【過去編90】中学を卒業した後の話と高校に入学した後の話
今回はサッグリと中学を卒業した後の話と高校に入学した後の話です
中学を卒業した後の話は本当にザックリと、高校に入学した後の話もサボりスポットをどうやって見つけたかです
では、どうぞ
本当は春休み中の話をしようと思ったんだけど、中学卒業してから高校入学までの間は休みが長すぎて暇なだけだったから特に話す事はない。中学の卒業式があった日に卒業祝いパーティーをしたけど、それだって真理姉さん、智花さん、二枝とメンバーはいつも通り。内容だって二枝がスキンシップをすれば他の2人が便乗してくるという普段と何も変わらないものだった。そんな話をしても仕方ないから僕が高校入学してから1か月目にまで話は飛ぶ
「高校入学してから1か月……新しい出会いも無きにしも非ず……」
この日、教室に入った僕は自分の現状を振り返っていた。秀義が同じ高校に進学する事は中3の秋に本人から言われ、真理姉さんが北南高校に赴任する事は高校入学の前日に言われた。どちらも対して驚きはしなかったものの、これから大変だろうなと胃が痛くなった事は今でも鮮明に覚えている。で、どうして僕が高校入学後1か月で自分の現状を振り返っているかというと……
「どうしたんだよ、光晃?朝からそんな辛気臭い顔して」
タイミングよく隣の席に座る男・名倉秀義。この男こそが僕が高校入学後1か月で現状を振り返る事になった原因だった
「いや、高校でも中学の時に一緒だった人と同じクラスになるんだろうなとは思っていたけど、実際は秀義が同じクラスで隣の席になったという現実から目を背けていたんだよ」
前に話したと思うけど、僕は9年間秀義と同じクラスだった。高校1年の時も合わせると10年になる。女好きというわけじゃないにしても声がデカいだけの幼馴染(男)と10年も同じクラスだと嫌にもなってくる
「酷くね!?」
「酷くない。10年間も同じクラスになる方がよっぽど酷いよ。それに、高校じゃ秀義だけじゃなく、真理姉さんも一緒だし……僕って呪われてるのかな?」
運が悪い事に1年の時の担任は真理姉さん。学校でも家でも真理姉さんと一緒とか僕にとっては不幸でしかなかった
「いいじゃね~かよ!真理さんと朝から晩まで一緒にいられるとか幸せじゃねーかよぉ」
真理姉さんの事は嫌いじゃない。だからと言って学校に来てまで一緒にいたいかと聞かれれば答えはNOだ。
「身内が家でも学校でも一緒とか嫌だよ。まぁ、全く知らない奴が担任だったらと考えると真理姉さんの方がやりやすいけどさ」
高校入学したときは真理姉さんが僕のクラスの担任だとは全く思わなかった。普通に僕の事を知らない奴が担任だと思ってたから真理姉さんが担任だったのは不幸中の幸い、渡りに船状態だった。それに、入学式前日に僕は真理姉さんに『教育実習生を必要以上に僕に絡ませないように』という約束をさせ、真理姉さんもそれを快く了承してくれた
「なんだよぉ~、光晃も真理さんが担任で喜んでじゃねーかよぉ~、素直じゃね~なぁ~」
真理姉さんが担任でやりやすいとは言ったけど喜んではいない。それを何を思ったのかニヤケ面で僕が喜んでいると勘違いした秀義はこの上なくウザかった
「喜んでないよ。僕の事を全く知らない奴が担任よりかはやりやすいって言ったでしょ?」
この後僕はチャイムが鳴るまで秀義に弄られ続けた。これが僕の高校に入学してから1か月経ったある日の出来事。
そこから話は更に飛んで夏。僕にとっては教育実習生なんて迷惑なものが来る嫌な季節になった。この間に解ったのは北南高校の教師(真理姉さんとこの時は遠目から見るだけだった校長、滅多に話す事がない教頭を除く)は教師絶対主義者が多かったという事だけだった。そんな人間の屑が集まる場所に教育実習生が突撃してきたらどうなるかはこれからのお楽しみ
「夏だ。光晃」
「夏だね」
教育実習生が前のある日。僕と秀義は教室の片隅で男2人、夏という事を確認していた。いや、確認したところで夏だというのは変わりないんだけどさ
「中学の時に来た教育実習生は永山先生以外ほとんどハズレだったが、高校では教育実習生とひと夏の甘く切ない思いでを作りたいと思わないか?」
これまで秀義はアホだアホだと思っていた。そのアホさ加減が高校1年にして更に増したと思わざる得なかった瞬間だった
「思わないよ。僕からしてみれば永山だって立派なハズレくじだよ」
秀義が何を持って永山妹を当たりだと言うのかは理解は出来ない。僕からしてみれば教育実習生には当たりもハズレもない。ただの疫病神でしかないから。
「そうか?永山先生美人だったじゃねーかよ!そんな人をハズレって言うんだからそれ相応の理由があるんだろうな?」
高校生になったこの時、秀義が永山妹の事で切れ気味になる意味はどこにあったんだろう?
