僕は水沢先生(長女)から水沢先生(次女)を託される
今回は長女から次女を託される話です
何だかんだで妹想い!!
では、どうぞ
「さて、やりますか」
保健室に通された僕は早速作業に取り掛かる。去年は教育実習生を全力で避けてきたけど、今年は教育実習生に関わってしまった。それは今更どうこう言っても仕方ないけど、まさか僕が教育実習生を守る為に証拠を集め、集まった証拠を整理するとは思わなかった
「精が出るわね~、そんなに水沢先生の事が大切なのかしら?」
保健室だから保健室の担当がいるのは当たり前だけど、絡み方がウザい。自分の価値観を押し付けないのと無駄に鑑賞しないだけマシだけど
「別にそんなんじゃありませんよ。ただ、公欠の許可まで頂いたんですからその分の仕事はキッチリこなそうと思っただけです」
干渉しないだけマシだけど、この人からは悪意を感じないから質が悪いよ……そういえば、この人の名前なんだっけ?
「そう?私には楽しそうに見えるわよ?岩崎君?」
「そう見えるなら先生は病院に行く事をおススメしますよ」
視線をパソコンに落としたまま話を続ける僕。話す時は相手の目を見ろだなんて言うけど、今の僕にそんな事をしている時間はない。余裕があるかと聞かれれば余裕はある。別に証拠がなくても相手が暴力を振るうように仕向ければいいんだし
「私はどこも悪くないんだけど?」
「先生は目が悪いです。僕が教育実習生を好きになるはずないじゃないですか」
「ふ~ん」
「納得してないみたいですね?」
「してないね。まぁ、あの子の方は岩崎君の事が大好きみたいだけどね」
あの子?この人は水沢先生とどんな関係なんだろう?水沢先生に妹がいるってのは秀義から聞いてるけど
「あの子って水沢先生の事みたいですけど、水沢先生とどんな関係なんですか?」
「あれ?聞いてなかったの?」
「ええ、教育実習生の事なんて興味ありませんし。それに、教育実習生なんて実習期間が終わったら関わりなんてないんで」
「はぁ~、岩崎君がこんなんじゃあの子も苦労するわ」
別に僕がどんなでも関係ないでしょ。教育実習生なんて2週間しかいないんだから
「人間そう簡単に変わるわけないじゃないですか。僕は実習期間が終わってもこのままです」
「それじゃ葵衣が困るのよ」
「葵衣……ね。先生は水沢先生とどんな関係何ですか?」
「そう言えばまだ話していなかったよね。私は水沢紅葉。葵衣の姉よ」
「なっ───!?」
保健室の先生が水沢先生のお姉さんだったとは……世間って狭いなと思う。
「ビックリした?」
水沢先生(姉)はイタズラが成功した子供の様な笑顔で僕に尋ねてきた。ビックリしたけど、納得がいく部分もあった。教育実習生との恋愛を勧めてきた部分とか
「ビックリしました」
水沢先生(次女)とは違い、水沢先生(長女)は厄介だ。下手な事を言ったら引っ掻き回されるに違いない。
「やった!ドッキリ大成功!」
「ドッキリって事は先生は水沢先生のお姉さんじゃないって事でいいですか?」
ドッキリって事は水沢先生の姉じゃなく、この人は赤の他人という認識でいいのかな?
