恋は盲目という言葉が今の僕に当てはまる
今回は授業中に居眠りをして光晃が咎められる話です
居眠りじゃなくて光晃が道端で葵衣の事を意識しすぎるからそれを題名にしたんですけどね!
では、どうぞ
「水沢先生の実習も今日で11日目となったけど……」
僕は心配になる。生徒からは水沢先生の悪口を聞いた事はない。だけど、教師連中となると別の話になる。自分も教育実習生の頃に当時の教員連中に苛められた記憶があると思う。それ故に研究授業で生徒を使って水沢先生を苛めないかどうか……羽山先生にも同様の事が言えるけどね
「どうして僕が教育実習生の心配なんかしているんだろう?」
大嫌いな教育実習生の心配をしている僕はどこかおかしい。別に水沢先生の研究授業が成功しようが失敗しようが関係ないじゃないか……だけど、水沢先生が教師連中に苛められているのは気に入らない
「水沢先生が教師連中に苛められるのは気に入らないな……」
自分の思いを自覚したからか僕は水沢先生を傷つけるような事をする人間は気に入らない。水沢先生を苛めていいのは僕だけだ!ってこれじゃ小学生の思考と何ら変わらないか
「こんな事を考えても仕方ない。学校へ行こう……」
水沢先生が苛められたらその時に考えればいいし、教師というオモチャが手に入るんだ。深刻に考える事は何もない
「戸締りはOK、ガスも元栓はしっかり締めた」
戸締りとガスを確認してから僕は家を出る。家にいる時にも水沢先生の事を考える事になるとは……恋は盲目とはよく言ったものだ。まさか僕が大嫌いな教育実習生に好意を抱き、その人の事ばかり考える事になるとは
「自分でも知らないうちに惚れこんでいたとは……」
学校への道中で僕は水沢先生に好意を抱いているという事を改めて自覚する。自分が知らず知らずのうちに水沢先生を好きになっていた事は本当に厄介だなぁ……
「道路で僕は何を言っているんだか」
今の僕は重症だ。道路で水沢先生に惚れている事を再認識し、それを口に出してしまうとはね
「誰が聞いてるかわからないし、不審者と間違えられても仕方ないし学校へ行こう」
不審者と間違えられて警察へ突き出されても困るから僕は早々に学校へと向かう。
「さて、今日も面倒な授業か……」
教室に着くなり授業がある事への文句をこぼす。平日だし、授業があるのは当たり前だけど、苦手科目とかあると嫌になる。
「朝からそんな当たり前の事を堂々と言わないでくれない?」
机に突っ伏していると正面から理沙に話し掛けられた。コイツに会うのも久々のような気がするのは気のせいかな?
「仕方ないだろ?僕は教師と教育実習生が大嫌いだし、この学校の教師の授業はハッキリ言ってつまらないし」
何がつまらないかって、生徒への設問なく一方的に刷り込もうとしているところがつまらない。設問があったとしても間違えたら文句を言う。そんな教師の授業が楽しいわけがない
「いや、そうだとしても少しは楽しもうとか思わないわけ?」
「そう思えるなら苦労はしないよ」
楽しいと思えるくらいなら授業をサボったり居眠りしたりしない。それに、他の生徒だって僕と同じ事なんてしない。他の生徒が僕と同じ事をしているかは知らないけどね
「あ、そう。あんまり私に苦労かけないでよ?後で先生に文句を言われるのは私なんだからさ」
僕が授業をサボったり居眠りしてたりしてどうして理沙が先生に文句を言われるんだ?
「僕が授業サボったり居眠りしたりしてどうして理沙が文句を言われるのかな?」
「何でって私、このクラスの委員長だし」
初耳だ……理沙がこのクラスの委員長だなんて。という事は委員長が援交してたの?
「僕のクラスは援交してた奴がまとめられるほど単純という事になるのか……」
「ちょ、それは内緒にしてよ!」
理沙にとっては援交していた過去は消し去りたいものらしいけど、言われて嫌なら最初からしなければいい
「僕には言う相手は秀義くらいしかいないけど、言われて嫌ならどうしてそんな事したんだか」
「それは理解しているでしょ?岩崎」
僕は理解しているとは一言も言った覚えはないし、理解しようとは思わない
「理解していると言った覚えはないし、そもそも、僕なら親が姉と比較するなら利用して切り捨てるだけだから」
「そうだった……岩崎はそういう奴だった」
理沙と関わった時間はそんなに長くないけど、僕の基本的な考え方を理解してもらっているようで何より
「僕の性格を理解しているようで何よりだよ」
理沙との話を切り上げ、HRが始まる前に理沙は席に戻り、僕は机に突っ伏す。どうせHRなんて行事が近ければそれの委員を決めるとかしかないから退屈だし
「光晃!起きろ!」
突っ伏して寝ている僕を起こす暑苦しくウザったい声。顔を見なくても秀義だってすぐにわかる。むしろ、こんな暑苦しい奴は秀義しかいない
「何?僕はまだ寝たいんだけど?」
起こしてくれって頼んでないのに起こされて少し不機嫌になる。僕を起こすって事は僕に用事でもあるのかな?
「いや、不機嫌になられても困るが、1時間目は羽山先生の授業だぞ?」
はい?研究授業は遅くても2週目の後半にやるんじゃないの?どうなっている?
