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僕は早退を阻止される

今回は光晃が早退を阻止されるところからのスタートです

体育の単位を教育実習生の学校案内しただけでもらえるって・・・・

では、どうぞ

 早退すれば面倒な教育実習生に関わる事もないだろう。教育実習生の先生で今日来たばかりの人なら僕の早退を疑う事なんてしない。そう思って意気揚々と玄関に向かった僕はなんて愚かなんだろう……


「岩崎、どこに行く?まだ授業は残っているでしょ?」


 靴を履き替え、校門を通過しようとした僕の背後から聞こえるのは小谷先生の声だ。水沢先生をうまい事やり過ごせたと思って油断したか……この人の存在を忘れていた


「体調が悪いので帰ります」


 努めて冷静に対応する。ここで取り乱したらできる早退もできなくなる


「そうか、じゃあ1度保健室に行ってきなさい。それで早退してもいいと言われたら早退してもいい」


 僕の体調が悪くない事を知って言ってるな?このゴリラ。どうやっても僕を早退させない気か?


「僕は体調が悪いんです。保健室に行く必要なんてありません。すぐに早退します」


 保健室になんか行ったら僕が元気な事がバレてしまう。正直、そんな事態は避けたいし、罰が追加されても嫌だ。


「岩崎、仮病早退は認められない。すぐに戻れ」


 戻れと言う小谷先生だが、僕は教育実習生と関わる気も今更クラスメイトと関わる気もサラサラない。オマケに今の時間は僕に無意味に絡んできたあの体育教師の授業だ。尚更戻りたくなんてない


「お断りします。僕は戻る気も授業に出る気もありませんので」


 それに、戻ってさっき以上に絡まれたらたまったもんじゃない。だったら後日怒られるのを覚悟で早退した方がマシだ


「はぁ、岩崎」

「何ですか?僕は学校に戻る気なんてないですよ」

「私は体育の授業に出ろとは一言も言っていない」


 そりゃそうだ。小谷先生は学校に戻れとは言っても体育の授業に出ろなんて一言も言っていない。言われなくてもわかっている


「体育の授業に出ないと言っている僕にどうしろと言うんですか?」


 体育の授業に出る気は僕にはない。小谷先生は僕に学校に戻ってほしい。相反する2つを解決するにはどうしたらいいか?答えは簡単だ。僕か小谷先生が妥協すればいい。僕が妥協した場合は学校には戻るが、体育の授業に出ないで体育の単位がもらえる代案を出す。小谷先生が妥協した場合は自宅でもできる課題を与えて僕を早退させる。簡単な事だ


「体育の授業には出なくていい。その代わりに水沢先生に学校の中を案内してやってくれ。まぁ、それを体育の単位とする」

「何を言っているんですか?」


 この人は本当に何を言っているんだ?教育実習生の案内を体育の単位にするなんてバカか?そんな事が通じるわけがない。


「聞こえなかったかな?」


 いや聞こえてはいたが、学校案内を体育の単位とするなんてバカも休み休み言ってほしい


「いや、聞こえていましたよ?ただ、学校案内をしただけで単位をくれるなんてこの学校はおかしいんじゃないかと思っただけです」

「まぁ、そうだろうな。だが、この事はすでに教科担任は了承済みだ」


 は?あの教師は何を考えているんだ?無能だ無能だとは思っていたが、ここまで無能だとは思わなかった


「はぁ、この学校の教師は揃いも揃って無能ばかりなんですね」

「ぐっ……」


 苦虫を噛んだような顔する小谷先生。教師に向かって無能なんて本来は言うべきじゃないと思うが、学校案内をするだけで単位にするなんて提案をする方もそれを了承する方もどうかしている


