【過去編48】僕は初めて真理姉さんと喧嘩をする
今回は光晃と真理が喧嘩をする話です
これは喧嘩と呼べるのか?真理が理不尽な事を言っているだけのような気がする
では、どうぞ
「ねぇ、光晃はどこに行きたい?」
「どこって言われて急になんて決められないけど、とりあえず知佳は学校の同僚に、僕は同級生に見つからなきゃどこでもいい」
二枝からデートの誘いを受け、その誘いに乗ってしまった僕は平日の昼間だというのに外をフラついている。なんて事はなく、家で二枝と2人デートコースを考えていた。僕が学校を休めたのは二枝が真理姉さん達に嘘を吐いてくれたおかげだからね。出来るだけ二枝の行きたいところにって思ってたんだけど、二枝も二枝で同じ事を思っていたみたいだった
「うーん、じゃあ、少し足伸ばして温泉街にでも行く?それとも、お家デート?」
極端すぎる。出歩く時の提案が温泉街ってガチの遠出だし、出歩かない時の提案がお家デートってガチの引き篭もりだし……思い返すと二枝って時々極端になる事があったっけ?その被害に僕は遭ったことないけどね
「お家デートで」
前に話したと思うけど、この頃の僕は真理姉さんと2人暮らし。親からの仕送りがあったけど、それも考えて使わなきゃいけない事もあってか普通の中学生よりもお金の使い方にを考えるようになった。二枝がデート代は全て自分が持つと言うかもしれない事を考えた結果、僕はお家デートを選んだ
「知佳はそれでもいいけど、光晃はいいの?本当はどこか行きたいところとかあったんじゃないの?」
「別に行きたいところなんてないよ。ただ、学校には行きたくないってだけでね」
「ふ~ん?本当にそう?」
「そうだよ」
本当にどこかに行きたいとかはなかった。だけど、学校には行きたくなかった
「そっか。学校で思い出したけど、中学校で何かあった?」
「別に何もないよ」
中学校では何もない。僕自身、急な環境の変化に耐えられなくなったわけでもない。ただ、この日は学校に行きたくなかったっていうだけで
「本当に?」
「ないよ」
と、ここで会話が終了し、僕も二枝もお互いに無言。
「光晃はさ、学校が楽しいと思う?」
お互い無言の状態だった。でも、それは二枝によって破られた
「いきなり何?」
「いや、光晃は学校を楽しい場所だって思っているのかなと思って」
「教師と教育実習生がいなければ楽しいと思うよ」
唐突な二枝の質問に僕は躊躇うことなく答えた。教師と教育実習生がいなければ楽しいというのは僕の紛れもない本心
「それだと学校じゃないような気がするんだけど」
「それもそうだね。じゃあ、答えを変えるよ。バカな教師と教育実習生がいなければ楽しい場所だとは思うよ」
二枝には1回付き合いきれないと言った。あれも本心だったけど、もう1つ僕には言いたい事があった今でも思う事
「そ、それは難しいんじゃないかな?教師や教育実習生だってピンキリだから」
二枝の言うように教師や教育実習生だってピンキリだ。バカな教師や教育実習生がいればそうじゃない教師や教育実習生もいる。僕にとっての問題はバカな教師や教育実習生がそれを自覚してない事
「という事は僕の今までの学校生活の中ではバカな教師や教育実習生が多かったという事か」
僕の担任だった二枝にとっては耳が痛い話だろうと思う。
「それって知佳にとっては耳が痛い話になるんだけど……」
「そうだね。だってそういうつもりで言ったし」
「ううっ……過去に戻れるなら児童の相談くらいちゃんと聞けって言いたい……」
いつの間にか学校は楽しいか否かの話から有能な教師とは何ぞやに話題が代わりそうなのでこの話はこのくらいにしようと思った。じゃないと二枝がいじける
「それはさておき、家でデートするって言っても何したらいいの?」
