僕は授業に集中できない
今回は光晃が葵衣を意識し過ぎて授業に集中できなくなる話です
本人から言われても信じられなかった光晃ですが、第三者から言われたら授業に集中できなくなるほど意識しまくる光晃
では、どうぞ
今日の僕はどうかしている。秀義と話をする。それ自体は珍しい事でも何でもない。だけど、秀義と世間で言う恋バナをするなんて……
「水沢先生が僕に惚れてる……か」
水沢先生本人から僕が好きだという事は散々聞かされている。もちろん、本人から聞いた時は教育実習生の戯言だと思っていた。だけど、水沢先生以外の人から聞かされてようやくそうなんだという実感が生まれる
「ダメだ。内容が全く頭に入って来ない」
いつも退屈だと思っている授業だけど、秀義に水沢先生が僕に惚れていると言われたせいもあってか授業の内容がいつもの倍以上に頭に入って来ない。入って来ないならどうするか?答えは簡単。サボる
「先生!」
「どうした?岩崎?」
「具合が悪いので保健室に行ってきます」
「そうか、行ってこい」
先生の許可を取って僕は保健室に行く。退屈な授業を受けているよりもこれからどうするかを考えていた方が有意義だ。
「さて、サボるか」
教室から出た僕は保健室に行く事なくいつものサボりスポットへ。保健室?行くわけないじゃん。養護教諭も教師や教育実習生と同じで僕にとっては信用できない
「やっぱりここが1番落ち着く。体調が悪くなったら保健室じゃなくてここへ来るべきだな。僕は」
それにしても、水沢先生がね……てっきり冗談かと思ってたけど、第三者である秀義が見てもそう見えるって事は案外本気だったりするのかな?
「はぁ、こんな事ならさっさと海外逃亡しとけばよかった」
ここに来て苦しむ事になるなら止められても海外逃亡しとけばよかった。僕は心の底からそう思う。
「光晃君、そんな事させると思う?」
ドアが開き、水沢先生が入ってきた。この人は本当にいつもタイミングよく僕の独り言を聞いてると思う
「水沢先生……」
「ふぎゃっ!」
ただ、何もないところで転ぶという欠点さえなければなぁ……それもここ数日で改善されたと思っていたけど、そうじゃなかったらしい。ただ、僕が家出したりといろいろあってドジなところを見る機会が減っただけか……
「大丈夫ですか?水沢先生」
「うん、大丈夫だよ」
先生に手を差し伸べ、それを先生が取る。そもそも、この人はここへ何しに来たんだろう?授業見学はいいのかな?
「先生はここへ何しに来たんですか?授業見学は?」
「え?もう授業終ったよ?」
「え?」
「ほら、もう授業終ってるでしょ?」
水沢先生から見せられた時計で時間を確認したら授業は終わってた。どうやら僕が教室から出た時には授業の半分が終了し、ここへ来た時には授業終りギリギリだった。そして、僕が独り言を言っている間に授業が終了していたわけか……
「本当だ……終わってる。それにしても、水沢先生はよくここがわかりましたね」
僕は教室を出る時に保健室に行くと言って教室を出た。だけど、実際にいる場所はサボりスポット。保健室じゃない。
「光晃君、何かあるとすぐここに来るじゃない?」
僕は何も言い返せなかった。その通りだったから。僕は何かあると必ずここに来る。家よりもここの方が落ち着くから仕方ない
「まぁ、僕が唯一落ち着ける場所ですからね」
「そっか……」
「ええ、家じゃ真理姉さんがいますし、学校では真理姉さんの他に脳みそ空っぽの教師もいます。落ち着ける場所がここしかないんですよ」
「そっか……でも、私の隣りとかでもダメかな?」
いきなり何を言い出すんだ?この人は?どうして自分の隣りじゃダメとか言い出すんだ?
「さぁ?それは先生の実習が終わった時に答えますよ」
「うん……」
前にも言ったはずなんだけどな……結末はどうであれ、この話は水沢先生の実習が終わった後にするって
「次の授業始まりますから行きましょうか」
「うん!」
本当に今日の僕はらしくない。秀義と恋バナをして水沢先生と一緒に学校に戻る。本当にどうしたんだか……
「お、光晃!」
教室に戻った僕は秀義に絡まれた。今日の僕はどこか変だと思っていたけど、変なのは僕だけじゃない。僕の周りも変だ。それともこれが普通なのかな?
「何?秀義?」
「お前、保健室に行ってなかっただろ?」
「そうだけど、それがどうかした?」
水沢先生に続いて秀義にも見破られていた。どうなっているんだ?
