表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/214

【過去編56】持田さんの所持品が無くなったようだ

今回は護ってほしいって言われた日の夜から持田さんの所持品が無くなるまでです

今回の話で光晃に理解できない事が増えたようです

では、どうぞ

 持田さんに護ってほしいと言われたその日の夜。真理姉さんと2人で夕飯を摂っていた時の話だ


「光晃、宿泊学習っていつからだっけ?」

「1ヶ月後だけど?それがどうかした?」


 珍しく真理姉さんが学校関係の話題を振ってきた


「いや、いつだったかなと思って」

「そう。宿泊学習は1ヶ月後だよ。はぁ……」


 宿泊学習を1ヶ月後に控えた僕は溜息しか出なかった。何が1番憂鬱ってあの声がデカい秀義と一晩も一緒の部屋になると思うと堪らなく憂鬱だった


「どうしたの?溜息なんて吐いて。もしかして好きな人でもできた?」


 女性というのはどうして話をすぐに恋バナに持って行こうとするんだろう?今でもそう思う


「好きな人はできてない。ただ、秀義と一晩同じ部屋かと思うと憂鬱なだけだよ。それに、いろいろと面倒な事になりそうな予感もするしね」


 秀義と一晩同じ部屋になるのはぶっちゃけ言うほどではなかった。問題は持田さんの事だった


「いいじゃん!秀義君って面白いじゃん!」


 アイツのどこに面白い要素があるか僕には全くもって理解できなかった


「秀義のどこに面白い要素があるのかは僕には全く理解できないよ」

「家に泊まった時に秀義君と話したけど面白かったよ?」

「そう。真理姉さんが面白いって言ってたと今度伝えておくよ」


 真理姉さんが秀義を面白いって言ってた件は未だに伝えていない。まぁ機会があれば伝えておこう


「秀義君が面白いって話はいいとして、面倒な事って?」

「何でもないよ。ただ面倒な事になりそうな予感がするってだけ」


 真理姉さんが信用できないわけじゃなかった。でも、まだ何も起きてないのに話すのはどうかと思っただけで


「光晃にとっては予感かもしれないけど、本人や周囲にいる人にとってはそうじゃないかもしれないんだよ?だから話して」


 僕を見る真理姉さんの目は真剣そのもの。だけど、面倒な予感がするってだけで話していいものなんだろうか?


「話してって言われてもなぁ……これはあくまでも予感だから本当にそうなるとは言い切れないけど、僕のクラスにいる内気な女子と同じ班になったんだけど──────」


 僕はこの日あった出来事を掻い摘んで話した。内気女子───持田さんと同じ班になった事、秀義の話じゃ持田さんが1年の時からイジメに遭ってる事、その持田さんに護ってほしいと頼まれた事。そして、秀義から僕が鬼とか悪魔と思われている事を話した


「なるほど。それで光晃はその持田さんを護る事になったと」

「うん」


 誰かを護るだなんて僕のガラじゃなかったけど、お願いされたら引き受けるしかなかった


「光晃」

「何?」

「お願いされた以上はしっかり護ってあげなよ。多分その子には光晃しかいないんだから」


 真剣な表情で僕しかいないと言う真理姉さん。でも、僕しかいないという意味が理解できなかった。人は誰かに寄りかからなきゃ生きていけないのかな?それとも、辛い状況で1人でも支えてくれる人がいた方がマシなのかな?どの道僕には理解できない事は確かだ


「それはどういう意味で?人は誰かに寄りかからなきゃ生きていけない的な意味で?それとも、辛い状況下で1人でも支えてくれる人を心の拠り所にしたい的な意味で?」


 僕が秀義達にイジメられてた時は喪失感とか裏切られたっていう絶望感とかはなかった。あったのは高揚感だけ。新しい遊び道具を買ってもらった時に似た高揚感だけだった


「どっちもだよ。両親を失った時に私は世界で独りだって思ったけど、光晃がずっと側にいるって約束をしてくれたから今の私がある。その持田って子も同じだと思う。イジメられて絶望的な状況で光晃を見つけた。この人なら頼れる、この人なら自分の側にいてくれるっていう安心感を秀義君と話している光晃に感じたんじゃないかな」


 自慢じゃないけど僕は人に安心感を与えられるような人間じゃない。葵衣の時もそうだったけど、相手が勝手にすり寄ってくるだけで僕から側にいてくれって頼んだ事なんてただの1度もない