「いや、私は葵衣の姉だからね?」
「嘘でしょ?」
「本当だよ」
できれば嘘であってほしかった。仮の話をしよう。僕が水沢先生(次女)と彼氏彼女の関係になったとする。交際期間が長くなるとそのうち結婚も視野に入れて考えなきゃいけないし、お互いに口には出さずとも結婚を意識する。ここまではいいんだけど、問題はその後。結婚するって事は僕の両親は水沢先生(次女)にとっては義理の父、義理の母になる。対して僕の方は水沢先生(長女)が僕の義理の姉になるって事だけど、そうなったら───────
「嫌すぎる!」
「え?何が?」
毎日弄られる日々が続くと思うと嫌になるし、嫌すぎる。水沢先生(次女)は好きだけど水沢先生(長女)は少し苦手だなぁ……
「何でもないです。こっちの話なんで気にしないでください」
「あ、うん。で?岩崎君は葵衣のクセって知ってる?」
どうしていきなり水沢先生(次女)のクセについての話になるんだろう?話の意図が全く見えない
「知りませんけど?」
「ふぅ~ん、葵衣は岩崎君の家に泊まった事があるって話を聞いてるんだけど?」
「誰からですか?」
「葵衣から」
「…………」
あのドジっ子め……喋ったな?
「聞いたと言うよりは私が無理やり聞き出したんだけどね」
疑ってごめんなさい。水沢先生(次女)。愚かな僕を許してください
「知っているなら聞かないでください。で、水沢先生(次女)が家に泊まりに来た事ありますけど、それがどうかしましたか?」
「あの子って昔から寂しがりだからね~、すぐに他人の布団に潜り込むクセがあるんだよ。と・く・に好きな異性の布団にはね」
気が付かなかった。昨日は3人で川の字になって寝たし、その前は真理姉さんと一緒に潜り込んできたからそんなクセがあるとは思わなかった
「そうなんですか。あれ?でも、水沢先生(次女)は僕が初恋だって言ってましたけど?」
「葵衣の初恋が岩崎君だって言うのは本当だよ。さっき言ったのは幼い頃の話だから」
幼い頃の話を持ち出されても困るんだけど……この人は僕にどうしてほしいんだろ?
「そうですか。それで?僕にどうしてほしいんですか?」
「岩崎君の意思もあるから強くは言えないけどね、できれば葵衣の想いにはちゃんと向き合ってほしいかな。これは先生としてではなく、葵衣の姉としてのお願い」
僕をおちょくって遊ぶだけだと思ったけど、この人にも姉らしい一面があるんだ……
「心配しなくても実習が終わればちゃんと答えますよ」
「え?そうなの?岩崎君って教育実習生嫌いじゃなかったの?」
「嫌いですけど、それと水沢葵衣の想いを無視するのは別です」
「そう、ならよかった……」
僕は教師や教育実習生が大嫌いだけど、水沢葵衣という1人の女性は嫌いじゃない
「こんな事なら画像も頼んでおけばよかったかな……」
動画と音声をまとめ終え、画像もあった方がよかったかなと思うけど、合成だと困るから画像はなしでもいいかな?と思う
「音声と動画だけじゃ足りなかったのかな?」
目の前でまとめているから水沢先生(長女)が動画と音声の事を知っているのは当然の事だけど、やる事がなくなってしまった……寝るかな
「いや、あった方がいいかな?とは思いますけど、合成画像じゃ困るんでなくてもいいです。で、一通りまとめ終えたんで僕は寝ますね」
部活に所属しているわけじゃないから僕が私物のパソコンを持ち込む事は本来ならいけない事だけど、僕は北南大学から来る巡回指導員を潰す為の証拠をまとめる為という事で特別に許可してもらっているけど、それも終わったのでやる事がない。よって僕は4時間目まで寝て過ごす事にしようと思う
「あ、うん。でも、寝る前に1つだけいい?」
「なんですか?できれば手短にお願いしますね」
夜じゃないから寝る前の話はいいんだけど、長くなるのは勘弁してほしい
「葵衣の事、頼んだよ。あの子の事、しっかり守ってね」
「わかりました」
僕は水沢先生(長女)と水沢先生(次女)を守るという約束をしてから眠りについた。
「ん~、よく寝た」
起床した僕は軽く背筋を伸ばした。4時間目に備えて睡眠を摂ったけど、今は何時だろう?ま、今、何時かは知らないけど、妙な気分だなぁ……普段ならサボっていると教師に咎められるところだけど、今回は教師のお墨付きだから咎められる事はない
「おはよう、岩崎君」
閉められていたカーテンから水沢先生(長女)が顔を覗かせる。
「おはようございます。水沢先生(長女)」
「うん、おはよう。ところで──────」
「なんですか?水沢先生(長女)」
「その水沢先生(長女)っていうの止めてくれない?」
心底嫌そうに水沢先生(長女)が止めるように言ってきた。何が気に入らないんだろう?水沢先生(幼女)とかの方がよかったかな?
