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【過去編55】僕と真理姉さんの朝は騒がしい

今回から中2編スタートです

光晃中学2年、真理新米教師。真理はともかくとして、光晃を取り巻く環境に変化はあるのか?

では、どうぞ

 あの時こうしておけばよかった……。なんて後悔した事って誰しもあるよね?今回はある意味で僕が後悔した時の話をしようと思う


「光晃、私先に出るよ?」

「うん。洗い物は流しに入れといて。帰って来てから食洗器でまとめて洗うから」

「わかった」


 真理姉さんの教育実習が終わってから早いもので1年が経ち、僕は中学2年生に、真理姉さんは教師になった。教師になったとはいえまだ新米。これからいろいろと大変だって時だね。


「あっ!もうこんな時間!光晃!行ってくるね!」

「うん、行ってらっしゃい」


 真理姉さんは慌ただしくリビングを出て玄関に向かった。あ、そうそう、真理姉さんで思い出したけど、研究授業は真理姉さんも智花さんも家を出る前はガチガチに緊張し、不安だったみたいだけど、それでも成功したと研究授業があった日に知らされた。それを聞いた二枝が号泣してたからよく覚えている


「真理姉さんを取り巻く環境は変わったけど、僕を取り巻く環境は何ら変化なしなんだよなぁ……」


 真理姉さんを取り巻く環境が変わったのは教師になったから。教師になってから初めて赴任する学校。そこで出会う新しい人。それが同僚であったとしても生徒であったとしても真理姉さんを取り巻く環境が変化した事には変わりない。で、一方の僕はというと、中学2年生になり後輩も出来たし、新しく来た先生もいた。でも、結局些細な事で怒鳴られるのは変わらなかった。


「いっその事学校に行くの止めようかな?」


 別にイジメに遭ってたわけじゃなかったけど、些細な事で怒鳴られてたら堪ったものじゃなかった。教師の側からしてみれば怒鳴られる生徒の方が悪いって思うんだろうけど、生徒の側からしてみれば怒鳴る以外の指導方法はないの?って話だ


「真理姉さんは新米教師だからあんまり心配を掛けるのも気が引けるんだよね」


 僕が中2の時、両親から仕送りは送られていた。でも、真理姉さんが自分は僕の姉だからという理由で僕にかかる金を出すと言い出した。そりゃ最初は断ったんだけど真理姉さんに押し切られる形で了承してしまった。そんな僕が不登校になるわけにはいかなかった


「僕の為じゃない。真理姉さんの為に今日もクソみたいな学校に行きますか」


 学校に行く理由に人を使っちゃいけないのは理解している。でも、その学校の教師が劣悪過ぎて真理姉さんを理由にしないとやってられないのも事実だった




 学校に着いた僕は同じクラスになった秀義にあいさつをした後、そのまま少し雑談をした。で、担任が来たので各々がしていた事を中断し、HRとなった。僕が後悔した出来事がこの後、待ち構えている事になろうとはこの時はまだ知る由もなかった


「今日は宿泊学習の班決めをします!」


 高らかに宣言したのは担任。ちなみに中学2年の時の担任は女性だった。この担任なんだけど、ドラマ厨やナルシスト、九官鳥と違って些細な事で怒鳴ったりしなかった。そこだけは評価できたけど、別の意味で悪質だったと気付いたのは後になってからだった。それはこれから話すよ。とりあえず、宿泊学習の班決めの話に戻るよ


「「「は~い!!」」」


 何ともまぁテンションの高い事。僕にとって宿泊学習なんて別にあってもなくてもどっちでもいいんだけど。とりあえず言える事は学校行事のレクって怠いよねって事だけだし


「テンション高いなぁ……」


 宿泊学習の班決めという事で教室内は一気に騒がしくなった。騒ぐのに男子も女子も関係ない中、僕を除いて1人全く騒いでない女子生徒が1人いた


「………………」


 その女子生徒は俯いて動こうともしなければ誰かと喋ろうともしなかった


「へぇ~、僕と同じように騒がない奴もいるんだ」


 この時の僕は自分と同類を見つけた程度にしか思ってなかった。でも、本当は違ったらしい


「光晃!お前の班は俺と一緒のところにしておいたからな!」


 自分の席で1人ぼんやりしていた僕の元へ秀義がやってきた。今もそうだけど、僕の意志を無視するのは止めて頂きたいものだ。


「僕の意志は?」

「ない!」


 ドヤ顔で語る秀義をぶん殴ってやりたい!この時はそう思った


「そう。ところで秀義に聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「ん?何だ?」

「あの子はどうするの?」


 僕の指さした先にいたのは俯いたままの女子生徒


「ん?あ~、アイツか~俺達の班に入れといたぞ」

「そっか。ところであの子ってあまりクラスに馴染めてないみたいだけどイジメられてたりとかするの?」


 集団の中にいる事が苦痛でしかない人間もいるから一概にイジメられていると判断するのはよくないんだけど、俯いて誰とも喋ろうともせず、1人でいるのが妙に気になった


「あ~、あまり大声じゃ言えないんだけどな、アイツ……持田彩菜(もちだあやな)っていうんだけど、1年の時から同じ小学校出身の奴らからイジメられてな……俺達と同じ小学校出身の奴がそれを止めていたから1年の時はなんとか登校して来たらしいんだが……」


