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【過去編54】真理姉さんと智花さんは研究授業が不安なようだ

今回は研究授業が不安な真理と智花の話です

誰だって不安な事くらいある

では、どうぞ

 真理姉さんと条件付きとはいえ仲直りしてから1週間後の話をする前に少しだけ仲直りした日の事を話したいと思う


「「光晃……」」

「光晃君……」


 時刻は22時。良い子はとっくに寝ているであろう時間帯。僕、岩崎光晃は二枝、智花さん、真理姉さんから情熱的な視線を浴びせられていた。でも勘違いしちゃいけない事が1つ。それは愛の告白だなんて綺麗なものじゃないという事。場所がリビングだったからいいものの、寝室だったらウッカリ勘違いするところだよ?


「そんな熱い視線を向けられても僕は真理姉さんと智花さんの教材研究なんて手伝わないよ?それなら知佳だけで済む話だし」


 僕が情熱的な視線を向けられていた理由は単純明快。真理姉さんと智花さんが教材研究を手伝ってほしいから。そこに二枝は関係ないと思った諸君!正解だ!でも、二枝まで情熱的な視線を向けてくるのは教育実習生2人の面倒を1人じゃ見切れないからって理由ともう1つ。二枝は小学校の先生だ。当たり前だけど、高校で実習なんてした事がない。結論から言えば僕を道連れにしようって魂胆だ


「「「おねがぁ~い……光晃……」」」


 年上の女性3人から上目遣いで見つめられるというのは悪い気はしないけど、考えてほしい。この当時僕は中学生だった。中学生に教材研究なんて手伝わせるな!それと、僕と秀義で教材研究手伝ったよね?


「上目遣いで頼んでもダメ!大体、秀義が泊まりに来た日に教材研究手伝ったよね?それじゃダメなの?」


 これは真理姉さんの指導案を作った日に調べた事なんだけど、教材研究ってのは教える立場にある人が、事前に教授の内容である知識を深めたり、技能を向上させたりする作業の事。つまり、教える立場にある真理姉さんと智花さんがしなきゃ意味がない。第三者が手伝うのはどうかと思う


「「だって、それだけじゃ不安なんだもん……」」

「不安なんだもんって……本来教材研究って真理姉さん達が1人でやらなきゃ意味がないんじゃないの?それこそ僕や知佳が手伝ったら意味がないでしょ?」


 僕が手伝ったら知識を深めたり技能を向上させる以前に本人達の為にならない。中学生の僕はそう思ったけど、高校2年生になり、葵衣達の教材研究を手伝う事になろうとは当時の僕は夢にも思ってないだろう


「「そ、それはそうだけど……」」

「それに、どうして今更教材研究なんかするの?」


 そう、問題なのは真理姉さんも智花さんも教育実習に行ってからそれなりに時間が経っているこの日に唐突に教材研究を手伝ってくれと言い出した事だった


「「明日研究授業があるからだよ!!」」

「いや、そんなドヤ顔で不安を語られても困るし、そもそもが研究授業って何?」


 真理姉さんと智花さんはドヤ顔で研究授業があるから不安だって言ってるけど、この時の僕は研究授業が何なのか知らなかった。そんな奴に研究授業が不安だ!なんてドヤ顔で言われても……


「「……………」」


 研究授業って何と聞いただけで僕と目を合わせようとしない真理姉さんと智花さん


「真理姉さん?智花さん?」

「「……………」」


 真理姉さんと智花さんは名前を呼んでも返事すらしてくれなかった


「はぁ……知佳、研究授業って何?」


 真理姉さんと智花さんが目を合わさず返事すらしてくれなかったのでターゲットを2人から二枝に変更した。現職の教師だから研究授業が何か教えてくれるはずだ。僕はそう睨んだ


