【文化祭準備編8】僕の心は傾いているのかもしれない
今回は優奈の部屋で2人きりです
寝る前ってどうしてテンションが上がるのでしょう?
では、どうぞ
「ねぇ、光晃」
「何?」
「寝る場所どうする?」
「そういえば決めてなかったね」
優奈の部屋に来てからというもの今まで寝る場所を決めてなかった。ベッドはあるけど、当然、1人用。
「一応、布団を敷く事はできるけど……ね?」
「僕としては優奈がベッドで寝て僕は布団を敷いて寝るのがいいんだけど」
「それだと起きて布団を片付けるのがめんどくさいじゃん」
敷布団と掛布団をまとめて押入れに放り込むだけの作業のどこが面倒だというんだ?
「布団を片付けるめんどくささと付き合ってもいない男女が一緒のベッドで寝て間違いが起きた時のリスクを比べたら僕は断然、布団を片付けるめんどくささを取る」
優奈には言ってないけど、僕は葵衣と付き合っているから優奈に対して間違いを起こす気は全くない。だけど、何が起こるかわからないのが世の中。万が一ということもある
「え~!一緒に寝ようよ~!」
いい大人が子供みたいな事を言わないでよ……
「子供みたいな事を言わないの。そういう男に勘違いされそうな事ばかり言ってるといつか本当に襲われちゃうよ?」
葵衣もそうだけど、優奈も男に対して警戒心が薄い
「────もん」
「何?よく聞こえなかったんだけど」
「光晃なら襲われてもいいもん!!」
「はい?」
優奈は何を言ってるの?僕になら襲われてもいい?優奈は僕を社会的に殺す気?
「私は光晃なら襲われてもいいもん!」
「いやいや、意味わかんないから!」
「意味?私が襲われたっていいって言ってるんだよ!意味はそれで十分でしょ?」
「全然十分じゃないからね!?優奈はもっと自分を大切にするべきなんじゃないかな!?」
僕に寄り付く女性ってなんて言うか、貞操観念が緩い気がするのは気のせい?
「大切にしてるから光晃と一緒に寝たいって言ってるの!」
「意味がわからない上に軽薄過ぎだよ……」
結婚を焦る年齢じゃないし、これから出会いだってたくさんあるだろうに……その中で本気で好きになれる人だって出てくるかもしれないのに、どうして僕?
「軽薄じゃないもん……」
「はぁ……」
たかが寝る場所を決めるくらいでこれ以上言い争っていても仕方ないし、この部屋の主は優奈だから優奈に今日のところは優奈に従っておこう
「な、なにさ、溜息なんて吐いて!そんなに私と一緒に寝たくないの?」
「いや、優奈と一緒に寝るのが嫌なんじゃなくて、決心したの」
「何を?」
「優奈と一緒のベッドに寝る事を」
僕は駄々をこねる人間に抵抗しても無駄だということは真理姉さんで学習している。これが教師や教育実習生なら蹴りの1つでも入れて黙らせるけど、相手は教師でも教育実習生でもない
「え?いいの!?」
「いいよ。この部屋の主は優奈だし、僕に害が及ぶわけじゃないから」
「やった!やった!」
ピョンピョンと飛び跳ねて喜びを身体で表現している優奈。僕と一緒に寝れるのがそんなに嬉しいのかね……
「一緒に寝るくらいで大げさな……」
「いいの!嬉しいんだから!」
「あ、そう」
僕はもう何も言わない。言っても無駄だし、それに、優奈は教師でも教育実習生でもない。まして、無意味に絡んできてないし
「うん!」
「これから寝るのに元気だね」
寝る間際になってテンションが高いとか子供か?優奈は子供をそのまま大人にしたような感じだ
「いいじゃん!嬉しいんだから!」
「はいはい、じゃあ、もう寝よっか」
「うん!」
僕と優奈は2人で同じベッドへ入る。そういえば、葵衣や真理姉さん以外の女性と一緒に寝るのは初めてか
「…………」
「…………」
電気を消し、ベッドに入ったはいいけど、話題がない。まぁ、寝るんだから無理に話をする必要はないんだけど
「光晃、起きてる?」
「起きてるよ」
「私が壁側でよかったの?」
いきなり何を言い出すかと思えば、そんな事か。ベッドに入る前に優奈が壁側ということに決まったのにどうして今更……
「ベッドに入る前に決まった事に今更異議は唱えないよ」
「私、寝相悪いよ?」
「そう言うなら最初から一緒に寝ようなんて言わないでくれない?」
「そうだよね……」
「うん……」
「…………」
「…………」
少し話をして再び訪れた沈黙。僕にコミュニケーション能力がないのか、それとも、優奈と共通の話題がないのか……
「光晃って高校生だよね?」
「そうだけど?ここへ来る途中で言わなかったっけ?」
「聞いたよ。でも、もう1度確認したくて」
「そう。僕は高校2年生だよ」
「うん……」
「話はそれだけ?」
「それだけ……じゃない」
さっきから優奈が何を言いたいかがわからない
「まだ何か聞きたい事でもあるの?」
「うん」
「何が聞きたいの?」
「光晃はさ」
「うん」
「高校に友達っている?」
友達……僕に友達って呼べる存在がいるのかな?優奈に聞かれて改めて思うけど、僕に友達なんていたっけ?