「最初に言ったと思いますけど、僕は教育実習生に関わる気はありませんので、失礼します」


 単位をくれるって言われても僕は教育実習生に関わる気はない。学校案内なんてそんな2人きりになるような作業は秀義にでもやらせておけばいい


「ま、待て!岩崎!」


 往生際が悪い。教師のこういうところは素直に尊敬するけど、今はただ、ウザいだけだ


「何でしょうか?僕は帰りたいんですけど?」


 僕は1分1秒でも学校にはいたくない。早く帰りたいというのが本音だ


「ま、まぁ、そう言うな。君の教師嫌い、人嫌いは私達の間でも問題になっていてな。何とかしないとまずいんじゃないか?という意見が多数出ている。いい機会だ。岩崎、水沢先生と積極的に関わって教師嫌い、人嫌いを直してみてはどうだろう?」


 は?冗談じゃない!僕は教師嫌い、人嫌いなところも自分で気に入っている。それを直すなどするはずがない


「嫌です。僕はこういうところも気に入っているんです。それを変えるつもりも直すつもりもありません」


 教師はという職種の人間は根本的なところが間違っている。嫌いなものを無理やり好きにさせるのではなくて、嫌いでもうまく付き合っていく、あるいは、ストレスにならない方法を見つける事をするのであって、完全に直すなんてできるわけがない。


「…………」


 完全に無言になってしまった小谷先生。これ以上引き止められても時間の無駄だ。さっさと帰ろう


「反論がないようなのでこれで失礼します」


 教師に関わって無駄な時間を過ごしたな……これだから教師は嫌いなんだ。自分の価値観でものを言い、自分の価値観を押し付けてくる


「岩崎、教師が嫌いでも構わない……だが、人嫌いを直そうって気はないか?」


 しつこいな……この人は何回同じ事を言ったら理解できるんだ?僕は教師が大嫌いだし、他人と関わるなんて事も嫌いだ


「先生、しつこいですよ。僕は今のままでいいと思っていますし、それを変えるつもりもありません。まぁ、教育実習生が僕に価値観を押し付けない、自分の教育観でもって僕に接する事をしないと約束できるなら考えますけど?」


 僕なりに妥協したつもりだ。このままじゃ泥沼になる。なら、どうする?そんなの簡単だ。無理難題を突きつけて心をへし折ればいい


「わ、わかった……水沢先生にはそれを言っておこう……だから、学校案内の件を引き受けてくれないか?」

「わかりました。そこまで言うなら引き受けますけど、1ついいですか?」


 この人は肝心な事を忘れている。教育実習生は水沢先生だけじゃない。水沢先生だけに今の条件を突きつけても他の教育実習生は制約がない。それも約束させる必要がある


「何だ?まだ何かあるのか?」

「水沢先生だけじゃなく、他の教育実習生にも同じ約束をさせてください。ハッキリ言いますが、他の教育実習生に絡まれたらうっとおしいんで」

「わかった、それも約束しよう」


 僕は小谷先生から教育実習生が僕に必要以上に絡んでこないようにするという事をさせないという約束をさせた。


「面倒ですけど、水沢先生に学校案内をするんで戻ります」


 相手に約束をさせ、僕が守らないのは1部の無能教師とやっている事が同じだ。僕はそれだけはしたくないので大人しく学校に戻る


「あ、岩崎君」


 玄関で待ってたのは水沢先生だった。はぁ、この人は飼い主の帰りを待つ犬か?律儀にも玄関で待っている必要はないだろ……


「さっき振りです。水沢先生」

「う、うん……」


 この人はいちいちオドオドしないと僕と会話もできないのか?それとも、僕が怖いのか?まぁ、どうでもいいや。どうせ2週間だけの付き合いだ。期間が終わればはい、さようなら。それで僕も清々する


「早速ですが、1階から案内しますね」


 僕は荷物を持ったまま水沢先生の学校案内を開始した。玄関か教室に置いてきてもよかったんだけど、下校の時間に教育実習生に出くわしたらめんどくさい。


「う、うん、よろしくね。岩崎君」


 反応を返す事なく歩き出す僕とその後ろを無言で付いてくる水沢先生。1階には1年生の教室が並んでいるだけなので特に案内するところもないが、一応は案内しておくか。後であれ知らない、これ知らないじゃ困るし


