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僕は切り捨てる事に決めた

今回は寝る前から寝るまでの話です

光晃と真理は寝る前に何を話すのでしょう?

では、どうぞ

「光晃……」


 夕食を済ませ、風呂にも入ってあとは寝るだけの状態だけど、1つ問題がある。隣りにいる真理姉さんだ。元を正せば僕が原因だけど、一緒に寝る事になるとは思わなかった


「真理姉さん、少し離れて」


 現在、7月。気温は夜とはいえ20度を超えている。つまり、暑いって事なんだけど、そんな事はお構いなしと言わんばかりに僕に密着してくる。こんな事なら情けをかけて優しくするんじゃなかった


「いや。昔はこうして一緒に寝たじゃない」


 確かに昔は一緒に寝ていた事もあったが、今の僕はそんな歳じゃない。いつまでも誰かと一緒に寝たいと思うほど幼いわけでもない


「一体いつの話をしているの?僕だっていつまでも幼いままじゃないよ」

「わかってるよ……でも、今だけはこうしてもいいじゃない」


 “今だけは”ね……僕としてもこんな事は今だけにしてほしい。いつもいつもじゃ身が持たない


「今だけだよ」


 今だけだ。今だけ真理姉さんを甘えさせよう。ただ、約束を破った時は例え従姉であろうと切り捨てる。僕だって約束を破る事はある。だけど、それは故意にではない。自分の予期せぬ形で約束を破ってしまう事はある


「うん、今だけ……」


 どうせこの1回だけだと思えば我慢できる。何度も何度も甘えられたら嫌だけど、1回くらいなら僕が我慢すればいいだけの話だ


「明日からは甘えないでね。迷惑だから」

「……光晃、冗談でもそれ笑えない」


 ムスッとする真理姉さんだが、僕は冗談でこんな事を言う趣味はない。


「僕は冗談でこんな事は言わない。本気だよ。本気で迷惑だから明日から甘えないでね」


 真理姉さんに僕の本心を突きつける。罪悪感なんてこれっぽっちもない。どちらかと言うと教師を痛めつけてやったぞという喜びの方が大きい


「光晃……私は少しでも教師嫌いを直そうと思って水沢先生のサポートを罰として課した。でも、光晃にとっては迷惑だったかな?」


 そんなの聞くまでもないだろ?ただでさえ教師も教育実習生も嫌いなんだから


「迷惑だね。大体、教師嫌いを直すんじゃなくて、僕はどうやったら嫌いな教師とうまく折り合いをつけるようになれるかを考えるべきなんじゃないの?食べ物の好き嫌いは大人になっていくにつれて直るけど、人間関係の好き嫌いはそう簡単に直るものじゃない。トラウマがそう簡単に解消できないのと一緒でね」


 この人もそうだが、ウチの学校の教師は根本的に言っている事がズレている。僕は少なくともそう思う。


「光晃……私にできる事はないかな?」

「あのバカみたいな連中が集る学校の一教師である真理姉さんに一体何ができるの?教師嫌いの生徒がいるなら放っておけばいいじゃないか。それを無理して教師嫌いをどうにかしようなんてバカじゃないの?」


 この人に一体何ができる?何もできないのは目に見えてわかっている。じゃあ、どうすればいい?そんなの簡単だ。教師や教育実習生は僕に絡むことなく3年間必要な事以外を話さない。実習が終わるまでの2週間を他の生徒との触れ合いに費やし、僕に絡まなきゃいい


「光晃……」


 悲しそうに僕の名前を呼ぶ真理姉さん。だけど、教師である真理姉さんと僕とじゃ考え方が違う。真理姉さんはみんな仲良く派で僕はみんな仲良くは幼稚園から小学校低学年くらいまでは実現可能かもしれないけど、ある程度の歳になったらできない派だ。


「何?また泣くの?いつまで泣いてたら気が済むの?去年もそうだったけど、教育実習生───教師見習いで2週間しかいない人間が僕の事を本気で何とかできるって思いあがっているのがおかしいんだからね?できもしないで張りきっちゃって本当にバカなんだから」

「光晃!!実習生だって一生懸命やってる!!それを何で解ろうとしないの!?」


 フッ、一生懸命やってる?善意の押しつけあるいは教育的価値の押しつけを一生懸命やってる?怒りを通り越して笑える……


「一生懸命やってる?それ何の冗談?僕が出会ってきた教育実習生はみんな一生懸命やってるんじゃなくて善意の押しつけか教育的価値の押しつけだよ?バカじゃないの?大学で学んだ机上の空論を元に僕に絡んできているだけだよ?それを一生懸命?それが生徒にとって迷惑だって考えた事ある?」


 やっぱり合わない……教師である真理姉さんと教師嫌いの僕とじゃ根本的に合わない。これ以上僕はここにいるべきじゃないと思う。はぁ、両親に電話しよう


「光晃!!」


 これ以上の話し合いは無駄みたいだ。両親に頼んで僕も海外に行く事を伝えるか。思い立ったが吉日。僕は布団から出た


「どこ行くの?まだ話は終わってないよ!」

「頭を冷やしてくるから先に寝てていいよ」


 電話してくるとは言えない。言えば絶対に引き止められるし、怒られる。元々は僕が頼んでここに住まわせてもらっているわけじゃない。僕は両親について行くつもりだったけど、それを引き留めたのは真理姉さんだ


「はぁ、秀義といい真理姉さんといい疲れるな」


 電話を持ってリビングへ来た僕は暑苦しい幼馴染と脳内花畑従姉と早く別れたい一心で父に電話を掛けた


『もしもし?どうした?光晃』


 電話を掛けると父はすぐに出てくれた。この人はすぐに電話に出て仕事は大丈夫なんだろうか?


