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【過去編88】僕は初めて永山姉の思いと持田さんがイジメられてた理由を聞く

今回は永山姉の言葉と持田さんがイジメられた理由です

永山姉の言葉を光晃は信じるのか?

では、どうぞ

 永山姉が僕の担任だった頃に思った事がある。それは、コイツは教師に向いてないんじゃないか?という事だ。何もしてないって事はないとは思うけど持田さんの悩みを職員室で笑い飛ばしただけでこれといった動きを見せなかった。僕が持田さんと話しているだけでただ近いとしか言わなかった。僕の知ってる範囲で言えば永山姉は教師に向いていない。そう感じてならなかった。そんな永山姉の話は結論から言うと言い訳ばかりでしかなかった事を最初に言っておこう


「岩崎君、私の話を聞いてもらえないかな?」

「嫌ですよ。アンタは重箱の隅を突くような真似をするだけで本当に重要な問題は職員室で下品な声で笑い飛ばした。そんな人間の話を今更になって聞く気にはなれません」


 昔の事を根に持ちたくはなかった。でも、永山姉が指導において何もしなかったのは事実。そんな人間の話を聞く耳なんて今もそうだけど、当時の僕は持ち合わせていなかった


「…………そうだよね。私は君達に酷い事をしたし、酷い事を言っておいて今更話を聞いてほしいなんて虫が良すぎるよね……」


 永山姉は転勤先の学校を辞めたからなのか、自分のした事が酷い事だと自覚したように見えた。しかし、自分のした事を自覚したからといって僕が永山姉の話を聞く道理がない


「自覚したんですね。まぁ、アンタが転勤先の学校でイジメられた原因は僕が秀義達にバラ撒かせた音声だったり動画だったりだとしても全て自分がした事。そのしっぺ返しが今のアンタの状態だとだけ言っておきますよ」


 中2の時の持田さんもこの時の永山姉もイジメが原因で精神的に追い詰められた。詳しく聞いてないから絶対とは言えない。その上で持田さんと永山姉の違いは唐突にイジメられたか自分が過去にした事が表に出てきてイジメられたかの違い。


「……………ごめんなさい」


 自分の現状に情けなくなったのか、それとも僕や持田さんの顔をまともに見れなかったのか、永山姉は顔を覆って謝罪の言葉を口にし、やがてそのまま声も上げず静かに泣き始めた。


「今更謝ろうと泣こうと僕からしてみれば許すも許さないもないんですけど?たった1回。アンタはそう思ってるかもしれないけど、された方からしてみれば一生心に残る傷になるかもしれない。それを根に持ってると笑いたければ笑えばいいけど」


 した方は忘れていると思う。だって本人からしてみれば何気ないただの遊びのつもりでしたって言う奴も中にはいる。された方からすると場合によっては遊びのつもりでした、軽い気持ちでやりましたというのは言い訳にすらならないだろう。


「ごめんなさい……ぐすっ、ひぐっ、ごめんなさい……ごめんなさい……」


 最初は声も上げずに泣いていた永山姉はダムが決壊したかのように泣き出した。声も涙声だったところを見ると自分のした事を心の底から後悔していたのかもしれない。


「さっきも言ったけど僕は今更謝ろうと泣こうと別にどうでもいいんだよ。それよりもアンタは謝るべき人間が他にいるでしょ?アンタを頼った結果、アンタに裏切られた人がね。その人に謝らなきゃいけないんじゃないの?」


 僕にとって永山姉からの謝罪なんて何の価値もない。僕は永山姉に裏切られてもいなかったし、別に永山姉のせいで迷惑を被ったわけでもなかった。


「ぐすっ、ひぐっ、も、持田さん」


 永山姉は顔を上げ、持田さんの方を見た。話をする時は相手の目か苦手な人は相手の首周りを見ろとはよく言ったものだ。永山姉限定で言えば涙でグチャグチャになった顔をどうにかしてからにしろよって話だったんだけど、この場面でそれを言うのは野暮だ


「は、はい!?」


 涙でグチャグチャになった顔を見せられた上に突然話を振られて若干ビックリしていたのか永山姉に呼ばれた持田さんの声は上ずっていた


「私が貴女の担任だった頃に助けてあげられなくてごめんなさい……貴女が私を頼ってくれた時に職員室で笑い話にしてごめんなさい……」


 永山姉は過去に自分が持田さんにした事を悔やんでいた。それが本心なのか、その場を切り抜ける為の嘘なのか僕には判らない。それを知っているのは永山姉本人のみ


「永山先生…………」


 泣きながら謝る永山姉をただ見つめる持田さんはこの時、何を思ったんだろう?