「うん。まず永山は僕達が中2の時の担任だった永山の妹であったという事、妹の方の永山は秀義達の前じゃお茶目っぽい実習生だったけど、僕に絡んできた時は姉に謝れとしか言わなかった事、パッと見そんな風には全く見えないけど、実は元ヤンだった事。これが僕の永山妹もハズレだって言う理由だ────って聞いてる?」
永山妹がハズレだった理由を説明してる間に秀義の口から何かが抜け出たみたい。多分、最後の元ヤンの件から。その証拠に──────────────
「永山先生が元ヤン……あの可愛かった永山先生が元ヤン……」
壊れたラジオのように永山妹が元ヤンだと呟いていた。永山妹が中2の時に担任だった永山の家族だという事は秀義にとってどうでもよかったのかな?そこには全く触れなかったけど。
「秀義?おーい、秀義ー?」
「元ヤン……あの可愛かった永山先生が元ヤン……」
秀義は完全に落ちていた。
「秀義?秀義くーん?おーい?」
落ちていた秀義を何とか戻そうと名前を呼び揺すってみたけど、彼は戻ってこなかった。その他に叩いたりもしてみたけど結果は同じ。面倒になった僕は秀義を放置し自分の席に戻った
あの日から1週間が経過し、夏休みまで後1か月となった日。僕にとっては迷惑でしかない存在である教育実習生がやって来る日だ
「おい!光晃!今日から教育実習生の先生が来るらしいぞ!」
いつも以上にハイテンションな秀義が子供のように目を輝かせ僕の席まで来た
「そう。朝からうるさい」
教育実習生が来る事は僕にとって厄災でしかなかったし興味もないので軽く流す事に
「んだよ~つれねぇなぁ~」
教育実習生が来ると知って楽しみを共有しようと報告したのに僕が素っ気なく返したせいか秀義は不満気に
「つれなくて結構。僕にとって教育実習生なんてものはいてもいなくても同じだから」
前にも言ったと思うけど教育実習生なんて所詮は来校者。ただ、高校だと2週間程度入りびたるってだけのね
「相変わらず冷めてるよな、光晃って」
「冷めてるんじゃなくて教育実習生に興味がないだけ。それに、その教育実習生が男性何人、女性何人かってのは把握してないんでしょ?」
僕としては教育実習生の男女比なんてどうでもよかった
「そこまでは聞いてない!しかし!うちのクラスに来る教育実習生は女らしいぞ!」
僕のクラスに来る教育実習生が女。うん、僕にとってはものすっごくどうでもいい
「どうでもいいよ。僕はうちのクラスに来た教育実習生が実習を終えてさっさと大学に帰ってくれとしか思ってないから」
僕が高校生で真理姉さんが教育実習生だったとしたら本人には聞かせられない言葉だったけど、この時に言った事は紛れもなく僕の本心だ
「うわぁ~、お前は教育実習生の先生と特別な関係になりたいとか思わないのかよ」
秀義君?実習生と実習先の生徒が特別な関係になったら後々いろいろと面倒な事になるんですよ?
「思わないよ。大体、実習生と実習先の生徒が特別な関係になるだなんてダメでしょ?」
高1の時は葵衣と付き合ってなかったからこれを言ってもセーフ。今となっちゃ強く言えない
「背徳感があるからいいんじゃねーか!わかってないよなぁ~光晃は」
この時の秀義は完全にダメな奴だった
「いやいや、背徳感を感じながら恋愛なんてしたくないからね?」
背徳感を感じながら恋愛なんてしたくない。高1の時、僕はそう思っていた。恋愛は自由だと言う輩がいるけど、あくまでもそれは好きになった相手に恋人だったり配偶者がいない場合や相手の立場が結ばれちゃいけない人以外に限定しての事。それ以外だと自由もへったくれもない
「光晃、お前は身分の差や立場を超えて相手と結ばれたいと思わないのか?」
僕がおかしい奴だと言わんばかりの秀義。おかしいのは結ばれちゃいけない相手と恋愛しているお前の方だと突っ込みたくなる
「思わないよ。そう言う秀義こそ普通に同級生や同じ年の女性を好きになって普通に恋愛しようとは思わないわけ?」
「思わん!」
秀義の病気は末期だった。この末期患者は諦めるとして、周囲を見ると僕達の会話はクラスメイト全員が聞いていたらしく、ドン引きしている人、秀義に共感を得た人に分かれていた。僕個人の意見としてはドン引きしていた人が正しく共感していた人は秀義と同じ病気の人だと思う
「あ、そう。勝手にすれば?秀義の恋は草場の影か電信柱の影から応援してるよ」
「おう!頼むぜ!」
僕が背徳感あふれる恋を応援する気なんて全くないと思わないところは素直に褒めたい
「気が向いたら応援するよ。それより、僕はトイレに行ってくるね」
「おう!」
トイレに行くと秀義に言い残し教室を出た僕はこれからどうするかを考えていた
「教育実習生の自己紹介もその後の質問も怠い……どうしよう?いっその事学校抜け出そうかなぁ~?」
義務教育9年間で僕は教育実習生の自己紹介とその後の質問が長くなるのは学習済みだった。そりゃ教育実習生に興味のある人なら有意義な時間になるだろうけど僕みたいに興味も関心もない人間からしてみれば退屈なだけだ
「どこかサボるのに最適な場所とかないものだろうか?」
中学の時は持田さんがいた手前サボりたくてもサボれなかった。だけどこの時は高校生。持田さんもいないからサボりたい放題だった。そんな僕がふとグランドの方に目をやると……
「小屋?」
グランドの裏にポツンと1件小屋があるのが見えた。実際はグラウンドの隅じゃなく、グランドの裏だったんだけど
「入れるか入れないかは別として行ってみる価値はあるか」
僕は教師や他の生徒に見つからないよう細心の注意を払い、校舎から抜け出した。この小屋こそ後に僕がサボりスポットとして使うようになる小屋だとはこの時はまだ知らなかった
今回はサッグリと中学を卒業した後の話と高校に入学した後の話でした
中学卒業後の期間は光晃にとっては退屈なものだと思いザックリと書きました。高校では小学校で言うところの宮村さん、中学校で言うところの持田さんみたいに光晃が世話を焼く(?)生徒を出す予定はありません。だって、2年で葵衣が出ますから
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます




