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【文化祭準備編7】僕は呼び方を変える

今回は光晃と優奈の仲が少しだけ進展する話です

このままじゃ光晃は葵衣より優奈とくっつくんじゃないかと思う

では、どうぞ

 優奈さんの家に来てから時が経ち、現在、夜


「お風呂ありがとうございました」

「あれ?もう上ったの?早いね」

「そうですか?」

「うん、早いよ」


 優奈さんから『先にお風呂どうぞ』って言われ、お言葉に甘えて先に風呂に入った。


「僕としてはそんなに早いとは思わないんですが」

「そう?私のお風呂が長いだけかな?」

「そうだと思いますよ。優奈さんは女性で僕は男性ですから」


 僕は男で優奈さんは女。体格や力の差があるのは当然だけど、風呂の時間も男女じゃ大きな差があると思う。まぁ、女性でも早風呂の人はいるから一概に言い切れないけど


「そういうものなのかな?」

「そういうものだと思いますよ」


 風呂の長い短いで議論するつもりは毛頭ないし、何より人によって違うもので議論しても仕方ない


「そっか、あ、私はお風呂に行ってくるから」

「いってらっしゃい」


 優奈さんは着替えを持って部屋を出て行った


「優奈さんは葵衣と似てるけど、どこか違う気もする」


 優奈さんが部屋から出て1人優奈さんと葵衣を比べてみたけど、雰囲気が似ているだけなのかもしれない


「優奈さんか……」


 仮の話はしたくないけど、葵衣じゃなく、優奈さんと先に出会ってたら僕は優奈さんを好きになってたのかな?


「葵衣と付き合ってるのに僕は何考えてるんだか」


 そもそも、僕は一目惚れというのを信用していない。今日、出会ったばかりの優奈さんが僕を好きになるはずがない


「優奈さんにだって出会いの1つや2つあるでしょ」


 ここは旅館だ。宿泊客や従業員に優奈さんを好きだっていう人がいるだろう


「これじゃ優奈さんに失礼か」


 葵衣と付き合っているのに優奈さんの事を考えるのは葵衣に失礼だし、優奈さんにまるっきり出会いがないと決めつけるのは優奈さんに失礼だ。これ以上、葵衣と優奈さんの事を考えるのは止めよう


「僕は文化祭準備期間中に逃げ延びる事だけ考えてればいい」


 優奈さんをの事を忘れるって言うのは無理かもしれないけど、葵衣の事をここにいる間だけ忘れるのはできる


「逃げてきてからメールと電話を1回も確認してなかったっけ?」


 僕は大海町に来てからメールと電話を確認してない


「はぁ……嫌がらせのようにメールも電話も来ているんだろうなぁ……」


 メールはともかく、不在着信は見たくないし、留守電なんてもっての外


「でも、確認しないといけないんだよなぁ……」


 優奈さんが上ってくる前にメールと電話は確認しておかなきゃいけないとは思っていてもやりたくない


「何を確認するの?」

「うわっ!?」


 風呂上りなのか、髪が少し濡れている優奈さんが立っていた


「うわって酷くない?」

「きゅ、急に声掛けられたら誰だってビックリしますよ!」


 髪が濡れていてパジャマも若干胸元が開いているせいか色っぽく見える


「少しビックリさせようと思ったんだけど……」

「ええ、ビックリしましたよ。それより、髪、乾かさないと風邪引きますよ」


 優奈さんの胸元をなるべく見ないように顔を背ける。女性って胸元に集まる男の視線に敏感だって言うし


「光晃君が乾かしてよ」

「はい!?何言ってるんですか!?」


 優奈さんによるまさかの要求。僕が優奈さんの髪を乾かすというのはハードルが高すぎじゃない?


「だって、上手くできないし……光晃君が乾かしてよ」


 上手くできないってのは絶対に嘘だ。だけど、どうしたものかなぁ……


「念のために聞きますけど、僕に拒否権ってありますか?」


 ここで絶対にやりたくないと言って泣かれても面倒だし、かと言ってやりますって言いづらい。拒否できるか否かを聞いてから決めてもいいと僕は思うんだ


「光晃君が絶対に嫌だって言うなら無理強いはしないよ」


 無理強いはしないとか泣きそうになって言われたらなぁ……良心が痛む。それに、泣きそうになるところとか本当に葵衣に似ている。


「やりますよ。やりますからドライヤー貸してください」

「うん!今持ってくるね!」


 優奈さんは部屋を出て行った。風呂に行く時には歩いて行ったみたいだけど、ドタドタという足音が聞こえる。どうやら走って行ったみたいだ


「急がなくても僕は逃げたりしないのに……しかも、襖開けたままだし……」


 何が楽しみで走って行ったのかな?


