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【過去編57】間抜けに悪い事を隠すのは無理があると思う

今回は持田さんの筆箱紛失事件が解決する話です

間抜けに悪い事を隠すのが不可能なのか、それとも、間抜けだから悪い事を隠せないのか?

では、どうぞ

 秀義に須山を呼んでもらい、持田さんが中1の頃、どんな過ごし方をしたか、似たような事は前にもあったのか、須山自身は人のものを隠す陰湿な事をする人間をどう思うかを質問し、須山がそれに答えるところから話そうと思う


「まず1つ目だけど、去年の持田さんは今と同じ……いや、今は岩崎君がいるから同じとは言えないけど、そうだね。いつも1人で過ごしていたよ」

「そっか。で、1人でいる持田さんに須山君が声を掛けた。そういう解釈でいいのかな?」

「ああ。みんな仲良くとは言わないけど、やっぱり1人よりも友達といた方が楽しいと思うからね」

「友達といた方が楽しいとかどうかは人それぞれだ。須山君が1人でいる持田さんを放っておけないと思って声を掛けるのもね。じゃあ、次の質問に答えてもらっていいかな?」

「似たような事は前にもあったのか?だね?」

「うん。今回は筆箱だったけど、前にも同じような事があったのかな?」


 秀義の話によると持田さんは中1の頃から同じ小学校出身の奴にイジメられていた。つまり、筆箱じゃないにしろ所持品を隠された事が過去にもあったに違いない。僕はそう考えた


「そうだね。前にも持田さんは2回持ち物を隠されている。1回目は教科書。2回目はノートだよ」


 過去にも同じ事があったと言う須山。解決方法は聞かなくても大体はわかった。中1の時の担任がHRか授業のどちらかを潰して犯人捜しをした。さすがに犯人もそんな事をされたらどこかに落ちていた事にして持田さんの所持品を出さざる得ない


「ふ~ん、前にも同じ事がねぇ~……それも2回も……」


 須山の答えを聞いた僕は1度教室内を一瞥した。その結果、僕の思った通りだった


「岩崎君、何かわかったかい?」


 教室を一瞥した僕に爽やかスマイルを浮かべて質問する須山は好青年に見えた。


「犯人の目星は付いたけど、これだけだと決定打に欠ける。最後の質問に答えてもらっていいかな?」


 犯人の目星が付いたと言うよりも質問の時点で犯人は若干だけど反応を示した女子生徒2人に絞ってあったので仮定が確信に変わったと言った方が正しかった


「人のものを隠すような陰湿な事をする人間についてどう思うか?だよね?」

「うん。須山君はどう思う?そう言う事をする人間について」


 過去の事をネチネチ言っても仕方ないけど、須山は過去に秀義、宮村さんと一緒に僕をイジメてきた人間だ。まぁ、イジメられていた当人である僕はそれを気にも留めてなかったんだけど


「そうだね。僕も過去に岩崎君に対して似たような事をしたけど、それでも僕は人のものを隠すような陰湿な人間は嫌いだな」

「そう。じゃあ、もし仮にそういった事をする人間に“好きです。付き合ってください”とか自分と友達になってほしい的な事を言われたらどうする?」


 僕は須山達から過去にイジメを受けたけど、所持品を隠されたりした事はなかった。


「自分も過去に同じような事をした事があるから強く言えた立場じゃないけど、僕は人の持ち物を隠すような陰湿な人間とは付き合いたくないし、友達にもなれない」

「だよね。付き合ったらいつ自分のものを隠されるかわかったものじゃないし、友達になったとしても常に疑わなきゃいけないもんね」

「ああ。僕は自分の彼女を疑うような真似はしたくないし、信じられる友達がほしいからね」


 須山のこの言葉は僕が犯人だと断定した女子生徒2人だけじゃなく、他の生徒も若干反応した。反応しなかったのは僕と同じ小学校出身の人と持田さんくらいだった


「そっか。質問に答えてくれてありがとう、須山君」

「いいよ。俺の答えで持田さんの筆箱が見つかるならそれでね」


 須山の答えで筆箱が見つかるなんて事はない。コイツの答えで見つかるのは筆箱を隠した犯人だ


「須山君の答えで筆箱は見つからないよ」

「「「えっ……?」」」


 質問に答えてくれた須山、須山を呼んできた秀義、当事者である持田さんはもちろん、話を聞いていたクラスメイト達も意外そうな顔をしていた


「えっ……?って何?僕は持田さんの探し物が見つかるとは言ったけど、それが筆箱だとは一言も言ってないよ?」

「いや、でも光晃さっき持田の探し物が見つかるって言ったじゃねぇかよ!」

「確かに秀義の言った通り持田さんの探し物は見つかるとは言ったけど筆箱とは一言も言ってない。それにさ、秀義も持田さんも須山君も筆箱を探しに行ったメンバーもそうだけど、筆箱が喋ると思う?」


