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【文化祭準備編10】僕は優奈と観光する

今回は優奈と観光する話です

優奈は一体どんなところに光晃を連れて行くのでしょうか?

では、どうぞ

 朝食が終わり、僕と優奈は部屋へ戻る。


「優奈、僕はこれから何をすればいいの?」


 僕は昨日、優奈や丈一郎さん達にこの旅館の手伝いをお願いされた。ハッキリ言われたわけではないけど。で、現在、僕は何かを頼まれるでもなく優奈の部屋で優奈と2人で過ごしている


「ん?昼間は特にこれと言ってやる事はないよ?仕込みは今いる料理人で事足りてるし」


 本格的に僕は何をしたらいいのかがわからない


「え?じゃあ、僕のやる事は?」

「あー、光晃は調理の補助をしてもらえればいいから」


 優奈の言っている事に矛盾を感じるけど、仕事がないならのんびり過ごせるからいいか


「そう。じゃあ、僕はメールと電話のチェックでもしてようかな」


 昨日、ここに着いてから────いや、大海町に来てからメール、電話の着信履歴を一切見ていなかったし


「えー、そんな事するよりも私が大海町を案内してあげるよ!」

「え?いいの優奈だって仕事があるはずなのに」

「いいのいいの。お父さんが『光晃君を案内してあげなさい』って言ってたし、お休みもちゃんともらってるし」


 いつの間に休みなんてもらってたのやら……


「あ、でも、重要な連絡とかあったら困るからチェックだけでも……」


 普段は重要な連絡があっても無視しがちだけど、今回に限ってはちゃんと見ておかなきゃいけないと思う


「光晃は周りの人に嫌気が差してこの町に来たんでしょ?」


 正確には少し違うけど、大体は合ってる。僕は周囲の人間に嫌気が差して大海町に来た。キッカケは葵衣との鬼ごっこ勝負だったけど、本音を言えば忙しさを免罪符にして補習授業をせずに女装で事なきを得ようとした教師、本人の意見を無視して自分が見たいからなんて理由で僕の女装に許可を出した真理姉さんと秀義、そして、僕の言い分なんて全く聞かずに自分の意見を押し通そうとした葵衣。サボった僕にも非はあるけど、教師はちゃんと仕事しろ


「確かに優奈の言う通りだけど……」

「本人の意見を無視して話を押し通そうとした人達なんて放っておけばいいんだよ!それより、大海町観光の方が絶対に楽しいよ?」


 優奈の言う通りかもしれない。僕にも非はある。だけど、本人の意見を無視し、本人の許可を取らずに勝手に話を押し通そうとした人達なんて無視して観光してた方が楽しいかもしれない


「…………そうだね、今は僕の周りにいる人達を忘れて優奈と大海町観光をしていた方が楽しいかもしれないね」

「でしょ?」

「うん。優奈、大海町の案内をお願いしていいかな?」


 僕ってつくづく流されやすいな……だけど、僕にだって羽を伸ばす権利くらいあるでしょ


「わかったよ」


 この旅館が何時から客に夕食を提供するのか、夕食がバイキング形式なのかとはわからないけど、優奈がせっかく大海町を案内してくれるって言うんだから少しは楽しまないとね


「準備の間、僕は外に出てるね」

「え?何で?」

「何でって、これから着替えるでしょ?僕がこの部屋にいたらマズイでしょ?」

「別にいいよ?」


 優奈の感覚がどうなっているの?男に対して警戒心がなさ過ぎるでしょ


「いやいや、優奈は自分の着替えを見られて平気なの?」

「え?別に光晃ならいいよ?」


 何がどうなっているのかサッパリ理解できない


「あのー、優奈さん?一応、僕も男なんですけど?」

「知ってるよ?」

「じゃあ、僕は部屋の外に出てた方がいいよね?」

「いや、出なくていいよ」


 本格的に優奈が何を考えてるかがわからなくなってきた。そもそも、どうして僕なら部屋にいていいの?


「いや、出て行くよ」

「いやいや、出なくていいよ」


 たった2回の部屋を出る、出ないの押し問答をして理解した。優奈は絶対に譲らない。このままだと出る出ないの言い合いだけで1日が終わる


「優奈は僕が出て行く必要はない、僕は女性の着替えを眺める趣味はないし倫理的にもマズイから出て行きたい」

「いきなりどうしたの?」

「優奈と僕の主張の確認。優奈は僕が部屋の外に出る事はない。そうだよね?」

「うん」

「でも、僕は優奈の為にも部屋を出て行った方がいいと思っている」

「うん」

「それで、僕なりに妥協点を見つけたんだけど」

「うん。その妥協点って?」


 僕の見つけた妥協点。それは─────────


「優奈が着替えている間、僕は後ろを向いている」


 優奈が着替えてる間、僕は後ろを向いている。優奈は僕が部屋を出る必要はない、僕は女性の着替えを眺める趣味はないから出て行きたい。2人が納得する案を考えると僕の中ではこれしかない


「別に眺めてくれていてもいいけど、光晃がそうしたいなら私はそれでいいよ」

「そう、じゃあ、そうするよ」

「うん。じゃあ、私は着替えるね」


 優奈が着替えてる間、僕は後ろを向く。僕と優奈が出会ったのは昨日だけど、昨日と今日を優奈と過ごしてわかった事が1つある。それは、優奈は僕の意見を否定しない。それもあるけど、僕が家出をした理由を聞いてもそれを咎める事をしない。何で?