「えーっと、教育実習生の場合は授業実習の成果を指導担当教員や校長先生や同じ教科の先生など、複数の先生方に見てもらって批評や助言、指導を受ける事で教科指導の反省と改善につなげる為のものなんだけど……光晃は覚えてないかな?小学生の頃に1回だけ知佳じゃなくて畑中先生が授業した時の事」


 覚えてないかな?と言われても僕はしつこく絡んできた教育実習生であっても興味がなかったので覚えてるはずがなかった


「興味なかったから覚えてないなぁ……で?畑中が授業した時に何かあったの?」


 教育実習生に興味なんてなかったという事は当然、授業をした事なんて覚えてない


「うん、その時に知佳もそうだったけど、多くの先生方が後ろにいっぱい並んで畑中先生の授業を見たんだよ」

「それで?」

「それでその後畑中先生の授業を批評したり助言したりして指導を畑中先生は受けたの」


 二枝の言ってる事は今でも意味が解らない。今の僕が解らないのに中学生の僕が解るわけがない


「そう。説明してくれている知佳には申し訳ないけど、意味が解らないからもっと簡単に説明してくれない?」


 難しい事を学ぶ者が理解しやすいように簡単に説明するのは難しい。場合によっては例えが必要になる。そこで教師の語彙力だったり表現力が試されると僕は思う


「う~ん、簡単に言うと研究授業っていうのは授業参観かな?対教育実習生の場合はその学校に勤務している先生方がその授業を評価する。で、対教師の場合は……これは規模にもよるんだけど、校内の先生方だったり地域の先生方だったりといろいろあるんだけどね」


 二枝の言ってる事は最後まで理解できなかった。わかったのは研究授業というのは教育実習生が対象でも教師が対象でも先生の先生による授業参観だという事だけだった。結論、僕達学生にとっては迷惑な事この上ないものだ


「そう。まぁ、とりあえず先生の先生による授業参観だって事はわかった。それで?真理姉さんと智花さんは研究授業の何が不安なの?」


 研究授業が何か、研究授業をする意味がどこにあるのかは問題じゃなく、問題なのは真理姉さんと智花さんが研究授業に対して抱いてる不安が何なのかだった


「「生徒からどんな質問が来るかだよ!」」


 相も変わらず不安な事をドヤ顔で語る真理姉さんと智花さん。この2人は本当に研究授業が不安なのかと疑いたくなった


「そんなの僕が知るわけないでしょ?そもそも、どんな質問が来ても答えられるように万全の対策を練るのが教育実習生なんじゃないの?」

「「うぐっ……!おっしゃる通りです……」」


 僕の言葉に反論できなかった真理姉さんと智花さんは隅っこの方で小さくなっていた


「こんなのが教師になって大丈夫なんだろうかと今から不安だよ」

「あ、あはは……」


 真理姉さんと智花さんの将来を心配する僕と苦笑いを浮かべる二枝。結果から言えば真理姉さんは教師になったからいいんだけど


「このままじゃ先行きが不安だから真理姉さんと智花さんの教材研究の手伝いはするけどさ……」

「「本当!?」」


 小さくなっていた真理姉さんと智花さんは復活し、僕に詰め寄ってきた


「本当だよ」


 こうして僕と二枝は真理姉さんと智花さんの教材研究を手伝う羽目になった



 というのが真理姉さんと条件付きで仲直りした日の事。で、その1週間後。正確には真理姉さんと智花さんの研究授業当日の朝なんだけど


「「やっぱり不安だよぉ~……」」

「はぁ……」

「だ、大丈夫だよ!2人とも!緊張せずに落ち着いてやれば何とかなるって!」


 真理姉さんと仲直りしたその日から僕と二枝は真理姉さんと智花さんの教材研究に付き合わされた。当然、次の日は学校を休んだ。その次の日は普通に学校に行ったけど


「「で、でもぉ~……」」


 僕が溜息を吐いてる間、二枝はずっと2人を慰め続けた。それでも不安が消えないなんて研究授業恐ろしや!