 中学は複数の小学校の児童がやってくる。言い換えるのなら同じ小学校出身の誰かがイジメを開始すればそれに同調し別の小学校から来た奴もそれに乗っかってくる。当時はそんな事考えもしなかったけど、今思えばアホみたいな仕組みだと思う


「そう。どうして僕達と同じ小学校出身の子はイジメに参加しなかったのかな?」


 中学生なんてそれがいい事でも悪い事でも面白ければ同調するものだと思う。だから、僕と同じ小学校だった奴もイジメに加担していてもおかしくないと思っていた


「どうしてって、そりゃ、イジメに参加して光晃に知られたら怖いからだよ。興味ないだろうお前の為に言っておくが、この中学には須山もいるんだぞ?」

「そうだったんだ。それで?」

「同じ小学校出身の奴がイジメに参加してますだなんて須山の耳に入った日にゃ『岩崎君の耳に入る前に止めるんだね。じゃないと大変な事になるから』って言われるからな」


 僕は呪いか何かか?目の前にいる男にそう問いただしたくなった


「僕は教師でも何でもないんだけど……というか、僕達と同じ小学校出身の人で持田さんのイジメに加担しようとした人いたの?」

「あ、ああ、いた。で、ソイツが須山も誘ったんだが……」

「さっきの言葉を言われた。と」

「ああ。しかも、俺達が小4にした事の裏話付きでな」


 黒歴史とは言わないけど、出来ればバラしてほしくない話だった


「黒歴史だなんて言わないけどさ、どうしてバラしたかな……」

「さぁな。ちなみに俺も誘われたが、同じ話をして追い返したぞ」

「秀義まで……君達は僕を鬼か悪魔だって言いたいのかな?」


 今でもそうだけど、僕は鬼になった覚えも悪魔に魂を売った覚えもない


「お前なぁ、過去に自分がした事を振り返ってみろよ」


 呆れた様子で自分のした事を振り返れと言う秀義に従って僕は自分のした事を思い出した。小学校の時は秀義達がしでかした事と二枝の一件以外特に何かした覚えがない。自分がそう思ってるだけなのかもしれないけどさ


「特に鬼や悪魔と呼ばれる事をした覚えがないんだけど」

「ほう、小学校の時にイジメの証拠を持って校長のところに行ったり、小6の時に担任を狂わせた挙句、依存させても自分は鬼や悪魔じゃないと?」


 イジメの証拠を持って校長のところに行ったのは担任が無能だったから。小6の時に担任を狂わせたって言ったけど、あれは勝手に二枝が狂っただけだし、当初の予定としては依存させる気なんて全くなかった。むしろ狂わせて辞職に追い込むつもりでいたのに


「イジメの証拠を持って校長のところに行ったのは担任が無能だったからで小6の時に担任を狂わせたって言ったけど、あれは担任が勝手に狂っただけ。当初の予定では狂わせるだけ狂わせて辞職に追い込む予定で依存させる気なんて全くなかったんだけど?」

