【過去編61】宿泊学習初日に面倒な事が起こる
今回は宿泊学習初日に面倒な事が起こる話です
昨日間違えてコッチを投稿してしまったので途中までは多分みんな知っていると思います
では、どうぞ
特に興味も関心もなかった宿泊学習。ホテルに着き、教師や代表生徒の長ったらしい話が終わりようやく自由時間になり僕達が宿泊する部屋にやってきた。秀義を始めとする他の生徒は余所の部屋に遊びに行ったりしていた中、僕は……
「う~だ~……」
布団に寝転びうだっていた。一応、ジャージには着替えていたので文句を言われる心配もない
「バスの中では秀義や他の連中から弄られ、ホテルに着いたら着いたで教師や代表生徒の長ったらしい話……これじゃ制約付きの旅行というよりも出家だよ……」
幸いな事にこの時は部屋に僕1人だったので宿泊学習に対する愚痴を聞かれる心配は全くなかった。そんな時、事件は起きた
「光晃!!大変だ!!」
静かなひと時を過ごしていたところで秀義が勢いよくドアを開け、大慌てで部屋に入ってきた
「何?人の至福の時を邪魔して……」
1人部屋で至福の時を満喫していたところを邪魔された僕の気分は最悪だった
「今女子の部屋で大変な事が起きてるんだよ!!」
どうして秀義が女子の部屋事情を知っていたのかはツッコまない事にして、何が大変なのかが気になった
「大変な事って何?ゴキブリが出たとか?それとも、呪いのアイテムが見つかったとか?そりゃ大変だ」
持田さんがイジメられている事は秀義と須山の話を聞いて知っていた。それに、筆箱を隠されるという事もあったから宿泊学習でも何かしてくる事は十分に考えられた。対策は万全だったけど、それ以外で大変な事が何か僕には想像が付かなかった
「ちっげーよ!持田の財布が盗まれたんだよ!!」
秀義の言っていた大変な事とは筆箱に引き続きまたも盗難だった。しかも、この時は財布。普通なら大慌てするところだろう。そう、普通ならね
「そう。で?何が大変なの?」
普通ならすぐ駆け付けてるところだけど、僕は全てを知っていたのでそんなに慌てる必要なんてなかった
「何がって……お前!財布だぞ!?金が盗まれたんだぞ!?」
僕の言った事が気に入らなかったのかツカツカと歩いてこちらに向かってきた秀義に胸倉を掴まれた
「財布が盗まれたからってお金が盗まれたとは限らないだろ?」
人間ってのは不思議なもので1度思い込むとそこから抜け出せない事がある。この時の秀義もそうだった。財布が盗まれた=金が盗まれたと思っていた。財布はお金を入れるものだから仕方ないっちゃ仕方ない。でも、財布が盗まれたからといってお金が盗まれたとは限らない
「はぁ!?財布が盗まれたんだから金が盗まれたも同義だろ!光晃、お前頭大丈夫か?」
心底心配そうに僕を見る秀義。出発前に財布が盗まれるだろうって話をした事とそれについては対策済みだって話をした事をコイツは覚えてないのか?それを考えると頭が痛かった
「そういう秀義こそ頭大丈夫?出発前にした話覚えてないかな?」
秀義が余程のアホじゃない限りは出発前にした話を覚えているはずだけど……
「覚えてる!覚えているが、持田の財布は盗まれたんだぞ!」
「はぁ……わかったよ。持田さんのところに行こう」
僕は溜息を吐き、慌ててないだろう持田さんの元へ行く事を提案した。持田さんをイジメている連中をバカにするいい機会だったから別によかったんだけど
「当たり前だ!持田は財布を盗まれたんだからな!」
「はいはい。じゃあ、ちょっと準備するから外で待ってて」
「え!?ちょ!?光晃!」
「いいからいいから」
騒ぐ秀義を僕は半ば強引に部屋の外へ追い出した。
「さて、うるさいのがようやくいなくなった」
秀義を追い出した僕はカバンの中からあるものを取り出し、それをポケットに入れた
「宿泊初日で面倒な事になるとは……なんて愚痴っても仕方ないし待たせすぎると秀義がうるさそうだから行きますか」
これ以上待たせると騒ぎ立てると思い僕は面倒だとは思いつつ部屋を出た
「おっせーぞ!光晃!」
待っていた秀義は案の定苛立っていた。
「ごめんごめん。それよりも持田さんのいる部屋に行くのが先決でしょ?」
「おう!」
苛立っていた秀義を適当に宥め、僕達は持田さんのいる部屋へ向かった
持田さんのいる部屋の前に辿り着くと人だかりができており、とてもじゃないけど持田さんのところまで辿り着くのは困難を極めていた
