僕は教師に哀れみを覚える
今回は体育教師に説明を求めるところからのスタートです
今回からは1日おきの更新になります
では、どうぞ
「説明してもらおうか?アンタは保護者からクレームが来たらなんて言うつもりだ?」
僕は無意味に絡んできた体育教師に尋ねた。説明なんてできるわけがない。学校において教師である自分が偉いと思っているバカに保護者から自分のせいでクレームが来た時に上手い説明ができるくらいなら生徒に絡んだりしないし、同僚からも嫌われたりしない。
「そ、それは生徒を指導するつもりだったと……」
へぇ、教室にいなかった理由を聞きもせずに指導ね……警察にもいるけど、こういう自分の杓子定規でものを言われたら困るんだよ。特に他人を指導したり、対人関係のトラブルを解決するような職業の人間がこれだと。こういう人間は教師や警察官じゃなくて別の職業に就いた方がいいと思う。まぁ、できる仕事があればの話だけど
「いやいや、アンタの日頃の行いを知っている人間からしてみればアンタのしている事は指導じゃなくて、ただの生徒いびりだよ」
生徒を指導するならもう少し考えてほしいものだと思うけど、このバカにいくら言っても無駄になる。僕は言っても無駄な人間に懇切丁寧にアレがダメ、コレがダメと1から言うほど気が長い方ではないし、この教師にそれを言ってやる義理も義務もない。
「俺の指導のどこが生徒いびりなんだ!言ってみろ!」
この教師は精神年齢が低すぎる……大声で怒鳴り散らせば生徒が何でも従うと思ってるのか?僕も人の事を言えた立場じゃないけど、コイツは一生彼女できないタイプだね
「どこがって……全部説明すると長くなるんで簡単に言いますけど、アンタの行い全部だよ」
1つ1つ説明していると日が暮れてしまうので簡単に説明した。僕の狙いはこの教師の自尊心を粉々にする事じゃない。こんな奴の自尊心を破壊しても何も面白くない。せめて理沙みたいに援助交際でもして自分の人生が終わるスレスレの運命を僕が握っているなら脅し甲斐があるけど、こんな虫以下の存在に興味ない
「俺は何も間違った事はしていない!俺のしている事はいつも正しいんだ!!いい加減な事を言うな!!」
生徒がいる前で何を言ってるんだ?秀義を始めとする周りの生徒も引いてるし。コイツは教育実習生の時もこんな感じだったんだろうか?水沢先生も教師を目指して教育実習で努力しているけど、いつかはこんな風になってしまうんだろうか?
「自分の過去の行いを振り返る事ができない教師……哀れだな」
僕は怒りを通り越して哀れみさえ覚える。バカだバカだと思っていたけど、ここまでくると本当に哀れだ。コイツが女だったらヒステリックな奴程度で済ましたんだけどなぁ……
「き、貴様……教師をバカにしているのか!!」
僕が教師をバカにしているのは今に始まった事じゃない。元々教師は嫌いだし、教育実習生も同じくらい嫌いだから別にコイツが何を言おうと関係ない
「僕は元々教師も教育実習生も嫌いだからバカにするも何もない」
僕は教師や教育実習生にはいつもこんな感じだと思う。やはりと言うべきか、周囲の生徒は“あれヤバくない?”とか、“そろそろ止めた方がよくないか?”とか言っている。
「ならその教師嫌いを徹底的に治してやる!来い!」
バカは僕の腕を掴もうとズンズンと歩いて僕の方へ向かってくる。教師が嫌いな生徒も世の中にはいる。考え方は人それぞれだと言うのに……これじゃ指導というよりは洗脳に近い何かを感じるのは僕だけかな?
「嫌ですよ。教師嫌いを治すんじゃなくて、嫌いな教師とどうやったら上手く付き合っていくかを考えるべきなんじゃないのか?ってこれ前にも言いませんでしたか?あ、生徒の言葉を覚えている程アンタは頭よくないか」
全員とは言わないが、教師ってみんなこんな無能ばかりなのかな?そもそも、コイツはどうやって教育実習に合格し、教員採用試験を通過したんだろう?
