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【過去編84】僕は永山妹の本性を垣間見る

今回は光晃・持田ペアVS永山妹です

この作品が今回で200話目となりました!

では、どうぞ

 永山妹に付き合いきれないと言った次の日の朝。


「岩崎君、ちょっといいかな?」


 登校して早々、僕は永山妹に絡まれていた。そんな僕を見て持田さんは……


「むっす~」


 むすっとしていた。答えてくれる人がいるなら教えてほしい。中3の僕が何をしたのかを


「またか……」


 持田さんが見ている前で永山妹に声を掛けられ、それを見た持田さんがむすっとする。この光景は僕にとって見慣れたものではあったものの、精神的疲労が全くなかったかと聞かれたら答えはNOだ。慣れてきたとはいえ疲れるものは疲れる


「しつこいと思うかもしれないけど、もう1回だけ私に付き合ってくれないかな?」


 最初の頃とは違いおちょくるような態度ではないにしろ僕が永山妹に付き合ってやる理由なんてなかった


「嫌ですよ。昨日付き合ってあげましたよね?」


 持田さんを始めとするクラスメイト達の前だから控え目に接してくる永山妹。本性を知っている僕としてはこれ以上永山妹の我儘に振り回されるのは勘弁してほしかった


「そ、そうだけど……ね?」


 ね?と言われても困るものは困る


「嫌です」


 本当は永山家で何があったかクラスメイト達の前で言ってもよかったんだけど、僕が永山家に行った事が教師に知られれば永山妹の教育実習が打ち切りになる可能性もあり、それによって僕が逆恨みされるんじゃないかと思ったから家に行った事を言わずに嫌だと一言言うだけで止めた


「そ、そう言わずにお願いッ!」


 クラスメイトの前だというのに頭を下げてまで頼み込んできた永山妹。そこまでして僕に頼みたい事があったみたいだけど、正直、この時の僕はとてもじゃないけど永山妹に付き合う事は出来なかった。それもあってなのか返事に困っていると……


「岩崎君は嫌だって言ってるじゃないですかッ!!嫌だと言われたら大人しく引いたらどうなんですかッ!?」


 持田さんが頭を下げる永山妹に対して声を荒げた。それを見たクラスメイト達は普段温厚な持田さんが声を荒げた事に驚いた言った感じで持田さんを見つめていた


「これは私と岩崎君の問題で持田さんには関係ないでしょ?関係ない人が口を挟まないでくれる?」


 声を荒げた持田さんに対し冷静に対処した永山妹。自分の立場が上だったからなのか、姉同様に自分に反抗してくる生徒を下に見てる感は否めなかった


「関係なくありませんッ!岩崎君は私の特別な人なんですッ!!特別な人が嫌な思いをしているのは見逃せませんッ!!」


 修学旅行前みたいに婚約者と言わなかっただけ進歩していたとは思うけど、聞きようによっては恋愛感情を抱いてるんじゃないかと誤解されそうだった


「そう。私も岩崎君に特別な感情を抱いてる。だからお願いを聞いてほしいの」


 永山姉も負けじと持田さんに反論した。持田さんは同級生だったからクラスメイト達から後々冷やかされる程度で済む。だけど、永山姉の方は最悪の場合実習打ち切りだ。


「永山先生よりも私の方がずっと特別に思ってます!!」

「いいえ、持田さんよりも私の方が特別に思ってるわ」


 僕を差し置いて持田さんと永山姉の言い争いはヒートアップしていった。そんな2人を教室内にいた人は誰1人として止める事が出来ずにいた


「なぁ、光晃……お前、止めて来いよ」

「そうだぞ岩崎。持田も永山先生もお前の事で言い争っているんだ。お前が止めるのが筋だろ?」


 クラスメイト達が唖然とし、僕はどうしたものかと考えている最中、秀義と鶴田君が2人を止めるように言ってきた。それもニヤついた顔で


「秀義、鶴田君。顔がニヤついてる理由は後で聞くとして、あの2人の……いや、女性同士の言い争いを僕が止められると本気で思ってるの?」


 女性同士の言い争いの場面に遭遇した事なんてなかった僕でも解った。女性同士の言い争いに無策で突撃しても弾かれるか悪化させるだけだと。これは経験じゃなく本能で察した


 僕達は持田さんと永山妹の言い争いを止める事が出来ず、結局言い争いは担任が来るまで続いた。話を聞いた担任も秀義や鶴田君と同じ顔をしていたけど、僕は聞きたい。それでいいのかと



