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【過去編71】僕は持田家に恐怖を感じる

今回は光晃と彩が喋る話です

光晃はいつの間にか持田家に情報を握られてるようです

では、どうぞ

 持田さんのお見舞いに行った後、僕は華菜さんにイジリ倒された。そして家に帰り真理姉さんにイジリ倒された。と、持田さんのお見舞いに行った日の話はこれくらいにして、ダラダラと永山達教師を潰す過程の話をするのもどうかと思うから簡潔に言うと、秀義と共に学年を巻き込んだ情報収集だったけど、その集まった情報を確認すると本当かどうかは置いといて、まぁ、出るわ出るわ。永山達が仕事をしてない情報が。で、退院した持田さんも加わって計画は順調に進んだよ?今から話すのは永山達を潰す1週間前の話。


 永山達を潰す1週間前、放課後の教室。その場にいたのは僕と持田さんだけだった。秀義?アイツは証拠がある程度集まってお役御免。とはならず、僕が指示を出すまで待機。永山達……いや、永山が悪あがきしなければ秀義や他の同級生に動いてもらう事はないけど、万が一って事もあり待機してもらっていた。おっと、それよりも僕と持田さんが放課後の教室で何を話していたかだったね


「岩崎君……今までお母さんやお父さん、お姉ちゃんには黙っていたけど、さすがにもういいんじゃないかな?」

「そうだね。そろそろかもしれないね」


 持田さんが退院してから初めて学校に来た時に僕は“さすがにイジメが原因で自殺未遂をした彼女をイジメる奴はいないだろう”なんて思っていた。でも、それは間違っていた。人は学習するものだと思っていた。そんな僕を嘲笑うかのように数名の男子と数名の女子が厭らしい笑みを浮かべ持田さんに絡んでいったのを見て“学習しない人間もいるんだ”と思ったね。それは置いといて、人間って簡単に変わらない。持田さんのイジメがなくなったり減ったりする事はなかった


「で、でも、隠してた事バレたらなんて言われるのかな?」

「わからない。多分、怒られるだろうね」


 持田さんが退院した後すぐに僕は彼女に僕達の計画を話した。最初は反対されたけど、いくら自分の相談を雑に扱われたとしても仕返ししていい理由にはならないと言われたのは今でもよく覚えている。だから僕は持田さんの他人を思いやるのはいいけど、被害者をこれ以上増やさない為にと言って納得してもらった。だけど、この計画を持田さんをイジメている連中に感づかれてはいけないと思い、教師はもちろん、持田さんをイジメていた連中や自分の両親にすら黙っていた。それは持田さんも同じ事。何が言いたいかって言うと、この段階で華菜さんに言えば怒られるって事だよ


「だ、だよね……」


 華菜さんに知られる事を恐れたのか、持田さんは若干震えていた。


「うん。でも、言わないわけにはいかないでしょ。持田さんの所持品には結構な被害があったわけだし」


 持田さんが退院し、登校してからというもの、イジメが止む事はなく、逆に被害が大きくなった。最初は靴を隠したり、下駄箱や机の中にゴミを入れたりする程度だったけど、それがエスカレートして教科書に落書きされたり、ノートを破かれたりした。幸いな事にカバンへの落書きだったりとか、暴行を受けたりとかはなかった。まぁ、イジメる方も教師にバレたらマズイと思ったんだろうね。その代わりに影ではいろいろとやられたみたいだけど


「そ、それはそうなんだけど……」


 華菜さんに計画の事を話そうと言ってから持田さんの歯切れが悪くなった。この時の僕はどうしてって思ったけど、今思えば持田さんの歯切れが悪くなるのも無理はないと思う。それは持田家に着いた時の話をするときにするとしよう


「とりあえず、計画を立てたのは僕なんだし、一緒に行って説明するから……ね?」

「う、うん、そうだね……」


 いつまでも教室でクヨクヨしてても仕方ないと思った僕はとりあえず持田家へ。



 持田家に着いてすぐ、僕はリビングへと通された。この日は華菜さんだけかと思ってたらなんと!彩さんまでいた。まぁ、持田さんのお姉さんなんだし当たり前か。


「………………」


 持田さんにリビングで待つように言われたのはいい、んで、華菜さんに軽くあいさつしたのもいい。でも、無言の彩さんと2人だけの状態というのは勘弁してほしかった。持田さんが入院している時に何回かお見舞いには行ったけど、華菜さんと鉢合わせする事はあっても彩さんや持田さんのお父さんとは鉢合わせなかった。持田父は仕方ない。仕事してるんだし。でも、彩さんと鉢合わせしなかったのはどうして?


