【過去編81】教師は自分のした事を振り返れないと思うけど、教育実習生も同じだと思う
今回は永山妹に呼ばれて話すところからのスタートです
永山妹の言ってる事を光晃は理解できるのか否か?
では、どうぞ
僕は中2の時、当時担任だった教師の職務怠慢を外部へバラ撒いた。その事については今でも後悔はしていない。だけど、証拠があったとはいえ訴えられたらアウトなんじゃないかと考えた事もあった。それもあってか中2の時の担任は他校へ転勤になり、2度とその担任とは会う事なんてないと思っていたけど、その妹が僕が中3になってから教育実習生として来たんだから驚きだよね~
「僕のせいで永山先生が引きこもった?」
永山雅から中2の時の担任だった永山の現状を聞かされた僕は驚く事も戸惑う事もしなかった。ただ、意外だとは思った。
「そうよ!アンタのせいで姉さんは引きこもった!!アンタが……アンタ達が姉さんの悪評を世間に広めなければ姉さんは転勤する事もなければイジメられる事もなかった!!」
永山雅……いや、永山妹は僕達のせいでと言った。つまり、永山姉は永山妹に誰が自分の悪評を流したのかを話したという事になる。多分、実行したのが秀義や鶴田君を始めとした同級生だって事も、その指示を誰がしていたのかもね
「永山先生のお姉さんの悪評を流したのは秀義や鶴田君でしょ?それなのにどうして僕のせいだと?怒りをぶつける相手が違うんじゃないんですか?」
指示を出したのは僕、実行したのは秀義や鶴田君、同級生達。普通なら実行した方を怒るのが筋だと思うけど、永山妹はそうしなかった。これはどういう事か?答えは────────
「名倉君や鶴田君はあくまでも世間に姉の悪評を広めただけ!アタイが憎いのは姉さんを貶めた岩崎!アンタだけだよ!!」
答えは実行しただけの秀義や鶴田君は眼中になく、その指示を出した僕が憎いでした
「あ、そう。憎いなら勝手に憎んでいてくださいよ。僕には関係ありませんから」
全く関係ない事もなかった。僕の事を憎いと思うのは勝手だ。ただし、永山姉がちゃんと仕事をしていたらの話だけどね
「アンタッ……!!人の姉さんを引きこもるまで追い詰めといて反省の色なしかッ!!どこまで最低なんだッ!!」
家族の為に怒る永山妹を見て家族を大事にする事はいい事だと思った。永山姉の職務怠慢で亡くなった生徒、苦しんだ生徒の事を考慮しなければね。
「最低ねぇ……はぁ……」
姉の事しか考えれれない永山妹に溜息しか出なかった僕。永山妹はアレだ。保護者にするとただのモンスターペアレントだ
「何さ!その溜息は!」
自分の姉が職員室でイジメられている生徒をネタに下品な声でゲラゲラ笑っていた。という事を知っていても僕のせいで姉が引きこもってしまった、謝れと言うのだろうか?
「別に。ただ、アンタは自分の姉が職員室でイジメられている生徒をネタに下品な声でゲラゲラ笑っていた事を知っていても僕のせいで姉が引きこもってしまったから謝れって言ってるのかなと思ってね」
永山妹のようなタイプの人間が教員免許を取得し、教師になったところでどうなるかなんて目に見えていた。生徒から相談され、対応が雑になる事は間違いないだろうし、不満が爆発した保護者から苦情を受けたとしても自分は悪くないの一点張りになる。ものの見事に無能教師の出来上がり
「当たり前でしょ!!アンタのせいで姉さんは引きこもってしまったんだから!!」
永山妹の主張には溜息すら出なかった
「姉が仕事もせずに職員室でふんぞり返ってたという事実を突きつけられても僕が悪いって言い続けるのはある意味で尊敬するよ。用がそれだけなら僕は帰るね」
永山妹と話し続けていても『アンタが悪い!謝れ!』って言い続けるのは火を見るよりも明らかだった。僕は僕で『仕事してないならまだしも人の困り事を笑っていた事を棚に上げて謝れっておかしくない?』と言い続ける。僕達の話し合いは平行線になるであろうことは容易に想像が付いた。
「は?帰すわけないでしょ!アンタが姉さんに謝るって言うまではね!!」
永山妹。姉に似て小さな事に拘る性格のようだった。本人にとっては小さな事じゃないのかもしれなかったけど
「え?アンタにも同じ話をしなきゃいけないの?うわぁ~、面倒くさっ!」
