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【過去編44】慣れないながらも真理姉さんの指導案を完成させる

今回は光晃が真理の指導案を書く前回の話の続きです

知識が全くない状態で光晃は無事に真理の指導案を完成させられるのか?

では、どうぞ

 軽快な出だしで真理姉さんの指導案を作成始めた僕。日時から単元(題材・主題)の目標までは真理姉さんが完成させていたし、単元の評価規準は出版社が掲載していたものを写せばいいよかったから何の問題もなかった。持ち物は真理姉さんに聞けばよかったしね。問題が発生したのは学習の展開の部分だった


「学習内容・学習活動とか指導上の留意点とか評価基準・評価方法って言われましても……」


 単元の評価規準は出版社が掲載したものを写せばよかった。それでも膨大な量があったけど。僕の情報処理が下手なだけで本当なら評価規準だけで完成させられたのかもしれなかもしれないけど中学生で何も知らない状態の僕がそんなの出来るはずもなく


「最後の最後で躓くとは……」


 初めてだって事もあり、最後の最後で躓き若干焦る僕。教職課程なんて勉強した事がない。小学校の授業時間はもちろん、中学・高校の授業時間が1時間がどれくらいあるだなんて知るはずもなかった。


「はぁ……どうしたものか……」


 最後の項目に頭を痛めつつも隣にいる真理姉さんを一瞥する


「これはこうなってるんだ……こっちは……こうなってるんだ……」


 真剣な表情でパソコンや本と睨めっこしている真理姉さん。手伝うと言ってしまった手前、最後のところは自分でやれとは言えなかったし、言えた雰囲気じゃなかった。


「どうしよっかなぁ……」


 この時ばかりは二枝が側にいてくれればと思ったよ。でも、時刻は深夜3時を回っていたのでそんな呼びつけるわけにもいかず僕は頭を悩ませていた


「そういえば評価規準の他にシラバスってあったな」


 出版社のホームページアクセスした時に評価規準例の他にシラバス案というのがあった。シラバスというのが何なのかこの時はまだ知らなかったけど、見てみる価値はある。そう思った僕はシラバス案もダウンロードした


「うわっ、何これ……」


 評価規準と同じ要領でシラバスをダウンロードしたけどこれまたすごい量だった。僕の欲しかったものは見つかったからよかったけどさ


「量は多くてもやるところは決まってるから助かったと言えば助かったのかな……」


 僕は時間配分のところを残し、それ以外を埋める事にした。いくら僕でも時間配分は知らないし


「教育実習生の手伝いなんて案外簡単だな」


 中1で身内とはいえ教育実習生の手伝いをした事でついた妙な自信。それがよかったのか悪かったのかっていう判断は今でもできない。真理姉さんの手伝いをせずに過ごしていたら葵衣と深く関わる事もなかっただろうし


「真理姉さん、指導案だけど、時間配分以外はやっておいたよ」


 教材研究の為、パソコンや本と睨めっこしていた真理姉さんに声を掛けた。


「ん、ありがとう。ん?今何て?」

「だから、真理姉さんの指導案を時間配分以外はやっておいたって言ったの?」

「嘘!?」

「本当。なんなら見てみる?」

「う、うん」


 この時の真理姉さんは口には出さなかった。でも、僕を見る目が言っていた『中1に指導案が書けるわけがない』と


「ほら。時間配分以外は全部書いたよ」

「ほ、本当だ……」

「これでいいならUSBに移してから真理姉さんのパソコンに移すけど」

「う、うん、ありがとう……でも、これ、どうやって作ったの?」


 真理姉さんからしてみれば信じられないかったと思う。教育課程を学んでいない中1の僕が教育実習生の指導案を完成させてしまったんだから。まぁ、タネはあるんだけど


「どうやってって評価規準例とシラバス?だっけ?それの中身を写しただけだけど?真理姉さんの実習校にいる高校生の実態なんて知らないから評価の方法はこれでいいのかは知らないけどさ」


 前に真理姉さんから聞いた話だと指導案というのは子供の実態を考慮して書くらしい。でも、僕はそんなの知らない。自分の身内が教育実習に行ったとして、そこで言われたのが自分から学ぼうとしないだとしよう。それを僕が聞いたところで知った事じゃない。そもそも、学ぶ事に関して言えば自分が学びたいと思えば学ぶ。そうじゃないなら学ばない。これに尽きる


「そ、そう、ありがとう……」


 腑に落ちない様子の真理姉さん。それは中1で指導案を書いてしまった事に対してなのか、自分が苦労した事をアッサリやってのけた事に対して思う事があったのかは知らないけどね


「じゃあ、僕はもう寝るけど、真理姉さんもあんまり遅くまで起きてると身体壊すよ?」


 教育実習生が身体壊そうが何しようが関係ないけど、その教育実習生が身内なら話は別だ。身体壊されて迷惑を被るのは僕だし、なかったからいいけど、欠席の電話を学校に入れなきゃいけない事を考えると自分の身体は大切にしてほしいと思うのは当然だろう


「うん。それじゃあ私ももう寝ようかな?」


 やけにアッサリ寝ると言った真理姉さん。これで教育実習は大丈夫なのかと聞きたくなったけど、本人がいいと言っているのなら僕が口出しをするべきではないと思い、この日は2人揃ってリビングで就寝。部屋じゃ寝苦しかったから仕方ないよね