「友達……ね。僕にはそんなものいないかな」
相手がどう思っているかは知らないけど、僕に友達なんて呼べる存在はいない。僕自身、友達を必要としてないし
「そう……どうして友達がいないか聞いてもいいかな?」
「どうしてって、相手が僕を友達だと思っていても僕が友達だと思っていなければいないのと同じだからだよ。それがどうかしたの?」
「いや、光晃と出会った時に光晃は鬼ごっこで逃げる為にこの町に来たって言ってたけど、別に友達の家に転がり込んでもよかったんじゃないかな?って思って」
優奈の言ってる事は正しいし、親しい人間が多い奴はそうしただろうと思うけど、僕はそれをせずに大海町まで来た
「確かに友達の家に転がり込むって選択もあったけど、ソイツも僕の女装に賛成している奴だからね。すぐに捕まると思ったんだよ」
僕が言ってるのは幼馴染の秀義の事だ。だけど、秀義も僕の女装に賛成している以上、僕が捕まるのは時間の問題だ。それに、文化祭当日は割り切れる部分もある。だけど、練習の段階で割り切れるかと言われれば答えはNOだ
「でも、ご両親に話せば文化祭当日まで学校を休む事だってできたはずじゃ……」
優奈が言っているのは僕の家に両親がいればの話だ。そう、仮定の話に過ぎない
「僕は今、従姉と一緒に住んでいて両親は家にいないから」
「え?ご両親と一緒じゃないの?」
「僕の両親は海外にいてその代わりに従姉と一緒に住んでいるんだよ」
「それってつまり……」
「僕の従姉が保護者代わり」
「そうだったんだ……でも、従姉の方に事情を話して学校を休ませてもらえれば……」
普通の従姉なら事情を話した。だけど、真理姉さんは教師だからズル休みなんてさせてもらえるわけがない
「僕の従姉は僕が通っている高校で教師をしているんだよ。ズル休みなんてさせてもらえるはずがない。つまり、僕が文化祭の準備段階で女装したり、男子と乳繰り合うかもしれない事態を避けるには遠くの場所に逃げてくる必要があった」
「だからこの町に来たんだ……あれ?それじゃ鬼ごっこと話が繋がらないよ?」
優奈の言う通り、これだけ聞いたら僕が鬼ごっこをするところまで話が繋がらない。だけど、本題はここからだ
「僕の従姉が第三者に僕が文化祭準備をサボったのを知らせて、その第三者が僕に文化祭準備をしろって言ってきたんだよ」
「それで?」
「それで、売り言葉に買い言葉とでも言うのかな?僕が鬼ごっこを提案して第三者がそれに乗った」
「それで光晃はこの町まで逃げてきたんだ」
「うん」
第三者じゃなくて、本当は彼女なんだけど、彼女がって言えばややこしくなるから第三者でいいか
「何となく光晃が置かれている状況は理解できたけど、いいの?」
「何が?」
「文化祭準備に参加しなくて」
「いいんだよ。文化祭を利用して教師共が僕に日頃の恨みを晴らしたいだけなんだから」
優奈には僕が日頃教師に逆らっている事を教えていないし、文化祭に参加したところで得られるものは何もないし
「そっか、じゃあ、文化祭が終わるまで家のお手伝いしてくれる?」
優奈の家の手伝いか……北南高校の文化祭なんて無駄なものに参加するくらいなら優奈の家を手伝って社会勉強するのも悪くないかも
「それもいいかもね。高校の文化祭に参加するよりも有意義だし、社会勉強になりそうだし」
「そっか。ねぇ、光晃」
「何?」
「私は光晃が嫌がる事を強制するつもりはないし、脅迫してまでやらせようとはしないよ?」
「普通はそうだよ。僕の学校にいる教師やクラスメートの頭がおかしいだけで」
日頃の恨みが溜まっていたとしても学校行事を利用して晴らそうとは思わないし、忙しさを免罪符にして補習授業をしないでいいという事にはならない。北南高校の教師は教育実習生を指導する気も生徒を指導する気もない。あるのは『生徒を指導している俺(私)カッコいい』または『教育実習生を指導している俺(私)スゴイ』っていうくだらないプライドだけ
「光晃って学校の中じゃ味方になってくれる人いないの?」
味方……ねぇ……いないのかな?
「さぁね。僕はクラスメートにも教師にも興味ないから何とも言えないかな」
僕は教師にもクラスメートにも興味はない。小学校は6年、中学校は3年、高校も中学校と同じく3年の付き合いだ。興味を持つだけ時間の無駄だ
「じゃあ、私には?私には興味ない?」
「優奈に?」
「うん」
優奈に興味か……全くないわけじゃない。優奈は駅で困っていた僕に声を掛けてくれたし、泊まる場所を提供してくれた。何より、今日会ったばかりの僕と一緒に寝たいと言い出したし……
「そうだね。優奈には少なからず興味はあるよ」
「え!?どんなところに?」
少なからず興味があると言っただけなのに食いつきいいな……
「今日会ったばかりの僕と一緒に寝たいって言い出したところ」
「ぶ~!それ以外で!」
それ以外に興味あるところを挙げたら場合によっては僕が変態扱いされるんですけど……
「それ以外でか……」
「うん!」
「それ以外はこれから見つけるって事じゃダメかな?」
僕は優奈の事を何も知らない。優奈の好きなものや優奈がどんな過去を持っているか。僕は何も知らない
「今日会ったばかりだもんね。私の事をあんまり知らないだろうから今はそれでいい」
「よかった。じゃあ、寝よっか?」
「うん!」
僕と優奈はこれからの事に希望を抱いて眠りに着いた。何でだろう?葵衣に捕まりたくないと思っているのは……葵衣よりも優奈といた方が居心地がいいと感じているのは
今回は優奈の部屋で2人きりでした
本編で葵衣に告白して恋人になったのに今になって優奈の方に気持ちが傾き始めているような光晃でした
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