中2の時に永山姉にした話を妹の方にもしなきゃいけない。話す相手が姉から妹に代わったとはいえ、面倒な事には変わりなかった
「は?アンタなに言ってんの?アタイは姉さんに謝れって言ってんの!アンタの持論を聞かせろって一言も言ってない!」
永山妹の言うように永山姉にした話は僕の持論だった。それを言われちゃ強く言い返せなかった僕だけど、少なくとも永山姉が過去にした事はそういう事だ
「あ、そう。じゃあ、僕はアンタの姉に謝る事はしないし、今後教室で声掛けられても無視するから」
そう言って僕は会議室を出ようとした。しかし────────
「は?姉さんに謝るって言うまで帰さないって言ったでしょ」
永山妹に腕を掴まれ僕は会議室を出る事は出来なかった
「いや、僕に謝罪を要求する前に姉に落ち度はなかったか確認する方が先じゃないの?」
自分の落ち度を認められないような奴に謝罪するほど僕は優しくない
「あ?姉さんに落ち度なんてあるわけないじゃん!姉さんはいつも完璧なんだから!」
永山妹が永山姉に抱くイメージは一言で言えば狂っている。これに尽きた
「この世に完璧な人間なんて存在しないと思うんだけど?」
僕は自分が出来る人間だなんて言わない。完璧に見える人だってどこかに欠点というものがある。それを踏まえて永山妹の姉に対する印象は考えすぎかもしれなかったけど異常なものを感じた
「姉さんは完璧なの!!何でも出来るし、どんな人間からも好かれていた!!岩崎!アンタが姉の悪評を広めなきゃね!」
この時の僕は永山妹に何を言っても無駄だと思った。正直な話、呆れもした。呆れると同時に僕は永山姉に謝るまで帰してもらえないんじゃないかと思うようになった。
「わかったよ、今日は無理だけど、明日なら空いてるから。明日アンタの家に行って永山に直接謝るよ」
謝る気なんて全くなかったけど謝ると言わなきゃ家に帰してもらえないと思った僕はとりあえず永山に直接謝ると言う事で永山妹を納得させる事に
「ふんッ!最初からそう言えばよかったのよ!」
本当は謝る気なんて全くないなんて考えてなかっただろう永山妹は満足気に鼻を鳴らした。
「納得してもらったところで帰っていいかな?」
「ええ、帰ってもらって結構よ!後、明日も残るように!家に来て姉さんに直接謝ってもらうから!」
「はいはい」
僕が折れる事でこの日は無事に帰る事が出来た。帰ってからの事を少し話そう。この日は真理姉さんの夕飯を作り終えた後、僕は夕飯も食べずに寝た。
永山妹に呼び出された次の日の放課後。僕は呼び出された日と同様に会議室にいた
「岩崎、約束通り姉さんに謝ってもらうよ」
僕は呼び出された日、永山姉に謝ると言う事で家に帰る事が出来た。本当は担任に永山妹からされた事を言えば永山妹の実習を打ち切りに出来はしなくとも僕と不用意に接触する事を禁止させる事くらいは出来たのかもしれない。仮にそうしたとしても永山妹はなんだかんだ理由を付けて接触してきただろうから意味はなかっただろうけどね
「はいはい。その為にこうして放課後の遅い時間まで残っているんでしょ」
本当は永山姉に謝る為に僕は放課後まで残っていたわけじゃない。永山姉が自分のした事を棚上げし、一方的に僕が悪いと言い続けていたのなら改めて自分が持田さんに何をしたのか、かつての生徒に何をしたのかを伝える為に永山家を訪ねる。ただそれだけだった
「その態度はどうにかならないの?アタイは仮にも先生なんだけど?」
クラスじゃ一人称は“私”なのに僕と2人きりの時は“アタイ”になる永山妹。クラスで見せる顔と僕に見せる顔ではギャップがあり過ぎるとは思った。決して僕にだけ特別に裏の顔を見せてくれているのかな?とは思わなかった
「アンタは先生じゃなくて先生擬き。もしくは先生の卵であって先生じゃない。そういう言葉は教育実習に合格して教員免許を取得してから言うんだね」
今もそうだけど、教育実習生ごときが先生だなんて言わないでほしいと思う。教育実習生はあくまでも先生擬きか先生の卵であって先生じゃない。
「チッ、口の減らないクソガキ……」
僕の言葉にカチンときたのかとても教育実習生の言葉とは思えない言葉を口にした永山妹
「君の姉はそのクソガキの悪知恵で追い詰められたって事を忘れてない?」