 真理姉さんの手伝いをし、そのままリビングで寝てしまった日。真理姉さんの帰りが遅かった。今じゃ珍しくも何ともないんだけど


「もう7時過ぎか……」


 僕の家は夕飯の時間が決まってない。揃ったら食べるかお腹がすいたら食べるかだから。それは一旦置いといて、真理姉さんの帰りが遅いのが気になった


「昨日はこんなに遅かったっけ?」


 昨日とは真理姉さんの実習2日目に当たる日の事だ。この日は18時には帰って来ていた。でも、この日は違う。実習校で飲みに誘われたとかならしょうがない気もするけど、次の日もあるのに飲みに行くか?って話だし、それに、教師って何かと気を使う職業だったりする。親によっては居酒屋に行ったってバレただけでも叩く奴がいるかもだし


「真理姉さんでも遅くなる事ってあるんだ……」


 今思えば失礼な事を言ったと思う。だけどこればかりは仕方なかった。僕が小6までは帰りが早かったから


「まぁ、今日の夕飯はそうめんだから帰って来てから用意してもいいんだけど」


 部屋に戻ろうかと思ったと思ったけどこの日は特に暑かったのでリビングで真理姉さんの帰りを待つ事にした。夕飯で思い出したけど、両親が海外に発ち、真理姉さんと2人きりになった時に家事は分担しようって決めた。今となっては真理姉さんが洗濯と一部掃除で食事全般は僕の担当になってるけど


『ただいま~』


 玄関から真理姉さんの声が聞こえた。この時の時刻は20時。僕は帰りが遅い事に対して小言を言うタイプじゃないけどこの時ばかりは小言は言わないにしろ言いたい事はあった。玄関まで出迎えには行かなかったけど


「コーラ飲もう」


 玄関まで出迎えに行かず小言も言わない僕の口から出たのはコーラ飲もう宣言だった。


「ただいまぁ~、光晃~」


 コーラを取りにキッチンへと行こうとしたところで真理姉さんが入ってきた。


「お、おかえり真理姉さん、お、遅かったね?」

「うん~、ちょっとね~。それより今日の晩御飯なに~?」

「そうめん。すぐ用意するからちょっと待ってて」


 ゲッソリした真理姉さんを見てとてもじゃないけど自分のコーラを優先させる気になんてなれなかった


「うん……晩御飯前に私着替えてくるね」

「わかった」


 真理姉さんはおぼつかない足取りで部屋へと戻った。教育実習ってそんなに大変なのかな?


「気が向いたら教育実習生に優しくしてあげよう」


 真理姉さんが部屋に戻った後、僕の中でほんの少しだけ教育実習生に優しくしてもいいんじゃないかという気持ちが芽生えた。結局芽生えただけで優しくしてないけど



 それから着替えて戻ってきた真理姉さんと2人で夕飯を済ませ、くつろいでいる真理姉さんに指導案を書いている時に気なった事を聞いてみる事にした


「真理姉さん、今いい?」

「んー?なにー?」


 よほど過酷な実習だったのかリビングでだらけきっていた真理姉さん


「昨日僕が真理姉さんの指導案書いたでしょ?」

「あー、あれねぇ~一発合格だった~」

「そ、それはよかったよ……」


 一発合格。それを聞いた時僕は一抹の不安を覚えた。自分が真理姉さんの力になれたって嬉しさよりも真理姉さんはちゃんと指導してもらえてるのかと思った


「うん、光晃のお蔭だよ~。それで、何?学校の勉強でわからないところでもあった?」

「わからないところはあったけど学校の勉強でじゃない」


 僕のわからないところは学校の勉強でじゃない。指導案を書いた日に教科書を出版している会社のホームページで見たシラバスという単語の事だ


「学校の勉強以外の事?」

「うん」

「なになに?私の理想のタイプとか?」


 何が悲しくて自分の従姉の理想のタイプを聞かなきゃいけなかったんだろう?


「違うよ。シラバスについてだよ」

「シラバス?ああ~、シラバスね」


 中1の僕にとって聞き慣れないこの単語。でも、真理姉さんにとってはそうじゃない。だからこそ質問したんだけど


「うん。昨日真理姉さんの指導案を書く時に写させてもらったけど、アレって何?」


 僕が真理姉さんの指導案を書く時に評価規準例とシラバスの両方から必要なところを写した。でもその違いがよくわからなかった


「う~ん、学習指導案もシラバスも簡単に言えば計画書なんだけど、学習指導案は何て言うかな……学校の先生が私はこうやって授業をやっていきますよっていう事を書いた計画書でシラバスは……それぞれの時間の授業内容から先生の連絡先まで必要な情報を盛り込んだメモ帳かな?」

「なるほど……」


 疲れているながらも説明してくれた真理姉さん。悪いなとは思ったけど、後日自分で調べた結果、指導案ってのは教師が授業をするにあたり何時間で指導するか、どのような形で授業をするか、どのように児童

 ・生徒を評価するかについてをまとめたものをいうらしい。シラバスってのは日本式で言うと教師が学生に示す授業の計画書を言うらしい事を知った。ちなみに、真理姉さんが説明してくれた事は間違いではなかった。ただし、アメリカではって話だけど


「私の説明解りやすかった?」

「うん」

「そっか、よかった」


 真理姉さんが従姉じゃなかったら惚れていたかもしれない。そう思えるくらい真理姉さんの笑顔は美しかった。今じゃこんな笑顔見る機会なんてほとんどないけど




今回は光晃が真理の指導案を書く前回の話の続きでした

指導案一発合格しただなんてご都合主義すぎたかなとって感じです。まぁ、光晃が関わってないところで意地悪な教師を出してもなって感じではありますが

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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