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僕は犠牲になる事を強いられる

今回は洗面所からのスタートです

光晃は真理の願いを聞き入れるのか?

では、どうぞ

「どうして僕がその人を潰す事になるの?」


 真理姉さんから話を聞いた僕はどうして僕が巡回指導員の人を潰す事になるのかを聞いた。北な高校の教師が苦しんでいようが僕には関係ない。それに、僕が教師の為にわざわざ泥を被るような真似をする事もない


「私達教師が逆らったら後々の生徒の進学にも関わってくるし、学校のイメージにも関わるから……」


 なるほど、北南高校の教師がソイツの面子を潰したとなれば先輩達の進路に影響が出るし、僕の学年や僕の後輩の進学にも関わるけど、生徒である僕がその指導員を潰したとなれば学校側にダメージはあれど生徒の不始末程度で済むというわけか……はっ、ふざけた話だ


「断る。僕には北南高校の教師の為に動く理由がないし、そもそも、生徒に泥かぶせて自分達は高みの見物とか……ねぇ、真理姉さん」

「何?光晃?」

「アンタ、自分が最低な事言ってるの自覚してる?」

「…………」


 僕はこの時、自分でもびっくりするくらい低い声が出ていた。自分で低い声が出ているって自覚している時点ではまだ冷静な方だと思う


「自覚してのだんまりか……別に水沢先生の指導員を潰すのはいいんだよ?ただ、北南高校の教師がこの先、僕のする事に指図しないって約束できるならね」


 教師の為にタダで動いてやるほど僕は優しくない。動くならそれ相応の対価をもらわなきゃね


「そ、それは……指導の一環でもあるからできないよ……」

「じゃあ、この話はなし。歯磨きするからもう話し掛けないでね」


 僕は真理姉さんとの会話を打ち切り歯を磨く。教師が何に困っていようが知った事ではない。ま、僕は教師を助ける程お人好しでも優しい人間でもない


「光晃……」


 オモチャを欲しがる子供の様な目で僕を見る真理姉さん。だけど、僕は気にせず歯を磨く。教師が困っていても僕には関係ない


「はい、終わったよ。真理姉さん」


 僕は歯を磨き終え、顔も洗ったので真理姉さんに場所を譲る。無言のまま真理姉さんは洗面台に立つけど、その表情は暗かった。


「水沢先生の指導員を潰したら北南高校の教師は僕に何をしてくれるの?」

「え?助けてくれるの?」


 真理姉さんの表情が一瞬だけど明るくなった。何だかんだで僕は従姉である真理姉さんには甘いと思う


「条件次第では助けてあげない事もないし、どうせその指導員は僕みたいなタイプの人間は目の敵にしてるんでしょ?」


 絶対にそうだとは言い切れないけど、セクハラやパワハラをしでかす人間という事は多分、僕のような人間────つまり、自分の思い通りにならない人間や自分の言う事を聞かない人間は目をつけられる。


「光晃!」

「いや、感動してないで僕に何のメリットがあるか説明してくれない?」

「そ、それは……」


 メリットの説明を要求した途端に言葉が詰まる真理姉さん。当たり前だけど、僕にメリットがあるわけがない。はぁ~、世話の焼ける従姉だ


「ま、メリットの説明を求めても無駄だって事はわかっていたから別にいいんだけど、その代わりある条件は呑んでもらうけどいいかな?」


 真理姉さんには条件を呑んでもらおう。これ1つ呑むだけで自分達が不快な思いをする事はないし、こんな簡単な条件で職場が平和になるなら大学側も高校側も大喜びでしょ


「な、何?私にできる事?」


 真理姉さん、食いつきが早いよ……まぁ、簡単な事だけどさ


「水沢先生の授業の時に僕の居眠りを容認して水沢先生にも僕を起こす事をさせない。それが条件だよ」

「え?それだけでいいの?」

「うん。詳しい事はわからないけど、その指導員の人って教育実習生はもちろんの事、実習校の生徒が授業中に居眠りなんかしてると空気も読まずに起こすような人間なんでしょ?そして、その場で説教を始める。違う?」


 何となくだけど、そんな気がする。いや、僕はすでにマークされているかもしてない。


「そ、そうだよ」


 真理姉さんの答えは予想通りのものだった。水沢先生の担当は居酒屋で若い人が父親になったって話を聞いて土足でその家の事情に口を出すという相手が相手なら確実に警察沙汰になるタイプだ


「そう。で、今の条件は呑むの?呑まないの?」

「呑むよ。だから……だからお願い……助けて」


 僕に助けを求めた後は泣いてしまった。さて、ソイツをどうしてやろうか?僕は自分が他人を泣かすのは大好きだけど、人に泣かされた人を見るのは大嫌いな性格だ。それこそ、北南高校の教師だって僕が泣かせたりしたならともかく、他人が泣かせたとなると非常に不快だ


「はいはい。あー、でも……」

「何?助けるって言っておいて止めるとか言わないよね?」

「いや、止めるとは言わないけどさ、実習が打ち切りになった教育実習生ってどこの大学だったかな?と思ってね」


 あの暴力しか能がないバカはどこの大学から来た実習生だったかの確認だけする。水沢先生と羽山先生は北南大学って言ってたけど、あの人もそうなのかな?