「十分鬼か悪魔だよ!」


 秀義のツッコミはこの時から冴えてた


「名倉君!岩崎君!うるさい!」

「「す、すみません……」」


 秀義のツッコミを入れる声がデカかったせいか僕まで担任に怒られた


「秀義のツッコミを入れる声がデカいせいで僕まで怒られたじゃないか」

「す、すまん……」

「まぁ、それはいいとして、僕の班は秀義と僕と持田さん以外じゃ誰がいるの?」


 宿泊学習になんて微塵も興味はなかったけど、同じ班内でイジメがあって楽しくないのは嫌だった僕は班のメンバーを確認した


「俺とお前、持田以外は全員俺達と同じ小学校出身の奴で固めておいたぞ」

「は?そんなに都合よくいくわけないじゃん。絶対に1人は違う小学校出身の人いるでしょ?」


 僕と秀義、持田さん以外の班員が全員同じ小学校出身とかご都合主義にも程があると思う


「それが都合よくいくから言ってるんだよ。班員の名前を確かめてこい」


 秀義に言われ僕は黒板のところまで行き班員の名前を確認した。すると……


「本当に同じ小学校出身の人で固められている……」


 秀義の言った通り僕の班は同じ小学校出身の人で固められていた。これに対して担任は……何も言わなかった。確認が終わった僕は秀義の元へと戻った


「な?俺らの班は同じ小学校の奴で固められてただろ?」

「う、うん」


 僕はこの日、ご都合主義というものが本当にあったのだと悟った。


「決まったら班ごとに集まって各自で話し合いを開始して」


 ある程度班が決まった頃、担任の指示で班ごとに集まり話し合いが開始された。でも……


「よし!まずは班長を決めよう!」

「「「お~!!」」」

「「…………………」」


 仕切る秀義、盛り上がる同級生、黙り込む僕と持田さん。持田さんはどう思っていたのか知らないけど、僕はこの際班長は秀義でいいんじゃないかと思った


「班長やりたい奴いるか?」

「「「「「…………………」」」」」


 僕と持田さんはともかくとして、どうして盛り上がっていた同級生達も黙った?君達はさっきまで盛り上がってでしょ?って言いたくなるくらい落差が酷かった


「誰もやりたくないのか?」


 班長決めとなった瞬間に静かになってしまった僕達に秀義の視線が突き刺さる


「秀義、僕は目立ちたくないし、持田さんだって同じ。で、そこの同級生3人は学年の教師があれじゃなきゃ多分進んで立候補したと思うよ?」

「だよな……いや、俺も何となくそんな気はしてた」


 班長。班の中で1番偉い立場ではある。学年の教師……いや、学校の教師がまともだったら進んで立候補があっただろうけど、教師達がすぐ怒鳴る連中だったら誰もやりたがらないのは当たり前だった


「ウチのクラスはともかく、他はクラス替えがあったとはいえ学年の教師は大した変更はないわけだし」


 言い忘れていたけど、僕のクラスの担任は中2に進級してから他所の中学から来た新しい教師。でも、他のクラスはドラマ厨を始め九官鳥、ナルシスト、香水タンクと1年の時と大して変わらないメンバー。出目金は学年集会が終わった後も学校を辞めはしなかったけど、僕との一件以来も変わらず授業を潰して説教するわ生徒にケガをさせ新聞に載るわで居ずらくなったのか、どこかに転勤となった


「はぁ……仕方ない、俺が班長をするか」

「だね。学年の教師がアレだから仕方ないでしょ」

「ああ、その代わり、何かあったら護ってくれよ?光晃」


 中1の時にあった学年集会でも秀義に同じ事を言われた。何かあったら護ってくれと。女性に言われるのならキュンとしなくもないけど、男に言われても全くキュンとしない


「わかってるって。まぁ、絶対に護るとは言わないけど、教師の評判を落とす程度には頑張るよ」


 自分にそれだけの力があると過信してはいなかったけど、僕の身内には小学校教師1人と高校教師2人がいた。前に身内に教師は要らないとは言ったけど、利用できないとは一言も言ってない。


「おう!期待してるぞ!」


 期待されても困るんだけど……。それが僕の正直な感想だった


「あの……岩崎君……」


 秀義が班長に決まり話はそこで終了と思った矢先、僕の制服の袖を摘まみ俯いた持田さんに呼ばれた


「何?持田さん?」


 中2になってまだ間もなかったから持田さんがどんな人なのかわからなかった。それこそ彼女が積極的に声を掛けるタイプなのか、それとも、あまり自己主張しないタイプなのかも


「で、出来ればでいいんだけど、わ、私の事も護ってくれるとう、嬉しいな……」


 意外だった。持田さんから護ってほしいと言われるのは。でも、護ってほしいという持田さんに僕は宮村さんと少し似ている。そう思った


「秀義にも言ったけど、絶対に護れるって保証はないよ?まぁ、言われた以上は護るけど」


 秀義にも言ったように絶対に護り切れるって保証はない。持田さんが僕の目の届かない場所にいたら護り切れない。僕は神様じゃないから自分の目の届く範囲で護れてもそれ以外は保証しない


「それでもいいよ……私を護ってくれるなら……」

「わかった。持田さんの事を護るよ」

「うん、よろしくね。岩崎君」


 小学校では教師の行いが気に入らなかったから宮村さんと一緒になって教師に反発した。でも、中2のこの時は持田さんに頼まれた。自分が気に入らないかどうかの違いはあったにしろ僕はどうやら内気な女子を護る運命にあるらしい事をこの時に理解した。




今回から中2編スタートでした

新米教師である真理の環境はともかくとして、中学2年になった光晃の環境は小学生時代にいた宮村に代わる女子が登場しました。この持田が今後どんな事になるのやら・・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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