「これじゃ持田さんのところまで行けないじゃん」
「だな……」
秀義はこの時どう思ったかは知らないけど僕はこの時に思ったのは面倒な事になった。それだけだった
「どうするの?これ?」
「さ、さぁ……どうするんだろうな?」
財布の中にお金が入っていてもいなくても学年集会は避けられないだろうと当時の僕は思っていた
「こんなに人が集まってるんじゃ持田さんのところまで辿り着けないよ?」
「それなんだよなぁ……」
目の前の人だかりをどうしようか僕と秀義は途方に暮れるしかなかった。
「君達!ちょっと通して!」
僕達の後方から担任の声がし、人だかりが徐々にではあったけど人だかりが捌けていき、持田さんとそれに寄り添う女子の姿があった
「先生……」
財布を盗まれた当人である持田さんは泣いてこそいなかったけど、不安気な表情は浮かべていた。
「何があったの?持田さん」
持田さんの不安を少しでも解消しようとしたのか優しい口調で問いかける担任
「実は……お財布を盗まれてしまいまして……」
「そう。それに気が付いたのはいつ頃?」
担任のこの問は答えによっては同じ部屋に宿泊している人が疑われる問いかけだ。場合によっては学年全体が疑われる可能性だってある
「いつ頃……このホテルに着いてバスを降りた時はまだあったと思うんですけど……」
ホテルに着いてバスを降りた時にはまだあったという事は道中で立ち寄ったところで落とした可能性はないという事だったけど、持田さんの答えは“あったと思う”だけで完全にそうだとは言ってない
「このホテルに着いた時にはあって無くなった事に気が付いたのはいつ?」
当たり前だけど、ホテルに着いた時にはあって気が付いたら無くなっていた。そうなるとホテルの中で亡くした可能性は大いに考えられる
「そうですね……お部屋に来てカバンの中を整理していた時にふとお財布がないなって思ったんです。それでカバンの中全体を探したんですけど見つからなくて……」
持田さんの口ぶりからして多分、カバンの中身を全部出して探したけど無かった感じだった
「それで?部屋の中は探した?」
「はい、一応は……」
宿泊学習初日で面倒な事が起きた。そして、この宿泊学習を機に歯車は狂っていったと思う。主に担任の
「はぁ……まさか宿泊学習初日に盗難事件が起こるとは……」
この時の担任は口にしてないにしろ呆れの色が見えた。
「ご、ごめんなさい……」
「いいの。持田さんが悪いんじゃなくて悪いのは盗んだ人だから」
「は、はい……」
担任の言う通り悪いのは財布を盗んだ犯人であり持田さんではない。だから被害者である持田さんが気にする事は何もない
「とりあえず私はホテル側と他の先生にもこの事を伝えに行くから」
「はい、よろしくお願いします……」
持田さんと話し終えた担任は野次馬となっている生徒達へ部屋に戻るように指示を出してその場を後にした。僕は持田さんと一瞬だけ目があったけど特に会話をする事なく部屋へ戻った。
「あ~、マジ最悪!」
「だよな!何で俺らまで部屋で待機なんだっつー話だよ!なぁ!光晃もそう思うだろ?」
部屋に戻ってきた僕達。秀義は同じく部屋に戻ってきた男子生徒と戻された事に対して愚痴を零していた。そんな2人とは違い僕は窓の外を見ていた
「まぁ、自由時間を潰されたのは確かに腹立たしいねとは思うよ」
宿泊学習の最大の楽しみは自由時間だ。それを潰されたとなれば怒りもする。僕は特に行きたかった部屋とかないからそんなに怒りは込み上げてこなかったけど
「だよな!光晃もそう思うよな!ったく!犯人め!宿泊初日からこんな事しやがって!」
「本当それな!」
怒れるルームメイト2人に対して僕は特にこれと言った事は何も思わなかった。
「盗みたいほど持田さんの財布が欲しかったんでしょ」
持田さんのイジメに関しては対策済みだったので財布が盗まれた程度では僕は動じなかった。それこそ怒りもしなかった
「はあ!?財布を盗まれたんだぞ!?岩崎は何も思わないのかよ!」
僕に掴みかかってきた男子生徒は自分の財布が盗まれたわけじゃないのに自分の事のように怒っていた
「そうだぞ!光晃!お前には人としての感情がないのかよ!」
男子生徒同様に秀義も怒りを露わにしていた。コイツは出発前に僕が言った事を忘れたのか?
