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僕は再び家出を決意する

今回は光晃が再び家出を決意します

光晃は何が原因で家出をしたのでしょうか

では、どうぞ

「最近の僕はどうかしている……」


 教育実習生が来て4日目の放課後。朝、3人いる教育実習生のうちの1人に絡まれて校長室に呼ばれた。で、放課後には教育実習生の1人と抱き合う羽目になった。


「光晃君、何か言った?」


 僕と抱き合っていた教育実習生の1人である水沢葵衣。初日に僕が授業をサボった結果、この人のサポートをしろという罰を喰らってからだ。予定が狂ったのは。4日目の放課後にしてそれを実感する事になるとは思わなかった。


「別に。それより、小谷先生に指導案を見せて結果はどうでしたか?」

「うん……ちょっとだけ直して再提出」


 “ちょっと”ね……ま、指導案ができれば問題はないと思う。だけど、教材の方はどうだろう?ちゃんと作成しているのか?


「そうですか、ところで教材作成の方はどうですか?順調ですか?」

「うん、休み時間とか使って作ってるよ」


 教材作成も順調のようだ。と言っても穴埋め問題みたいなものじゃなくて単なるカンニングペーパーみたいなものだし、実際の授業では多分板書をするだろう


「教材研究進んでますか?」

「それはバッチリ!ネットや本でいろいろ調べてるから!」

「そうですか」


 この調子だと僕は早めにお役御免になりそうだ。教育実習生と関わる時間は1分1秒でも少ない方がいい。


「でも、いきなりどうしたの?私の実習の心配なんてして」

「別に。僕は元々教師や教育実習生とは関わりたくなかったんです。まぁ、授業をサボった罰として関わってしまいましたが……それに、家でも言いましたが、妥協して関わる教師は小谷先生だけ、実習生は水沢先生だけ。そう言いましたよね?」

「う、うん……でも、それと私の心配と何の関係があるの?」

「水沢先生のサポートを口実に他の教師や実習生との関わりを減らそうと思いましたが、肝心のサポートがいつまで必要なのかと思っただけです」


 忘れていたけど、水沢先生は教育実習生。僕の学校生活において必要のないものだ。だけど、現段階では他の教師や実習生を寄せ付けない虫よけ程度には役に立つ。ただ、それだけ


「むぅ~、何か虫よけみたいで嫌!!」


 ()()()じゃなくてそうなんだよ。実際に虫よけなんだよ。全く……


「それは置いておいて、水沢先生の実習が順調で何よりです」


 真理姉さんもそうだが、水沢先生も大義名分がなきゃ学校では関われない。ん?考えてみれば家出するときに何も真理姉さんに家出するって言わなくても下校したまま姿を眩ませればよかったじゃないか


「おかげ様で指導案も大々的に修正しなくてもいいし、教材研究も順調に進んでる。これも光晃君のおかげだね!」


 僕は何もしていない。サポートしろと言われても特に何かした覚えもない。僕としてそれだけ教育実習生と関わらなくて済んでよかったと思う


「僕は何もしてないですよ。全部水沢先生の努力の賜物ですよ」

「そんな事ないよ~」


 謙遜する水沢先生。だけど、僕は何もしてない。4日目で研究授業の準備ができていたのは水沢先生自身の力だ


「まぁ、ここで違う、そうだの言い合いをしていても仕方ありません。で、水沢先生は諸々がほぼOKで後は授業見学くらいです。もう僕のサポートは必要ありませんね」


 研究授業で教師配る資料はできている。真理姉さんが僕に課した罰────水沢先生のサポートはお役御免となる。


「え?」


 水沢先生は驚いてるけど、当たり前でしょ?僕が言われた罰は水沢先生が研究授業に使う教材等の作成を手伝う。主な内容はこんなものだろうけど、水沢先生はそれを早々に終わらせてしまった。つまり、僕のやる事はもうない


「え?じゃないですよ。あくまで僕が言われたのは水沢先生のサポートです。ですが、水沢先生は僕に頼る事なく全部を終わらせてしまった。僕にできる事は何もありません」


 僕としてはありがたいけどね。教育実習生に関わる事はない。家では関わる実習生は水沢先生だけって言ったけど、もうそんな制約は必要ない。さてと、これからどうしたものかな……


「いや……」

「嫌?元々そういう約束だったはずですが?」

「いやぁ……光晃君と一緒にいられないのはいやぁ……」


 水沢先生は子供の様に泣き出した。まるで母親と離れる子供の様だ。この人は教育実習を何だと思っているか知らないけど、生徒にサポートされる実習生はまずいない。サポートがあったとしてもクラスの委員長かその係の生徒が教材等を運ぶ手伝いくらいはするだろうけど。後は、好きになるなとは言わないけど、教師が生徒に特別な感情を抱く事自体がマズイ事だって自覚があるのか?