「父さん僕もそっちに行きたいんだけどいいかな?」

『真理さんには話したのか?』


 中々に痛いところを突いてくる。父の事だから僕が真理姉さんに話してない事なんて見破っているのかもしれない


「これから話すよ」


 ここで嘘を吐くよりはこれから話すと言っておいた方が得策だ。


『そうか、だが忘れるなよ?真理さんはお前が思っているほど強い女性ではない』

「わかってるよ」


 真理姉さんは強い女性ではない。だが、このままここにいて教育実習生や他の教師に絡まれるよりはマシだ


『わかっているならいいが……光晃、お前まだ教師が嫌いか?』


 何を当たり前な事を聞くんだか……何年経とうが僕が嫌いなものは変わらない


「嫌いだよ。身内が嫌いな職業で同じ家にいると思うと反吐が出る」

『そうか……一応こちらでも準備しておくが、ちゃんと話だけはしておくんだぞ?』

「わかっているよ。じゃあね」

『ああ』


 通話が終わり電話を切る。父は話をしておけと言ったが、僕は話すつもりなんてない。僕も高校生だし、自分の事は自分で決める。


「ふぅ、バカか?話し合う?そんな事するわけないだろ?僕が教育実習生と関わるの嫌だって知ってて関わらせる奴と話し合うだけ時間の無駄だ」


 明日にでも父には話し合った事にして転校の手続きをしてもらおう。それで全て終わりだ


「これでようやく肩の荷が下りた」


 ウザいくらいに絡んでくる幼馴染に嫌いなものとわざと絡ませるような従姉。事情を知りもしないで説教する教育実習生。だが、この人達とももうすぐお別れだし、もう2度と会う事もない


「さて、明日から荷物の整理をするか」


 引っ越しへ向けて荷物を整理しようと思うが、それは明日からでいい。今日は特別に真理姉さんと一緒に寝るとしよう。海外に行ったら2度と会う事はないんだから


「おかえり、光晃」


 部屋に戻ると真理姉さんが起きたまま待っていた。別に寝ててもよかったのに……いや、むしろ寝ててほしかった


「先に寝ててもよかったのに」

「光晃が戻ってくるまで眠れなくて……」

「あ、そう」


 眠れないからって待っている必要はないんだけどな。ま、いっか。もうすぐお別れだし、別れて2度と会う事もないんだし


「さっきはごめん……」

「何が?」

「勢いに任せて怒鳴っちゃった事」

「いいよ、別に」


 真理姉さんが勢いに任せて怒鳴る事なんて珍しい事でも何でもない。この人とももうすぐ切れるし


「で、でも……」

「いいよ。真理姉さんが感情に任せて怒鳴るなんていつもの事だろ」


 そう、いつもの事だ。真理姉さんが感情に任せて怒鳴るのも、幼馴染がウザいくらいに絡んでくるのも、教育実習生に目を付けられて自分の価値観を押し付けてくるのも


「ごめん……」


 謝るくらいなら最初からしなければいいのに……本当にバカだな


「しつこいと怒るよ?」

「うん……」


 寝る前にどうして怒鳴られなきゃいけない?とは思わない。だって罰を課せられた日もそうだが、この人は猪突猛進だからだ


「僕は眠いからもう寝る」


 そう言って僕はタオルケットを頭まで被る。本当に疲れる。家でも教師面する人といると


「おやすみ、光晃」


 微睡の中、聞こえた真理姉さんの声。最後の声だけが僕には優しく聞こえた。いつもこれくらいなら僕だってキツイ事を言ったりキツく当たったりしない。僕がキツく当たるのは自分が無力だって自覚もせずに何でもできる、生徒は自分の指示に従うと思いこんでいるからだ。


『岩崎君!俺が君を何とかしてみせるよ!大丈夫!みんなと仲良くできるから!』


 うるさい、僕は別にみんな仲良くなんてしたくない


『岩崎君、1人でいるのは悪い事なのよ?』


 黙れ、実習で来ているだけの人間が口を出すな


『光晃、私教師になるよ』


 勝手になれよ。僕には関係ない


 眠る途中で思い出すのは小学校時代に来ていた実習生に最も多く言われた言葉、次が中学、最後に真理姉さんの教師になるという宣言。どれもこれも僕にとってはどうでもいい事だけど、それをどうして今になって思い出す?教育実習生に関わりすぎておかしくなったか?それとも、教師や教育実習生にまだ希望を持っているとでもいうのか?


 バカバカしい、押しつけがましい職種の人間にどんな希望を持てと言うんだ?それに、近いうちに真理姉さんとはお別れだ。深く考えるだけ時間と労力の無駄だ。僕は切り捨てると決めたんだから

今回は寝る前から寝るまでの話でした

光晃と真理の意見は対立してばかり

いつかわかりあえるのでしょうか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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