「研究授業をするにはまだ早いと思うんだけど?」
「あ、悪い。授業の後半で羽山先生が少し話をするの間違いだ!」
あ、そういう事ね。全く、紛らわしいな……研究授業の練習か。本格的な研究授業じゃないから授業の後半少し使って羽山先生が話をするだけね
「紛らわしいよ?秀義」
本当に紛らわしい。羽山先生が少し話をするだけなら最初からそう言えばいいのに、わざわざ授業だなんて言って
「ごめんごめん。だが、光晃」
「ん?何?まだ何かあるの?」
「ああ、今日はサボるなよ?」
「どうして?」
「今日は1時間目社会科、2時間目も社会科だ」
そういえばそうだった。どうしてかはわからないけど、今日は1時間目社会科、2時間目社会科と社会科が2時間連続だった
「楽しい授業ならサボらないけど、つまらないならサボる」
つまらない授業を受けている時ほど苦痛なものはない。社会科の場合は学校にいる時まで真理姉さんと顔を合わせたくないのが1つ、この2週間の間に限って言えば教育実習生と関わりたくないのが1つ
「他の教科は知らないが、社会科は大丈夫だろ」
なんとも無責任な事を言う秀義。コイツもコイツで教師には何だかんだで辛辣だと思う。ただ、僕とは違い、狙って言っているんじゃなくて無意識に言っているから質が悪い
「ならいいけど。で、言いたいのはそれだけ?サボらなきゃいいんでしょ?」
「ああ!」
秀義はそれだけ言って自分の席に戻る。秀義はサボるなとは言ったけど、寝るなとは言っていない。サボらなければ寝ていてもいいわけだ
「んぁ?」
僕は誰かに肩を叩かれて目を覚ました。誰だよ……せっかくいい夢見てたのに
「おはよう。岩崎。いい夢は見れたかな?」
目を覚まし、顔を上げた先にはお怒りモードの真理姉さんがいた
「ええ、小谷先生が起こさなければいい夢でしたよ」
真理姉さんだけじゃないけど、お怒りモードでも教師は全く怖くない。男性教師の場合はすぐに暴力に訴えてくるけど、それを指摘して黙らさるだけだし、女性教師なら癇癪起こして去って行く。真理姉さんの場合はとある一言を言えばすぐに去って行くから楽だし
「ほう?どんな夢だったか教えてもらえるかな?岩崎。私の授業よりも楽しい夢なんだろ?」
案の定、自分の授業との比較をしてくるけど、その手は食わない。それに他の生徒にするような手が僕に通用するとは思わない事だね
「小谷先生と2人っきりで過ごす夢です」
客観的にみたら僕は教師を口説こうとしているチャラ男だけど、真理姉さんの身内であり、真理姉さんが僕に依存気味だと知っている僕は今の事を言うとある程度の事を許してくれる
「そ、そうか……でも、授業中に居眠りは感心しない。次は気を付けるように」
「わかりました」
頬を赤くし、注意だけして真理姉さんは1番後ろの位置に戻る。横目でチラッと確認したけど、頬を赤く染める真理姉さんとは対照的に頬を膨らませて僕を見つめる水沢先生が視界に入った
「今は授業中だからいいけど、学校で嫉妬心を前回にしないでよ……」
嫉妬心を全開にした水沢先生を見て小声で呟く僕。幸い他の生徒は前を見て羽山先生の話を聞いているみたいだったから助かったけど、他の生徒に見られてたらどうなっていた事か……
「むぅ~!光晃君のバカ……」
後ろで水沢先生が何か言っているけど、口の動きだけで言っている事が解ってしまった
「小声で呟いたつもりでも口の動きである程度は解るから」
他の生徒と同じように黒板の方を向き、小声で水沢先生に文句を言う。まさか、真理姉さんに起こされるとは思わなかったし、水沢先生が他の生徒がいる前で嫉妬するとは思わなかった
「あ、もう終わりだね。私の話はここまで」
チャイムと共に話を切り上げる羽山先生。それを合図に一気に騒がしくなる教室。どうせ2時間目も社会科だから真理姉さんから何かを言う事もなければ終業のあいさつも特にない。それでいいのかな?この学校は
「よく寝てたね。岩崎」
HR前と同じようにまたしても理沙が話し掛けてきた。授業中に真理姉さんに指摘されたから直接見なくても僕がよく寝ていた事は誰でもわかるか
「そりゃ、眠かったからね」
眠いから寝ている。そんなの当たり前の事でしょ。退屈だから寝ているっていう事もあるけどね
「眠かったからって寝てたらダメでしょ?しかも、小谷先生を口説くような事を言って」
真理姉さんから特にこれと言ったお咎めがなかった変わりに理沙から咎められてしまった
「理沙は僕と小谷先生がどういう関係か知らなかったっけ?」
興味ないから忘れてたけど、理沙に僕と真理姉さんが従姉だって話したっけ?僕の記憶じゃ言った覚えないけど
「岩崎と小谷先生の関係?教師と生徒でしょ?」
この反応は話してなかったか……まぁ、いいか。今話せば
「学校ではそうかもしれないけど、学校以外じゃ僕と小谷先生は従姉だし」
「あ、そう。だから口説くような事言えたんだ?」
「まあね。それよりもあんまり驚いてないね?」
「驚いているけど、ここで騒ぐと岩崎が迷惑でしょ?」
さすがに援交をしていただけあって僕が秘密にしていてほしい事をなにも言わずに察してくれた。理沙のこういうところは個人的には好きになれそう
今回は光晃が授業中に居眠りをして咎められる話でした
話数的にはまだ続きますが、展開的には後3日です。寂しいと思えばいいのか、まだ続くんだと思えばいいのか・・・・正直、微妙なところです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




