表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/214

僕の嫌な予感は当たる(前編)

今回は現代に戻り葵衣達と買い物をする話です

葵衣と優奈お久しぶり!

では、どうぞ

 随分と長い間昔の事を思い出していたような気がする……。小学校時代から高校1年までの出来事を思い出せる範囲で思い出していた。そんな気がしなくもない。ただ、僕にとってその思い出が大事なのかと聞かれたら大事だ……とは言い切れない


 なんて湿っぽい話は止めて、今日は日曜日。学校もなければ仕事もない。言わば僕にとっては1日中家に引きこもっていても文句は言われない日。なんだけど……


「光晃!出かけよっ!」


 彼女である水沢葵衣によって僕の平穏は崩された


「嫌だ。今日は日曜なんだから家で1日中ゴロゴロするの」


 せっかくの休日に外に出る意味が全く理解できない。いつもの僕はそれでよかったんだけど、今日に限って嫌な予感がする。例えば小学校時代に親しくしていた宮村さんと遭遇したり、中学時代に世話を焼いた持田さんと遭遇したり、その2人が鉢合わせし、僕と葵衣がデートしているところを見られて修羅場に。ついでにそこに二枝姉妹辺りが乱入して修羅場が悪化する。そんな予感がする


「ええっ~!いいお天気なんだから出かけようよぉ~!」


 子供の様に駄々を捏ねる葵衣。確かに葵衣の言う通り外はいい天気だ。布団を干したらよく乾きそうではある。ただ、嫌な予感がするのもまた事実。


「嫌な予感がするから嫌だ」


 家にいたいからとか、外へ出たくないからというのはただの引きこもりだ。それに、理由や根拠を言わずに相手を否定するのは教師と何ら変わらない。だから僕は外に出たくない理由を素直に話してみたわけなんだけど、これを葵衣はどう受け取るか……


「嫌な予感って具体的にどんなの?」

「具体的にどんなのって言われても恐ろしい女難が待ってそうとしか言えない」


 僕は他人から好意を寄せられるタイプの人間じゃないのは重々承知している。だから自分が男性からも女性からも好かれているとは全く思わない。だから女難が待っているだなんて事はあり得ないんだけど、何て言うか僕の本能がそう言ってる気がしてならい


「いろいろと聞きたい事はあるけど、そんなのただの予感でしょ!ほら!ウダウダ言わないで出かけようよ!」


 葵衣のこの一言により僕は強制的に着替えさせられ、出かける事となった。んで、その面子が……


「いや~!お買い物なんて久しぶりだよ」

「そうですね、私もしばらく外に出てませんでしたから楽しみです」

「でしょ?でしょ?それなのに光晃ったら女難が待ってる気がするから外へ出たくないだなんて言ったんですよ?」


 優奈、真理姉さん、葵衣だ。着替え終わった僕がリビングに出るとすでに出かける準備万端の優奈と真理姉さんが待ち構えていたところを見ると僕の参加は強制だったらしい。僕の前を歩く彼女達を見ると穏やかな気分にはなれず、嫌な予感しかしない



 途中で逃げ出そうとして捕まり右側を葵衣が、左側を優奈が、後ろに真理姉さんと女性3人に包囲されはしたものの電車を乗り継ぎ無事にショッピングモールまでやって来た。それはいいんだけど、問題は……


「どうしてさっきから葵衣達の買い物に付き合わされてんの?」


 着いて早々女性陣の買い物に付き合わされているという事。嫌なら断れと思う人に一応、説明すると、ショッピングモールに着いた時に僕は書店に行くと言った。だけど、女性3人にそれを却下され、引きずられる形で婦人服売り場に。その後も女性用下着売り場や化粧品売り場と振り回された