「アンタねぇ!!」
呼び出された日と同じように永山妹の怒鳴り声が会議室に響いた。永山姉も小さな事で怒鳴っていたのを思い出し、やはり姉妹なんだと痛感させられた
「怒鳴るのはいいけど、永山に謝らせたいのならさっさと家まで連れてってくれない?僕は飽き性だから早くしないと君の姉にした事を忘れそう」
自分のした事だから忘れるなんて事はなかった。ただ、永山姉にした事なんて僕にとっては取るに足らない事だったのかもしれない。だから忘れそうだなんて言葉が出てきたのかも
「言われなくてもそうするよ!!」
一端会議室を出た僕達は下駄箱で別れ、僕は生徒用の、永山妹は職員用の下駄箱へと向かった。
「全く、転勤になってまで手間を掛けさせられるとは……永山って本当に迷惑な教師だ」
下駄箱で靴を履き替えている時にふとした事で出てきた言葉は永山への自責の念ではなく、学校からいなくなってまで手間を掛けさせれる永山姉への愚痴。イジメの相談を影で笑い飛ばしていた奴に対して謝罪の言葉なんて持ち合わせていなかったのはいいとして、新しく赴任した学校で永山自身がイジメられた。それも、持田さんにした事が原因で。それを僕のせいにされても困る
「なーんて愚痴っても仕方ないか」
永山妹は姉を信じて疑わず、僕が悪いと思い込んでいた。僕の話に聞く耳持たないのであれば姉から直接自分が悪いと言ってもらうまで。そう思い、玄関を出るとそこには永山妹がいた
「遅い!靴履くのにどれだけ時間を掛けるの!!」
僕は靴を履くスピードまで教育実習生に管理されなきゃいけないのかと辟易した。それから永山妹と手を繋いで永山家へと向かう事になった。誤解のないように言っておくけど、疚しい関係じゃなく、永山妹曰く『岩崎が途中で逃げないように手を握るだけ!』との事。
永山家に着くまで僕達の間に会話はなく、永山家の前に着いてようやくした会話が『家ここ』と言う永山妹に『そうですか』と僕が答えるだけの簡単なものだった。
「永山先生、1つ聞いてもいいでしょうか?」
永山家に入る前に僕には聞いておきたい事があった
「何?今更帰っていいかとか言わないよね?」
僕の質問=帰るに繋がる永山妹の思考回路は全く理解出来なかった。僕の聞きたい事はそんな事じゃなかったんだけど
「帰っていいなら帰りますけど、僕の聞きたい事はそんな事じゃありません」
「じゃあ、何?お詫びの品は何がいいか?」
「違いますよ。ご両親はご在宅なのかどうかを聞きたかっただけです」
僕が聞きたかったのは永山姉妹の両親がこの時家にいるか否かだ。両親が家にいるかどうか以前に僕は永山妹が実家暮らしだという事を聞いてなかった。それは永山姉にも同じ事が言えたんだけど
「両親なら今家にいるよ」
永山妹の答えは僕にとってある意味では最悪だった。もう言葉を選ばずに話すけど、永山姉も永山妹もキチガイだった。そんなキチガイ姉妹の両親がキチガイじゃないという保証はどこにもなかった。もしかすると僕は永山一家に恨まれているんじゃないか?そんな予感がした
「そうですか……ちなみにご両親も僕の事を恨んでたりしませんよね?」
聞きたくないけど聞かなきゃいけない事。永山父と永山母も僕を恨んでいるのかどうか。これだけはハッキリさせないと僕は永山家の敷居を跨ぐ事は出来なかった
「両親はアンタの事を恨んでない……と思う」
永山妹から返ってきた答えはとても曖昧なもの。まるで娘が引きこもってしまった事を知らないとでも言いた気なそんな答えだった
「そうですか」
「ここで話していても時間の無駄だからさっさと家に入るよ」
「はい」
永山妹はただいまの声と共に玄関のドアを開けた。それに従い僕はお邪魔しますと一言言って入った。それからすぐに永山家のリビングへと案内され、テレビを見ながらせんべいを食べていた永山母と初対面する事となった
今回は永山妹に呼ばれて話すところからのスタートでした
永山妹の言ってる事は光晃には理解できなかったようです。永山姉の引きこもる原因が光晃にないとは言い切れませんが、そもそもちゃんと対応していれば・・・・って話ですし
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