「そういうものなの?」

「そういうものだよ。特に女の子は自分を何が何でも護ってくれそうな男の子に弱いの」

「ふ~ん、そうなんだ」


 この日の会話はこれで終わった。この後はお風呂に入り寝た。


 次の日。持田さんに護ってほしいと言われどうしたものかと悩みながら教室に入ると事件はすでに起きていた


「ない……ない……どうしよう……」


 教室に入った僕が目にしたのは自分の席の周りで何かを必死に探している様子の持田さんだった


「アレがなきゃ私……私……」


 探し物が見つからないのか泣きそうになっている持田さん。それほど大切なものだという事は理解した。でも一体何を探しているんだろう?泣きそうになりながら探すものと言えば持病の薬かお金くらいだけど……持田さんの探し物も気になったけど、秀義を始めとする僕と同じ小学校出身の人がいないのも気になった


「持田!男子トイレの方には見当たらなかったぞ!」


 秀義の姿が見えないなと思っていたところに当の秀義が息を切らせて教室に入ってきた


「そ、そっか……どうしよう……」


 秀義の報告を聞いた持田さんは目に涙を溜めていた。持田さんにとって失いたくない大切なものなのは理解した。でも何を無くしたかはわからなかった。


「あのさ、持田さんと秀義は何を探しているの?」


 何を無くしたのかは知らなかったけど、秀義と持田さんの話だけ聞いてるとHRまでに見つかる事はない。僕はそう確信した


「あ、光晃……」

「岩崎君……」

「おはよう。ところで何探してるの?」


 探し物が見つからなくて悔しそうな秀義と大切なものを無くし悲しそうな持田さん。何を無くせばこんな表情になるのか僕は不思議でならなかった


「私がおばあちゃんから貰った筆箱……」

「筆箱?」

「うん……」


 この時の僕はたかが筆箱かと思った。でも、自分にとってはたかがかもしれないけど、無くした本人からしてみれば何より大切なもの。それをたかがと言ったらダメな事くらい中学2年の僕でも理解できた


「そっか。おばあちゃんから貰った筆箱か……」

「うん……岩崎君は見てないかな?青い布製で水玉模様が入ったやつなんだけど……」


 見てないかと言われてもこの時の僕は教室に入ったばかりだったし、持田さんの筆箱がなくなったのだって初めて聞いた


「僕は見てないな」

「そう……どうしよう……あれは大切なものなのに……」


 余程大切なものなのか目に涙を溜めていた持田さん


「なぁ、光晃。何とかならねーかな?」

「何とかって言われても僕は来たばかりだし……」

「岩崎君……」

「光晃……」


 懇願するような目で僕を見つめてくる秀義と持田さん。男はともかく、女に泣かれるのには滅法弱い僕は何か考えるしかなかった


「無くした時の状況を聞かない事にはどうにもならないよ」


 何ともならないと言ってもよかった。さっきも言ったけど僕は女性の涙に滅法弱い。正確には女性に泣かれる事が苦手なだけなんだけど


「無くした時の状況……私がトイレに行って戻ってきたら無くなってた」


 僕の聞き方が悪かったのかな?いや、無くした時の状況には変わりないけど、その前の事も聞きたかった。まぁ、今はどうだか知らないけど当時内気だった持田さんにしてはよく喋った方だったのかもしれない


「その前は?筆箱をカバンの中から出したとかは?」

「ないよ……カバンを置いてからすぐにトイレに行ったから」

「なるほど……」


 正直、お手上げだった。カバンから筆箱を取り出したとかならまだしもカバンを置いてすぐにトイレに行き、戻ったら無くなっていた。これだとどこを探していいかわからなかった


「なぁ、光晃、何とかならねーか?」

「秀義、さっきも言ったけど僕は来たばかりなの。僕が超能力者ならともかく」

「そこを何とか……この通り!」


 僕の目の前で土下座までして頼み込む秀義。そこまでするって事は相当必死だったんだろうけど、僕にだって出来る事と出来ない事がある


「ちょ、ちょっと、止めてよね!これじゃ僕がイジメてるみた……い?ん?イジメ?」


 秀義の土下座を止めさせようとして僕は前日の話を思い出した。持田さんがイジメられているという話を


「どうした?光晃?何かいい案でも浮かんだのか?」

「え?本当?岩崎君?」


 僕が何かを閃いたと思っている秀義と持田さんが目を輝かせながら見つめてきた。思い出しはしたけど閃いてはいない


「いや、昨日の事を思い出しただけで何も閃いてはいないからね?」

「「そ、そんな……」」


 何か閃いたと思っていた秀義と持田さんの目から輝きが消え、一気に落胆の表情に


「まだ何も言ってないんだけど……勝手に期待して勝手に落ち込まないでくれない?」


 何も言ってないうちから期待されても困るし、落ち込まれても困る。それに、僕の思い出した事は持田さんの探し物を見つけるヒントになる。実際、持田さんがイジメらている話を思い出して探し物は見つかったし