「先生が不安がってちゃ子供達も不安になるでしょ!真理ちゃんも智花も!」


 さすが教育実習を乗り越えて教師になっただけあって説得力はある。二枝の場合は小学校のだけど


「お姉ちゃんは緊張感がないからそんな事言えるんだよ!それにお姉ちゃんが相手にしたのは小学生だったでしょ!私と真理が相手にするのは高校生なの!緊張せずにはいられないんだよ!」

「そうですよ!知佳さん!私なんて……私なんて緊張で何も手にかつかないんですから!」


 二枝の言葉に説得力があるとは思ったものの、真理姉さん達と二枝じゃ相手にしている年代が違うので大した慰めにはならなかったようだ。そりゃ二枝は小学生で真理姉さん達は高校生。小学生の実習生イジメは授業中の私語とか程度だろうけど、高校生の実習生イジメは授業中の私語に加えて意地悪な質問とかがあってもおかしくないだろう。緊張する真理姉さん達の気持ちは何となくわかった


「で、でも!小学生と違って高校生ならある程度は言う事聞くだろうから楽でしょ?」

「「楽じゃない!!」」


 二枝の楽でしょ発言に猛反発する真理姉さん達。僕はこのどうでもいい言い争いを見せられるのかと思うと憂鬱になった。そんな僕は……


「朝食は……カップ麺でいいや」


 朝食にカップ麺をチョイスしていた。朝からカップ麺だなんて健康には悪いだろうけど言い争いをし続けている大人達の分まで作ってると冷める可能性あったし?真理姉さん達だって冷めた料理なんて食べたくなかっただろうし?それを考えて真理姉さん達のカップ麺も用意した僕って優しいと思わない?


「さて、朝食をカップ麺と決めたのはいいけど……問題は何を食べるか……」


 人数分のカップ麺はあった。でも、問題はそのカップ麺だった


「醤油ラーメ以外全部とんこつラーメンって……しかも、ニンニク入り……」


 戸棚を開ける前からわかっていた。そもそも、カップ麺を買ってきたのは僕だ。醤油ラーメン以外全部とんこつラーメンニンニク入りにしたのは単なる真理姉さん達への嫌がらせ。そんな僕が選ぶラーメンはもちろん……


「真理姉さん達にはこれから精気を付けて子供達の教育に励んでもらおうって事で僕はこの醤油ラーメンを食べる事にしよう」


 醤油ラーメンを選んだ。まぁ、僕が朝からカップ麺を食べてようと言い争いを続けている真理姉さん達は気にも留めなかった。それだけ研究授業の事で頭がいっぱいだったってのはあると思うけど


「僕が止めずとも時間を見て止めるだろう」


 僕は言い争いを続けている大人達を放置し、お湯を沸かしにキッチンへ。そして、お湯が沸いたらあらかじめかやくを入れておいたカップ麺の容器にお湯を入れ、そのまま3分待った。


 待ち続ける事3分。時間になったので後入れスープを入れ、完成


「出来た」


 醤油ラーメンの香りが漂うリビング。それでも言い争いを続ける真理姉さん達には感心してしまう


「うえっ、マズッ……外したか……」


 物は試しにと買ってみたラーメンだったけど、食べてみたらマズかった。普通なら食べ物を粗末にせず全部食べる僕だけど、このラーメンだけは食べきる事が出来ず捨ててしまった。そんなこんなで僕は部屋に戻った。この日は学校に行く気分じゃなかったし、仲直りした日以来真理姉さんは僕が学校を休む事に対して何も言わなくなったし


「真理姉さん、智花さん、知佳。朝ごはんはカップ麺置いてあるからね。って聞いてないか」


 一応、言い争いを続けている真理姉さん達に声を掛けてからリビングを出た









今回は研究授業が不安な真理と智花の話でした

誰だって初めてやる事は不安で緊張するのも理解はできますが、それを周囲に悟らせないのも1つの手だと個人的には思います

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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