「人としての感情はあるよ。僕にもね」
人としての感情はある。ただ、持田さんの財布を盗んだ犯人には思うところがあるだけで
「だったら!だったらもう少し怒れよ!持田の気持ちを考えろよ!」
余程正義感が強いのか怒り狂う男子生徒。こりゃ持田さんの財布盗難事件を解決する前に僕達が喧嘩しそうだと思った僕は秀義と男子生徒にカラクリを喋る事にした
「持田さんの気持ちねぇ……まぁ、それを考えるのは僕の話を聞いてからにしてくれないかな?」
「「話?」」
秀義達は怪訝そうな顔で僕達を見つめてきた
「そ、話。その前に君は僕達と同じ小学校出身だっけ?」
話をする前に秀義は小学校6年間同じクラスだったからいいとして、男子生徒の方はよく覚えていなかったので僕達と同じ小学校出身かどうかを確認しておく必要があった
「お前、俺の事覚えてないのか?」
「うん。小学生の頃は秀義か親しくなった人以外とはあまり会話しなかったから君が同じ小学校だったかどうかはちょっと……」
本人を前にして覚えてないとは言えなかった
「嘘だろ……6年間ずっと同じクラスだったのに……」
僕は覚えてないとは一言も言ってないのにガッカリした様子の男子生徒がそこにいた
「光晃……さすがにお前それは酷いぞ?」
秀義も軽蔑の眼差しを向けてきた
「な、何かごめんね?」
居たたまれなくなった僕はただ謝るしか出来なかった
「いや、いいんだ……岩崎とは同じクラスだったけど、ちゃんと話したのは今日が初めてだからな……」
「うん、ホントごめん」
僕に覚えられてない事がそこまでショックだったとは……
「と、とりあえず自己紹介から始めようぜ?な?」
気まずい雰囲気を何とか盛り上げようとしてくれている秀義。こういう時にはコイツがいてくれて助かったと実感できる
「そ、そうだな……」
「うん……」
「それじゃあ!自己紹介だ!まずは光晃!」
この時の秀義は合コンの幹事に見えたのは僕の気のせいだったんだろうか?
「僕は岩崎光晃。よろしく」
「よろしくな、岩崎」
「うむ!次はお前の番だ!」
僕と男子生徒が握手する中、司会者のように男子生徒へ自己紹介の催促をする
「あ、ああ、俺は鶴田守だ。よろしくな」
「うん。よろしく。鶴田君」
「ああ!よろしくな!」
僕と鶴田君は互いに自己紹介を終えた。これで後は持田さんの事について話をするだけかと思われたけど、自己紹介が終わってすぐに秀義が自分もやると言い出し、仕方なく僕達はそれに付き合う事に。そして──────
「秀義の自己紹介を終えたところで本題に入りたいんだけどいいかな?」
「ああ!」
「おう!」
本題に移る事にした
「えーっと、鶴田君にとっては初耳だと思うから順を追って説明するね?」
秀義にもヒントはあげたけど、解りやすいものじゃなかったから僕は順を追って説明する事にした。当然、弄られるの覚悟で
「いや、結論だけ言ってくれ」
順を追って説明するという僕を制し鶴田君は結論だけを求めてきた
「え?でも、順を追って説明した方が解りやすいと思うけど?」
「いやいや、結論だけ教えてくれよ。そうなった課程は後で聞くからよ」
どこか厭らしい笑みを浮かべてた鶴田君。その笑みは秀義と同じ笑みだった
「鶴田君がそう言うなら結論だけ言うけど持田さんの盗まれた財布はフェイクだよ」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
この時、僕達の部屋にはむさ苦しい男子が上げる驚きの声が響き渡った
今回は宿泊学習初日に面倒な事が起こる話でした
昨日間違えてコッチを投稿してしまったので前半は知ってる人が多いと思います。さて、次回は持田さんの財布について男同士で談義!!いや、女子の財布について男だけで語り合うってどうなんだろう
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました