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僕が水沢先生の手伝いをする

今回は光晃が起きたところからスタートします

今回は作中で軽く用語について説明しているはず

ですが、あくまでも恋愛重視です

では、どうぞ

「おはよう、岩崎君」


 目が覚めたら目の前に水沢先生がいた。出入口の鍵は掛けたはずだ。人が入ってこれるわけがない。どうして水沢先生はここにいる?


「おはようございます。水沢先生」

「おはよう、岩崎君」

「どうしてここへいるんですか?」


 僕は建前なしに率直に水沢先生がここにいる理由を聞く。僕は他の奴とは違い、お世辞は言わない。教育実習生に媚びを売っても無駄だから


「ここの鍵開いてたよ?」


 水沢先生が指差した先は窓。そういえばこの小屋は2階がなかったっけ……窓から入ってくるとは思っていなかったから失念していた


「そうですか、次からは窓にも鍵を掛けます」


 早く出て行ってくれないかな……水沢葵衣という人間ではなく、教育実習生と同じ空気を吸いたくない


「うん、じゃあ、早速だけど、指導案作るの手伝ってもらっていいかな?」


 最初から人を当てにしないでほしい。まぁ、真理姉さんを見ていて教育実習生が大変だという事も教師になったらもっと大変だって事も理解している


「はぁ、じゃあ、教科書を出してください」

「うん!」


 何で高校生の僕が教育実習生の指導案作成の手伝いをしなきゃならないんだ?ここで断ってもいいんだけど、断わって喚かれたら面倒だから手伝う事にする


「で、この教科書のどの単元を水沢先生が教えるんですか?」

「ここからここまでだけど?」

「なるほど、授業の日時は?」

「2週間後の水曜日」

「クラスは?」

「岩崎君のクラスだよ」


 まとめると、教科書の単元、わかりやすく言うと小説のサブタイトルみたいなものだ。それが見開き1ページで、授業日時は2週間後でクラスは僕のクラスだが、その前に練習として別のクラスで授業をする。


「とりあえず、指導案の書式を作ってしまいましょう。さすがにそれは知ってるでしょ?」

「うん、それはわかるよ」

「ところで、先生はここにいて平気なんですか?」

「今はお昼休みだし、無理して職員室にいる事もないでしょ?」


 それはそうだ。別に実習生だからと言って無理して職員室に籠る必要はない。


「…………」

「…………」


 くぅ~という僕の腹の虫のせいで気まずい沈黙が流れた。昼休みだし、腹が減るのは当たり前か。荷物もないし、コンビニに買いに出るか


「あ、岩崎君の荷物預かってるよ?」


 寝起きと水沢先生がここにいる事に気を取られて忘れていたが、そういうのは早く出してほしかった


「あるなら早く言ってください」

「ごめんね?」


 ペロッと舌を出して謝る先生。はぁ、この人は……だけど、不思議とイラッとこないのはこの人がそれを狙ってではなく、素でやっているからなのだろう


「先生も指導案を作成するのを一旦ストップして昼ごはんにしてはどうですか?」


 いくらなんでも昼抜きじゃ体が持たないだろう。大体、僕は教科指導の担当じゃない。


「うん!そうするよ」


 僕は寝ていただけだから大してエネルギーを使った記憶はないが、水沢先生は授業見学をしてエネルギーを使っているはずだ。


「いただきます!」

「いただきます……」


 2人して弁当を広げるが、僕と水沢先生とじゃ彩りに差がある。僕のはエネルギー補給と空腹を満たす為の弁当だが、水沢先生のは栄養バランスを考え、それでいて色鮮やかだ。


「岩崎君、お肉ばかりじゃ栄養偏っちゃうよ?」

「僕はパワーさえつけばいいんで、これでいいんですよ」

「じゃあ、はい!」


 自分の弁当を差し出す水沢先生。一体何のつもりだ?弁当の自慢だったら女子か自分の同級生とでもやってほしい


「何ですか?」

「私のお弁当を少し分けてあげるよ」


 僕はこういうタイプの人間は頑固だっていう事をよく解っている。


「じゃあ、1個だけ」


 僕はブロッコリーを1つ分けてもらった。全部もらうわけにはいかないからね


「岩崎君、お弁当は誰が作っているの?」

「僕ですけど?」

「岩崎君は1人暮らし?」

「別にそんな事先生に関係ないでしょ?」


 僕が誰と暮らしていようと教師や教育実習生には関係ない。プライベートまで干渉される謂れはないし


「ご、ごめんね……」


 謝るなら最初から聞くなよ……僕が教師や教育実習生を嫌いな理由の1つだ。生徒や児童にとって触れられたくない場所にズカズカ入ってくる。自分は教師だから何とかできる?バカみたいだ


「謝るくらいなら最初から聞かないでください」

「う、うん……本当にごめんね」

「しつこく謝るのもナシです」


 謝られたところで得るものも失うものもない。あるのはその後に流れる気まずい沈黙のみ


「うん……」


 はぁ、自分で踏み込んだ事を聞いといて自分で沈むんだなこの人


「昼ごはん済んだら指導案作成しますよ」


 僕が手伝うのはあくまでも作成するまでだ。完成した指導案を見て良し悪しを判断するのは小谷先生だ。

 僕じゃない


「よろしくね、岩崎君」


 昼ごはんが済んで、僕と水沢先生が指導案を作成中の事だ。水沢先生が唐突にこんな質問をしてきた


「岩崎君、どうして私がここにいる事を嫌がらないの?」


 ここにいる事。つまり、僕のサボりスポットにいる事だろうか?言われてみればそうだな。どうしてだろう?