「だってよぉ~……何か閃いたと思ったら昨日の事を思い出しただけとか……期待しちまうだろぉ~……」

「期待されても困るって。まぁ、持田さんの探し物は多分だけど見つかると思うよ?」


 絶対に見つかるという確証はなかった。絶対に見つかるっていう確証はね。ただ、犯人が割り出せるってだけで


「岩崎君、それ本当?」


 期待したような目で僕を見つめる持田さんの様子から筆箱は本当に大切なものらしい


「うん。とりあえず探しに行ったメンバーを呼び戻してくれる?」


 秀義の話を疑うわけじゃないけど、念には念を入れ、僕は筆箱を探しに外へ出たであろうメンバーを呼び戻すように言った。


「わかった!すぐに呼び戻してくる!」


 僕の指示で秀義はすぐさま教室を出て外に筆箱を探しに行ったメンバーを呼び戻しに行った


「さて、その間に僕達は他に無くなったものがないか確認しよっか?」

「う、うん……」


 秀義が外へ出ている間に僕達は他に無くなった持ち物がないかを確認する。筆箱だけでも授業に差し支えるのに教科書やノートまで無くなったとなるとシャレにならない


「えーっと、教科書やノートの類はこれで全部?」

「うん、筆箱以外には無くなったものはないよ」


 運がよかったのか持田さんの持ち物から無くなったのは筆箱だけのようだった


「光晃!外に行ってた面子呼び戻して来たぞ!」


 持ち物の確認を終えたところにナイスタイミングで秀義が戻ってきた


「ご苦労様。あっ、秀義にもう1つ頼み事があったの忘れてた」


 秀義が嫌いで忘れていたわけじゃないよ?素で忘れてたんだよ?本当だよ?


「おう!何だ?俺に出来る事か?」


 頼み事を忘れていた僕が悪いのに嫌な顔1つしなかった秀義は本当にお人好しだと思う


「うん。悪いけど須山を呼んできてくれない?このクラスじゃないでしょ?」

「わかった!ちょっと隣のクラスまで行ってくる!」

「よろしくね」

「任せろ!」


 須山がどこのクラスかなんて微塵も興味がなかった僕はこの時初めて隣のクラスだという事を知った


「光晃!連れてきたぞ!」

「俺に用って何かな?何かあったみたいだけど俺でよかったら何でも言って。協力するよ」


 秀義が須山を連れて戻ってきたところで僕は持田さんの筆箱を隠した犯人捜しを開始した


「ありがとう。須山君。早速だけど、須山君って去年は持田さんと一緒のクラスだったりとかする?」

「あ、ああ、去年俺は持田さんと一緒のクラスだったけど……それがどうかしたのかい?」

「いや、秀義が昨日興味深い話をしていてね」

「へぇ~、どんな?というか、連れてこられる途中に名倉君から緊急事態だって言われて来たんだけど、今の話は何か関係あるのかい?」


 僕と須山がしている話は持田さんの筆箱を探すとか、誰か身に覚えがないか呼びかけるかどうかの話じゃなく、中1の頃の持田さんについてだった


「まぁね。言い方が悪くなるけど、去年の持田さんについて僕が質問するからそれに答えてくれればいい」


 一見何の関係もない話だけど、僕にとっては重要な事だった


「そうなの?それなら俺に答えられる範囲で答えるけど……」


 秀義から緊急事態だと聞いて連れてこられた須山はまさか中1の時の話をされるとは思ってなかっただろう


「よろしく、須山君。まぁ、2~3聞くだけだからそんなに難しく考えないで」


 僕の須山には2~3聞くだけって言ったけど僕の聞きたい事はその中にはなかった


「う、うん。でも岩崎君は俺に何を聞くのかな?」

「ん?去年の持田さんがどんな過ごし方をしていたかとか、今回は筆箱だったけど、去年も似たような事があったのかとか。後はそうだな……須山君がこんな陰湿な事をする人間に対してどう思うかとかかな?」


 去年の持田さんがどんな過ごし方をしたか、去年も似たような事があったかについて周囲は特に何も反応を示さなかった。しかし、最後の質問。須山が人のものを隠す陰湿な事をする人間に対しどう思うか?という質問に若干だけど反応した女子生徒が2人いた。この時はまだ仮定の段階だったけど、犯人は彼女達だと断定するのにそう時間は掛からなかった



今回は護ってほしいって言われた日の夜から持田さんの所持品が無くなるまででした

今回の話では誰か側にいてほしいという気持ちがいまいち理解できてないような光晃がいました。いつもスカしたと言いますか、冷めた感じの光晃ですが、女子に護ってほしいと頼まれたらそれを引き受けはするようです。ただ、保証はしないけど


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