 持田さんは筆箱を探していた。秀義を始めとするクラスメイトの一部に手伝ってもらってまで。でも、筆箱が見つかった様子はなかった。じゃあ、次は何を探すか?そんなの決まっている。筆箱を隠した犯人だとね


「い、いや、筆箱に音声再生の機能でもない限り喋らないだろ。光晃、お前頭大丈夫か?」


 頭のおかしい秀義に頭の心配をされるのは非常に心外だった。でも、秀義の言ってる事は間違ってなかった


「頭は正常だよ。僕が言いたいのは秀義を始めとする筆箱を探しに行ったメンバーは多分、秀義が呼びに行くまで筆箱を見つけられなかった。そうでしょ?」


 僕の問いかけに筆箱を探しに行ったメンバーは『ああ……』とか『うん……』とか言っていた。当然、秀義も──────


「ああ、いくら探しても持田から聞いた柄のものは見つからなかった」


 筆箱捜索隊と同じ事を言った。この時点で考えられるのは2つ。隠した場所が男子しか入れない、あるいは女子しか入れない場所にあるか犯人がまだ持っているかだ


「そう。ところであんまり言いたくないけど、男子トイレとか女子トイレは探したの?」


 自分の持ち物がトイレに隠されているだなんて気分が悪くなるけど、聞かないわけにはいかなかった


「おう、念のために男子トイレと女子トイレは探してみたが、どこにもそれらしきものはなかったぞ」


 男子トイレにも女子トイレにもなかったという事は1つしかない


「そう。じゃあ、持田さんの筆箱はまだ犯人が持ってるって事になるけど……」


 犯人の目星は付いていてもどうやって追い詰めるかが問題だった。


「そうなのか!?じゃあ、さっさとソイツに追求すればいいだろ!」


 追求すればいい。秀義は簡単に言うけど、言うほど簡単じゃない


「あのねぇ、追求すればいいって簡単に言うけどそれをやったっていう証拠かやってた場面を見た人がいないと難しい部分だってあるんだよ。秀義みたいに根性でどうにかしようってわけにはいかないの」

「す、すまん……」


 シュンとする秀義。根性だけで何でも解決出来るのなら誰も苦労はしない。そうじゃないから苦労している。そもそも、持田さんはどうして中1の時からイジメられていたんだろう?と僕は筆箱とは全く関係ない事を考えていた


「大体、持田さんは中1の時からイジメられてたって秀義から聞いたけどそれに対して持田さん本人や当時一緒のクラスだった須山君は何もしなかっ──────ん?去年からイジメられてた?」


 僕は持田さんと須山に去年からイジメられていたのならちゃんと対策しろと小言を言おうとして閃いた。犯人は須山に質問した時に若干反応した女子生徒2人の内どちらかか両方だと確信はしていた。証拠がないだけで


