【文化祭準備編3】僕は田舎へ逃亡する
今回は文化祭準備編3です。
さすがにやり過ぎだと思う
では、どうぞ
葵衣と鬼ごっこで勝負する事になった僕は携帯をポケットにしまった後、サボりスポットから学校外へと移動していた。正確には家に帰るんだけど
「悪く思わないでね。僕は捕まったら僕の負けって言ったけど、逃げる範囲は学校の中だけとは一言も言ってないから」
人通りの少ない住宅街で1人呟く。僕は葵衣に捕まえたら葵衣達の勝ち、捕まったら僕の負けとは言ったけど、逃げる範囲は学校内だけという制約はつけていない。バカみたいだと言われるだろうけど、別に家に帰ろうが他県に逃げようがルール違反にはならない。もちろん、今日中に捕まえろともね
「今までは家出だったからサボりスポットを利用しただけであって逃走するのは家出じゃないし、どこへ行こうかな……」
たかが文化祭準備ごときで他所の地域に移動するだなんて馬鹿げているけど、僕にとっては自分が悪いとはいえ女装するなんて御免こうむるし、それに、葵衣が言うように過去2回ともアッサリ捕まったという事実がある以上、簡単に捕まるわけにはいかない
「とりあえず時間を確認してっと」
携帯をポケットから取り出して現在時刻を確認する。それによって僕の行動が決まってくる
「11時か……」
僕が採寸されていたのが9時で終わったのが9時半、そこからサボりスポットに着いたのが10時、ゲームをしていたのが大体10分くらいで飽きて寝たのが10時20分。こんなところかな
「そこから葵衣と電話してたのが10分くらいとだとして、僕が学校を出たのが10時50分くらいか……自分がサボる時って行動早いな僕」
時間の計算はアバウトなものだけど、サボる時に行動が早くなるのは認めよう
「昼食は……葵衣がいなかったら家で食べよう」
携帯をポケットにしまい、これからの行動を考えるけど、昼食の事しか決まってない。葵衣がいなかったら家で食べる。葵衣がいたら……諦めよう
「葵衣と真理姉さんは必ず参加するとして、他のメンバーは……秀義と理沙くらいかな」
ただ帰宅するのもつまらないから今回の鬼ごっこの参加メンバーを予想した。葵衣と真理姉さんは参加したとして、他のメンバーに秀義と理沙くらいしか浮かばない
「うーん、何だかんだで僕の行動を把握している面々だなぁ……」
予想だけど参加するメンバーは僕の行動を把握しているメンバーで構成されている気がする
「一先ずさっさと家へ帰ろう」
鬼ごっこに参加するメンバーを予想する前にジャージから私服に着替えてできるだけ遠くに行く準備をしよう。ある程度の場所に行ったら葵衣か誰かに電話して確認する。完璧な計画だ……
「ただいま~」
帰宅した僕は玄関のドアをそっと開けた。第三者から見れば僕の行動は飲んで帰って来て帰宅が遅くなったサラリーマンに見えると思う
「よしっ、誰もいない!それにしても戸締りをちゃんとしないとは……不用心だなぁ」
幸い誰もいなかったのはよかった。だけど、玄関のドアを開けっ放しにして出て行くとは不用心すぎる
「ま、今回はその不用心のおかげで助かったんだけどね」
今回は多めに見るけど、次はお説教しよう。さて、まずは着替えかな
「さすがにジャージだとすぐに知られてしまうからね……」
僕の通う北南高校はジャージに北南と刺繍がされていて本人が隠そうとしてもジャージを見ればすぐに北南高校の生徒だってバレてしまう
「僕が出歩いていてそれでいて怪しまれない格好か……」
高校生である僕は服装によっては警察から職質を受ける。最悪の場合は学校と保護者に連絡がいく。そんな事をされれば連れ戻されてしまう
「うーん、スーツもいいけど、大荷物を持って歩くとしたらスーツだと怪しまれるよなぁ……」
ビジネスバッグを持って出歩くならまだしも、キャリーバックを持って出歩くならスーツは怪しまれる。出張って言えなくもないけど、時間帯が時間帯なだけにそれは苦しい言い訳になる
「いっそのこと私服にキャリーバッグを持って旅行ですって言った方がいいか」
私服姿でキャリーバッグを持ち、誰かに何か聞かれたら旅行だと言えばいい。下手にスーツで出歩いて逆に職質を受けるよりかはマシだ
「よし!服装は決まった!持って行く服と充電器と適当に娯楽を詰めてっと」
バッグに適当な洋服と充電器、娯楽を放り込み、準備を終わらせた。念のために僕の口座の通帳も入れた
「昼食は……パンでも食べよう」
調理している間に葵衣が帰って来たら困る。
「ごちそうさまでした」
パン1枚だから遅いも早いもないけどね
「さて、行きますか」
学校で僕を探し回っているであろうメンバーに対し、特に思うところはなく、文化祭準備期間は海の見える田舎町でのんびり暮らす計画を立てつつ戸締りをして家を出る。もちろん、玄関のカギもしっかり締めた
「僕だって男としての尊厳は捨てたくないんだ。悪く思わないでね」
葵衣に対する対抗意識もあるけど、それ以前に初めての1人旅にワクワクしている僕がいる
「さてっと、どこへ行こうかな?」
他所の地域に行くのは決定してるけど、どこへ行くかは決めてない。せめて北に行くか、南に行くかだけでも決めておこうかな
「北か南か……今の時期だと北だね。人も多いし」
木を隠すなら森の中。これに倣って人を隠すなら人の中という作戦で行こう
「こういう時に金の掛かる趣味じゃなくてよかった」