「先生が他の教師や教育実習生とはどこか違うからじゃないですか?」


 とりあえず、この人は他の教師や教育実習生とは違う。そんな気がするのは確かだ


「どこが違うのかな?」

「ドジさ加減です」


 他の教育実習生と違うところは今のところだとこれくらいしか思いつかない


「うぐっ……1番気にしてるところなのに……」


 ドジだって自覚あったんだな。初日と朝に少し関わった僕でもわかるくらいだ。相当ドジなんだろうな


「先生はどうして僕に関わるんですか?しかも、1人でサボりスポットまで来て」


 過去に関わってきた教育実習生はここまでしなかった


「う~ん、岩崎君ならきっとドジな私でも受け入れてくれると思うから」

「はぁ、そうですか」


 よくわからない。僕のどこをどう見たら受け入れてくれると思うんだ?


「うん、きっと岩崎君……ううん、光晃君なら私を受け入れてくれると思う」


 勝手に名前を呼んでいるが、僕は下の名前呼びを許可した覚えはないし、名前を呼んでいいか?と聞かれた覚えもない。だが、それを咎める前に確認しておく事がある


「先生、僕以外の生徒を下の名前を呼んだ事ありますか?」


 僕以外の生徒を下の名前で呼んだ事があるかどうかだ。最近は生徒や保護者がうるさいと聞く。ちょっとした事ですぐに贔屓だと騒ぎ立てる。僕のせいで水沢先生の実習が打ち切りになったら目覚めが悪い


「光晃君が初めてだけど?それがどうかしたの?」


 この人は事の重大さに気が付いていていない。重要と言うほどでもないが、用心する事に超した事はない


「先生、下の名前で呼ぶのは勝手ですが、他の生徒の前では止めてくださいね」

「え?何で?」

「僕だけ下の名前で呼んで他の生徒が名字だと関係を疑われかねないからです」


 注意しておくに越した事はない。小説や漫画で教師や教育実習生と恋に落ちるなんて話があるが、あれは作り話だから許される事だ。実際に教育実習生に恋をして付き合った。なんて記事があるが、実際はリスクが高い


「光晃君がそう言うなら気を付けるね」


 この人は僕の言う事を手放しに信用していいのか?この人は人を疑う事をするべきだと思う


「気を付けて頂けるなら幸いです」


 気を付けてくれるならそれでいい。いくらドジっ娘でも実習を途中で打ち切られたくはないだろう。僕はそうなったらそうなったで助かるが


「光晃君は優しいんだね」


 どう解釈したら僕が優しい事になるのかは知らないけど、僕は優しくない。僕はただ単純に教師に関わらないようにしているだけだ


「でも、これで光晃君と共通の秘密ができちゃったね」

「そうですね。僕は嬉しくないんですが」

「光晃君つれないな~」


 つれなくて結構だ。そもそも、僕は教育実習生に関わる気なんてなかったんだから


「子供みたいな事を言ってないで指導案さっさと作りますよ」

「うん、そうだね」


 僕と水沢先生は授業開始のチャイムが鳴るギリギリまで指導案を作る事に専念した。チャイムが鳴る5分前に僕は教室に、水沢先生は職員室に戻っていった。5時間目が終わり、放課後になり特にやる事がない僕は下校しようとした。しかし─────


「どうして僕をここへ呼んで先生と2人きりなんですか?」


 僕は昼休みと同様にサボりスポットにいる。まさか、水沢先生が僕をサボりスポットに呼び出すとは思わなかった。しかも、教師陣は誰1人として止めないし


「だってぇ~、指導案作りを手伝ってほしくてぇ~」


 20超えた大人が半泣きにならないでくださいよ……目の前で半泣きの水沢先生を見て喉元まで出た言葉をグッと飲み込む


「手伝いますから泣くのは止めてください」

「うん、ごめんね……」


 半べそで謝る水沢先生は年齢よりも幼く見える。北南大学って通信制あったっけ?この人が普通に入学し、普通に進級していたら現在22のはず。


「泣くのは指導案を作ってからにしてください」


 何もせずに泣かれたままじゃ終わるものも終わらない。今までの教育実習生もめんどくさかったけど、この人は別の意味でめんどくさい


「僕の人生はハードモードなんじゃないかな」


 本当にそう思う。教師から絡まれ、教育実習生からも絡まれる。自分の性格上しょうがないと思うところもある。だけど、だからと言って必要以上に絡まれたら迷惑だ


「何か言った光晃君?」

「いえ、何も」


 早く2週間経たないかな?今の僕の頭の中にはこれしかなかった。僕は教師にも教育実習生にも何の期待もしていない。ただ教育実習生の実習期間が終わるのを待つ。それだけであり、それ以下でもそれ以上でもないし、僕が教師や教育実習生に特別な感情を抱く事なんてない





今回は光晃が起きたところからスタートしました

これで少しは光晃と葵衣の距離は縮んだかな?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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