「き、貴様ー!」
口がダメなら暴力って……子供かよ。周囲の女子は悲鳴を上げてるし、男子も驚きの表情が見える。はぁ……。うるさいな……
「口がダメなら暴力に訴えるのは止めた方がいい」
「グハッ……」
僕に向かってきた体育教師の腹を殴る。体育教師は腹を押さえて蹲った。体育担当である事と身体の強さは別物だ。コイツは自分の腕力にものを言わせて突撃してきた。だけど、僕は応急救護の異物除去の方法を応用しただけだ
「岩崎!大丈夫か!?」
生徒の誰かが呼んだのか真理姉さんがやって来た。毎回生徒から呼び出されてくるのは真理姉さんなのかと思うとこの人は暇なんじゃないか?という錯覚に陥ってしまいそうだけど、実際は暇じゃなかったりもする
「僕は平気ですよ?こっちのバカ教師の鳩尾に一発入れてましたから」
僕は腹部を抑えて蹲っている体育教師を指差した。内臓が破裂するほど強く殴ってはいないけど、動けなくなる程度には強くした。じゃないと今度は僕が謂れのない事で生徒指導室に連行されてしまう
「そ、そうか……。でも教師に手を上げるだなんて……」
「僕はただ殴り掛かってくる相手の腹部に拳が入るようにしただけで殴ってはいませんから」
屁理屈かもしれないけど、ここは正当防衛を主張しておいた方がいい。ま、こんな奴に自分から殴り掛かるなんて時間と労力の無駄になる事もしないんだけどね。
「し、しかし……」
何かを言おうとしている真理姉さん。教師としては教師に手を上げた生徒を指導するべきなんだろうという事は僕でも解る。だけど、教師である真理姉さんに文句は言わせない
「別に小谷先生が僕を指導するのは勝手ですけど、そんな事されたら僕はネットに北南高校に勤務する教師に暴行されそうになったってそこで倒れている体育教師の写真付きで流しますよ?それでいいならそのバカのしようとした事を正当化して僕を指導してください。ま、この学校の教師が暴行しそうになった事が世間に知られて困るのは僕じゃなくて3年の先輩方と教師陣だけなので僕には関係ありませんけど」
蹲っている体育教師がした事は進路を控えている3年生や現在勤務している教師に多大な迷惑が掛かる行為であると同時に学校の名誉にも関わる行為だ。教師が生徒に未遂とはいえ暴行行為を行ったんだ。こんな事が世間に知れたら来年度以降の入学希望者はゼロとまではいかなくても今年度よりは少なくなる事が容易に予想できる
「……私は教頭と校長にここであった事を報告しに行く」
真理姉さんは報告しに行くと言って教室を出て行った。そうそう、最初から僕の指導なんて無謀な事をしようとせずに黙っていればよかったのに。教師ってのは自分から傷つきに来るものなのかな?
「そうですか。あ、ところで僕に絡んできた数学教師はどうなりましたか?」
真理姉さんの去り際に数学教師の処遇だけ聞いておくことにした。別に興味もないけど、僕が排除した人間の末路くらい聞いておくのも悪くないと思う。まぁ、ニュースで世の中の事を知るくらいの軽い気持ちで聞いたから心を痛める事なんてないんだけどね
「免職になったよ。調べたら学校の名誉に関わる事をけっこうしていたらしいから」
免職か……学校の名誉に関わる事ってスーパーで僕に絡んできた以外にも結構してきたんだな。あの数学教師。僕の中でもウザい教師ランキング上位にいたからなぁ……
「そうですか……興味も関心もありませんが、とりあえず礼だけ言っておきますね」
僕が礼を言うと真理姉さんは無言のまま去っていった。これで不祥事を起こした教師は2人目になるな……このままいけば女性教員はともかく、男性教員は全員クビか余所へ飛ばされるんじゃないかな?女性教員でも危ないのはチラホラいるけどね
「光晃!」
「岩崎!」
秀義と理沙が僕に駆け寄ってくる。そういえばここって教室だったけ?教師があまりにもバカ過ぎてここが教室だって事をすっかり忘れていた
「どうしたの2人とも?」
「どうしたの?じゃねぇよ!お前、大丈夫なのかよ!?」
秀義の言う大丈夫が何を意味しているかがわからない。ケガがないか的な意味で大丈夫なのか、教師を殴って停学にならないか的な意味で大丈夫なのか……停学になったらなったで本気で海外にいる両親の元へ行くからいいけどね
「別に身体は何ともないし、停学になったらなったでそのまま学校を辞めるから何も問題はない」
「そ、そうか……」
秀義は顔が引きつってる。大方僕が教師を殴った事にドン引きしているんだろうと思う。
「岩崎、アンタよくあのバカ教師を黙らせられたよね?」
理沙は感心したとでも言いたげな表情をしていた。黙らせる事自体は大した事じゃないけど、理沙にとってはすごい事らしい
「別に。あの手の教師は自尊心を傷つけられたら簡単に熱くなるし、単純に殴り掛かってくるから意外と対処は簡単だからね」
秀義もだけど、殴り掛かってくる人間って言うのはボクサーとか格闘家じゃない限りは動きが単調だから読みやすいし、対処しやすい。
「そうなんだ……私、今ので岩崎に惚れそう……」
何をバカな事を言っているんだか。水沢先生もそうだけど、理沙に惚れられても迷惑なだけだ。水沢先生の事は約束だから真剣に考えるけどね
「止めてくれ。理沙に限らず好意を寄せられても迷惑なだけだから」
口に出しては言わないけど、理沙みたいに過去に援助交際してた奴と付き合うなんて御免こうむる。面倒に巻き込まれたら嫌だし、病気をもらっても困る。僕にとって理沙と付き合うのは百害あって一利なし惚れられて考えるだけ時間の無駄というものだ
「岩崎……」
悲しそうな目で僕を見る理沙だけど、別にどうでもいい。それより、今は水沢先生を僕自身がどう思っているかを考える方が先決だ。理沙が惚れるって言うのは冗談だと思うし
今回は体育教師に説明するところからのスタートでした
教員っていろいろと大変な仕事なんだなぁと思う
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