ここで何とは言わないけど、金の掛かる趣味だったらこういう時に困っていたのは事実だ。自分の所持金を考えればいいだけの話だけど、それでも金が掛かるのは事実だし
「さて、北に向かいますか」
具体的にどこへ行くとは決めてないけど、とりあえず北へ。行く場所は着いてから決めよう
「葵衣も真理姉さんも文化祭の準備ごときで僕が別の地域に行くとは思わないでしょ」
逃走することだけを考えていると疲れる。軽い1人旅の気分で駅まで歩く。タクシーを使ってもいいけど無駄遣いはできないしね
「文化祭準備期間の間は身を隠して文化祭が始まる前日に帰ればいい」
クラスの連中に迷惑を掛けてしまうかもしれないけど、僕にも意地がある。軽い考えかもしれないけど、劇の方は台詞を当日に覚えればいいだけだから問題はないし、出店はメニューが教室の壁とかに張り出されるだろうし、メニュー表もあるだろうから失敗はしない
「連絡は来ても返す人を選べば何も問題はない」
駅に着いた僕は北へ向かうべく切符を買った。できるだけ遠くに行ってそこへ着いたら行く場所を決める。その前に列車に乗ったらメール等の確認をしよう。今はサイレントにしてあるけど、着信はそれなりに来ていると思うし
「さて、メールの確認をしようかな」
列車に乗り込んだ僕はメールだけ確認する。留守電は列車の中じゃ確認できないし、それに、何より葵衣も真理姉さんも僕が学校内にいないとわかった瞬間、家に向かった可能性が高い
「うわぁ……」
メールの数は……言いたくない。数が数だから。問題なのは内容だけど、その内容も内容でヤンデレに近いものがあった。これはもう狂気だよ……
「どうやったらこんなに狂った内容のメールを出せるのやら……」
ザックリとメールの内容を説明すると、『校内にいないけど、帰ったの?』から始まり『帰って来たら覚悟してね?』という内容で終わってる。途中で『捨てないで』って内容のメールがあったけど、画面一杯に『捨てないで』という文字が並んでいたということを言っておこう
「帰ったら僕は殺されるか監禁されるんじゃなかな……葵衣と真理姉さんに」
メールの大半が葵衣と真理姉さんで占められていて秀義からのメールは『お前、早く戻らないとマズイぞ』って内容のメールが1件だけだった。だけど、もう遅い。僕は列車に乗り込んでしまったし、後5分もしないで発車する
「ま、僕がいない間頑張って」
秀義に軽くエールを送りつつも僕は座席に備え付けられていたパンフレットを取った
『まもなく列車が発車いたします』
駅の構内アナウンスが流れ、列車が動き出した。僕はそれを子守唄にして寝るとしよう
「あれ?もう終点?」
発車とほぼ同時に寝てしまった僕は終点に着くまで眠りこけていたらしい
「退屈な時間を過ごすよりかはマシだけど……寝過ぎた」
列車を降りた僕はとりあえず素泊まりで何日か泊めてくれそうな宿を探す事にした。最悪の場合は野宿でもいい。だけど、昼はともかく、夜は寒いし、野宿する道具もないからできるだけ宿は見つけたい
「まずは改札から出ないと……」
宿を探すにしても野宿するにしても改札から出ない事には始まらない
「さて、宿を探すにしてもどうやって探したものか……」
普通、こういう時って駅員に聞いたり、観光案内所とかで聞くのがいいんだろうけど、今の僕は観光に来ていると言えばそうだけど、観光に来てないとも言える。法律に触れるような悪い事はしてないけど、逃亡中の身だし
「とりあえず、マップを見てそこに書かれている宿に片っ端から聞いて周るしかないか」
駅員に聞いて万が一の事が合っても困るし、片っ端から聞いて周るしかない。運が良ければ部屋が空いてるかもしれない
「って、宿少なっ!」
田舎に行きたいと思って田舎に来たはいいけど、思った以上に宿が少なかった。
「数もそうだけど、この分じゃ規模も期待できないか……」
数が少ないからといって規模が小さいとは言い切れないけど、期待はできない。
「あ、あの……」
「ん?僕?何か御用ですか?」
宿の数の少なさに絶望しているところで女性に声を掛けられた
「はい、お困りの様でしたので思わず声を掛けたのですが……どうかなさいましたか?」
「いや、宿が少ない事に絶望していただけですよ」
この町を悪く言うわけじゃないけど、それにしても宿が少ない
「それじゃあ家に来ますか?」
「はい?」
たった今、それも少し話しただけで名前も知らない人に対してどうして家に来るかなんて提案ができるんだろうと疑問に思う部分があるけど、背に腹は代えられないし、雨風を凌げないのも困る
「それはそれで大歓迎なんですが、いいんですか?」
「何がですか?」
「いきなりどこの誰とも知らない人間を家に連れ込んだりして」
「それなら構いませんよ。家は旅館ですから」
「ならお世話になります」
「はい!」
僕は女性の案内の元、女性の家へと向かった。この町の名前と女性の名前等は道中か旅館に着いてから聞くとしようかな。自己紹介なんて歩きながらでもできるし
今回は文化祭準備編3でした。
文化祭の準備が嫌で軽い小旅行するか?とツッコみたい方がいら社ると思いますが、書いてる本人もそう思います。どんだけ逃亡するんだよ……光晃
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




