【文化祭準備編12】僕は葵衣と再会する
今回は葵衣と再会します
優奈が許嫁だと知り、葵衣と再会した光晃はどんな行動に出るのでしょうか?
では、どうぞ
僕は夕暮れの駅前で衝撃の事実を聞いた。優奈が僕の事を肯定してくれるのは純粋に優しさからくるものだと思っていた。だけど、そうじゃなかった
「僕の許嫁……?」
「うん、そうだよ。私は光晃の許嫁」
思考が追い付いていかない……優奈が僕の許嫁?父からそんな事を聞いた事は1度もない
「本当に優奈は僕の許嫁なのか?」
「うん、本当だよ。って言っても光晃が知らないのも無理はないよ。私だってお父さんから聞いたのは小学校6年生の頃だもん」
「そう。だけど、僕に言った『家に男を連れ込むと結婚を催促される』って言われた記憶がるけど、あれは本当の事なの?」
昨日、優奈から聞いたのは優奈が男を連れて行く度に結婚を催促されるというような内容の話だけど、あれはどこまでが本気だったのかな?
「あれは嘘だよ。本当は光晃が高校生になったら私から会いに行きなさいって言われていたの」
「そう」
つまり、偶然僕が逃走して大海町に来てなければ高校3年間のどこかで優奈は僕に会いに来た。そういう事になる
「光晃がこの町に来たのは偶然だったとしても私は運命を感じたよ」
運命の後に赤い糸って付くんだろうけど、今の僕にはそんな事をツッコむ余裕はない
「そうなんだ。でも、僕は父から許嫁の話なんて聞いた事がない」
僕は父から許嫁の話を聞いた事なんてない。もし、許嫁の話が本当だったと仮定しよう。だったらどうして父は僕が葵衣と付き合う事を許した?どうして今まで何のお咎めもなかった?時間はたくさんあったはずだ
「そりゃ私と光晃を許嫁の関係にしたのはお母さん達だもん」
つまり、僕の母と優奈の母の亜優美さんが僕達を許嫁とした。でも、母親同士が勝手に決めた事とはいえ、丈一郎さんが知っていて僕の父が知らないのはおかしい。それとも、父は僕に本当に好きな人と普通に恋愛して普通に結婚してほしいから黙ってたのかな?
「…………」
僕にはもうわからなくなっていた。優奈が許嫁だって事も僕の両親がどこまで知っているのか?何もかもがわからない
「光晃?どうしたの?いきなり黙っちゃって」
黙って当然だ。いきなりの事が多すぎる。これは僕の両親と優奈の両親から話を聞く必要がある
「優奈がどうして僕に優しくしてくれるのか、その理由を聞いただけなのに箱を開けたら衝撃の事実が飛び出してきた。そんな状態で話ができる事自体が奇蹟なんだよ。普通は驚き過ぎて言葉も出ないと思うけど」
優しくして騙す。ならよかった。だけど、実際は違った。許嫁だから優しくする。騙すとかの目的だったらまだよかったような気がする
「まぁ、私は知ってたからいいけど、光晃は知らなかったもんね。それはしょうがない」
優奈は始めから全てを知っていた。もちろん、丈一郎さん達もだ。そして僕の母親も。僕は何を信じればいい……?誰を信じればいい……?
「そう……でも、僕はこれからどうしたらいいの?」
文化祭の女装が嫌で僕は逃げ出して大海町までやって来た。そして、駅で途方に暮れていた時に優奈が声を掛けてきた。僕は知らない人に親切にする優しい女性だと思っていたけど、実は許嫁だから僕に優しくした
「光晃は私の傍にいたらいいんだよ。ずっと私の傍にいて私を愛する。簡単でしょ?」
確かに簡単な事だ。優奈の傍にいて優奈を愛する。このまま僕が家に帰らずに大海町に滞在して優奈の傍にいれば自然と愛着が湧くだろうし、愛も生まれるだろう。だけど、僕には葵衣が……葵衣がいる
「優奈の傍にいて優奈を愛する……」
「そう。私なら光晃が嫌がるような事はしない。光晃を邪険に扱う事もしない。だから……ね?私の傍にいて私を愛して」
優奈の提案は逃げ出してきた僕にとってはとてもいい提案に思えてきた
「僕は……」
優奈の誘惑に負けそうだ。考えてみれば従姉である真理姉さん、幼馴染である秀義、彼女である葵衣。考えてみればこの3人から僕は大切にされているのかな?口では大切だなんて言ってるけど、実際はどうなんだろう?
