【文化祭準備編2】僕は普段と変わらずにサボる
今回は文化祭準備第2弾です
文化祭準備期間であっても光晃のがサボるのはいつのも事
では、どうぞ
「はぁ……」
葵衣の前で女装を披露した次の日。僕は昨日に引き続き溜息しか出ない……それは当たり前の事だ。だって僕は今─────────
「岩崎!動かないでよ!採寸できないでしょ!」
理沙によって採寸されている最中だからだ。適当にアニメ専門店にでも行って適当に僕のサイズに合う衣装を買ってくればいいだけの事なのに、採寸して一から作るとかバカなの?
「こんな面倒なことしないで僕に合うサイズのコスプレ衣装を適当に買ってくるでいいんじゃないかな?」
「そんなお金あるわけないでしょ!!コスプレ衣装がいくらするか知ってるの!?」
「ものによるから知らないよ」
コスプレ衣装というのはものによって値段が違う。場合によっては10万円以上するのもあるし、逆に言えば3千円から1万円の間で買えるものもある。だけど、自作ならどうだろう?ミシンとかあれば生地代だけで済むだろうけど、ミシンから買うとなると多分だけど、高くなる
「え?そうなの?」
意外そうな顔でポカンとする理沙。え?知らないで言ったの?嘘でしょ?
「そうだけど?それに、今は通販で衣装が買える時代だよ?一から衣装を作るなんてしないでいっその事買った方がよくない?」
上手くいけば準備期間中、僕はサボっていられる!学校に来ない事も可能になる。僕は天才か!?
「ダメに決まってるでしょ!!学校から出るお金はそんなに多くないんだから!バカなこと言ってないで続きするよ!」
「わかったよ……」
こうして僕と理沙は衣装の採寸を続けた。僕は取られるだけだけどね
「意外と早く終わったね」
「意外でもなんでもないわよ。岩崎がバカなことを言わなかったらもっと早く終わってたんだからね」
「それは失礼しました」
身体のサイズを測るだけだから特別な作業をするわけじゃない。理沙の言う通り僕が余計なことを言わなければもっと早く済んだかもしれない
「このデータは衣装全般を作る時に必要だから劇の衣装を作らずとも必要なものなのよ」
「被服の事はよくわからないけど、僕としては面倒なことが1回で済んで何よりだよ」
これで台本さえ手に入ったら僕は心置きなくサボれる。劇の練習?するわけないでしょ。出店のメニュー?そんなのは客が注文するのを聞いてメモすればいいし、ホールにメニュー表があるから別に準備の段階で焦る必要もない。多分、僕はホール担当だし
「デザインはもう出来上がってるらしいから後はこのデータをコピーして衣装担当に渡すだけね」
「そうなんだ」
「うん。私はコピーを取りに職員室に行ってくるね」
「いってらっしゃい」
僕以外には誰もいない空き教室。そして、採寸しやすいようにジャージ姿でいる僕の脳裏にはある事が浮かぶ。そう、このままサボってしまおうという欲だ
「人間には理性と本能が存在する。葵衣の前なら理性と本能の間で揺れるだろうけど、サボりに関しては別だ。僕は……僕はサボる事を選ぶ!!」
劇の衣装が完成するまでには時間が掛かるだろうし、文化祭実行委員会で劇はともかく、出店は絶対に被ると思ってたけど、被る事なくアッサリ決まったらしい。それは置いといて、理沙が戻ってくる前にサボるか
「悪く思わないでくれ。サボって単位が危ないけど文化祭当日にサボらなければいいのであって準備段階でサボってはいけないなんて言われてないんだ」
そう、僕が言われたのはあくまでも文化祭で女装したら授業の単位を与えるというものであって準備をサボっちゃいけないとは一言も言われてない。よって僕が今サボったところでお咎めはない!契約書や説明書もちゃんと読まない方が悪いんだ
「さて、サボるか」
制服と荷物は教室にあるけど、財布と携帯は持ってきているから何の問題もない。そうと決まればサボりスポットに行くか
「誰にも見つかりませんように……」
誰にも見つからない事を祈りつつ、人に見られないように細心の注意を払って移動する。他のクラスの連中や他の学年の連中は準備で忙しいだろうから人に見られても僕を気に留める人間なんていないだろう
「人には見られたけど、特に何かを聞かれることなく辿り着けてよかった」
サボりスポットで一息つく。着いたばかりだからといって油断はできない。だって、ここだって絶対に安全だとは言い切れない
「地下室に行こう」
地下室なら真理姉さんか秀義、大穴で理沙が探しに来ても見つからないだろうし
「ふぅ~、ようやく一段落……」
地下室に着いてから一息吐く。理沙には悪いとは思うけど、準備の段階で女装したり女言葉を使ってたら目覚めちゃいけないものに目覚めてしまう可能性も無きにしも非ずだし、シンデレラ役は僕で確定だろうとは思う。だけど、王子様役が男子だとして、僕は男と乳繰り合う趣味はないし、腐女子のエサになるつもりもない
「まぁ、台本が手に入ったら葵衣と練習すればいいだけだから何も問題はない」
劇の練習は必ず学校でやらなきゃいけないという法律なんてどこにもない
「ゲームでもするかな」
ただサボるだけじゃ退屈だし、忙しい時には暇な時間が欲しいけど、暇な時のやる事がないというのは苦痛でしかない
「今更になってだけど謎だなぁ……どうして僕が女装しなきゃいけないんだろう?」
出店も劇も両方内容が決まっている今になって疑問に思う。どうして僕が女装する事になってるの?