「女難が待ってるっていうの間違ってなかったじゃん……」


 目の前にはキャイキャイとはしゃぐ女性陣。僕がいるのはアクセサリーショップ。もちろん女性用の


「こんなんだったら家にいた方がマシだったよ……。にしても喉が渇いたな……」


 葵衣達は自分達の買い物に夢中だからいいとして、待たされる方は退屈でしかない。ただ待っているだけで喉が渇く


「3人共携帯持ってるから離れても別にいいか」


 自己判断により連絡手段があるから離れても大丈夫だと判断した僕は葵衣達にバレないようコッソリとハンバーガーショップへ向かった。全ての女性がそうだとは言わないけど、葵衣達の買い物は長すぎる



 ハンバーガーショップへ来た僕は不思議と小腹が空いた。何でだろう?飲食店に入るとお腹が空くのは


「すみません、ハンバーガーセット1つ」

「ハンバーガーセットお1つですね。お飲み物は何になさいますか?」

「オレンジジュースで」

「かしこまりました。お会計560円です」

「はい、じゃあ、これで」

「560円ちょうどお預かりします。右へズレてお待ちください」


 右側へズレた僕は自分の注文した品を待つ。この店は店員の手間を省くためなのか、持ち帰り用と店内用のメニューが別々にある。どっちも同じだから分ける必要がどこにあるのかは疑問だけど、店には店の方針があるから僕は口出ししないけど


「お待たせいたしました、ハンバーガーセットです」

「はい」


 注文した品を受け取った僕はトレーを持って空いてる席を探す。今は昼食には少し早い時間だとはいえ、店内はそれなりに混んではいる。空いてる席を探して探せない事はないけど、それでも手間取ってしまう


「これじゃあ葵衣達の買い物の方が先に終わりそうだ……」


 混んではいなかったものの、空席を探すのには手間が掛かりそうではあった。それこそ葵衣達の買い物の方が先に終わってしまうのではないかと不安になる程度には


「まぁ、葵衣達の買い物が先に終わったら終わったでそれはそれでいいんだけどね」


 葵衣達の買い物が先に終わったのなら居場所を伝えて合流すればいいだけの話だから僕が気にする事は何もない。そんな時、ちょうどよく空席を発見した僕は席を確保。特に話す相手もおらず、さらに言うと葵衣達に黙って来たので一刻も早く戻るため、僕はハンバーガーセットを手早く食べた


 喉の渇きと空腹を満たした僕はハンバーガーショップを出て葵衣達のいるアクセサリーショップへと戻ろうとした。その道中────


「あれ?もしかして岩崎君?」


 見知らぬ女性に声を掛けられた


「は、はあ、そうですけど、貴女は?」


 北南高校を退学し、別の学校へ転入を果たした僕だけど、秀義がいなくなれば僕に好き好んで絡んでくる人なんて昔からの知り合いか物好きしかいない。端的に言えば現在僕は学校でボッチだ。そんな僕に声を掛けてきたこの人は誰だろう?


「え?覚えてない?小学校の頃あんなに一緒にいたのに?」


 小学校の頃に一緒にいた女子と言われると完全に1人に絞らる。だって、秀義以外の交友なんてゼロだったし


「もしかして宮村さん?」

「うん、そうだよ。久しぶりだね、岩崎君」

「うん、久しぶり」


 疚しい事をしたわけじゃないのに何か後ろめたい


「小学校卒業以来だね」

「そうだね。中学からは別々だったから最後にあったのは小学校の卒業式が最後だったね」

「うん。ところで岩崎君は今1人?」

「そうだけど?それがどうかした?」


 本当は葵衣達と一緒に来ているんだけど、その葵衣達は現在買い物中。彼女だとは言っても宮村さんに話すも特になく、僕は()()1人なのは変わりない。宮村さんにも『今1人?』って聞かれたから僕の答えは間違っていない


