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僕は処刑する準備をする

今回は授業準備から処刑決意まで

他人をイビろうとすると碌な事がない。

では、どうぞ

 普段は4時間目というと後1時間で授業が終わる!ヤッター!となるけど、今日は違う。


「生まれて初めて教育実習生の研究授業を受けるのに緊張する」


 教室に戻った僕は周囲の生徒から特に何かを言われるでもなく、席に着けた。どうやら担任が高熱以外の言い訳で上手いこと言ってくれたらしいけど──────


「…………」


 なんだろう?この居たたまれなさは……なんて言うか、周囲の僕を見る視線が痛い。仕方ない。秀義でも捕まえて理由を聞き出す作業をしようかね


「秀義、ちょっといい?」

「おう!どうした?光晃?持病の腰痛はもういいのか?」

「は?僕に持病の腰痛なんてないよ?それは秀義が1番よくわかっていると思うけど?」

「おう!知ってるぞ!ただ、担任が光晃は持病の腰痛で保健室に行っていると言ってた!」


 秀義は聞いてもいないのに僕に向けられる視線の理由を話してくれた。そっか……僕が教室にいない理由を持病の腰痛にしたのか。担任め!覚えてろよ?


「秀義、誤解のないように言っておくけど、僕は研究授業までにやる事があったから保健室に行っていただけで僕に持病の腰痛なんてないから」


 幼馴染で長い付き合いでも秀義はバカだから言っておかないと在らぬ誤解をするし、在らぬ誤解を生む。さらに在らぬ誤解を拡散しそうという間違った情報関係においてマイナスの意味では信頼できる。プラスの意味では……聞かないで


「サプライズか?」


 秀義にしては察しがいい。明日は雪?それとも、槍?いや、隕石が降ってもおかしくないなぁ……


「ま、そんなところ。生徒にとっては面白くも何ともないと思うけどね」

「そうか。俺にできる事はあるか?」


 秀義はバカだし、本気で切り捨てようと思った事は決して少なくないけど、こういう時には僕のしようとしている事を察してくれる。


「じゃあ、音声の録音をお願いしてもいいかな?」

「任せろ!」


 できれば動画も欲しいところだけど、動画撮影をする必要はない。そんな事をせずともこの教室には多くの生徒がいる。つまり、証人には困っていない。後は言った言わないの問題になるから秀義に録音をお願いした。あ、合図をしたら録音開始してって言うの忘れた。仕方ない、こればかりはメール連絡だね


「お、返ってきた」


 僕が秀義に『合図をしたら録音よろしく』とメールしたら『了解』と秀義から短く返ってきた。どうやら秀義は僕が何をするかある程度は察しているみたいだけど、具体的にはわかってない。秀義の事だから多分言い争い始めたら録音するつもりなんだろう


「合図なんてしなくても言い争いを始めたら録音するつもりだね……ま、そっちの方がいいか」


 どうせすぐにボロを出すだろうし……さて、授業開始前にパソコンを起動させてっと、で、USBを挿し込んで、とりあえず証拠の動画をすぐに再生できるようにしておいて準備完了!あ、今日の授業で水沢先生はプロジェクター使うのかな?使っても使わなくてもいいんだけど、僕としてはプロジェクターがあった方が助かる


「勝手に持ち出すのはよくないけど、水沢先生を守るためだし、備えあれば憂いなしって言うしね。持ってくるか」


 僕は席から立ち上がり社会科資料室に向かう。僕の記憶が正しければ確か資料室にあったはず


「どこ行くんだ?」


 教室を出ようとした僕を秀義が引き止める。今回はサボるわけじゃないし、それにプロジェクターで両手が塞がるだろうし、秀義を連れて行こう


「資料室にプロジェクターを取りに行くんだよ。秀義、ついて来てくれる?」

「おう!」


 僕と秀義はプロジェクターを取りに資料室に向かう。できれば授業中に巡回指導が何もしないのが1番いいけど、それは何とも言えない


「これでいいか」


 資料室に着いた僕はプロジェクター本体を持ち、秀義はケーブルを持っていた。プロジェクターとケーブルを取りに来ただけとはいえ、この学校は資料室の扉を施錠しないで大丈夫かな?とも思うけど、プロジェクターなんて盗む人間は多分いない。


「光晃、ケーブルこれでよかったのか?」


 秀義がケーブルの確認をしてきたけど、おそらくは秀義の持っているケーブルで接続できるはず


「うん。多分それで僕のパソコンの型にあってるよ」


 早く戻らないと水沢先生の授業が始まるのでのんびりしている暇はない


「じゃあ、戻るか」

「うん」


 僕と秀義は急いで教室に戻る。時間的には大丈夫だろうけど、プロジェクターを持っている分、歩くスピードが遅くなるから間に合うかどうかは微妙なところだけど、急いで戻れば間に合う。遅れたら教師に何を言われるか……


「ギリギリセーフ!」

「だね。あ、ケーブルは教卓の下に入れといて」

「わかった!」


 プロジェクターは僕の机にかけてあるカバンの隣りに置いておく。水沢先生がプロジェクターを使うってなった時にサッと出せるようにしておかないとね


「全員揃ってるかな?」


 水沢先生が入ってきた。後ろを見ると教師と知らないオッサンが1人いた。おそらくはアレが水沢先生の巡回指導員だ。さて、水沢先生の研究授業はどうなる事やら


「全員揃っているので授業を始めます。号令!」


 普段の水沢先生とは違い、今回は先生らしくしている。僕が見ていないだけだと思うけど。それはどうでもいいとして、日直の号令で水沢先生の授業が開始されたけど、僕としては教師の授業よりも水沢先生の授業の方が面白いと感じる


「で、裁判中に弁護士が突然、異議ありと言うのは検事が打ち合わせにない事を言ったりした時だけであり──────」


 今のところは順調に授業が進んでいるようで僕としても安心だけど、油断はできない。だって、教師はともかくとして、巡回指導であろうオッサンが厭らしい笑みを浮かべているし。あれはきっと何かを企んでいる


「ここまでで何か質問はありますか?」


 一通り説明が終わった水沢先生からの質問タイム。仕掛けてくるとしたらここだと思うけど、どうだろ?


