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【過去編59】どんなキャラを作っていても親は親だと思う

今回は持田さんの母との話し合いです

おっとりし、間延びした喋り方は持田母の本当の喋り方なのか

では、どうぞ

 持田さんから母と姉が僕と会ってみたいと言われ持田家に来た僕。最初は何かしてしまい悪評が母と姉に伝わり説教でもされるのかと思っていたけど、実際は違った。持田家に来た僕は最初持田さんの部屋に通されたけど、帰宅したと思われる持田さんの母───華菜さんと対面した。そして、華菜さんは持田さんを唆し、部屋に帰るように仕向け、僕は華菜さんと2人きりになってしまった


「あの……」

「とりあえず立ち話も何だから座ろっか?お茶でも入れるわぁ~」

「はい……」


 こうして僕はテーブルに着いた。


「岩崎君は紅茶とコーヒーどっちがいいかしらぁ~?」


 キッチンから華菜さんの声がした。中学2年生くらいになると背伸びして飲めもしないコーヒーを無理して飲もうとする奴がいるけど僕はそんな事しなかった。とどのつまり紅茶を選んだって事


「紅茶でお願いします」

「わかったわぁ~」


 華菜さんは持田さんと違っておっとりした女性だ。そんな事は会ってすぐにわかった。でも、その事についてどこか違和感も感じていた。そんな違和感を感じながら待つこと3分


「お待たせぇ~」

「いえ、そんなに待ってません」


 華菜さんが2人分のマグカップを持ってキッチンから戻ってきた


「そうぉ~?私としては待たせた方だと思うんだけどなぁ~」

「そうですか?僕はそんなに待ったつもりはないんですが……それより、大事な話って何でしょうか?持田さんの学校での過ごし方ですか?」


 僕は出された紅茶に手を付けず本題へ入ろうとした。おっとりした女性に苦い思い出はなかったけど、この人は持田さんの学校生活について何かを知っている。母親だから知ってて当然なんだけどさ


「あらあら、岩崎君はせっかちなのねぇ~少しくらいおばさんとのお茶を楽しもうとは思わないのかしあぁ~?」


 おばさん。華菜さん程その言葉が似合わない人はいなかった


「お茶は楽しみたいですよ。ですが、貴女は持田さんの事について知りたい事があったから僕を呼ぶように言ったんですよね?」


 持田さんの事について知りたい事────正確には持田さんの学校生活だ


「あらぁ~、岩崎君はお見通しなのねぇ~?そうよぉ~?私は彩菜の学校生活が知りたいのぉ~」


 華菜さんは自分が知りたい事についてはアッサリと自白した。


「それなら本人に直接聞けばいいんじゃないんですか?どうして僕に?」


 学校生活の事については本人に直接聞けばいい。僕に聞く意味なんてない。でも、中学生なんて大人に反発したい年頃でもある。学校の事について親に話したくないという子もいるだろう。特に都合の悪い部分は


「そうねぇ~、岩崎君が彩菜を護ってくれるって言ったからかしらぁ~」


 華菜さんが言ってるのは秀義との会話の後で持田さんとした約束だという事はすぐに気づいた


「はあ、それは言いましたけど、それだって絶対とは言い切れません。それに、さっきから気になってた事があるんですけどいいでしょうか?」

「何かしらぁ~?」

「持田さんのその喋り方って素じゃないですよね?」

「………………」


 喋り方について指摘した途端に黙ってしまった華菜さん。もしかして気を悪くしたのかと思った。でも、そうじゃないとすぐに知る事になる


「気を悪くしたのなら謝ります。ですが、僕にはなんだか自分を試されていると思えてならないんですよ」


 本心から言えば別に華菜さんがキャラを作っていようとそうでなかろうとどっちでもよかった。でも、二枝の時みたいにキャラ崩壊を起こして疲れるのは嫌だった。精神疲労的な意味で


「そっか……岩崎君にはすぐ見破られちゃうんだ……さすが、小学生で教師を1人壊しただけあるわね。壊した教師の名前は二枝知佳さんだっけ?」

「──────!?」


 僕は驚きが隠せなかった。だってそうだろ?僕は中2になり、同じ班になるまで持田さんの事なんて知らなかった。娘である持田さんを知らなかったんだから母である華菜さんの事なんて知る由もない。だというのに華菜さんは僕が過去にした事を知っていた


