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心配された僕は水沢先生を意識し始める

今回は光晃が葵衣を意識し始める話です

4日目にして意識し始めるますが、後10日も残っています

では、どうぞ

 教室へ向かう途中で僕は水沢先生に会った。僕に絡んできた実習生がどうなろうと知った事ではない。実習を打ち切られたんだし、そのまま帰宅していいとか言われようが僕のせいじゃないし。最初は僕が悪かったと思うけど、暴力に訴えるのは教師を志す人間のやっていい事じゃない


「岩崎君……」


 水沢先生はどこか不安そうにしている。大方僕があの実習生に殴られたとでも思っているんだろうけど。とりあえず用件だけ聞いておこう


「何ですか?水沢先生」

「ちょっと来て」


 僕は水沢先生に連れられてサボりスポットまで来た。どういうつもりかは知らないけど、僕をここへ連れてきてどうするつもりだ?


「どういうつもりですか?ここへ連れてきて」

「…………」


 本当にどういうつもりだ?連れてきた理由くらいは教えてほしいものだ。あの実習生みたいに説教でもするつもりか?


「何もないなら僕は教室に行きたいんですけど?」


 水沢先生もさっさと教室へ向かわなきゃマズイはずだけど……それにしても、どうしてさっきから無言なんだろう?


「よかった……」


 何がよかったかは知らないけど僕は何かこの人に心配されるような事をしたっけ?


「よかった?何がです?僕は先生に心配をかけるような事をした覚えはありません」

「したじゃない……あの人を煽った」


 あの人?おそらくはさっきのバカを指してるのだろうけど、あの程度の人間にされた事など気にしていない。指導力のない奴が思い上がって教育実習に来て、勝手に自爆した。ただ、それだけの話でこれと言った事はされてないんだから


「ああ、あの暴力しか能のないバカですか?だったら何も問題ありませんよ?」


 そう、何も問題はない。僕は気にしてすらいないし、その程度の人間を恐れる理由は何もない


「そうじゃない!!」

「────!?」


 水沢先生がいきなり叫んだ。そうじゃない?なら一体何だって言うんだろ?


「そうじゃ……ないよ……」


 そうじゃないなら何だって言うんだよ?あれかな?同じ実習生の実習を打ち切りにした事を怒っているのか?


「一体何だって言うんですか?僕には理解できません」


 僕には理解できない。あの実習生も、今の水沢先生も……


「光晃君は自分が傷つけられるのが怖くないの?」

「別に?僕は傷つきませんので」


 僕は実習生ごときに傷つけられない。僕を────いや、生徒を傷つけられるわけがない。そんな事をしたらそこで実習あ打ち切られるから


「どうして?どうしてどう言いきれるの?相手は君よりも年上で君よりもなんだよ?腕力だって強いし……」


 水沢先生の言いたい事はわかるけど、僕からしてみればそれがどうした?年上だから何?腕力が強いから何だ?そう思う。


「先生、年上だから何ですか?力が強いからなんですか?年上だから常識的な考えができるとでも?力が強いから何ですか?腕力で生徒を屈服させるだなんて指導力に欠けるし、教師だろうが実習生だろうが暴力に訴えるなんてバカとしか言いようがないし、そんな事をすればどうなるかは簡単にわかるでしょ。だからですよ。僕は傷つきません」


 そう、僕は教師や実習生が暴力を振るわれたらそれ以上の制裁を下す。教師や実習生がどうなろうと知った事ではない


「でも……」


 なおも食い下がってくる水沢先生。美人に心配されるのは悪い気はしないけど、過保護すぎやしないか?