「許してくれとは言わない……私がした事が原因で持田さんは自ら命を絶とうとした。最悪死んでいてもおかしくなかった……」


 永山姉の言った通り持田さんは自ら命を絶とうとした。偶然早く見つかったからよかったものの、発見が遅れていたら死んでいた。イジメによって精神的に追い込まれたのは事実だったとしてもトドメを刺したのは間違いなく永山姉だ


「先生、私から言う事は何もありません。というか、お母さんと学校に乗り込んだ時に岩崎君が私の代わりに言ってくれましたから……」

「持田さん……」

「ですが、先生のした事は生徒に対しての酷い裏切り行為という事を自覚してください」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 結局持田さんの口から『永山姉を許す』という言葉は出なかった。持田さん的には永山姉を許してしまったらこの人は同じ事を繰り返すんじゃないかという不安が見え隠れしたから永山姉を許さなかったんだろうと思う。だけど、彼女の口から『永山姉を許さない』という言葉も出てなかった。それは暗に『私と同じ思いをする生徒をこれからは生み出すな』そう言っているような気もした



 持田さんが永山姉の謝罪に対し、どっちつかずの答えを出した後、僕も永山姉のした事を無差別にバラ撒けと指示を出した事を謝罪した。持田さんはともかく、僕は恨まれていてもおかしくない。そう思っていたのに永山姉から返ってきた答えは『私の日頃の行いが悪かった。それに、私が持田さんの悩みを影で笑っただけじゃなく、岩崎君を面倒な生徒だと言った事も事実だから』と言っただけで許すとも許さないとも言われず。そんな僕達は永山家からの帰路に就いていた


「教師は自分が本当に追い込まれた時にしか謝らないのか……」


 休日の夕暮れ、僕は永山家から家に帰る途中に教師の謝罪について考えていた


「急にどうしたの?」


 隣を歩いていた持田さんが不思議そうな顔で僕の方を見てきた


「今日永山先生の家に行ってふと思ったんだ。僕が関わってきた教師って永山先生を含めて学校じゃ絶対に謝らなかったなって」


 二枝もそうだけど、僕と関わってきた教師は騒動が終わった後、学校内じゃ絶対に謝ってこなかった。教師がそれをすると負けだと思ったのか、教え子に悪いと思ってなかったのか……今それを直接聞けるとしたら二枝だ。他の教師はどこで何をしているか、そもそも、教師の仕事をしているのかすら不明だ