「随分驚いているようね。どうして私が岩崎君が小学校でした事を知っていると思う?」

「さあ?どうしてと言われましても。学校には僕と同じ小学校出身で同じクラスだった人もいます。その人から聞いたんでしょ?」


 僕と同じ小学校出身、同じクラスだった奴から持田さん経由で聞けば華菜さんが二枝を壊した……いや、依存させた事を知っててもおかしくはなかった


「違うわよ。そもそも、彩菜に岩崎君以外の友達なんていないわよ」

「そ、そうですか……」


 自分の娘に対して友達が1人しかいないだなんて酷い事を言う親だ。残念な事に秀義は持田さんの友達としてはカウントされてなかったらしい


「ええ。それにしても二枝知佳さんって随分と岩崎君に懐いてるのね。ビックリしちゃった」


 華菜さんが取り出したのは1枚の写真。その写真は温泉街に2人で行った時のものだった


「それをどうやって……」

「どうやってって普通に手に入れたけど?あ、岩崎君達が行った温泉って私の父が経営してるのよ。それで父から平日の昼間なのに中学生と思しき子と若い女性が来たって事で写真が送られてきたの」


 華菜さんが言っている事にはおかしな点が多すぎた。まず1つ。平日の昼間に温泉に来る中学生と若い女性なんて探せば世の中にはたくさんいる。僕達だけ珍しいというのはあり得ない。もう1つ。いくら珍しいとはいえ店側が写真を勝手に撮った挙句、それを身内とはいえ第三者に送るのはあり得ない


「写真を持っている事については何も言いませんが、世の中は広いんですから平日の昼間に若い女性と2人で温泉街に行く中学生だっているでしょ。それに、珍しいからと言ってそれを身内とはいえ第三者に送るだなんてあり得ません」

「そうしれないわね。でも、私の父はそういう人だから」


 そういう人だからと言われてしまったら僕は納得するしかなかった


「そうですか。それで、どうして僕が過去に教師を壊した事を貴女が知っているんです?それを知っているのは僕と同じ小学校出身でクラスも一緒の人しか知らないはずなんですけど?しかも、二枝先生が僕に懐いてるだなんて事はごく一部しか知らないはずなんですけど?」


 二枝が僕に懐いてる事を知っているのは秀義と宮村さんくらいだった。喋るとしたら秀義くらいだと思っていた。


「そうね。本来ならそうなのかもしれないわね。岩崎君は伊藤という苗字に聞き覚えはないかしら?」

「伊藤ですか?さぁ?伊藤だなんて苗字の人は多いんで聞き覚えないかと言われても困ります」


 伊藤なんて苗字は珍しくない。探せばいくらでもいる。その証拠に中2の時のクラスに1人いた


「私の聞き方が悪かったわね。岩崎君が小学校6年生の時に伊藤という教育実習生が来なかったかしら?」


 教育実習生で伊藤。僕に絡んできて最終的には宮村さんに押し付けた奴だった


「僕にしつこく絡んできて最終的には別の子に押し付けた教育実習生ですね」

「その伊藤先生は私の姪っ子よ」


 世の中って狭いんだと思った瞬間だった


「そうでしたか。それなら二枝先生の事を知ってても納得がいきます」


 これ以上の問答は無駄だと判断した僕は聞きたい事があったけど、一応納得した。


「解ってくれて嬉しいわ。そろそろ本題に入りましょうか」

「そうですね。貴女は持田さんの何を僕に聞きたいんですか?」

「言ったでしょ?私は彩菜の学校生活を知りたいだけ。それじゃ納得できない?」

「はい。持田さんの学校生活の何を知りたいのか具体的にお願いします」


 持田さんの学校生活だけじゃ僕は普通に勉強してますくらいしか言えない


「そうね。彩菜は1年生の頃イジメに遭っていたのは知ってるわね?」

「ええ。名倉君や須山君から聞いてます」

「私が聞きたいのはそのイジメが収まったのかどうかよ」

「なるほど」


 華菜さんの聞きたい事は持田さんのイジメが収まったかどうか。確かにこんなのとてもじゃないけど本人に聞ける内容じゃない


「1年の頃に受けていたイジメの事だって聞き出すのに苦労したわ。でも、それが続いてるかどうかを聞き出すのはもっと苦労するの。だから今日彩菜に最も近いであろう岩崎君を呼んだのよ」