「久しぶりに会ったからお茶でもどうかなと思ったんだけど、いいかな?」


 多分、葵衣達の買い物はまだ終わってない。僕が戻ったところで終わらないだろう。そう判断した僕は……


「うん、いいよ。僕も宮村さんとは久しぶりに話してみたかったから」


 宮村さんからの誘いを承諾


「やった!じゃあ、行こっか!おいしいケーキ屋さん知ってるんだ!」

「うん」


 僕は宮村さんの後についていく形でケーキ屋に向かう事に



 ケーキ屋の前に着いて僕は後悔した。別にケーキは嫌いじゃない。問題なのはそのケーキ屋の前に立てられている看板だった


『休日限定!カップルでご来店の方!ケーキ半額フェア!』


 昔の知り合いに再会し、少しお茶するだけのつもりで来た僕にとっては後に面倒事が大量に発生しそうな予感しかしない悪魔の立て看板。別に半額になるのであればその場だけカップルのフリをするのは全く構わない。キスとかがなければ


「あの、宮村さん?念のために確認するけど、宮村さんの言うおいしいケーキ屋さんってもしかして……」

「うん!ここの事だよ」

「この休日限定のケーキ半額フェアってのは利用しないよね?」

「するよ!当たり前じゃん!」


 もの凄くいい笑顔の宮村さんを見ると小学校の頃と変わらないところに安心感を覚える。しかし、同時に嫌な予感しかしないのもまた事実


「嘘でしょ?」


 嘘だと言ってほしい。僕はそう願いながら最後確認をした


「本当だよ!カップルとして入ればケーキ代安く済むし」


 最後の抵抗をしてみたものの、アッサリ撃沈。うん、こうなるって知ってたよ


「まぁ、安く済むなら僕は構わないんだけどね。それより、早く入ろう」


 葵衣達に見つかったら超面倒な事になる。それだけは避けたい


「そうだね、込まないうちに入ろっか」


 葵衣達に見つかりませんように僕はそれだけを祈りながらケーキ屋への歩を進めようと────


「あ、岩崎君だ!」


 出来なかった。僕に声を掛けてきた葵衣達でも宮村さんでもない女性の声。そう、その声の主は……


「持田さん……」


 そう、中学時代に行動を共にする事が多かった女子、持田彩菜さんだ


「うん、久しぶり!岩崎君!」

「久しぶり。最後に会ったのは中学の卒業式だよね?」

「うん!」


 僕は中学時代、卒業式には出た。ただ、その後の帰りのHRには出てないけど


「元気そうで何よりだよ」


 宮村さんも持田さんも僕に声を掛けてきた時は1人だった。だからと言ってここに1人で来ているとは限らない。だから僕は『1人で来てるの?』だなんて安易に聞けなかった


「うん、元気だったよ。ところで隣にいる子は?」


 持田さんの言う隣にいる子とは宮村さんの事なんだけど、持田さんの目つきが鋭くなってるのは何でだろう?


「小学校で一緒だった宮村さん」

「どうも。岩崎君、その子は?」


 宮村さんの目つきも持田さん同様に鋭くなっているのは何で?


「中学で一緒だった持田さん」

「初めまして」

「「…………………」」


 2人共初対面のはずなのに何で親の仇を見るような目で見つめ合ってるの?


「嫌な予感が的中したか……」


 家を出る前、僕は嫌な予感がした。その時は具体的にこうって説明出来なかったけど、今なら出来る。この事だったんだ……


「持田さんだっけ、岩崎君とはどういう関係?」

「中学の時に行動を共にした仲ですけど?そういう宮村さんこそ岩崎君とはどんな関係なんですか?」

「小学校の時に一緒にいた仲だけど?」

「「…………………」」


 嫌な予感が現実のものとなり、悩んでいる僕を余所に女のバトルを始めている宮村さんと持田さん。頼むから店の前でそんな事しないでくれないかな?なんて思っていると……


「光晃!こんなところにいた!」

「勝手にどこかに行ったら心配するでしょ?一言くらい言ってくれなきゃ」

「優奈さんの言う通りだよ、光晃」


 僕を探していたであろう葵衣、優奈、真理姉さんが現れた。厄介な事にこの場には小・中・高と僕が関わってきた女性が勢ぞろいしてしまった……今日は厄日だ



今回は現代に戻り葵衣達と買い物をする話でした

葵衣と優奈は多分、半年ぶりくらいの登場になるのかな?今までずっと過去編だったんで。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