「………………」


 この時の僕にとって彩さんと2人きりだと何も悪い事はしてないのに気まずさを感じていた。彩さんは携帯を弄っていたし、僕は僕で気まずさのあまり話しかけられなかった。


「あのさ、岩崎君」


 気まずい沈黙を破ったのは彩さんの方だった


「な、なんでしょうか?」


 いきなりの事で声が上ずってしまった僕。これを思い出すのは今でも恥ずかしい


「ぷっ、何それ?びっくりしすぎ」


 僕の声が上ずった事の何かが面白かったのか噴き出す彩さん。別にびっくりはしてなかったけど、指摘すると話が長くなりそうだからあえてスルーした


「す、すみません、僕、女の人って慣れてないんですよ」


 真理姉さんと一緒に住んでいて二枝に甘えられていながら女の人に慣れてないってどの口が言ってんだ?客観的に見てこの時の僕が吐いた嘘は中学生そのものだった。いや、この当時は中学生だったけど!


「ふ~ん、まっ、岩崎君が言うならそういう事にしといてあげる」

「あ、ありがとうございます。それで?僕に何かご用でしょうか?」

「用があったから呼んだんだけど?」

「で、ですよね……」

「うん。ちょっと彩菜の事について聞きたい事があって」


 華菜さんもそうだったけど、彩さんも持田さんの事をどうして僕に聞いてきたんだろう?持田さんの事は持田さん本人に聞けばいいのに


「も、持田さんの事ですか?だったら本人に聞けばいいんじゃ……」


 父親は未だにちゃんと会話した事がないからどんな人なのか知らないけど、華菜さんと彩さんは自分の娘と妹の事を同級生に聞く人だというのは知っている。今じゃ全く持田さんと会わないからどうしているのかはわからない。でも、多分、素直半分、隠し事半分って感じで過ごしているんだとは思う


「私が聞きたいのは担任の永山が彩菜をどう扱ってるかだから。そんな事本人には聞けないでしょ?」


 彩さんの聞きたい事である永山が持田さんをどう扱っているか。確かに本人に聞くよりも第三者に聞いた方がある意味では確実な情報を得られる。


「た、確かに本人には聞けないでしょうし、本人に聞くよりも第三者に聞いた方がある意味では確実ですが……どうしてそんな事を?」


 華菜さんに永山がどんな人間か聞かれるのならまだ解るけど、姉である彩さんに永山の事を聞かれなきゃいけないのかが理解できなかった。別に嫌悪感を抱いているとかじゃない。純粋にそう思った


「どうしてって妹が心配だからに決まってるでしょ?それ以外に何かある?」


 彩さんの言ってる事は一見妹を心配する姉に見えたし実際そうだった。それを考慮してもおかしい部分はあった


「確かに彩さんの言っている事は妹を心配する姉。そう見えます。ですが、僕からしてみれば彩さんは永山の事について何かを掴んでいるとも取れるんですよ。その上で聞きますが、どうして永山の事を僕に聞くんですか?別に妹さんでもいいんじゃないんですか?」


 詳しくは聞かなかったけど、当時の彩さんは高校生だったと思う。中学生だったとしたら持田さんがイジメられていると知った時点で飛んでくるはずだし。でも、それをしなかった。いや、出来なかった。理由はいろいろあると思う。1つは彩さんと持田さんが違う中学に通っていたから。もう1つは彩さんは高校生だったから


「はぁ~、彩菜の言ってた通り岩崎君は何でもお見通しなんだ」

「別に僕は何でもお見通しってわけではありません。ただ、小学校時代から面倒事に巻き込まれる回数が多いと他人の言動に何か裏があるんじゃないかと考えてしまうんですよ」


 小1から教育実習生に絡まれ、小2では担任の児童への対応が雑な上に面倒な教育実習生に絡まれる。そんでもって小3では根性論で生理現象を我慢させたり、怒鳴るしか能のない教師が担任だった。極めつけは小4・小5の時の担任は忙しさを理由にクラスで起きた問題から逃げ出す。こんな教師ばかりだと他人を手放しで信用しなくなる。僕はだけどね


「岩崎君の過去に何があったか。今は聞かないよ。でも、私が永山の事について知ってる事があるのは確かだよ。それを教えてもいいけど、先に永山が彩菜をどう扱っているかを教えてくれない?」