この時の僕はデートなんてした事がなかったからデートと言われれもどこへ行けばいいか、家の場合は何をしたらいいかなんてわからなかった
「ち、知佳も男性とお付き合いした事なんてないからわからないよぉ……」
二枝も二枝で恋愛経験はなかったらしい
「って事は今この場にいる2人はどっちも恋愛経験がないって事か……」
「そうなるね」
「「………………………………」」
僕達は途方に暮れた
「結局温泉街に来ちゃったね。光晃」
「そうだね。僕はともかく、知佳は見つかったら大変だから仕方ないと言えば仕方ないんだけど」
途方に暮れた僕達は結局家にいても仕方ないという事で温泉街にやってきた。
「まぁ、光晃は貧血って事にしてあるけど、私は仮病で学校やすんじゃったから見つかったら大変なのは否定できない」
言い忘れていたけど、二枝は真理姉さん達に僕が貧血で倒れたと言ったらしい。で、二枝は学校に風邪で休むと言ったらしい事を家を出る時に聞いた。別に仮病なんて使わなくても親戚が風邪を引いて看病する事になったって言ってもよかったような気がするけど……複雑な事情があるんだろう
「仮病じゃなくても親戚の看病って事じゃダメだったの?」
「それでもよかったんだけど、いろいろと面倒なの」
「そういうものなの?」
「そういうものなの!それより、温泉街なんだから学校の事は忘れて楽しもうよ!」
「そうだね」
僕達は平日の温泉街へと繰り出した
「光晃!混浴があるところに行きたい!」
温泉街に繰り出して少ししてから二枝が混浴のあるところに行きたいだなんて中学生男子の精神に大変よろしくない事を言い出した
「嫌だよ」
当たり前だけど僕はそれを拒否
「何で!?」
「逆になんで行けると思った?」
「光晃が私の弟だから!」
僕が亡くなった二枝の弟に似ているという話は小6の頃に聞いた事があった。それには少なからず思うところがあったけど、それとこれとは話が別だ。っていうか、二枝の弟さんが生きていたとしても年頃だったら姉と一緒にお風呂は嫌だと思うけど
「いやいや、僕が仮に知佳の本当の弟だとしても中学生になってまで一緒にお風呂に入りたいとは思わないからね?」
秀義ならいざ知らず僕は中学生になってまで姉と一緒にお風呂に入りたいとは思わない
「え~!嫌なの?」
「当たり前でしょ」
「ぶ~!」
逆に聞きたい。どうしていいよって言うと思ったの?
「ぶー垂れてもダメだよ。混浴は絶対にお断りだから」
そもそも二枝と僕は姉と弟じゃない。教師と教え子だ。卒業したとはいえ教師と2人きりで温泉街に来ているのもある意味問題なのにそれが一緒にお風呂となると尚の事
「う~……小学校卒業した今ならいけると思ったのにぃ~」
小学校卒業してても教師と教え子の関係は変わらないでしょうよ
「そうだとしてもバレた時に面倒でしょ?知佳は転勤かクビになるかもだし」
転勤ならまだいい方で最悪の場合はクビになるかもしれない。それを考えると2人きりで遊びに来ている事自体にも問題はあった。それと僕だって健全な男子中学生だったので二枝の身体は精神的の毒でしかなかったのいうのもある
「う~……光晃が言うなら我慢する」
「理解してくれて助かるよ」
この後、僕達は抵当な温泉施設に入り、温泉を堪能した。料金はもちろん割り勘。さすがに二枝に出してもらうのは気が引けた
「で、この後はどうしようか?」
「どうしよう?」
温泉に入った施設で昼食を摂った後、僕達はこれからどうするかを考えた。帰るには時間的に早い時間だったけど、遅くなったら真理姉さんに何を言われたものかわかったものじゃない
「帰るにはまだ早いし……泊まっていく?」
「え?何言ってるの?」
帰るにはまだ早いという話からなぜ宿泊が出てきたんだろう?