「真理姉さんは純粋に見たいだけだろうけど、他の教師は?普段の鬱憤を晴らすため?それとも恨みかな?それならどうして今?別に授業の単位を盾に僕を脅せばどうにかできるはずなのに」
文化祭の時期を狙わずとも単位を盾に脅せば僕を屈服させる事くらい簡単だろうに……従うかどうかは別として
「謎だ……」
今まで教師連中が単位を盾に僕を脅してこなかったこともそうだけど、そもそも、誰が僕の女装を提案したんだろう?
「疑問が疑問を呼んだか……これじゃミステリー小説だよ」
別に孤島で殺人事件に巻き込まれたわけでもなんでもないのに謎は深まるばかり。そういえば、超絶美人とブサイクのカップルや結婚も謎だけど、僕の女装はそれと同じくらい謎だ
「考えても仕方ないか……」
1人で悩んでいても仕方ない。女装に関しては文化祭のどこかで誰かに聞いてみるかね
「ゲームにも飽きたし寝るか……」
ゲームに飽きたし、本を持ってきてるわけじゃない。寝るしかやる事がない僕は大人しく寝る事にした
「ダメだ……寝れない……」
ゲームに飽きたから寝ようとしたけど、全く眠れない。授業をサボった時は特に眠くないのに寝れるのに今回に限っては全く眠れない。どうしてものか……
「ここにあるゲームはほぼ全クリしてしまったし……教室に戻る?今戻ったら絶対に練習させられるし」
僕は今、選択を迫られている。このままここにいて暇を持て余すか、教室に戻るかの2つだ。
「暇な時間にやる事がないのは苦痛に等しい。だけど、教室に戻ったらどうなる?劇の練習をさせられ王子様役の男子と乳繰り合う事になりかねない。暇か腐女子のエサか……」
様々な意味で苦渋の選択になりつつある。普段の僕ならこんなことで悩んだりしない。だって男としての尊厳を捨てるくらいなら暇な時間を選ぶ
「電話も電源は切ってないけど、機内モードにして連絡が来ないようにしてあるし……できればそれを機内モードを解除して確認したいけど通知がたくさん来てたらめんどくさい」
着信通知がたくさん来てたらと思うと面倒なことこの上ない。だけど、葵衣から連絡があったことを考えるとそうも言ってられない
「面倒だけど解除してみよう」
本当はメールを見たくない、留守電を聞きたくない。だけど、葵衣から連絡が来ていたらと思うと居ても立ってもいられない。仕方ないな……と思いつつ機内モードを解除した
「うわぁ……」
解除して着信通知とメール通知を見てみるとメール10件、着信10件。合計20件の通知が来ていた。そして、その全てが────────────
「真理姉さん……」
真理姉さんからだった
「見たくない……聞きたくない……」
メールは見たくないし、留守電は聞きたくない。だって怖いし
「でも、見なきゃいけないよね。はぁ……」
見たくないし聞きたくないけどいつかは見なきゃいけない、聞かなきゃいけない。それが今になるかどうかの違いだ
『光晃、今どこにいる?』
『早く戻れ、みんな探してるぞ?』
『どこにいるもどれ』
メールはこんな感じでどこにいる?早く戻れといった内容だった。この内容で10件もメールを出す真理姉さんにはある意味で感心する
「はぁ……メールの内容ですでに殺されるんじゃないかって勢いなのに留守電なんか聞いたら……」
メールからすでに殺意を感じるのに留守電がどうなっているかなんて考えたくない
「留守電、聞かなきゃいけないのかな?」
留守電なんて聞きたくない。聞いたら僕は教室に戻りたくなくなる。だけど、放置もできない
「聞きたくないけど……仕方ないか」
