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【過去編67】僕は不機嫌な時には態度に出るらしい

今回は持田さんの家から帰ってきた後からのスタートです

光晃はちゃんと学校に行けるのか?

では、どうぞ

 持田さんの自殺未遂があり、持田家に駆け付けた日。話は僕が持田さんの家を出て自分の家に帰った時の事。正直僕は自分の家までどうやって帰ったかは覚えていないので帰宅した後の話をしようと思う。


「ただいま……」


 どうやって家に帰ったかは覚えてない。気が付いたら家にいたって感じだし。でも、家に帰った後の事は覚えている


「おかえり、光晃。ってどうしたの?持田さんの家で何かあった?」


 出迎えてくれた真理姉さんはどうしてこんな事を聞いて来るのか僕には解らなかった


「何で?」

「何でって……光晃酷い顔してるよ?」


 どうやら真理姉さんが指摘してくるくらい酷い顔をしていたらしかった。自分の顔なんて鏡でもない限りは見れないからこの時の僕はどんな顔をしていたかわからないけど、第三者からしてみれば相当酷い顔をしていたらしい


「そっか……それより、僕は疲れたから寝るね」


 僕は教師である真理姉さんと話し続けると八つ当たりしそうで怖かった。目の前にいるのは真理姉さんであって永山や中学の教師連中じゃない。そんな事は頭では解っていた。でも、当時の僕はそこまで割り切れる程大人じゃなかったのも事実


「あ、うん、おやすみ……」

「うん……」


 フラフラと部屋に戻る僕。背後から真理姉さんが『光晃……』と不安そうに僕の名前を呟くのが聞こえたけど反応できる程の余裕はなかった



 部屋に戻った僕はそのままベッドに倒れ込んだ。ほんの数時間なのか、数分なのかは確認しなかったからわからないけど、とりあえず言えるのは短い時間の間で起きた事は中学2年生である僕が処理できるようなものじゃない。それだけだった


「持田さん……」


 持田さんに恋愛感情こそなかったけど、それでも、僕は持田さんを大切に思っていたのかもしれない


「クソッ……!」


 自分が思い上がっていた事に対する怒りなのか、それとも、自分の無力さからくる怒りなのか……そのどちらもなのか……。中学生だった僕にはわからなかったし、今でもわからない


「僕がしっかりしていればこんな事にはならなかったッ!永山がちゃんと対応していればッ!アイツはいつも僕と持田さんの距離感ばかり注意してきて結局肝心な事は何もしなかったッ!」


 この日の僕は自分の事を責めたのはもちろん、持田さんの親から苦情が入ってたにも関らずそれを蔑ろにし、相談を影で嘲笑うような真似をした挙句、僕と持田さんの距離感だけをしつこく注意してきた永山も責めた。もっと注意すべき事があっただろって。


「確かに僕にも至らない点はあった……でも、1番悪いのは誰だ?自分の子がイジメられていると苦情を受けたにも関らず蔑ろにした永山を始めとする教師じゃないか……」


 自分にも至らない点はあったと思う。例えば、僕が持田さんと知り合って最初にあったイジメは筆箱を隠すというものだった。このイジメが起きた時点で僕は犯人の女子2人に強く言っておくべきだったと思う。そうしたら宿泊学習でのフェイク財布盗難やその後の筆箱破壊は起きなかった。そこが僕の至らなかった点だ。でも、永山を始めとする教師陣は違う。華菜さんから何回も苦情があったのにそれを雑に扱った。イジメが改善されてなかったところを見ると中1から苦情は入れたけど、教師達は何もしなかったんだろう


「永山……それに、教師陣……ぶっ壊す!!」


 僕は持田さんの為、自分の為にも永山達教師陣を破壊する事を決意した。二枝の時のような生ぬるい手は使わない。なんてデカい事を言ってたけど、する事は大した事じゃない。ただ、教育委員会とか新聞社とかネット上に永山が職員室でしている話をばら撒くだけ。今でこそよくこんな法律に引っかかりそうな手を思いついたものだと思うけど、中学生の僕はそんな事をするほど永山が……いや、教師が憎かったらしい