「だって、ここまで来たら泊まっていった方がいいかなと思って」
「普通に帰ろうよ……黙って泊まったら智花さんだって真理姉さんだって心配するでしょ?」
「う~ん、真理ちゃんはともかく、智花はどうかな?私1人暮らしだし」
家に来る時はいつも智花さんと一緒に来ていた二枝が1人暮らし。意外な真実だった
「そうだったの?僕はてっきり家に来る時は智花さんと一緒だったから実家に住んでるものだとばかり思っていたけど」
「違うよ。光晃の家に行く時は智花に教えてもらった私がそれに便乗しているだけ」
これまた意外な真実だった。姉妹仲が良いのはいい事だけどさ
「そう。知佳は1人暮らしだからいいとして、僕は真理姉さんと一緒に住んでるんだから何も言わずに宿泊なんてしたら心配する」
「そうだね、じゃあ少し早いけど帰ろうか?」
「うん」
帰る時間には大分早かったけど僕達は帰る事にした。でも、この気晴らしの温泉街デートが僕と真理姉さん初めての喧嘩の原因となる事をこの時はまだ知る由もなかった。喧嘩っていうか真理姉さんが一方的にカッカしただけなんだけどね
「ただいま……」
「お邪魔します」
温泉街から帰ってきた僕は二枝と共に帰宅。この時の時刻は17時。教育実習に行っている真理姉さんはまだ帰ってない
「真理姉さん帰ってきてないから適当にくつろいでていいよ」
手ぶらだった僕達は部屋に何かを置きに行く必要がなかったので玄関から直接リビングへ。
「でも光晃だって疲れてるだろうしお夕飯の準備なら手伝うよ?」
「今日は簡単に冷やし中華にしようと思ってるから大丈夫だよ」
夏の暑い時期に食材を炒めたり茹でたりは出来るだけ避けたかった僕は炒めるか茹でるかをしたとしても1回で済ませられるような献立にしがちだった。無駄に汗をかきたくなかったし
「そう?でも、手伝いが必要なら言ってね?知佳、何でもするから」
「うん、ありがとう」
二枝との会話だったけど、ここまでは普段通り。問題は真理姉さんが帰って来てから起こる
「ただいま」
「お邪魔します」
午後8時、真理姉さんが智花さんと共に帰宅。前までは間延びした声でただいまを言っていた。でも、この日は声のトーンから察するに不機嫌。実習校で何かあったんだろう
「おかえり、真理姉さん」
「うん、ただいま」
リビングに入ってきた真理姉さんは案の定不機嫌だった。触らぬ神に祟りなしという事で僕は真理姉さんを刺激しないように会話を控えた。八つ当たりされたら面倒だったしね
「智花さんもお疲れ様です」
「うん」
智花さんは普段と変わらなかったのでいつも通りに接する事にした。でも、次が問題だった
「光晃、私にはお疲れ様とかないの?」
普段の真理姉さんなら絶対に言わない労いの言葉の催促。この時点でお察しだろうけど、真理姉さんは僕に八つ当たりしていた
「お疲れ様、真理姉さん」
「それだけ?もっと他にないの?」
労いの言葉をかけたのにそれ以上を求められても困る
「他にって言われても……何?肩でも揉めばいいの?」
「別にそうじゃないけど、教育実習で1日頑張ってきた私に対してもっと言う事があるでしょ?」
「言う事?ないよ。教育実習に行くって決めたのは真理姉さんでしょ?僕は頼んでないし」
僕は教育実習に行ってくれなんて頼んだ覚えはない。大学で何を学ぶかなんて自分で決める事だ。真理姉さんが教職を選んだのも結局は僕が頼んだからではなく、自分の意志
「私1日頑張ってきたんだよ?でも、光晃は学校休んだよね?私が頑張っている間も家で能天気に寝てたよね?その前に学校に行きたくないって言ってたよね?中学生はいいよね。好きな時に学校を休めるからさ」
理不尽だ。実習校で何があったかは知らないけど理不尽過ぎる
「真理!言いすぎ!実習先で何があったか知らないけど光晃君に八つ当たりする事ないでしょ!!」
真理姉さんの理不尽を智花さんが止めた。
「八つ当たり?私はただ事実を言っただけだよ?何につけて光晃は面倒事から逃げ出す。いい機会だからその性格を治してあげようと思っただけ」
何がいい機会なのか全くもって理解できなかったけど、実習先で何かがあり、真理姉さんはその八つ当たりを僕にしているのは理解できた
「そう。真理姉さん───いや、アンタがそう思ってるだけでしょ。僕は教育実習に行ってくれって頼んでない。それに、中学に入学する前、僕にはアンタを見捨てるって選択肢もあったんだよ?その辺忘れてない?」
中学に入学する前、僕は海外に行く両親に付いて行くという選択もあった。でも、真理姉さんを1人にしちゃいけないと思って日本に残った
「私がいつ光晃に残ってくれって頼んだの?残るって選択をしたのは光晃でしょ?」
この言葉で僕の中の何かが切れた
「そう。アンタがそう言うなら僕は出て行く。僕にアンタは──────」
「光晃!!ダメ!!」
遮るようにしてその次を言わせないようにしようとする二枝。でも、売り言葉に買い言葉。止めたところで時すでに遅しだった
「必要ない」
僕はそれだけ言い残し、財布と携帯だけ持って家を出た
今回は光晃と真理が喧嘩をする話でした
真理が光晃に理不尽な事を一方的に言ってるだけのような気がしますが、まぁ、売り言葉に買い言葉って事で
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