本当なら聞きたくないけど、聞くしかない
『岩崎君、小谷です。今どこにいますか?君がいなくてクラスの子達は困っています。戻ってきてください』
メールとは違って普通だ……
「いや、次を聞いてみよう!次のは普通じゃない気がする」
次の留守電のメッセージを再生する。次は普通じゃないと思うし
『岩崎君……どうして無視するんですか?私達の事が嫌いになってしまいましたか?もし岩崎君が私達の事を少しでも好きなら折り返しお電話ください』
好きとか嫌いの問題じゃない。僕は練習段階での女装と王子様役の男子との乳繰り合いが嫌でサボったんだよ。王子様役が絶対に男子だって言い切れないけど
「好きとか嫌いの問題じゃないし……次!」
留守電を2件聞いただけで何となく察しができる。どうせこの後のメッセージも似たり寄ったりの内容でしかない。聞くだけ時間の無駄だ
「え?葵衣から?」
真理姉さんからの留守電にウンザリし携帯をポケットに入れようとしたところに葵衣から着信が入った
「もしもし」
『あ、もしもし、光晃?』
「どうしたの?」
『どうしたの?じゃないよ!文化祭準備サボって!今どこ!?』
どうして葵衣は僕がサボった事を知っている?誰がチクった?
「居場所を言う前にいいかな?」
『何?』
「どうして葵衣は僕がサボった事を知っているのかな?」
葵衣にサボった事を言う人間────いや、僕と葵衣の関係を知っている人間は現段階では真理姉さんと紅葉さんと葵衣の両親。僕が把握してるのはこれくらいだ。そして、その中で僕がサボった事を葵衣に言う人間なんて真理姉さんくらいしかいないけど……
『さっき真理さんから電話があって光晃が文化祭準備をサボったって聞いたからだよ!』
「そう」
やっぱり、葵衣にチクったのは真理姉さんだったか……でも、葵衣のお願いでも僕は戻る気は全くない
『そうじゃないよ!早く戻りなさい!』
「戻ってもいいけど、ただ戻るだけじゃつまらないからゲームをしようか?」
ただサボっていても退屈なだけだし、このまま葵衣と話していても戻る戻らないの押し問答になるだけだ。それに、僕は現在暇で暇で仕方ない。そうなるとやる事は1つ。僕を連れ戻したい連中VS僕でちょっとしたゲームをする
『ゲーム?光晃、今はそんな場合じゃないって理解してる?』
実習中はオドオドしてたクセに僕と付き合ってからそれが少しずつ減ってきているのはいい事だけど、僕に勝つにはまだ早いよ
「理解してるよ。それにそんな難しいゲームじゃないから」
『ふーん、ルールを聞きたいねぇ~』
葵衣のキャラが悪女になりつつあるのは置いておいて、ルールの説明からしようか
「ルールは簡単。葵衣を含む僕を準備に参加させたい面子が僕を捕まえられたら葵衣達の勝ち。逃げ切ったら僕の勝ち。要するに鬼ごっこだよ。簡単でしょ?」
『ふーん、私の実習期間中はアッサリと見つかり捕まった光晃が鬼ごっこを挑んでくるとはね。いいわ!その勝負受けましょう!真理さんには私から連絡しておくから』
葵衣はそう言って電話を切ってしまった。そして、僕も携帯をポケットにしまった。葵衣の言う通り僕は過去2回ほど葵衣や真理姉さんにアッサリと見つかり捕まってしまったけど、今回は一味違うよ
今回は文化祭準備第2弾でした
文化祭準備期間であっても光晃のサボり癖は変わらずでしたが、葵衣が鬼嫁みたいになっているのは気のせいだろうか?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