「どうした?光晃?何か閃いたのか?」

「うん。持田さんと須山君に聞きたいんだけど、1回目は教科書、2回目はノートを隠されたってさっき須山君が言ってたけど、それって本当?」


 同じ質問をするのは好きじゃない。だけど、確固たる証拠を出させるには必要な事だった


「ああ。本当だよ。僕が持田さんと同じクラスだった時に1回目は教科書、2回目はノートを隠されていた。だよね?持田さん?」

「うん……確かに初めて隠されたのは教科書で次に隠されたのはノートだよ」


 須山だけじゃなく持田さん本人がそういうのなら間違いはない。僕はその場面を直接見たわけじゃないから何とも言えなかったけど


「持田さんが席を外した時に隠されて戻ってきたらなかったのは当然の事なんだけど、その隠されたものって最終的には持田さん自身が見つけたの?」


 僕にとっては何を隠したか、いつ隠されたかが問題ではなかった。問題なのは誰が見つけたかだった


「ううん……隠された時私も須山君達に手伝ってもらって今みたいに探したんだけど結局見つからなかったよ」

「そう。じゃあ、一体誰が見つけたの?持田さんが頑張って探しても見つからなかったんでしょ?」


 持田さんの探し方が悪いと言ってしまえばそれだけだ。でも、それだけじゃ片付かない事だってある


「それはあの2人が見つけてくれたの」


 持田さんが指差したのは2人の女子生徒。当然、僕は2人の名前なんて覚えてない


「ふ~ん……」

「「──────!?」」


 持田さんが指差した時は何の反応も示さなかったのに僕が見た瞬間身体がビクッと跳ねた。そんな事はお構いナシに僕は女子生徒2人に近づいた


「ねぇ、君達。持田さんの筆箱知らない?布製で水玉模様が入ったやつらしいんだけど」

「あ、アタシ達は知らないよ!持田さんが家に忘れてきたんじゃない?」

「そうそう、ウチらは何も知らないよ!」


 僕はただ持田さんの筆箱を知らないか聞いただけなのに慌てた様子の女子生徒2人組


「そう。でもさ、知らないならどうしてそんなに慌ててるの?」

「そ、そりゃいきなり持田さんの筆箱知らないって聞かれたら慌てもするっしょ!まるでアタシ達を犯人扱いじゃん!」

「そうだよ!ウチらは何もしてないのにさ!」


 何もしてない割には冷や汗を掻いているように見えた。まぁ、彼女達の言ってる事も理解できなくはなかった。何もしてないのに警察に声を掛けられると少し動揺するし。


「ふ~ん。ところで君達は持田さんが前に物を無くした時にすぐ見つけたらしいからさ、筆箱探すの手伝ってあげてくれないかな?なんかおばあちゃんに貰った大切なものらしいよ」


 この時の僕はただ探し物を手伝ってくれってお願いしているのであって脅迫しているわけじゃない


「ど、どうしてアタシ達が?勝手に持ち物を無くしたのは持田さんじゃん!そんなの知らないよ!」

「そうそう!べ、別にウチらには関係ない!」

「関係ないねぇ……今はまだ担任来てないからいいけど、担任が来たらどうなるんだろうね?HRを潰してまで犯人捜しをするかもしれないよ?それでもいいの?」


 この2人が持田さんと中1の時に同じクラスだったとしたら授業かHRのどちらかを潰してまで犯人捜しをした事を知っている。つまり、中1の時と同じ事が起こるかもしれないと言えば手伝わざる得なくなる


「し、知った事じゃないよ!ね?」

「うん!したきゃ勝手にすれば?」


 しぶとい事にこの2人は中々尻尾を出さなかった


「あ、そう。でも、そのポケットからはみ出てる水玉模様が入った布は何かな?」

「嘘!?ちゃんと入れたはずなのに!?」


 アタシ口調の女子生徒……女子Aとしておこう。女子Aが口を滑らした


「バカ!」


 女子Aを咎めるウチ口調の女子B。揃いも揃って間抜けだ


「こんな嘘に騙されるだなんてね。さて、どっちが持ってるか知らないけどさ、持田さんの筆箱を出してもらおうか」

「「くっ……!」」


 逃げ切れないと思ったのか、女子Aが制服のポケットから持田さんのものらしき筆箱を出した。こんな感じで筆箱事件は解決。この2人は秀義達を始めとする僕と同じ小学校出身の人達から白い目で見られていたって事と須山から完全に拒絶された事を言っておこう。



 それから少し時間が進んで宿泊学習当日まで残り1週間に迫ったある日の夜


「光晃!宿泊学習に行くだなんて知佳聞いてないよ!」


 いきなり二枝が家に怒鳴り込んできた


「そりゃ言ってないもん。当たり前でしょ」


 二枝だって中学、高校、大学を経て教師になったんだから言わなくてもある程度は知ってるものだと思うんだけどね。


「光晃は知佳を捨てるの!?」

「どうしてそうなるの?そもそも付き合ってすらいないんだけど?」

「光晃はバカなの?姉と弟が付き合えるわけないでしょ?」


 誰が姉で誰が弟かは知らないけど、二枝は真顔で何を言っているんだろう?と思った僕の感性は間違ってない事だけを言っておく


「僕は知佳の弟になった覚えなんてないからね?弟の代わりにはなれると思うけど」

「同じじゃん!」

「いや、かなり違うでしょ」


 といった感じの押し問答があった。これが宿泊学習当日まで残り1週間だった頃の話だ





今回は持田さんの筆箱紛失事件が解決する話でした。

悪い事って隠そうとするとボロが出やすくなるんですね・・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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