈の家に行く事になるんだろう?


「だって、そうでしょ?光晃は行く宛てないでしょ?」

「そりゃどうだけど……」

「じゃあ、いいじゃない」

「優奈と葵衣がそれでいいなら僕はいいけど……」


 僕個人としては構わないんだけど、優奈と葵衣がどう思うか……


「私は宮下さんの家に行くのは全然構わないけど……」


 葵衣の方は優奈の家に行く事に対して躊躇いはないようだ。つまり、これからは僕と葵衣と優奈の3人での生活が始まるのか……どんな生活になるのかはいいとして

今回は優奈と葵衣の話し合いと光晃のこれからでした

本当に光晃の事を想っているのは優奈か、葵衣か、どちらでしょうか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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