「はぁ、はぁ、お、お待たせ!」


 優奈さんが息を切らせて戻ってきた。ドライヤーを取りに行くだけなのにどうして走るのかは謎だけど


「いえ、そんなに待ってません。ですが、走って取りに行かなくても……」

「だ、だって、急いで取りに行かなきゃ光晃君が逃げちゃうと思って」

「僕にどんなイメージを持っているんですか?」


 会ってから日の浅い僕にどんなイメージを持っているのやら……


「しっかり手を握ってないといなくなっちゃいそうなイメージ」

「それじゃ僕は怪盗か何かですよ。または幻かな?あ、でも、手を握ってないとって部分があるから落ち着きのない子供か」


 例えを出してみたけど、どの道僕がすぐにいなくなるってイメージに変わりないか


「とにかく!光晃君を側においておくには手を握ってなきゃいけないの!」

「は、はあ、そうですか……」


 僕は誰かに手を握ってもらってなきゃジッとしてられないほど子供じゃない。けど、鬼ごっこ程度で大海町まで来る時点ですぐにいなくなるってのは間違ってないか


「とりあえず、はい!これ!」


 優奈さんは僕にドライヤーを渡してきた。いや、押し付けたと言った方が正しいかな


「はいはい、じゃあ、コンセントの場所を教えてください」


 髪を乾かすのはいいけど、ドライヤーが動かない事には話にならない


「そこの隅っこ」

「了解しました」


 優奈さんが指差した机の側にあるコンセントにドライヤーのコードを挿し込む


「準備できましたよ」

「うん!よろしくお願いします!」


 ドライヤーを持って優奈さんの後ろへ回った


「熱かったら言ってくださいね」

「うん!」


 最初から高温にするつもりはないけど、念のために言っておく


「熱くないですか?」

「大丈夫だよ」

「そうですか」

「…………」

「…………」


 気まずい……話が続かない……ドライヤーの温度を確認しただけで話が途切れてしまった


「光晃君」

「なんですか?熱かったですか?」

「ううん、温度は大丈夫なんだけど、私とあった時からずっと敬語だよね?」

「年齢に関係なく僕は親しい人間以外には基本的には敬語で話すようにしているので」

「別にため口でもいいんだよ?私だって光晃君って呼んでるんだし、ため口で話してるし」

「でも……」


 優奈さんが年上か年下かは不明だけど、親しくない人や全く持って尊敬する気も敬う気もないけど、教師と教育実習生にも()()は敬語で話してるし


「あ、光晃君は私の年齢がわからないから敬語で話してるとか?」

「まぁ、そうですね。ですが、それだけじゃありませんけど」

「けど?」

「年齢だけじゃありませんけど、馴れ馴れしいのもどうかと思いまして」


 馴れ馴れしい。よく言えばフレンドリーだけど、悪く言えば無礼な奴。僕は一応は礼節はわきまえている


「そう。じゃあ、まずは年齢から言うけど、私の年齢は22歳」

「って事は僕の5つ年上になりますね」

「そうなるけど、年上でも敬語はいらない。ため口でいいよ」


 本人の許可も下りたし、ため口でいいんだ……


「わかり────わかった、で、呼び方はどうしよっか?」


 これからはため口で話すとして、呼び方はどうしたらいいんだ?


「呼び捨てで優奈って呼んで。私も光晃って呼ぶから」

「わかったよ、優奈」

「むぅ~」

「何?」


 優奈の望み通りに優奈って呼んで、ため口で話したのにどうして優奈は剥れるんだろう?


「光晃、なんか慣れてない?」

「何が?」

「女の子の扱い方!」


 そりゃ、真理姉さん、葵衣、紅葉さんと一緒に生活してたら嫌でも慣れる。内1人は彼女だし


「そう?気のせいだよ」

「怪しい……何か隠してるでしょ?」


 横目で疑い視線を向けてくる優奈。付き合ってもいないのに僕が浮気したみたいになっているんだけど?


「別に何も隠してない。ただ、従姉と一緒に住んでるから女性に慣れているだけ」

「ふ~ん、そうなんだ」


 優奈はまだ疑っているみたいだけど、葵衣と付き合ってる事は言う必要はないでしょ。この場に葵衣はいないし


「優奈はまだ疑っているみたいだけど、本当にそれだけだから」

「わかった、信じるよ」


 優奈は再び視線を前に向けた。優奈と葵衣が似ていると感じたのは僕の気のせいだったみたい。付き合う前の葵衣は今の優奈みたいに疑り深くない


「よし、終わったよ」

「うん、ありがとう!光晃」


 僕はドライヤーのコードをコンセントから抜き、コードをまとめた


「はい、ドライヤー」

「うん!ありがとう!しまってくるね!」


 優奈は再び部屋を出て行ったけど、今度は走って行く事なく歩いて行っているみたい。優奈にドライヤーしている最中もそうだったけど、襖は開けっ放しなんだよなぁ……


「襖開けっ放しだけど、優奈は普段の生活から襖を開けっ放しで過ごしているのかな?」


 さすがに成人しているから親がとやかく言ってくる心配はないと思うけど……


「実家暮らしならではの無警戒かな?」


 1人暮らしなら絶対に泥棒が入ってきてもおかしくない状況だけど、実家暮らしだとそんな心配はない。それもあるし、最近は理由にならないけど、田舎だからかな?


「ただいまー!」

「おかえり。優奈に聞きたい事があったんだけどいいかな?」

「ん?何?」

「ここへ案内された時は襖を閉めたのに、どうしてドライヤーしてる時と今は閉めないのかな?」

「ん?閉めてなかった?」

「うん」

「閉めるの忘れてた……」

「わ、忘れてたんだ……」

「うん」


 通気性をよくする為とかじゃなくて、素で忘れてたんだ……


「こ、光晃だって閉め忘れくらいあるでしょ!?」


 何も言ってないのにキレる優奈。僕は何も言ってないのに


「キレなくても僕はウッカリくらいでからかったりしないし、逆に可愛いと思う」

「ふえっ!?か、可愛い……」


 ん?僕何か変なこと言ったかな?それと、どうして優奈は顔が赤いのかな?湯冷めでもした?


「大丈夫?顔が赤いけど」

「だ、大丈夫……」


 優奈と2人きりの夜はまだまだ続きそうだなぁ……ま、僕としては夜が長いのもそうだけど、久々に家事をしない日というのが新鮮だったからいいんだけど







今回は光晃と優奈の仲が少しだけ進展する話でした

このままじゃ光晃は葵衣より優奈とくっつくんじゃないかと思った方いると思います

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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