【過去編77】修学旅行が恋バナで終わり、ある意味で因縁がある教育実習生がやって来た
今回は修学旅行と教育実習生がやって来る話です
光晃、修学旅行では恋バナしかしてないな……。後は……教育実習生が来たけどどうする?ってところかな?
では、どうぞ
恋バナ。中学の……いや、恋というものを経験した事のない僕にとっては答えを出す事が大変難しいものだった。特に修学旅行で同室になった秀義・鶴田ペアの前じゃね
「どうしてもこれって答えを出さなきゃいけないかったりする?」
「「……………」」
僕の問いに顔を背ける秀義と鶴田君。2人とも持田さんと宮村さんに聞いてこいって言われていたんでしょ?だったら答えてくれないと困る。そう僕は声を大にして言いたかったけど、好きな人の好みというのは誰かに強制されて決めるものじゃないという事を理解していたのか何も言わなかった
「黙ってられると困るんだけど……」
一方の僕は初恋すらまだだった為、好みのタイプは?と聞かれてどうする事も出来ずにいた。
「だってなぁ?鶴田」
「そうだよなぁ?名倉」
困ると言った僕を訝し気な目で見てきた秀義と鶴田君。その目は何かを言いた気だった
「2人とも言いたい事があるならハッキリ言えば?」
修学旅行に来てまで喧嘩なんかしたくなかったけど、秀義達の態度は気に入らなかった。特に“本当は好きな人いるんでしょ?”って言わんばかりだったし
「光晃の恋愛だから俺らがどうこう言えた立場じゃないんだけどよ……」
「名倉の言う通りだな。岩崎自身の問題だから俺らがどうこう言えた立場じゃねーけどよ……」
「「お前、持田と宮村、どっちが好きなんだ?」」
秀義達は僕が数分前に初恋すらまだだって話をしたのを覚えてなかったのか、それとも、聞いてなかったのか、持田さんと宮村さんのどちらが好きか?だなんてアホな質問をしてきた。この時に持田さんか宮村さんだって答えていたら葵衣とは付き合ってなかった。これだけは断言できる
「どっちが好きかと言われても困るよ。っていうかさ、僕に好みのタイプを聞く前に秀義と鶴田君はどんな女の人がタイプなのか教えてよ」
僕、岩崎光晃は優柔不断な人間だ。持田さんと宮村さんという2択を迫られてハッキリ答える事すら出来ず、秀義と鶴田君の好みの女性を聞く事で僕から目を逸らさせようとしたんだから。なんてポエムっぽい事を言ってはみたけど、いないものやないものは答えようがないんですよ
「「俺達の好みのタイプ?」」
「うん、何回も言うようだけどさ、僕は初恋すらまだなんだよ。そんな僕がいきなり持田さんか宮村さんかで選べるわけないでしょ。だからさ、持田さんを選ぶか宮村さんを選ぶかは一端置いといて、参考までに秀義と鶴田君の好きなタイプの女性を聞いてみたいな」
初恋すらまだだった僕は好みのタイプと言われてもイマイチピンと来なかった。当たり前だよね。だって普段からそんな事考えて生きてないし。
「頼まれた経緯は俺から話したから名倉、好みのタイプはお前から話せ」
「だな。頼まれた経緯は鶴田からだったから好みのタイプは俺から先に話すか」
自分で提案しておいてなんだけど、秀義も鶴田君も物分かり良過ぎない?って思ったけど、この恋バナをしたのは修学旅行の時で深夜。同級生と深夜まで話す事なんてあまりないからハイテンションになっていたのかなと今では思う
「どっちが先か決まったところで、秀義の好みのタイプは?」
「俺の好みのタイプは年上だ!年上の女に思いっきり甘えるのが俺の夢だ!」
この日、僕は初めて秀義が年上の女性が好きだという事を知った
「へぇ~、秀義って年上の女の人が好きだったんだ。初めて知ったよ」
「初めて言ったからな!」
「っつー事はアレか去年の担任だった永山とか好きだったのか?」