「え?どうしてですか?」
「いや、水沢先生っていうのはいいんだけど、(長女)が嫌なの!なんかお菓子のオマケみたいに言われてるみたいで」
「でも、水沢先生は長女ですよね?」
「それはそうだけど……もうちょっと何かない?そもそも、岩崎君は葵衣の事をなんて呼んでるの?」
「水沢先生ですけど?」
「私の事は?」
「水沢先生(長女)ですけど?」
この人は何を言っているんだろう?水沢先生(次女)は水沢先生で水沢先生(長女)は水沢先生(長女)なのに
「いや、水沢先生だと葵衣と被るのはわかるけど、もうちょっと呼び方を変えてもよくない?」
「例えば?」
「例えば……そう、お義姉ちゃんとか?」
「却下で」
「何で!?」
当たり前でしょ。何が悲しくて保健室の先生をお義姉ちゃんって呼ばなきゃいけないんだ?
「他の生徒に聞かれたら誤解されるか僕がお姉ちゃんプレイが好きな変態にされてしまうからです」
「え~、いいじゃん!」
「よくありません」
「ぶー、ぶー、ケチ!」
ケチで結構。今、この瞬間わかったけど、この人は紛れもなく水沢先生の姉だ。危機管理がなってない
「ごねないでください。僕は保健室の先生を姉と呼ぶ趣味はありません」
「ぶー、じゃあ、紅葉先生で」
「それならいいですけど、妹さんにいろいろ言われませんか?」
「あー、それなら心配ないよ」
紅葉先生のこの自信はどこからくるんだろう?っていうか、どうして大丈夫だって言い切れるんだろう?
「どうしてですか?」
「だって、君は葵衣の事を呼び捨てで呼んでるんでしょ?」
紅葉先生に言われて思い出した。僕が水沢先生を利用しようとしたり、水沢先生に優しくしたりした時に呼び捨てで呼んだ事を
「そんな事ありましたね」
「でしょ?だ・か・ら・ね?」
「わかりましたよ。紅葉先生」
僕は知っている。水沢先生───いや、紅葉先生は真理姉さんと同類だと。真理姉さんは力(物理)で自分の意見を通そうとするけど、紅葉先生は力(女の武器)で自分の意見を通そうとすると
「うん、よろしい!素直な子は好きだよ。岩崎君」
素直にさせたの間違いでしょ?教師の前では弱いところなんて絶対に見せないけどね
「はぁ、ところで今何時ですか?」
「ん?今は11時半だよ?」
11時半か……という事は後30分もすれば3時間目が終わるという事か。さて、僕の方も準備するかな
「わかりました。ありがとうございます」
僕はパソコンを起動させ、証拠を確認する。水沢先生を守る為だから確認を怠る事はしない
「岩崎君」
「なんですか?」
「妹をお願いします!」
僕に頭を下げる紅葉先生だけど、仮にも教師が生徒に頭を下げるなんてどうかしている。よく言い換えると頼りにされている。悪く言い換えると自分の無力を自覚し、生徒に縋る。どっちでもいいけど
「わかりました。ですから頭を上げてください」
僕は屈辱の中で頭を下げる教師は大好きだけど、自分から頭を下げる教師は何の面白味もない。絶対に守るなんて言わないけど、僕は自分にできる限りの範囲で水沢先生を守る
今回は長女から次女を託される話です
次回はドキドキの研究授業の話になると思います
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