「着替え終わったよ」

「うん。じゃあ、次は僕が着替える番だね」


 考え事をしている間に優奈は着替え終わっていた。そして、次は僕の番。僕の番なんだけど───────


「あの、優奈さん?」

「ん?なに?」

「見つめられると着替えづらいんですけど?」


 優奈に見つめられて着替えづらい


「え?私は別に気にしないよ?」

「優奈が気にしなくても僕が気にするの」


 優奈は本当に男に対して警戒心が薄い


「そういうものなの?」

「そういうものなの」


 朝食を作る時といい、今といい、優奈はどうして僕を見つめるの?


「私の事は気にせずに着替えた着替えた!」

「はぁ……」


 葵衣にも僕は着替えるところを見せた事がない。ファーストキスは葵衣だし、別に減るもんじゃないし、優奈の前で着替えてもいいか。じゃないと夜になりそうだし


「へぇ、光晃って意外と筋肉あるんだね」

「そうかな?」


 自分の身体を他人と比べた事なんてないからわからないけど、僕って筋肉ある方なのかな?


「うん!だって服の上からじゃわからなかったけど、腹筋とか割れてるし」

「気にした事なかったから知らなかった……」


 自分の身体を美しいと思って見てる人は余程のナルシストか体形を気にしている人だけだろう


「え?光晃って自分の体形気にしない人?」

「うん。栄養バランスを考えた食事を摂って間食さえしなければ太らないと思ってるし」

「そ、そうなんだ……」


 僕の意見に苦笑いの優奈。そもそも、1日2食の生活を送っていたとしても朝食はしっかり食べて昼食もしっかり食べる。夕食は別に食べなくてもいい。だって、夕食って1番いらないエネルギーだし


「そんな事より着替え終わったんだけど?」

「え?早くない!?」

「早くないよ。僕は着替えに時間を掛ける方じゃないし、オシャレにも関心ないし」


 そもそも、着替えに無駄な時間を使いたくない。劇の衣装とかなら別だけど、私服に時間を掛けるって初めてのデートじゃあるまいし


「私もオシャレにはあんまり感心がないから光晃の事言えないからいいけど」


 優奈も人の事言えないじゃん


「まぁ、オシャレに感心があるかどうかは置いておいて、出かけようか?」

「うん!」


 僕と優奈は大海町へと繰り出した


「どこから行こっか?」


 大海町商店街に来たところで優奈にどこに行きたいかを聞かれたけど、そもそも僕は大海町でどこがおススメか知らないから行きたい場所を聞かれても困る


「観光地に無頓着な僕に行きたい場所を聞かれても困るんだけど。優奈のおススメスポットでいいよ」


 知らない町に来た時はその町に住む人のおススメスポットに行けばある程度は楽しめる。これが僕、岩崎光晃の観光術!


「そう?じゃあ、せっかく商店街に来てるから私がいつも行くお店に行こっか」

「うん」


 いつも行くお店が何を扱っているのかは知らないけど、優奈がいつも行くのなら外しはしないだろう


「ところで光晃」

「何?」

「光晃はどれくらいこの町にいる予定なの?」


 どれくらい僕は大海町にいるんだろう?文化祭の準備が終わるまで?それとも、葵衣に捕まるまで?

 優奈と出会ってから最初に言ったのは2~3日だし、丈一郎さん達にもそう伝えた。だけど、具体的な期間は伝えてない


「さあ?どれくらいの期間いるかは決めてない」


 今の僕はどれくらいの期間、大海町に滞在するか決めてない。文化祭の準備が終わるまでか文化祭が終わるまでかもね。もしかしたらずっといるかもしれない


「じゃあ……さ、ずっといてくれないかな?」

「え?」

「決めてないんでしょ?じゃあ、ずっといてもいいでしょ?」


 そりゃ葵衣と付き合ってなきゃ僕は首を縦に振っていたし、優奈は僕を否定しないから一緒にいて心地いいとは感じてたけど


「そりゃ、できる事ならそうしたいけど……」

「けど?けど何?」

「僕にだって学校があるからそうもいかない」


 咄嗟に大嫌いな学校を言い訳にしたけど、本心はどうなんだろう?


「そう……だよね。ごめん」

「いいよ。別に。僕の方こそハッキリしなくてゴメン」


 楽しくなるはずの大海町観光がいきなりお通夜モードになってしまった


「そんな事より、私の行きつけのお店だったね!」

「うん。優奈の行きつけのお店がどんなところかは知らないけどすっごく楽しみだよ」


 僕も優奈もさっきの話を忘れるかのように優奈の行きつけの店の話に話題を切り替えた


「どんなお店かは行ってからのお楽しみだよ!」

「はいはい、楽しみにしてますよ」


 今は文化祭準備の事も、僕の周囲にいる人達の事も忘れて大海町観光を楽しもう!葵衣達だって僕の居場所を特定するのに時間掛かるだろうし


「ここが私の行きつけのお店だよ!」


 商店街をしばらく歩き、たどり着いたのはラーメン屋だった。優奈ってラーメンを進んで食べるイメージがなかったから意外だった


「意外だね」

「え?何で?」

「優奈は進んでラーメン屋に入るところなんてイメージできなかったから」

「そう?私だってラーメン屋さんくらい1人で来るよ」

「そうなんだ……」


 とてもそうは見えないけど、本人がそういうならそうなんだろう


「そんな事より入ろっか」

「うん」


 僕と優奈は目の前のラーメン屋に入る事となった。それにしても、昨日から感じてる違和感は何なんだろう?





今回は優奈と観光する話でした

町の観光名所に連れて行かずに行きつけのラーメン屋に連れて行く優奈でした。って、しょっぱなからラーメン屋っすか、優奈さん・・・・何はともあれ、次回、衝撃の展開です

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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