「どんな事をしてでも永山だけは絶対に許さない……!」


 うん、中学生の僕は永山に対して相当な憎しみを抱いていたようだ。っと、話の続き続き。決意が固まった僕の行動は早かった。秀義達にイジメられた時から父の小型カメラと録音機は借りパク状態だったし、それに、この時は自分のパソコンもあった。まぁ、この日はそれらがちゃんと動くかどうかの確認だけして寝たんだけど




 次の日。前日に持田さんが大変な事になったにも関わらず僕は普段通りに起きた。持田さんの事が衝撃的じゃなかったわけじゃない。自分でも不思議だったけど……それはさておき、起床した僕は部屋から出てリビングへ


「あっ、光晃……」


 リビングに行くと真理姉さんがすでに起きていて朝食の用意をしていた。普段朝食を用意するのは僕の役目なんだけど、この日は珍しい事に真理姉さんが朝食を用意していた


「おはよう、真理姉さん」


 僕は何事もなかったかのように真理姉さんへ朝のあいさつをした。何事もなかったかのようにあいさつをしたけど、持田さんの事を忘れたわけじゃなかった


「お、おはよう、光晃……」

「うん」

「ちょ、朝食出来てるから」

「うん」


 僕はちょうどいいタイミングでリビングへやってきたらしく、テーブルには2人分の目玉焼きとパンが並んでいた。


「「…………………」」


 テーブルに就き、朝食を食べる僕と真理姉さん。でも、この日は2人とも無言のだった。普段の朝食で会話があるかと言われればないんだけどね。この日は普段とは違い、どこか気まずかった。結局僕達は朝食を食べている最中はずっと無言だった。朝食の最中どころか家を出るまで無言だったよ



 無言で家を出てそのまま学校へ行き、そのまま教室へ。永山もそうだったけど、教師陣が普段通り玄関前に立ちあいさつをしていたけど、僕はそれをガン無視した。あいさつを返さなかった事でドラマ厨と永山に絡まれたけど、それすらガン無視。この日の僕はそれくらい永山達が憎かったんだと思う


「よ、よぉ、光晃……」

「きょ、今日は持田は一緒じゃないのか……?」


 教室に入った僕はクラスメイト達から怯えられてしまい、誰も僕に話し掛けては来なかった。そんな時に話し掛けてきたのは秀義と鶴田君だった。この2人もそうだったけど、クラスメイト達は前日に持田さんに何があったかなんて知らないから僕が持田さんと一緒じゃない理由を聞きたがるのは理解できる。でもさ、この日に持田さんの話題はちょっとマズかったね


「今日は一緒じゃないよ。っていうか、この先も一緒になるかどうか危ういところだよ」


 虫の居所が悪かった僕は具体的に明言はしなかったけど、それに近い事を言ってしまった。よりにもよって大勢のクラスメイトがいる前で


「「えっ……?」」


 僕のこの一言で固まってしまった秀義と鶴田君。秀義達はもちろん、クラスメイト達も固まってしまった。“今日は一緒じゃない、この先も一緒になるかどうか危うい”これだけ聞いたら僕と持田さんが単に喧嘩しただけにも捉えられたはずなのに秀義達やクラスメイト達はどうして固まってしまったんだろう?


「えっ……?って何?僕は今日は一緒じゃないし、この先も一緒になるかどうか危ういってしか言ってないよ?僕と持田さんが単に喧嘩して一緒じゃないし、この先も一緒になるかどうかわからないってならないの?」


 喧嘩したら相手の顔を見たくないから別々に登校し、この先も仲直りできるかどうか危うい。そうは捉えられなかったのかな?