 持田VS永山妹の戦いがあったその日の放課後。朝の事もあってか持田さんから一緒に下校しようと誘われ、玄関に向かって歩いていた時だった


「岩崎君、話があるんだけど……」


 朝と同様に永山妹に絡まれた


「永山先生!しつこいですよ!!」


 朝の一件以来持田さんは永山妹に過剰な警戒心を持つようになり、永山妹が僕に声を掛けたり、近くに寄っただけでこの時みたいに警戒する


「しつこくて結構よ。私は岩崎君に話があるんだから」


 永山妹からの誘いは本性を知らない人間が見聞きしたら僕は羨ましい状況なんだろうけど、本性を知っている方からしてみれば迷惑でしかない。しかし、朝のように持田さんと言い争われるのは面倒だった。教室内ならまだしも廊下で言い争われるのは特に


「持田さんも一緒でいいなら話を聞きましょう」


 永山妹の要求を叶え、持田さんと言い争わせない唯一の方法。それが持田さんを同席させる事


「え?でも、持田さんは関係ないし……」


 持田さんを同席させろと言ったら永山妹が戸惑いの色を見せた。関係ないなんて事はない。永山姉が引きこもってしまった発端は彼女の相談を雑に扱った事なんだから


「関係ない事はありませんよ。永山先生のお姉さんが引きこもってしまった発端は持田さんの相談を雑に扱った事ですからね」


 そもそも、生徒からの相談を職員室でバカみたいにゲラゲラ笑いながら話す事自体が僕からしてみればあり得ない。それが表に出て転勤する事を余儀なくされ、転勤した先の学校でイジメられる。自業自得でしょ


「…………岩崎君、持田さん、会議室まで付いてきなさい」


 永山姉の事を言われ腹が立ったのか、マズイと思ったのか、あるいはどちらもなのか……永山妹は考える素振りを見せすぐに僕と持田さんに会議室に付いてくるように言った。会議室への道中で持田さんから『永山先生のお姉さんと私達って何か関係あるの?』って聞いてきた。その質問に対し僕は『会議室に付いたら嫌でも解るよ』と答えた



 永山妹と共に会議室に来た僕と持田さん僕の方は呼ばれた理由は十二分に解っていた。だけど、持田さんの方は呼ばれた理由が解ってないと言った感じだった


「さて、岩崎君、呼ばれた理由は解ってるよね?」


 会議室に入り僕が持田さんの隣に座り、永山が僕達の正面に座るという形で席に着いて早々、永山妹が口を開いた


「呼ばれた理由ですか……前回同様に貴女の姉────永山先生への謝罪以外なら想像も付きません」


 永山父は永山姉の引きこもってしまった原因について自業自得だと言っていた。あの人は娘がバラされたらマズい事をしたと理解していたようだった。そんな永山父とは違い、永山妹は僕が悪いと因縁を付けてきた。飲食店に行ったら質の悪すぎるクレーマーになるであろう永山妹が僕を呼び出す理由なんて永山姉以外の事じゃ考えられなかった


「そう、解ってるならいいわ。それで、あの日貴方が帰った後の話になるんだけど────────」

「待ってください!」


 永山妹が僕を呼び出した理由は案の定永山姉についてだった。その話に入ろうとしたところで持田さんが永山妹の言葉を遮った


「何?」


 言葉を遮られた永山妹が不機嫌そうな顔で持田さんの方を見た。いや、見たというよりは持田さんを睨んだと言った方がこの場合は正しいかな?