「この1階は主に1年生の教室があります。奥からA組、B組、C組となっています。今の1年生のクラスはこの3クラスです。ここまでいいですか?」

「うん」

「で、A組を少し行った先に食堂があります」


 僕と水沢先生は歩きながら食堂を目指す。食堂に紹介したいメニューがあるか?と聞かれたら特別そんなメニューはない。ただの気まぐれだ


「じゃあ、次は今歩いてきたのとは逆方向に歩きましょうか」

「うん、よろしくね」


 慣れてきたのかオドオドしているのは少しなくなっていた。僕としてもオドオドされるよりは普通に接してもらった方がマシだ


「ここが体育館です。まぁ、今は授業中だから中には入れませんし、僕は入りたくないんですが」

「うん、授業中じゃ仕方ないね。次行こうか?」


 この人は授業中だから入れないというところは聞いていても僕は入りたくないという部分は聞いていなかったようだ。僕としてはそっちの方が都合がいい


「次って言われても2階と3階は体育館と食堂がない以外は1階と大して変わりませんし、特別棟は今は使えませんし、案内するところなんてもうありませんよ?」


 面倒になったとかじゃなく、2階は水沢先生なら毎日来るだろうから必要ないし、3階は水沢先生には教科担当とホームルーム担当が2学年の担当という関係上多分行く事はない。特別棟は老朽化が進み危険だという事で現在は立ち入り禁止だ。結論、案内するところがない


「まだ岩崎君のお気に入りの場所に行ってないでしょ?」


 僕のお気に入りの場所。つまり、業者が残して行った小屋の事だ。だが、あそこは学校内じゃない。敷地内にはあるが、学校の中ではないので案内する必要はない


「あそこは学校の中じゃないので案内する必要はないと思いますが?」


 それに、授業見学をそっちのけで入り浸られても困る。


「ううん、私には必要だよ。岩崎君は私のサポートを命じられたよね?私が助けてほしい時に居場所がわからないと困るし」


 僕は何でも屋じゃなければお助けマンでもない。小谷先生に言われたからって僕を当てにされても困る


「当てにされても困ります」


 冷たく突き放して諦めてもらおうとする。頼まれたからって何でもする、何でもできると思ったら大間違いだ


「え~、行きたい~」


 剥れる水沢先生を見て思う事は、この人は大きな子供だ。それだけだった。


「そんなに行きたいんですか?」


 経験上これは首を縦に振るまでごねるパターンだ。ならば、そうなる前にこちらから本当に行きたいかを聞いておこう


「うん!」


 元気に返事をする水沢先生。さっきまでオドオドしていたかと思えば今はこれだ。身体は大人でも精神は子供なんだな。


「わかりましたよ。案内しますよ」


 小谷先生みたいに心をへし折ったら号泣するかもしれない。そうなったら恐らく面倒な事になる。ならば、そうならないうちに案内してしまった方がいい


「やった!」


 どこか嬉しそうな水沢先生。そんなにあの小屋に行きたかったのか?


「で、ここが僕が教育実習生と関わりたくないが為に朝逃げ込んだ小屋です」


 小屋に着いた僕はわざと教育実習生に関わりたくないが為に逃げ込んだと説明した


「うん、知ってる。朝に小谷先生が言ってた!」


 聞いてたのならわざわざ案内させないでほしい。


「そうですか」


 前もって聞いていると言われれば僕はそうですかしか言えなかった。


「それにしても、ここって居心地いいね!」

「まぁ、暑ければエアコンがありますし、寒かったらストーブを点ければいい。眠たくなったら布団もありますし、必要な物は持ち込めばいいですしね」

「うん!」


 急に元気になった水沢先生を見てこの人は年齢よりも精神が子供なんだと思う。


「岩崎君」

「何ですか?」

「これからよろしくね!」


 僕は水沢先生の今日1番の笑顔を見て、これから2週間の間、この先生のサポートをするんだという事を思い知らされた。こうして、水沢先生の教育実習初日と僕の1日が過ぎて行った。家に帰ってから?そんなの決まっている。夕飯を食べずに寝たさ。

今回は光晃の早退が阻止されるところからのスタートでした

これにて1日目終了です。

次回からは専門用語が少しずつ出てきます。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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