「いいんだよ、光晃。全てを捨てて私の事だけを考えて」
優奈の甘美な提案。正直、もう真理姉さんの事も秀義の事も葵衣の事も考えたくない。優奈の言う通り全てを捨てて優奈の事だけ考えていたい。北南高校の文化祭?そんなのクソ喰らえだ。
「優奈、僕は開放されていいのかな?」
「うん。私には今まで光晃に何があったか詳しくは知らない。だけど、光晃が辛い目に遭ってきたのは解るよ。でも、もういいんだよ。光晃が無理する必要なんてないんだよ」
そうか、僕は自分でも知らないうちに無理をしていたのか……僕は解放されていいんだ
「優奈……僕は解放されていいんだね?」
「うん」
優奈によって僕の心は解放された気がする。真理姉さんから、秀義から、葵衣から。そして、北南高校から
「光晃!!」
夕暮れの静かな大海町駅前に1人の女性の声が響いた
「あお……い?」
僕の恋人である水沢葵衣の声
「見つけたよ!!光晃!!」
葵衣に見つかった。つまり、僕の逃亡生活に終わりが告げられるという事だ
「あなたは誰かな?」
僕に優しくしてくれた優奈から聞いた事のない冷たい声
「私は水沢葵衣。光晃の恋人だよ!!」
「そう、私は宮下優奈。光晃の許嫁だよ」
僕が思ってた以上に早い恋人と許嫁の対面だった。どんな形であれ恋人と許嫁の対面はいいものじゃないけど、予想以上に最悪の形での対面だった
「はぁ……」
僕は溜息しか出ない。優奈から衝撃の真実を聞かされた上に葵衣と優奈の対面。今日は厄日かな?
「光晃!私、光晃に許嫁がいるだなんて聞いてないよ!」
そう言って僕に詰め寄る葵衣。そりゃ知らないのも無理はない。僕だって今日初めて知ったんだから
「光晃、私は光晃に恋人がいるだなんて聞いてない」
反対側から詰め寄る優奈。これまた当たり前だった。聞かれてないから話してないし
「2人とも落ち着いてくれない?」
とりあえず葵衣と優奈を落ち着かせようとする。だけど、本心はもうどうでもよかった。
「「落ち着いてるよ!」」
落ち着いてる人間は人に詰め寄ったりしない
「落ち着いてる人間は人にキレ気味で人に詰め寄ったりしないよ」
僕に平穏な生活はないのかな?
「それもそうだね。私、熱くなり過ぎたよ」
いち早く落ち着きを取り戻した優奈。
「私も……」
優奈に続いて落ち着きを取り戻した葵衣
「そう。じゃあ、僕は荷物を纏めて出て行くよ」
極論かもしれないけど、もう決めた事だ。僕は優奈の家から出て行く
「な、何で!?光晃は私とずっと一緒にいてくれるんじゃないの!?」
叫ぶようにして僕を問いただす優奈
「葵衣に見つかった以上、僕は優奈の家にはいられない。なんの恩返しもできないで申し訳ないけど」
葵衣に見つかった以上、優奈の家にはいられない。僕のせいで優奈の家に迷惑を掛けられないし
「光晃!家に帰って来てくれるんだね?」
僕が家に帰ると思っている葵衣。だけど、そうじゃない。僕は優奈の家から出て行くとは言ったけど、自分の家に帰るとは一言も言っていない
「葵衣、勘違いしているみたいだけど、僕はもう家には帰らない」
僕の言葉に目を丸くする優奈と葵衣。当然と言ったら当然だろう。優奈の家から出て行くのなら家に帰る。この2人ならそう考える。だけど、実際は違う。優奈の家から出て、自分の家にも帰らない
「え?な、何言ってるの?だって、宮下さんの家から出て行くんだったら家に帰るんじゃないの?私と一緒に家に帰るんじゃないの!?」
「違うよ。僕は優奈の家から出て行く。そして、家にも帰らない。僕を知っている人がいない新しい土地でゼロからやり直す。教師達の都合に付き合うのも親の都合に付き合うのも疲れた。」
僕の両親は仕事の都合で海外にいる。本当は僕もついて行きたかったけど、自分達の都合で僕は日本に残る事となり真理姉さんの家に住む事になった。だけど、結局それは親の都合。僕が女装する事について僕にも非はある。だけど、結局は秀義と真理姉さんが僕の女装を見たいから、葵衣が僕の女装を見たいからという都合。じゃあ、僕の意思はどこにあるんだろう?