「いや、水沢先生に光晃がどこに行ったか聞かれたから例の場所に行きました。って言ったけど、水沢先生と戻ってきたところを見ると本当にサボりスポットに行ってたとは思わなかった!」
なるほど、水沢先生に見破られ、秀義にも見破られたと思っていたけど、実は逆だったらしい。秀義が僕の居場所を見破って水沢先生に教えた。秀義が最初で水沢先生が後だったか……
「水沢先生が来たのは秀義の差し金だったか……」
「差し金だなんて人聞きが悪いな!俺はただ、光晃が行きそうな場所を教えただけだぞ!」
「あ、そう」
僕は秀義との会話を止め、次の授業の準備に取り掛かる。今は1人で考えるより退屈でも授業を受けていた方が気晴らしになる。普通は授業の気晴らしに何かをする方が正しいけど、僕の場合は逆だ
「~で、あるからして」
ダメだ……授業に全然集中できない。水沢先生を意識し過ぎなのか、授業に全く集中できていない。
「このままじゃダメになる気がする……」
実習が終わったら水沢先生の恋バナの続きをすると僕は言ったけど、僕の方が先に参ってしまいそうだ。そもそも、僕は恋なんてした事ない。初恋もまだだ。そんな僕が女性から好意を寄せられ、表では普段と変わらずに立ち振る舞えていても内心は意識しまくりだ
「はぁ~、こんなはずじゃなかったのに……」
教育実習生が来たから僕は教育実習生に関わらないように授業をサボった。しかし、サボった結果が関わりたくない教育実習生のサポート。ま、水沢先生が自分で指導案とか教材研究を終わらせたせいで僕ができるサポートと言えば研究授業の時に授業が止まったら何とかするくらいしかできないけど
「ん?もう終わりか。今のところは復習しておくように」
チャイムが鳴り、授業が終わる。今の僕はこの授業が何時間目かすらもわかっていない。この授業が終われば昼休みなのか?それとも、あと1時間あるのか?それすらわかっていない。
「意識し過ぎなのかな?」
意識し過ぎはあるかもしれない。秀義に言われてから僕はやたらと水沢先生を意識しているけど、僕に好意を持っているなんて本人から聞かされていた事じゃないか。今更誰に言われようと意識する必要はない
「光晃!昼飯にしようぜ!」
今日はやたらと秀義に絡まれる。いつもは僕がコイツに見つからないように先に教室を出て行くけど、今日はそれもままならないらしい。
「じゃあ、僕のサボりスポットでいい?」
「おう!」
僕と秀義はサボりスポットへ弁当と飲み物を持って向かう。コイツはどんな目的で僕に話し掛けてきているんだ?
「で、秀義は何のつもりで僕に絡んできているわけ?」
「ん?ああ、真理さんから今日言われたんだけど、水沢先生何か元気ないみたいだから光晃に言っておいてくれって」
「あ、そう。で、それだけじゃないんでしょ?」
どうしてコイツが真理姉さんから伝言されるのかはわからないからいいとして、秀義が言いたいのはこれだけじゃないはず
「まぁな。朝話した素行不良の生徒なんだが……」
「ああ、そんな奴がいるって言ってたね。それが?」
「その素行不良の生徒が水沢先生の身内らしいんだ」
「へぇ~、そうなんだ。水沢先生の身内って事はこの学校の生徒?」
秀義は真理姉さんから聞いたであろう情報を僕に話した。だけど、真理姉さんはその情報を誰から聞いた?担任は噂については今調べている最中だって言ってたし
「ああ、どうやらこの学校の3年らしい」
3年って事は先輩か……だけど、何か引っかかる。自分の姉もしくは従姉が自分の学校に教育実習に来るって知ってて素行不良なんてするか?僕じゃあるまいし。
「先輩じゃん。でもさ、自分の姉もしくは従姉が教育実習に来るの知ってて素行不良なんてするかな?しかも、3年なんだから受験や就職に関わってくるし」
「それもそうだよな?変だなぁ……真理さんは水沢先生に相談されたって言ってたし」
あのドジな先生の事だから何かの勘違いでしょ?深く考えるだけ時間の無駄だ。ドジっ娘の勘違いでも本当の事でも僕が調べる義理も義務もない。こういうのは秀義に任せよう
「気になるなら秀義が直接水沢先生の妹だか従姉だかに確認したら?」
「そうだな!ちょっと行ってくる!」
秀義は残りの弁当を平らげ早々に出て行ってしまった。僕は教師や教育実習生に関わりたくない。もっと言うならその身内にも関わりたくない
「教育実習生の周辺を嗅ぎまわるのは1人でやってくれ」
僕は弁当を食べ終わり、食後の睡眠タイムに入った。自分の身内も教師だけど、正直、教師が身内にいても何もいい事なんてない。逆にいてくれない方が楽な事もあるくらいだ。そんな教師の卵である教育実習生の身内の世話なんて誰がするか
今回は光晃が葵衣を意識し過ぎて授業に集中できなくなる話でした
本人から好意を寄せている事を言われて信じられない光晃でしたが、第三者から言われると意識しまくる。普通は逆じゃないかな?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




