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僕は真理姉さんと仲直りする

今回は光晃と真理が仲直りする話です

この12日目は長くなりそうです

では、どうぞ

「光晃君、どうして私の家に泊まりたいのか聞かせてもらっていいかな?」


 水沢先生と2人で水沢先生の家までの道を歩いている最中、水沢先生の方から切り出してきた。突然泊めてくれ、理由は後で話すなんて言われて納得できる人なんていない


「実は──────」


 僕はお願いしている立場なので拒否する事はできず、正直に洗面所であった事を話す。水沢先生の巡回指導がセクハラ、パワハラで有名な事、北南高校の教師もその被害に遭っている事、真理姉さんが僕を犠牲にした事


「そうだったんだ……」

「ええ、研究授業を控えている水沢先生にできれば話したくはなかったのですが……」


 研究授業とは単純に授業をするだけではなく、後ろにその学校に勤務している教師が見に来る。ただでさえプレッシャーがかかるものなのに、その巡回指導に問題があるとなると不安な気持ちが尚の事不安になる。


「私がセクハラされてたら守ってくれるんでしょ?」


 水沢先生はいつもと同じ笑顔で僕に尋ねてくる。そりゃ水沢先生がセクハラされてたりしたら僕が守るけど、北南高校の教師まで守る義理もなければ義務もない


「そりゃ水沢先生が危険だったり傷つく事があれば守りますけど、北南高校の教師は別です。あの人達を守る義務も義理もありません」

「そっか……でも、高校の先生達全員とは言わないけど、小谷先生だけは守ってあげてもいいんじゃないかな?」


 真理姉さんだけね……それならいいかもしれない。何だかんだで従姉だし、こんな僕の為に泣いてくれたし


「別に真理姉さんだけならいいです。守ってと頼まれれば僕は守ります。ですが、僕に犠牲になれって言うのはどうかと思いますよ?」

「それはそうだけど……」


 水沢先生と真理姉さんだけを守るなら料金を取るつもりはないけど、他の教師もとなると別になる。あの人達は僕の身内でもなければ大切というわけでもない。つまり、守ってやる理由がない


「それに、水沢先生と真理姉さんだけならまだしも、他の教師を守るというなら僕だってお金を頂かないと困ります。僕にとって他の教師は別に身内でもなければ大切でもありません。彼等の代わりなんていくらでもいるんですから」


 そう、僕にとって真理姉さんと水沢先生の代わりはいないけど、北南高校の教師に代わりなんていくらでもいる。つまり、北南高校の教師は僕にとって人形と同じ。壊れたら新しいのに代えるなり、買うなりすればいい


「人間に代わりなんていないと思うけど?」


 水沢先生は人間に代わりなんていないと言う。それはそうだ。人間の命は1つしかないから代わりなんていない。だけど、北南高校の教師として見た時はどうだ?代わりの教師なんていくらでもいる。その人達じゃなくてもいい。


「確かに、人間として見れば代わりなんていませんが、北南高校の教師としてなら代わりはいくらでもいます。僕にとって教師はあの人達じゃなくてもいいんですよ」

「そんな……」

「それに、パワハラ、セクハラを働くような人間です。真理姉さんに頼まれなくてもあっちから僕に絡んでくるのは大体予想できます」


 おそらくだけど、水沢先生の担当は常に自分が偉い、自分が言えば何とかなると思っている人間だ。僕みたいに授業をサボったり、授業中に居眠りしている生徒は自分の正義感を振りかざして説教してくるだろう。ま、僕の方からアクションを起こさなくてもあっちから勝手にアクションを起こしてくるはず


「じゃ、じゃあ……」

「そうです。真理姉さんに頼まれなくても僕に絡んできて僕はその人をオモチャにするでしょうね」


 潰すとは言わずにあえてオモチャにすると言う。僕はカッコよく自分が守ってやるだなんて言うつもりはない。自分や自分の周囲に害を成す人間は潰すだけ。ただ、それだけ


「オモチャって言い方が酷いよ……」


 オモチャにするって言うのは酷いかな?とは思う。だけど、この世に絶対なんてない。だから、僕は絶対に守るなんて言わない


「僕は神様になったつもりはないんで、自分の手で全ての人間を救うなんて言いません。僕がやるのは自分と自分の周囲の人間を守るだけですよ」

「そう。じゃあ、小谷先生と仲直りできるよね?」


 どうやったらそんな結論に至るのかは知らないけど、そうだな……真理姉さんと仲直りできるかな?僕にしては珍しく気まずさを感じる。


「そ、それは……どうでしょうね?」

「気まずいなら私も一緒に行くから。ね?」


 水沢先生は自分も一緒に行くと言ってくれた。その方がいいかもしれない。喧嘩をした時は当事者同士で話し合うより第三者を交えて話をした方がいい。


「お願いします」

「うん!お願いされました!」


 僕のお願いを笑顔で受け入れてくれる水沢先生。水沢先生────いや、教育実習生と一緒に歩いているところを過去の僕が見たらなんて言うかな?君はバカか?とかな?どっちにしてもあんまりいい顔はしないだろう


「教育実習生と一緒に歩いているところを過去の僕が見たら笑われそうだなぁ……」

「そうかもね。きっと過去の光晃君が見たら笑いそうだね」


 水沢先生に肯定されてしまったけど、事実だから何も言えない。でも今は水沢先生と一緒に歩いている。僕の認識が変わってしまったという事かな?