「光晃、俺はお前と長い事一緒にいるけどよ、お前が誰かと喧嘩して翌日まで引きずったところなんて見た事ないんだわ。だから、お前と持田が喧嘩したって想像しにくい」


 さすが幼馴染の秀義。僕の事をよく理解している。


「俺は小学校からの岩崎しか知らねーけどよ、岩崎が誰かと喧嘩したところなんて見た事ないぞ。それと、朝から不機嫌なところもな」


 小学校からの僕しか知らない鶴田君にさえ見破られた。つまり、僕は感情が態度に出やすいのかな?


「そう。僕は態度に出やすいのかな……?まぁ、秀義と鶴田君がそう言うならそうなんだろうけど。でも、さっき言った事は本当の事だよ。今日は持田さんと一緒じゃないし、この先も一緒に登校できればいいけど、もしかしたらもう2度と一緒に登校できないかもしれない。これだけは言っておくよ」


 この時点で僕は持田さんに何があったかを詳しくは言ってない。何があったかなんてすぐに解る事だったから


「そ、そうか……」

「…………………」


 僕の言った事に納得した様子の鶴田君と思うところがあったのか納得がいかない様子の秀義。小学校からの僕しか知らない鶴田君は言いくるめられても幼馴染の秀義は無理だったらしい


「どうしたの?秀義?今の説明で納得いかない部分があったかな?」

「…………………ちょっと来い」

「え?あ、ちょ、秀義!?」


 秀義に手を掴まれ僕は強引にどこかへ連れて行かれた。その様子に鶴田君もクラスメイト達も口を開けポカーンとしていたのは今でも覚えている。いつも明るい奴がいきなり手を掴み、強引にどこかへ連れて行くだなんて事をするだなんて誰も思わないだろう。



 秀義に手を引かれ連れてこられた場所は屋上だった


「光晃、持田と……いや、持田に何があったか話せ」


 屋上に連れてこられるなり秀義は僕と持田さんの間に何があったかではなく、持田さんに何があったかを話せと言ってきた辺り僕が持田さんと気まずくなったと最初から思ってなかったように捉えられる


「持田さんに何があったか僕が知るはずないでしょ」


 僕が持田さんに何があったか知るはずがない。普通の人ならこれで納得するはずだけど……


「誤魔化しはいい。もう1度言う。持田に何があったか話せ、光晃」


 僕を見つめる秀義の目は真剣そのもの。この時僕はこれ以上誤魔化しきれない事を悟ってしまった


「はぁ~、誤魔化しきれないか……いいよ、ここには僕と秀義だけしかいないから話してあげるよ。昨日持田さんに何があったか……いや、持田さんが何をしたかをね」

「最初からそうしろ。ちなみに、それって教室じゃ話しづらい事か?」

「そうだね、別に教室で話してもよかったけど、秀義や鶴田君を始めとする持田さんのイジメに加担せず彼女を護ってきた立場の人間はともかく、持田さんを傷つけてきた立場の人間がそれに耐えきれるかどうか……それを考えると教室では話づらいかな」


 秀義や鶴田君を始めとする持田さんのイジメに加担せずに彼女を護ってきた立場の人間でも何があったか聞いたら精神がその事実に耐えきれるかどうか危ういところだと思う。それが持田さんをイジメ傷つけてきた連中なら多分、その事実に耐えきれるはずがない。無能教師もそうだけど、イジメをする奴は自分が人を傷つけるのはいいけど、人に傷つけられるのは嫌だって人間が多いし


「そうか。で?昨日持田に何があったんだ?」

「何があったかってよりも持田さんが何をしたかなんだけど、昨日持田さんは自殺未遂をしたんだよ」

「え……?うそ……だよな……?」


 僕の言った事が信じられないのか言葉が出ないだろう秀義。僕だって初めて知った時は信じられなかったもん


「残念ながら本当。まぁ、持田さんが自殺未遂をしたって昨日の夜に持田さんのお母さんから電話を貰って慌てて駆け付けたから詳しい事は僕も完全に把握してないから説明できないけど、持田さんは遺書を残していた。そうまでして死のうとした」