「水沢先生や羽山先生と同じ北南大学だよ。それがどうかしたの?」

「いや、ひょっとしたら僕はすでにマークされてるのかもしれないと思ってね」


 今の僕は自意識過剰か被害妄想の酷い奴にしか見えないだろうけど、実習が打ち切られた理由を聞かれた時に僕の名前が出るかもしれない。それこそ僕が暴力を振るおうとして襲い掛かってきて自分は説得しようとしたけど、それに応じなかった。あのバカはそれくらい言っていてもおかしくない


「どういう事?」

「僕のせいで実習が打ち切りになった先生いるでしょ?」

「うん」

「その人が大学に戻って打ち切りになった理由を聞かれた時に大学側に嘘を吐いてるかもしれない。その嘘が原因で僕は北南大学にマークされてるかもしれないって事」


 考えすぎかもしれないけど、念のために警戒だけしておく。進路はまだ先でもないけど、僕は北南大学に進学するつもりは毛頭ない


「それはあるかもしれないね」


 真理姉さんは僕を心配もせずに一言あるかもしれないと言った。この人は本当に僕の事が好きなのかな?さっきは僕を犠牲にしようとしたし


「僕は北南大学から来た教育実習生の実習を打ち切りにした。真理姉さんが僕を犠牲にしてまで指導員を潰そうとせずとも僕に目をつけた時点でその人ば潰れる事になる。まぁ、真理姉さんが────いや、北南高校の教師が僕を犠牲にしようとして快適な労働環境を得ようとしたみたいだけどさ」

「それは悪いと思っているよ。だけど……」


 もういい。真理姉さんの言葉ではなく、北南高校の教師が吐く戯言はもう聞きたくない。水沢先生の実習が終わったら真理姉さん含めて全員潰そう。コイツ等はすでに腐りきってる


「だけど何?僕は水沢先生の実習が終わったら北南高校の教師は1人残らず潰す予定なんだけど?」

「そ、それは止めて光晃。そんな事されたら生活に困る事になるよ!」


 生活難になるから止めろという真理姉さん。生活難?そんな事知らないね。僕は1人あるいは2人で海外の両親の元へ行く予定だからそんな事は知った事ではない


「生活に困るのはあくまでも教師側の都合でしょ?それに、本来なら守るべき生徒を犠牲にする教師なんていない方がいいでしょ。ま、北南高校が廃校になっても僕は海外にいる両親の元に行くから」


 脅すわけじゃないけど、腐った人間の元にいるくらいならいっそ海外に行って平和に暮らした方がマシ


「光晃を犠牲にしようとした事は謝る!謝るから……」

「いや、生徒を犠牲にしようなんて考え浮かぶ時点で真理姉さんは北南高校の教師だよ。同時に僕にとってはいらない存在になるけどね」


 僕はリア充のグループにしろ高校にしろ誰かの犠牲なしじゃ成り立たないような組織の世話をする気もなければ所属する気もない


「そ、そんな……」


 がっくりと項垂れる真理姉さんだけど、いらない存在と言われたくなければ最初から生徒を犠牲にする案ではなく、別の案を考えればいい。それだけの話


「あ、今日にでも恋人を作ってこの家から出て行くっていう手もアリだね!ま、そういう事なんで」


 今度こそ僕は項垂れる真理姉さんを放置し、洗面所を出る。僕の事を愛しているだの好きだの言っている割には僕を犠牲にする。言っている事とやっている事が違いすぎる


「はぁ、真理姉さんにも困ったものだよ。いや、北南高校の教師にも困ったものと言い換えた方がいいかな?どちらにしてもこの家にはもういたくないな」


 前回は真理姉さんと水沢先生と秀義の3人によって僕の家出は阻止された。だけど、水沢先生か秀義のどちらかを僕の方に引き込めばいい。水沢先生と秀義。どちらを引き込めばいいかなんてのは簡単に答えが出る。水沢先生を引き込めばいい。秀義の家に行くと真理姉さんが迎えに来る可能性があるし


「あ、光晃君!」

「水沢先生……」

「どうしたの?元気ないみたいだけど?」


 元気がないとしたら真理姉さんのせいかな。幸いな事に時間はまだある。そして、水沢先生の荷物はそんなに多くない


「水沢先生にお願いがあります」


 僕は思い切って水沢先生にお願いする事にした。水沢先生の家なら真理姉さんも場所を知らないだろうから安心だし


「ん?なあに?私にできる事かな?」

「ええ、水沢先生にしかできない事です」

「なになに?」


 水沢先生は心なしかワクワクしているように見える。僕は水沢先生なら秘密を守ってくれるという前提でお願いしてみる


「しばらくの間、僕を水沢先生の家に泊めてくれませんか?もちろん、タダでとは言いません!」


 今、理由を言う事はできないけど、今日の研究授業が終わったら必ず言うつもりでいる


「理由を聞いてもいいかな?」


 当たり前だけど、水沢先生は理由を求めてくる。


「研究授業が終わったら必ず説明します!なので泊めてください!」


 ここで断られたら僕はいつものサボりスポットに行くしかない。僕としてはそれで構わないんだけど、騒がれたら溜まったものじゃない


「私、1度家に戻るんだけど、その道中に聞いてもいいかな?」


 遠回しに水沢先生は僕に家まで付いて来いと言っている気がした。研究授業の後じゃダメなのかな?


「理由を聞いて水沢先生がちゃんと研究授業できるならそれでいいです」


 僕は水沢先生の研究授業前に余計な心配を掛けないようにしたいけど、水沢先生って意外と頑固なところがありそうだから厄介だと思う


「うん、研究授業ちゃんとするから理由を聞かせてもらえる?」

「わかりました。歩きながら説明します」


 僕は制服ではなく私服で水沢先生の家まで同行する事にした。泊まる準備をするにしても水沢先生にちゃんと理由を説明しなきゃいけないし

今回は洗面所からのスタートでした

光晃は真理の願いを聞き入れるというよりは大学側に名前が知られていたら自分に絡んでくるかもしれないと思い真理の願いは有耶無耶になりました。


今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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