「ですが、水沢先生と一緒に歩いてるのは悪くないと思っている自分が今はここにいます」

「それは教育実習生の先生と一緒に歩いてるのが悪くないと思っているの?それとも、私と歩いているのが悪くないと思っているの?」


 水沢先生、それは言い方によっては告白になりかねないんですけど?


「そうですね。実習が全て終わったら全部話しますよ」


 今、答えるのは簡単だけど、水沢先生の質問に答えてしまったら残りの実習で問題が起こるかもしれない。そうなったら実習終了間近で全てを水の泡になる。


「やっぱり答えてくれないんだね……」

「すみません、水沢先生の努力を無駄にするような真似をしたくないんで」

「そっか、でも、実習が終わったら答えてくれるんだよね?」

「もちろんです」


 水沢先生の家へ向かう道中で2人で笑いあう。僕のせいで実習が台無しになるくらいなら何も言わない方がいい。それに、傲慢で職務怠慢な北南高校の教師連中に文句を言わせない為でもある


「なら残りの実習頑張らなきゃね」


 水沢先生は残りの実習を頑張る為、僕はこれから来るであろう脅威から水沢先生を守る為にそれぞれ目標を立てる。


「僕はできる範囲で今日は水沢先生を守ってみせますよ」

「絶対とは言わないところが光晃君らしいね」


 僕は確信のある事以外では絶対なんて言葉を使わない。それにしても、どうやったらセクハラやパワハラを働こうだなんて考えに至るのだろうかという部分では純粋に興味がある


「ま、これが僕ですから」


 あ、でも、水沢先生を守るにしても僕は相手の事を何も知らない。いくら相手が問題のある人物だとしてもある程度の情報は必要だよね……


「とにかく、早く私の家に行こうか?」

「ですね」


 これからの事を考えるのもいいけど、まずは目の前の事を済ませてからにしよう。それからいろいろ考えても遅くはない


「じゃあ、行こうか?」

「はい」


 水沢先生の家に着いてから水沢先生が学校へ行く用意をするだけなので思った以上に早く済んだ。そして、向かう先は学校ではなく僕の家。目的は当然、真理姉さんと仲直りする為。


「光晃君、家に帰ったらちゃんと謝るんだよ?」

「わかってますよ」


 家へ向かう道中で水沢先生から注意を受けてしまったけど、今回ばかりは反論できない。


「た、ただいま……」


 家に帰った僕はいつも感じない気まずさを感じていた。いつもなら真理姉さんと喧嘩しても僕は無視を決め込んでいた。そして、真理姉さんが僕に謝るというパターンが多かった。だけど、今回は違う。さすがに僕も言い過ぎたと思っている


「光晃……?」


 奥からフラフラと真理姉さんがやってくる。今回ばかりはさすがに堪えたのかな?僕も言い過ぎたとは思っているけど……


「ほら、光晃君」


 水沢先生に肩をポンと叩かれて僕は前に出る。これじゃ幼い子供だ。この時ばかりは仕方ないと思うけどね


「ま、真理姉さん……ごめん、さっきは言い過ぎたよ」


 真理姉さんは許してくれるのかな?今更ながら自分の発言を思い返してみるけど、結構酷い事を言った。それだけは自覚している


「ううん、私も光晃に犠牲になるような頼み方したのがいけないんだし、いいの。私の方こそごめんね?」

「いいよ。今考えてみれば真理姉さんだって不安だったわけだし」


 僕の言葉を聞いた瞬間、真理姉さんは僕を抱きしめて静かに泣いた。水沢先生に害を成し、僕と真理姉さんが喧嘩した原因を作った奴にこの償いをしてもらおうかな?


「落ち着いた?」

「うん……」


 数分後、話ができる状態になった真理姉さんと付き添いで付いてきた水沢先生とリビングにいた。泣き止んだ真理姉さんがさすがに玄関先では話もできないという事でリビングに来ていた


「さて、真理姉さんはさっき水沢先生を担当している巡回指導員を潰してほしいって言ったね」

「うん……」

「結論から言うとそれは無理だよ」

「光晃君!どうして無理だって言うの!?さっきは私を守ってくれるって言ったのに!」


 真理姉さんではなく水沢先生が僕を問いただすけど、僕だって嫌だから無理だって言っているわけじゃない


「水沢先生、落ち着いて下さい。光晃、どうして無理なのかな?」


 水沢先生を抑えつつ無理だという理由を尋ねてくる真理姉さん。表情は真剣なものだけど、目には不安の色が映る


「情報がないからだよ。僕が知っているのはその人が水沢先生を担当している巡回指導員っていう事とセクハラ、パワハラで有名だって事だけで何をしたかがわからない。具体的な事がわからない以上は攻め込む事は可能でも決定打に欠ける。つまり、真理姉さんや水沢先生に守ってと言われても決定打がないと守りきれない」


 喧嘩せずに僕が真理姉さんの頼みを聞いていたとしても決定打が見つからない限りは守りきれない。僕が今必要なのはその人の評判ではなく、決定的な証拠。写真でも動画でも音声でもいい。決定的な証拠がほしい


「光晃君、決定打ってどんなものがほしいのかな?」


 水沢先生は理解しているのか理解してないのかは知らないけど、決定打について尋ねてきた


「別になんでもいいですよ。合成以外の写真でも、動画でも音声でもね。その人を追いつめるものであればね」


 合成写真なら言い逃れされたり、冤罪だって事もあるけど、だけど、音声や動画ならほぼ合成は無理だと思う。だから、僕は切り札がほしい!

今回は光晃と真理が仲直りする話でした

葵衣の授業はどうなるのでしょうか・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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