 永山が持田さんをどう扱っているかを教えれば彩さんが掴んでいる永山の情報を手に入れる事が出来る。僕にとってはこれ以上ないほどの好条件だった


「永山が持田さんをどう扱っているかですか……ハッキリ言って雑に扱ってますよ。僕の知る限りじゃ持田さんの相談事を職員室内で大声で他の教師と笑い飛ばす程度にはね」


 この時の僕は秀義達同級生が集めてくれた情報を全て把握してはいなかった。だから自分の知る限りの事しか教えられなかった。永山が持田さんを雑に扱っているっていう事実しかね


「そう……やっぱり……」


 僕の答えに納得した様子の彩さん。僕は彩さんがどうして納得したのかがわからなかった


「やっぱり?彩さんは永山とは会った事ありませんよね?」


 当時イジメられていた持田さんのボディーガードみたいな立ち位置にいた僕はいろいろな話をした。互いの家族の愚痴からイジメ対策、勉強の事まで。それでも華菜さんや持田父、彩さんが学校に乗り込んでいったという話は聞いた事がなかった。当然、彩さんが永山と会った事があるだなんて話もね


「会った事はない。でも、部活仲間から永山の評判は聞いた事があるよ」

「永山の評判?何ですか?それ?」


 身内に近しい年齢の兄弟がいない僕は小学校の教員連中の評判は当然、中学の教員連中の評判なんて聞く機会など皆無。彩さんが言った永山の評判というのがものすごく気になった


「永山って岩崎君や彩菜が通う中学校に赴任する前、別の中学でも担任を持っていたんだけど、その時のクラスにいた生徒の1人が自殺しちゃったらしいの。イジメが原因でね」

「そうですか……永山の受け持っていたクラスの生徒が……」


 彩さんの口から語られた永山の過去。これはまだ序章に過ぎなかった。


「そのクラスに部活仲間の妹がいて妹談義の時に聞いたんだけど、当時の永山はイジメを受けていた生徒から相談された時、表面上は自分が何とかするとか言ってたらしいんだけど、裏ではその相談を嘲笑っていたらしいよ」


 彩さんの話……正確には彩さんの部活仲間がした話は持田さんの話と被った。持田さんがイジメの相談をしに行った時、永山がどんな対応をしたかは知らない。ただ、職員室で持田さんの相談をゲラゲラと笑い飛ばしていたのは事実だ


「そうですか……それで?その生徒が自殺してしまった原因って何だったんですか?」


 僕は彩さんが詳しい事を知ってるとは思わなかったけど、聞かずにはいられなかった


「学校側は保護者にイジメを苦に自殺したと説明したらしいけど、本当の原因は永山。永山がちゃんと対応していればその生徒は死なずに済んだ」

「でしょうね……ところで彩さんはどうしてそんな事を知っているんですか?」


 一応、毎日新聞を読んでいたけど、イジメを苦に自殺って話は見た事がなかった。彩さんから聞いて初めて知ったくらいだったし。それに、そのニュースが新聞に載ったとしても詳しい原因までは書かない。彩さんがその情報を知っているのは変だと思った


「自殺した生徒は部活仲間の妹の大親友だったらしいの。当然、部活仲間の妹は今でも永山を恨んでる」

「なるほど……貴重な情報をありがとうございます」

「いいの。私も部活仲間もその妹も岩崎君なら永山を潰せるって信じてるから」


 彩さんのこの一言で僕の思考が止まった。秀義や鶴田君にも他言無用と言ってあったし、持田さんにも黙っているように口止めをしていた。事実、真理姉さんや二枝からは何も聞かれなかったし、秀義の母親からお叱りを受ける事もなかった。つまり、口止めは完璧だった。だというのに彩さんは知っていた。これはちょっとした恐怖だった


「どうして僕が永山を潰そうとしていると思うんですか?」


 内心ではかなり焦ったけど、彩さんにそれを悟られないために僕は平静を装った


「どうしてって岩崎君が幼馴染君や同級生君と永山を……いや、中学校の教師全員や彩菜をイジメていた人達を潰そうとしている事なんてお母さんもお父さんも知ってるけど?」


 僕は開いた口が塞がらなかった。他言無用の計画をどうして彩さんだけじゃなく、華菜さんや持田父も知っているのか。それを考えただけで怖くなったよ。いろんな意味で。


「持田さんが喋ったんですか?」

「ううん。自分達で調べたけど?それが何か?」

「いえ、何でもありません」


 どうやって調べたかは永山の一件が終わった時に聞いてビックリした。今はこれだけ言っておこう。そして、帰り際に華菜さんと会って確認したら永山潰しを応援された事と協力出来る事があれば協力すると言われた事もね

今回は光晃と彩が喋る話でした

光晃は持田家に情報を握られる運命にあるのか、それとも、持田家の父、母、姉の情報収集能力がすごいのか

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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