「そう言われましても……」

「どうにかならない?私が光晃君と一緒にいられる方法ないかな?」


 1人の生徒に入れ込むなんてこの先生はどうかしている。そう言えば、家出した時にこの人僕に恋をしたとか言ってたな。


「さぁ?どうでしょうね?ない事もないですけど?」


 そう、この人が学校で僕と一緒にいる方法はない事もない。だけど、真理姉さんに協力してもらう必要があるけどね


「え?本当?」

「ええ、ない事もないですが、小谷先生に協力してもらわないといけなくなると思いますが」

「いいよ。それでも……光晃君と一緒にいれるなら何でもいい」


 呆れてものも言えない……教育実習生が1人の生徒に特別な感情を抱き、その生徒と一緒にいる為なら手段を選ばないとは……


「じゃあ、水沢先生は小谷先生に僕が授業をサボり続けたらマズイんじゃないのか?とでも言って補習授業でも組んでもらってください。見学したいとでも言えば僕と一緒にいれるかもしれませんよ?」


 非合法な方法を選ぶと学校の無能達はすぐに問題にする。だけど、補習授業の見学をするとでも言えば合法的に僕と一緒にいれる。そして、担任にも話はいくだろけど、今の担任は僕の教育はそこまで熱心じゃない。真理姉さんが担当する事になるだろう。


「わ、わかった!」


 水沢先生は慌てて職員室に戻っていった。あの人のあのキャラじゃ教師に意見するんじゃなくて、純粋に気になる事を聞いただけ。勉強熱心な実習生が補習授業を見学する。はぁ……何で僕が実習生ごときに入れ知恵してるんだか……


「どうしたって言うんだ僕は?大嫌いな教育実習生に入れ知恵なんかして……」


 どうしても頭から離れない……水沢先生の泣き顔が……家出した時にも見たけど、あの時は教育実習生が泣いてる。くらいしか思わなかったのに……


「クソッ!4日目だぞ?それに僕が教育実習生を意識する?バカか?あんな自分の価値観でしか物を語れない無能を意識する?」


 僕が教育実習生に特別な感情を抱くなんてありえない。仮に……仮にだ。僕が水沢先生に特別な感情を抱いてたとして、これが何なのか解らない……これは恋?それとも保護欲なのかな?


「どっちでもいいや。どうせ一時の精神病だろうし、水沢先生の実習が終わったらこれも消える」


 どっちでもいい。水沢先生が僕に恋をしたって言ってたけど、それだって一時的なものだ。実習が終わった後も僕に好意を寄せ続けるなんてないだろうし


「誰が僕を好きでも関係ない。それに、本来なら僕には真理姉さんも秀義も水沢先生も必要ない。あの連中の代わりならいくらでもいる」


 そう、あの連中の代わりはいくらでもいる。やっぱり、僕は家を出るべきだ。これ以上苦しまない為に。真理姉さんや水沢先生、秀義に僕の心を乱されないためにも


「だから嫌なんだよ。ウザい幼馴染も約束を守らない従姉も干渉してくる従姉も」


 昨日はアッサリ連れ戻されたけど、今日はそうはいかない。だけど、秀義や真理姉さん、水沢先生にはここの存在はバレている。ん?そういえばここって……


「たしか、この辺りに……お、あった!ここだ!」


 昨日は僕も冷静じゃなかったから忘れていたけど、この小屋はトラックで運ばれてきて組み立てられた簡易のものじゃない。ここに建てられたものだ。つまり、設計の時点でこの小屋を建てるか決めるわけだけど、この小屋は多くの作業員が宿泊する為か地下がある。


「サボる時とかここにいたら見つからないから今の今まで忘れてた」


 僕は床の扉を開け、地下へ移動した。季節が季節だけに何もしてない状態なら暑い。だけど、エアコンを点ければ夏は涼しいし、冬は暖かい


「僕がサボりスポットにいるってわかってもここへいるとは思わないだろう」


 僕は急いで家に帰り、昨日のままにしてある家出セットを持ってサボりスポットへと戻る。だけど、今回は昨日とは違い、地下に潜っている為、簡単には見つけられないし、見つからない


「さて、さすがに暑いし、エアコンでも点けるか」


 エアコンを点けてもここはバレない。それに、上にはなかったけど、ここにはテレビ等の娯楽もある。


「さて、電源を入れてゲームゲームっと」


 作業員の趣味なのか、ここにはテレビゲームがある。上には見栄えの為だろうか、あまり娯楽の類はないけど、ここは問題ない


「電源も切ったし、見つかる心配もない」


 結局、真理姉さんも秀義も水沢先生も僕には必要ない。学校をサボっても誰も咎めないし、咎められない


「クソッ!あの暴力しか能がない実習生が余計な事さえしなければ!!僕が実習生である水沢先生を意識する事もなかった!!あのくそ野郎!!これだから教育実習生は嫌なんだ!!」


 八つ当たりだって事は理解している。だけど、僕は水沢先生の泣き顔を見て思ってしまった。この人の側に居たいって……それと同時にそれは叶わないんだって……じゃあ、どうする?答えは簡単だ。切り捨てる。本人を、本人に関わる全てを、例えそれが幼馴染でも従姉でも


「水沢先生が実習を終えた後に家に帰り、その後はこれまで通りに学校に行く。そうすれば土日を除く残り8日は顔を合わせなくて済む。さようなら、水沢葵衣」


 たった4日間の間だけだった。今まで関わってきた実習生の中で最もウザかったよ。でも、それも今日で終わりだ。僕が君の前に姿を見せるのも、君が僕の姿を見るのも今日で最後だ





今回は光晃が再び家出を決意しました

光晃は葵衣を意識した事を認めたくないから家出を決意しました

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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