「光晃……嘘だよね?光晃は私と一緒にいてくれるんだよね?私なら光晃の意思を尊重するし、光晃が嫌がる事しないよ?だから、だから私と一緒にいて……お願いだから」
泣きそうになりながら懇願する優奈。会って2日しか経ってないけど、優奈は心から僕を必要としてくれている。そう感じる
「優奈……」
単純かもしれないけど、泣きそうな優奈の表情を見て優奈に心が傾きつつある
「光晃、嫌がる光晃に女装させようとした事、それを止めようとしなかった事や女装させた事は謝るよ。だから、だからいなくならないで……」
今度は葵衣が泣きそうな顔で懇願してきた。優奈に傾きつつある心が葵衣に傾きつつある。だけど、傾きつつあるだけで、完全に傾いたわけじゃない。僕の心は完全に決まっている。僕は優奈の家から出て行き、自分の家にも帰らない
「優奈、葵衣、2人がどんなに言おうが僕は優奈の家から出て行くし、家にも帰らない。じゃあね」
僕は優奈と葵衣の前から去った─────いや、去ったはずだった。だけど─────
「2人とも何してるの?」
「「…………」」
優奈と葵衣が僕の腕を掴んでいて歩き出す事ができないでいた
「黙ってないで腕を離してくれない?」
「「────や」」
「何?よく聞こえないよ」
「「嫌!!絶対に離さない!!」」
絶対に離さないときたか……だけど、母親達の都合にも教師の都合にも付き合う気はない
「嫌って言われても僕は母親達の都合にも教師の都合にも付き合う気はないよ?」
僕は大人の都合に付き合う気はない。自分の子供達を結婚させたいなら他所でやってほしいし、女装が見たいなら女装癖のある男にやらせてくれ。僕を巻き込むな
「「それでも嫌!!」」
さっきから2人揃って同じ意見だけど、打ち合わせでもしたのかな?
「そう。じゃあ、どうすればいい?僕が親の都合にも教師の都合にも振り回されない方法を2人は考え付くの?」
僕が親の都合にも教師の都合にも巻き込まれない方法があるのなら教えてほしい
「「そ、それは……」」
優奈も葵衣も言いよどむって事はないんだね?
「ほら、ないでしょ?だから、優奈、葵衣。さようなら」
今度こそ優奈とも葵衣ともお別れだ。
「待って、光晃!!」
僕は葵衣に引き止められる
「何?」
「光晃は先生達の都合にも両親の都合にも巻き込まれたくないんだよね?」
「そうだけど」
「そう……宮下さん、ちょっといいかな?」
「何?水沢さん」
「ちょっと来て。あ、光晃、私は宮下さんと少し話し合いするけど、その間に逃げないでよね!」
葵衣は優奈を連れて僕から少し離れた。一体、何の話し合いなんだろう?
今回は葵衣と再会しました
優奈が許嫁だと知り、葵衣と再会した光晃ですが、優奈と葵衣の元から去ろうとしました。そして、そんな光晃を引き留める優奈と葵衣。さて、絶対に離したくない優奈と葵衣はどうするのでしょうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