中2の時に担任だった永山は女性だ。秀義の好きな年上でもある。条件だけ言えば秀義のドストライク……のはず。だって、年上でも何歳まで許容範囲かって言ってなかったし
「あー、確かに永山は年上で見てくれは悪くなかったけどよ、性格というか、人間的に腐ってたから無理」
僕が永山の職務怠慢の証拠を集めてほしいと秀義と鶴田君に頼んでなかったら秀義の永山に対する評価は少し違ってたのかな?こんな事を思っても後の祭りだったけどね
「確かにそれは否定できねぇな。人の困り事を影で笑う女なんていくら見てくれが良くても付き合って結婚したいとは思わねぇわな」
秀義同様に鶴田君も永山に対して辛辣なコメントだった。
「僕が永山の仕出かした事の証拠を集めてくれって頼んでなかったら2人の永山に対する評価って少しは違ったのかな?」
永山に同情はしなかった。でも、年上好きの秀義にとっては辛いものがあったと思うと罪悪感で胸がいっぱいに……ならなかった。何しろ秀義の近くには畑中という年上の女性がいたから。というか、今はどうか知らないけど、畑中が家に来る頻度が多い当時の状況で年上の女性を好きになれる秀義ってすごい
「いや、俺の場合は畑中が……舞が毎日のように来ているから永山なんて眼中になかった。だから光晃。お前が気にする事は何もないぞ」
秀義、気にする必要はないって言ってくれるのは嬉しかったけど素直に喜べない。舞と毎日を掛けた親父ギャグを聞かされた挙句、聞きたくもない畑中とのイチャイチャライフなんて聞きたくなかったよ……そうなるようにしたのは僕だけど
「そ、そう、ぼ、僕もそう言ってくれると気が楽だよ……」
僕は当時の秀義の置かれている環境に引きつつも何とか言葉を紡いだ。正直、中学校生活最大のイベントで畑中────いや、かつて僕にしつこく絡んできた教育実習生の成れの果てなんて聞きたくなかったし
「おう!あー、いっその事畑中と付き合っちまいおうかな~」
中学3年生という中学校で最も上の学年である僕達が年上女性と出会うなんていうのは僕達の中に年上女性を紹介できる人間がいてこそ成り立つもの。僕の周囲には真理姉さん、二枝、智花さん、彩さんっていう年上女性がいたけど、真理姉さんは従姉。二枝は小学校の頃の担任。智花さんはその二枝の妹で彩さんは持田さんの姉。このメンバーの中で恋人にしてもいいかなと思うのは智花さんと彩さんの2人だけだった。ただ、智花さんの場合は二枝が、彩さんの場合は持田さんが騒ぎそうだからという理由でパスしたけど
「いいんじゃない?畑中は秀義にかなり懐いてたみたいだし」
小学生の頃、宮村さんに押し付けた教育実習生と一緒に絡んできた畑中。そんな畑中もこの時には秀義にベッタリだったであろう。そんな2人だカップルになってもラブラブだろうし、夫婦になったとしても互いに浮気の心配なんて皆無だし、夫婦喧嘩も少ないだろう。うん、最高の2人じゃん
「ただなぁ……畑中じゃなんか違うんだよなぁ~」
近くに好みの女性がいたというのに何か違うという贅沢な事をほざく秀義。この時の僕はもう畑中でいいじゃん!って思ったね。言わなかったけど
「そう。じゃあ、秀義の理想の女性が現れるまでのんびり待つんだね」
秀義の恋愛に毛ほども興味がなかった僕は適当に返した
「そうする!俺の運命の人が現れるのを待つ!!」
「頑張れ。ところで鶴田君の好みのタイプは?」
秀義が理想の女性を待つという結論を出したところで僕は話を鶴田君に振った
「俺か?俺は清楚で巨乳だったら年下でも年上でもどっちでもОK!!」
鶴田君の好みのタイプは何て言うか……うん、リアクションに困った
「「……………」」
秀義も同じ事を思ったのか黙り込んでしまった。秀義はこの時に何を思ったのだろうか?