「はい!」

「はい、なんですか?名倉君」


 勢いのいい生徒がいるなと思ったら秀義か。でも、今回は秀義の勢いに救われた。質問がないのは気まずいし


「裁判はどうやったら見学できますか?予約とか要りますか?」


 秀義にしてはまともな質問だけど、そんなの誰でも知っているんじゃないかな?


「裁判は裁判所に行ってそこで整理券を受け取れば見学できます。予約も要りません。ですが、みんなが注目している事件の裁判は見学できない場合があります」


 秀義の誰でも知っているでしょとツッコミを入れたくなるような質問にもちゃんと応対する水沢先生。さて、ここで巡回指導は動くのか?


「ここでも動かないか。あとは面談の時くらいかな?」


 質問の時間に何もしてこないところを見るとおそらくは面談の時に何か仕掛けてくるはず。教育実習に関係ない事を言ってきたりとか


 秀義が質問した事を引き金に他の生徒も次々に質問し、時間も授業時間を余す事なく終了が近づいていた


「ちょっといいかね?」


 後ろの方からオッサンが挙手をしながら発言した。授業終了間近で口を挟んでくるとは……


「は、はい、何ですか?」


 水沢先生も先程とは違い、オドオドしてるし。クラスの連中もオッサンが発言した事により授業時間が延びると思ったのか嫌な顔してるし


「この教材は誰が作成したものかね?」


 そういうのは教師だけの時か、実習生と2人になった時にやってくれないかなぁ?空気読んでよ……


「わ、私ですけど?それがどうかしましたか?」


 今の水沢先生は一般企業で言うところの上司にイビられてる状態だった。大方生徒の前で恥かかせるつもりだろうな……


「いや、教材というにはあまりにも穴だらけなものでね。つい指摘してしまっただけだよ」

「そ、そうですか……ちなみにどの辺りが穴だらけだったのでしょうか?」

「全てだよ。何もかもが穴だらけでこれじゃあ教材とは言えんなぁ~」


 具体的に言わないところを見るとこの人は水沢先生に恥をかかせるか、生徒の前でイビるのが目的か……水沢先生(長女)に頼まれたし、水沢先生(次女)にも守るって言ってしまったし、何より本人は泣きそうだからここで助けますか


「具体的にどこがダメだったかを言わないと貴方が水沢先生に恥をかかせたいかイビりたいかにしか見えませんよ?」


 僕は席を立ち、その場で教師陣のいる方向を向いた。


「おや?君は?確か……」

「岩崎光晃といいます」

「そうか、君があの岩崎君か」


 あのとはどれを指すのかは知らないし、このオッサンがどんな風に僕の事を聞いてるのかは知らないけど、いい印象ではない事は確かなようで


「どの岩崎かは知りませんし、どんな印象を持っているかも興味ありませんけど、その岩崎です」

「君は教師や教育実習生を追いつめる事で有名だからね。大学の方にも名前は届いているよ。嘘まで吐いて1人の教育実習生の実習を強引に打ち切りにしたってね」


 僕の中で教育実習生の実習を打ち切りにしたのは秀義と話している時に絡んできた実習生以外に心当たりはない。多分ソイツがこのオッサンに適当な事を言ったと見て間違いなさそうだね


「光晃は嘘を吐いて人を陥れる奴じゃない!!」


 席を立ち大声で秀義が僕の弁護をしてくれる。だけど、今は必要ない。


「秀義、弁護してくれるのは嬉しいけど、今は黙っててくれる?」

「だ、だが……」

「秀義、僕は大丈夫だから黙って見てろ」


 これから面白い展開になるんだ。僕の楽しみを奪わないでくれよ。秀義


「すみません、僕のクラスメイトが大声出して」


 僕は秀義の代わりにオッサンに謝るけど、心から悪いと思っての謝罪ではない。オッサンを調子に乗せ、その後で一気に叩き落とす


「別にいいがね、君が嘘つきに変わりはないんだし」


 このオッサンはどうしても僕を嘘吐きにしたいみたいだけど、どうしてやろうか?僕の名誉というよりは他人の名誉を傷つけてタダで済むと思うなよ。


「僕が嘘つきならこれから流す動画や音声も嘘吐きの僕が勝手に入手したと思っていてもらって結構ですよ」

「は?動画?音声?君は何を言っているのかね?私には疚しい事なんてしてないよ」


 僕はまだ動画や音声の内容を言ってないのにどうして自分には疚しい事なんて何もないなんて言うんだろう?心当たりがあるからかな?


「そうですか。じゃあ、動画を見て音声を聞いた後でも同じ事を言ってくださいね」


 僕はパソコンとプロジェクターを持って教卓の前まで行き、準備した。さて、後悔処刑といきましょうかね。ま、このオッサンがどうなろうと僕の知った事ではないし、処分は大学がする。僕はほんの後押しをするだけで直接手を下さない


今回は授業準備から処刑決意まででした。

次回は本格的な事になる予定です

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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