 聞いてもいないのに僕を呼んだ理由を言う華菜さん。1年の頃からイジメを受けていたのは秀義や須山の話で知っていた。華菜さんの場合は1年の頃に様子がおかしかった持田さんに問いただしたらイジメられている事が発覚したってところだろう


「僕が呼ばれた理由は解りました。現状から言うと筆箱を隠された日以降はこれと言ったイジメはないと思いますよ」

「それならいいわ。私は彩菜が楽しそうに学校に通ってくれればそれでいいから」


 楽しそうに学校に通う。親ならみんながそう思うんだろうけど、この時の中学校教師陣の面子を考えると学校に通う事を楽しめるとは思えなかった


「そうなんですか?」

「ええ。それに、岩崎君が彩菜を護ってくれるのなら安心よ」


 絶対に持田さんを護れるという保証なんてない。なのにどうして華菜さんの僕への信頼は妙に高いんだろうって思った


「持田さんの事を常に護れるという保証はありませんよ?」

「そんな事は理解してるわ。だから私は岩崎君に彩菜を絶対に護ってくれだなんて言わない。でも、彩菜を裏切らないであげて」


 裏切らないであげてか……真理姉さんも似たような事を言っていた。未だに人に寄りかかる意味は理解できない。ただ、この時の僕は持田さんの側にいようと思った


「僕は持田さんを裏切ったりしませんよ」

「それならいいわ」


 持田さんを裏切ったりしないという事で華菜さんとの話し合いは終了。僕は持田さんの部屋に行く事にしようと思ったけどそれより先に持田さんがリビングへ来た


「岩崎君、お母さん、話し合い終わった?」

「ええ~終わったわよぉ~?楽しかったわよねぇ~?岩崎君」


 娘がリビングに入ってきた瞬間、華菜さんのキャラがおっとりに戻った。変わり身早くない?


「そ、そうですね、楽しかったですね」


 僕はそんな変わり身の早い華菜さんにドン引きしつつも言葉を紡いだ


「それならいいけど……ごめんね、岩崎君。こんなおばさんの相手をさせて」

「いいよ。持田さんのお母さんだって持田さんの学校生活が気になったから僕に聞いてきたわけだし」

「そ、そっか……ところで岩崎君」

「何?」

「私の学校生活についてお母さんに変な事言わなかった?」

「別に普通に過ごしてますって言っただけだけど」

「それならよかった。お母さん────おばさんは変な事聞く習性があるからちょっと心配だったんだ」


 今じゃ僕も真理姉さんの事を時々ゴリラと呼ぶから強くは言えないけど、持田さん……自分の母をおばさんってちょっと酷くない?


「あ~や~な~?だぁ~れがおばさんですってぇ~?」


 これまで口を開かなかった華菜さんが満面の笑みを浮かべていた。ただし、青筋を立て、目は全く笑っていなかったけど


「お母さんしかいないでしょ!それに、岩崎君の前でおっとりキャラ作ってもすぐに見破られちゃうわよ!」

「そんなの知ってるわよ!2人きりになった時に見破られたから!じゃなくて、私はまだおばさんじゃないわ!訂正しなさい!」

「嫌!!私からしてみればお母さんは立派なおばさんよ!」


 客である僕を差し置いてギャアギャアと騒ぐ持田親子。学校では大人しい持田さんの意外な一面を見る機会が多い1日はこうして過ぎた。ちなみに、持田さんの家で昼食をごちそうになった後、宿泊学習で何が起こるかわからない。特に金銭関係で何かが起こるかもしれないという事で持田さんと2人で財布を買いにショッピングモールに行った。1つ残念だったのは持田さんの姉とは時間が合わずに会えなかったという事だった。

今回は持田さんの母との話し合いでした

おっとりし、間延びした喋り方は持田母の本当の喋り方ではありませんでしたが、娘を思う親心は本心。という事でした

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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