「何だよ?岩崎も名倉も黙り込んで」
そんな僕達2人にジトっとした視線を向けてきた鶴田君。君は恋愛対象を選ぶ時に胸で判断するのか、清楚さで判断するのかどっちなの?って思った。もちろん、それを口に出しては言わなかったけど
「「別に……」」
「そうか?それにしてもどっかにいねぇかなぁ……巨乳の清楚な女の子」
まだ見ぬ巨乳清楚に思いを馳せる鶴田君に僕達は何も言えなかった。こうして僕達の修学旅行は終始恋バナをして終わった。修学旅行で行った先?そんなの恋バナに頭を使い過ぎて覚えてないよ。ついでに言っておくと秀義と鶴田君が勝手に僕の中学卒業までの目標として好きなタイプの女の子を見つけるという迷惑な事この上ない目標を設定してくれた事を言っておくよ
恋バナだけで終わった修学旅行から時が経ち、1か月後に夏休みを控えた僕達にやって来たイベント。そう、教育実習生が来るという僕にとってありがたくも何ともないイベントだった
「去年の教育実習生は地味だったから気にも留めてなかったけど、今年も教育実習生が来るという面倒なイベントがやって来た……」
朝のHRが始まる前、制服が夏仕様になり、教室中が夏の訪れを感じさせている中、僕の心は氷河期を迎えていた。夏は嫌いじゃないよ?教育実習生が来るという傍迷惑なイベントがある以外はね。
「光晃……大丈夫か?」
絶望の淵にいる僕に声を掛けてきたのは秀義。大丈夫に見えたのなら眼科に行く事をオススメしたかった。
「大丈夫じゃないよ。今すぐ家に帰って引きこもりたい」
高校生の今でもそうだ。教育実習生が来ると聞いただけで家から出たくなくなる。高校は単位があるからそうもいかないけどね
「うわっ、重症だな……」
「重症だよ。とりあえず僕は寝たふりするから先生が来ても放っておいてね」
「お、おう……」
教育実習生が来るのは僕にとって憂鬱だった。でも、それ以上に中3の時に来た教育実習生は当時僕に絡んできたどの実習生よりも厄介で因縁深かった。だって、僕にとっては取るに足らない存在だったけど、僕のクラスにいたある人物にとってはそうじゃなかったからね。
担任が教室に入ってくる音が聞こえた。それと同時にクラスメイト達が自分の席に着く音も。僕は机に突っ伏していたから直接見たわけじゃなかったけど、担任の『HR始めるよー、みんな席に着いてー』って声がした後で椅子を引く音が聞こえたから間違いはないと思う
「はい、HRの前に今日から3週間の間一緒に勉強する先生を紹介するよー。では、先生、お願いします」
担任が入ってきてHRが始まってなお僕は寝たフリを続けていたから教育実習生の顔は見ていなかった
「はい!只今ご紹介に預かりました────────」
教育実習生が自己紹介を始めたので全く興味はなかったものの一応顔は見ておこうと思い僕は起き上がった
「森ノ宮大学4年の永山雅です。これから3週間の間皆さんと楽しくお勉強していきたいと思います!よろしくお願いします!」
僕と持田さんにとって因縁深い相手。この時はまだ知らなかったけど、この永山雅は僕が追い出した中2の時の担任、永山の妹だった。僕は不思議な運命の巡り合わせだな程度にしか思ってなかった。でも、持田さんの顔を確認してみると……
「─────!?」
声には出さなかったものの驚いていた。この時の僕はこれからこの永山雅と一悶着あるだなんて事をまだ知らなかった
今回は修学旅行と教育実習生がやって来る話でした
修学旅行の思い出で恋バナだけっていうのはある意味で光晃らしいっちゃらしいです。はい。それでもまぁ、高校生になってもあまり他人に対する意識は変わってない模様ですが。そして、光晃の通う中学に来た教育実習生が苗字だけで言うと因縁の相手ですが、光晃はそれをどうするのか?
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