「永山先生ってもしかしなくても私達が2年生の時に担任だった永山先生の……」

「妹だよ。姉さんは転勤先の学校で酷いイジメに遭ってね。今引きこもっているの」

「そう……だったんですか……でも、それって─────────」

「持田さん、その先は言っちゃダメだよ」


 持田さんがこの時何を言おうとしたのか僕には容易に想像が付いた。僕はそれを持田さんに言わせまいと彼女の言葉を遮りその先を言わせなかった


「で、でも、あれは……」

「持田さんが思っている通りだと思う。でも、その先は言っちゃダメ。どうせ教師や教育実習生に言ったところで理解なんて出来るわけないんだから」


 持田さんが言わんとしていた事は全ての教師、教育実習生とは言わない。これは僕の予想だけど教師が10人いたとして、持田さんの言わんとしていた事を聞いて素直に頷くのは1人いればいい方だ。最悪の場合は10人全員がアホみたいな言い訳をする


「だったらッ……!だったら永山先生が教育実習生のうちに言った方がいいと思う」


 持田さんの言う通りだったのかもしれない。実際、教員免許を取得し、教師として永山妹がどこかの学校に勤務していたとして当時の持田さんが言った事を頭の片隅に置いて仕事をしているとは僕には到底思えない


「そうかもしれない。でも、もしかすると永山先生は今後それを忘れてしまうかもしれないでしょ?だったらそのままにしておいた方がいい。永山先生のお姉さんも結局は雑に扱ったイジメで今は引きこもり状態にある。妹である永山先生にも同じ道を辿ってもらった方がいいでしょ?」

「で、でも……私と同じ思いをする人をこれ以上出したくないよ……」


 教師や教育実習生を挫折させる事しか考えてなかった僕とは違い、未だ見ぬ子供の事を思いやれる持田さんは本当に優しい女の子だ。多分、僕が出会ってきた中で1、2を争うと言っても過言じゃないくらいに


「持田さん……」

「私には岩崎君がいた。それに君は1人でもイジメを跳ね返す事が出来ると思う。でもね、世の中の子……ううん、世の中の人全てが岩崎君みたいな強さを持っているわけじゃないんだよ?私がそうだったように。だから、永山先生が教育実習生のうちに私がされた事を伝えたい……それで永山先生がどう思うかはわからないけど」


 僕を見る持田さんの目には確固たる決意があった。そんな女の子を僕はこれ以上止める事をしなかった


「持田さんが永山先生を信じるなら言ってみれば?」

「うん!」


 僕は教師も教育実習生も信じない。口ではどれだけ綺麗事を言ったとしても行動がそれに伴ってない。行動が伴わないのは仕方のない事だと思う。人間出来る事と出来ない事があるから言ってる事と行動が伴わない事だってある。問題はそういった時にどう向き合っていくかが重要だ。教師や教育実習生は自分が出来てない時に言い訳ばかりして謝罪がないから僕は教師や教育実習生は信じない


「貴方達、さっきから何の話をしているの?岩崎君には今日も私の家に来て姉さんに謝ってほしいんだけど?」


 持田さんと話し込んでいて放置を食らった永山妹が苛立っていた。それを体現するかのように机を人差し指でトントンしてたし


「僕が貴女のお姉さんに謝る前に持田さんから話があるみたいですよ?貴女の姉が雑に扱っていた持田さんからね」


 永山妹は持田さんがいても永山姉を被害者扱いしていたので僕は持田さんから話があると伝えるついでに永山姉が持田さんをどんな風に扱っていたのかを簡潔に伝えた。そっちの方が永山妹も少しは考えると思ったからだ


「はぁ?姉さんが持田さんをどんな風に扱っていようと被害者は姉さんだよ!岩崎君、君はあくまでも加害者!そこのところ忘れてない?」


 持田さんの前だというのに若干、お茶目な教育実習生の仮面が剥がれた永山妹


「永山先生。お姉さんが引きこもってしまった件で岩崎君を加害者と言いましたけど、それは違います」


 仮面が剥がれた永山妹に物おじせずに毅然とした態度の持田さん。この時の彼女は中2の時の弱い彼女じゃない。僕はそう感じていた


「は?岩崎が加害者に決まっているでしょ?姉さんは真面目に仕事をしていたんだから」


 持田さんに反論する永山妹の仮面は完全に剥がれ切っていた。人間関係を円滑にするために多少の建前や仮面は必要だと思うけど、永山妹の本性は僕と初めて2人で話した日とは比べ物にならないくらい醜かった

今回は光晃・持田ペアVS永山妹でした

次回は持田さんの攻撃からスタートで始めたいと思います

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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