 この時の僕は持田さんが自殺未遂を働く際に何を使ったか、どうして自殺未遂だって言い切れるのかを聞いてなかったからザックリとした説明しかできなかった。


「………………俺らのせいか?」

「違うよ。って言いたいけど、僕に関して言えば持田さんと長い時間一緒にいながらその変化に気付いてあげられなかったし、護ってあげられなかったからね。ある意味では僕のせい。そして、持田さんをイジメていた連中と永山を始めとする教師陣が無能だったせいでもある」


 僕が持田さんを護り切れなかったのは事実だ。僕も持田さんを追い込んでしまった人間の1人だというのは間違いじゃない


「そうか。とりあえず、持田をイジメてた奴らと永山達教師が悪いのは理解した」


 秀義は人の話を聞いてなかったんだろうか?僕も悪いって言ったよね?


「いや、理解してないじゃん。僕も悪いって言ったよね?ちゃんと人の話を聞いてたかな?」

「ああ、聞いてた。聞いてた上で光晃に聞くけどよ、持田の残した遺書にお前が悪いって書いてあったのか?持田のお母さんにお前が悪いって言われたのか?どうなんだ?」


 持田さんの遺書には僕が悪いとは書かれていなかったし、華菜さんからも彩さんからもハッキリお前が悪いとは言われなかった


「そ、それは書いてなかったし、持田さんの家族にもお前が悪いとは言われなかったけど……」

「じゃあ、お前は悪くない!悪いのはイジメてた奴らと教師連中だ!」

「そう……なのかな……?」


 この時の僕は正直わからなかった。いや、違うか。本当は誰かに否定してほしかっただけなのかもしれない。お前は悪くないと言ってほしかっただけなのかもしれない


「そうだ!お前は持田を護っただろ!だから、お前は悪くない!」

「それならいいんだけど……」


 この時、僕は少しだけ救われた気がした


「おう!んで?お前はどうするつもりなんだ?」

「え?どうするって?」


 どうするかなんて決まり切っていた。でも、僕がどうするかを秀義が聞く意味が理解できなかった。次の言葉を聞くまでは


「決まってんだろ?教師や持田をイジメてた奴ら全員を潰すのか?って聞いてるんだよ」

「そうするつもりだって言ったらどうするの?止めるの?」

「え?止めるわけないだろ。それに、お前が今からやろうとしている事って多分、二枝先生にした事よりも酷い事をしようとしているだろ?」

「あ、うん、まぁ……」

「だったら俺が手伝ってやるよ!」


 秀義が手伝ってくれるなら百人力だ!とはならなかった


「え?いいの?部活とかもあるのに?」

「いいんだよ!どの部の顧問も怒鳴ってばかりだし、それによ、この学校の教師って全然仕事してねーじゃん。いつもいつも俺らの愚痴を職員室で話してるだけだろ。それも、大声でな」


 生徒の愚痴を職員室で話している事もそれが大声だって事も秀義は知っていた。つまり、コイツも僕とほぼ同じ事を思っていたのかもしれない


「知ってたんだ」

「まぁな。まぁ、永山の持田への愚痴は俺も聞いてて気分がいいものじゃなかったからな。そろそろ潰れてほしいと思ってたところだ」


 驚いた事に秀義は永山が持田さんの愚痴を話していた事まで知っていた


「そっか。じゃあ、協力してくれる?」

「もちろん!」


 こうして僕と秀義による持田さんの敵討ち擬きが幕を開けた


「ところで、どうして永山が持田さんの愚痴を大声で話していたの知ってるの?」

「そんなの部活関係で職員室に行く事が多いからに決まってるだろ」


 この日、僕が思ったのは持つべきものは部活動をしている幼馴染だと思った





今回は持田さんの家から帰ってきた後からのスタートでした

光晃と秀義が共同で何かをするのは多分これが初めてになるかもしれません。それはさておき、光晃は一応、立ち直りました。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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