「そうなんだ……でも、永山先生は謝ってくれたでしょ?」

「そうだね。でも、それだって自分が引きこもりになったから、自分がかつての生徒と同じになったからで問題なく教師を続けていたら多分、謝ってこなかったと思う」


 永山姉は持田さんと同じ状態に陥り学校を辞めたから謝る事が出来た。妹の方はこの日の事を見てどう思ったか、それを知るのは翌日になるんだけど


「そうかな?」

「そうだよ。教師ってのは相手が悪い時は全力で追及してくるけど自分が悪い時は言い訳を並べて逃げるから」

「それを言ったら人間みんなそうだと思うよ?相手が悪い時は全力で追及し、自分が悪い時は言い訳を並べて逃げると私は思うよ」


 夕日に照らされた彼女の顔はとても綺麗だった。ただ、言ってる事が僕そっくりだと感じさせなければ僕は彼女に好意を寄せていたと思う。初恋の人として


「そう。ところで、持田さんはどうしてイジメられてたの?」


 中2の時からこの日まで僕は持田さんがイジメられていた理由を1回も聞いた事がなかった


「イジメられていた理由なんて私にわかるわけないでしょ」

「そうだよね……」


 イジメの被害者にどうしてイジメられていたのかを聞くのは間違っていた。だって、自分がイジメられてた理由がわかれば苦労はしないから


「うん。でも、これかなって心当たりはあるよ」

「えっ……?」


 小学校の頃、僕は自分がイジメられた理由を証拠として集めていた音声を通じて知った。それまでは自分がイジメられる理由なんてわからなかった。だけど、持田さんは違った。理由はわからずとも心当たりはあったみたいだ。だから僕にとっては意外だった


「私がイジメられた理由。多分だけど、小学校の頃、私が当時学年で1番モテてた男子の告白を断ったからだと思う」

「そ、そうだったんだ……」


 持田さんがイジメられていた理由は当時学年で1番モテてた男子の告白を断ったから。これを聞いた限りイジメの原因は女子達からの嫉妬。僕が驚いたのはその嫉妬だけで小学校から中学2年生までイジメを続けてきた連中のしつこさにだった。それも相まってか僕の顔はきっと引きつっていただろう


「多分だけどね。小学校の頃は結構告白とかされたし」


 持田さん、それは遠回しに自分はモテるんだと言ってるのかな?


「僕は持田さんの小学校の頃や中1の頃はあんまりよく知らないからそうなんだとしか言いようがないよ」

「むぅ……ちょっとはヤキモチ妬いてくれてもいいじゃん……」


 プク~と頬を膨らませる持田さん。中学生の僕は初恋すらまだだったから唐突なモテ自慢をされてもそうだったんだとしか言いようがなかった


「そんな事言われましても……」


 この日僕が得た教訓は女性って怖いなって事だった。




 永山姉が泣きながら持田さんに謝った日の翌日の放課後。僕と持田さんは永山妹に会議室へ連れ込まれていた。ホント、この学校の教師は教育実習生に好き勝手させ過ぎでしょとか思いはしたものの、あの後永山家でどんな話し合いが行われたのか気になっていたから別によかったんだけど


「……………何のご用でしょうか?」


 永山妹から会議室へ連れ込まれるのは初めてじゃない僕と持田さんは入るなり定位置の席へ座った。そして、開口一番、心底嫌そうな顔で持田さんは目の前に座る永山妹へ用件を尋ねた


「そんな邪険にしなくてもよくない?アタイは昨日の事をアンタ達に報告しようと思って呼んだだけなんだから」


 生徒からしてみれば教育実習生の家庭事情なんて微塵も興味なんてないから持田さんが嫌そうな顔をするのは当たり前だった


「永山先生の家庭事情なんて私は全く興味ないんですけど?」


 永山姉とは一応、和解した持田さん。妹の方とは……和解どころかちゃんと話した事なんてほんの数回あるかないかだ。それはいいとして、持田さんの強気発言に永山妹の顔が引きつってきて今にもキレそうだった


「まぁまぁ、持田さん。永山先生だって前みたいに姉に謝れって絡んできてるわけじゃないんだから話くらい聞いてあげてもいいんじゃないかな?」


 ここでキレられると面倒だと思った僕は持田さんを抑える事に


「え~……岩崎君だって教育実習生の家庭事情になんて興味ないでしょ?それに報告してくれって頼んでないんだから」

「確かに持田さんの言う通りだけど、話を聞くくらいならいいんじゃないかな?」


 普段の僕なら持田さんの言う事には全面的に同意したけど、この日だけは永山妹の味方をした


「岩崎君がそう言うなら話を聞くだけはするけどさ……」


 誤解のないように言っておくけど持田さんは僕の彼女じゃないよ?本当だよ?


「それならよかった。永山先生、お話聞かせてください」


 持田さんを説得し、僕は永山妹に話をするように促した



今回は永山姉の言葉と持田さんがイジメられてた理由でした

結局光晃は永山姉を許す事も許さない事もしませんでした。ある意味ではこれが永山姉にとって一番の罰なのかもしれません

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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