「葵衣」


 先生を下の名前で呼び捨てで呼ぶなんて教室では絶対にできないし、絶対にしない。それに、心配されるのは嬉しいけど、心配され過ぎるのはウザい


「な、何……?先生を呼び捨てにしちゃいけないって言われなかったの?」


 そんな事、言われるまでもない。先生を呼び捨てにしちゃいけない。しかも、本人を目の前にして呼び捨てにするなんて事は絶対に


「葵衣、僕の心配をしてくれるのは嬉しいけど、心配し過ぎて葵衣に倒れたりしてほしくないんだ。それはわかってくれる?」


 教育実習生に干渉される謂れはない。だけど、邪険に扱って拗れても面倒だ。ここは優しく接し安心されておこう


「でも……」


 口で言ってもダメか……仕方ない、どうせここには人は寄り付かない。少しぐらいサービスするかね


「葵衣」

「────!?」


 水沢先生は僕の腕の中にスッポリ収まった。そして、当の本人は腕の中でビクッと身体を振るわせた。


「僕は今、ここにこうして元気でいるよ。大丈夫、僕は葵衣の前からいなくなったりしないから。ね?」

「うん……」


 水沢先生が震えてる?泣いてるのか?そうだとしたら厄介な事になる。これからHRに行かなきゃいけないし


「先生、今泣いたらHRに行くのに時間が掛かります。それに、真っ赤になった目を生徒に見られたくはないでしょ?」

「うん……今ダメなら放課後ここへ来て」


 いくらドジでも今泣いたらダメな事くらいは解っているみたいだ。それで放課後か……


「わかりました」


 水沢先生と放課後にここへ来ると約束した僕は教室へ、水沢先生は職員室へと向かった。職員室じゃ今頃大騒ぎだろうけど、そこは暴力しか能がない奴の実習を受け入れた自分達か校長を恨むんだね


「光晃!!」


 教室に入ると秀義が声を掛けてきた。はぁ、声のボリュームを……今回は特別に許してやるとしよう。あんな事があったんだ。水沢先生、秀義ときたら次は真理姉さんだろうな……


「何かな?」


 この期に及んであの実習生をどうして見捨てた?とか言い出さないよな?そんな事を言われても僕には助ける義務も義理もないしか言えないんだけどね


「あの実習生は打ち切りを言い渡された後、すぐ帰宅したみたいだぞ」


 秀義がどうしてそんな事を知っているかは知らないけど、僕にはどうでもいい情報だ。あの実習生があの後、どうしてどうなろうと関係ないし


「そう。でも、僕には関係ないね」


 関係ないのもそうだけど、興味もない。僕があの実習生に思う事は何もない。だけど、万が一にも秀義が何か言ってきたら黙らせればいいし


「光晃……」

「秀義が何を言おうが別にどうでもいいけど、学校と大学側からしてみればよかったじゃないか。指導力がなく暴力に訴えるくらいしか能のない奴が教師にならなくて済むんだから」

「光晃、お前はあの人が可哀そうだとは思わないんだな……」


 可哀そう?どこが?生徒に反抗されて言葉に困ったら暴力に訴えるような奴を可哀そうだとは思わない。これから教師になり、どこかの高校で働く前に指導力皆無なのが知る事ができて


「別に。あんな奴1人いなくなったところで僕は痛くもかゆくもない」


 僕には関係ない。教師が1人いなくなろうが、教育実習生が1人いなくなろうがね。実習生や教師もそうだけど、秀義や真理姉さんも例外じゃない。要らなくなったら捨てる。


「光晃……」


 秀義にも念のために釘を刺しておこう。声のボリュームを今は落としているみたいだけど、いつ前みたいになるかわからない


「秀義、それに真理姉さんと水沢先生もだけど、僕には必要ない。要らなくなったらいつでも捨てられるんだよ。別に君の代わりはいくらでもいるし、いくらでも探せる。そこだけは覚えておいてね」


 僕はそれだけ言うと秀義との会話を打ち切った。これ以上、秀義と話す意味もない。あの実習生の事も知らなくてもよかったくらいだし


「結局、僕は教師や実習生に感心なんてない。教師は在学期間、実習生は実習期間で僕に必要以上に絡んで来ないでほしいという希望的観測だけだって事か……」


 僕は1人自分の希望を口にしてみたけど、教師や実習生にそれが届くか?というと届かない。自分の力量も計れない愚かな連中だから


「今日は何事もなく終わった」


 朝のHRから午後の授業まで何事もなく終えた僕は水沢先生の待つサボりスポットへと向かった。用件は考えるまでもなく朝のあの件だろう


「お待たせしました。水沢先生」


 水沢先生は僕より先に来ていた。この人は僕と一緒の教室で同じようにHRを終えたのにどうして僕より来るのが早いんだ?


「ううん、私も今着いたところだからそんなに待ってないよ」


 いつもの雰囲気ではなく、今回は真面目な雰囲気を出す水沢先生。僕としては朝の話を蒸し返したくはないんだけど、この人が朝の話をしたいと言うのなら少しくらいは付き合おう


「そうですか、で?僕に何の用ですか?」


 用件はわかっている。けど、僕の勝手な推測でしかない。それに、こう言った事は本人の口から直接聞くのが筋というもの


「朝の件だよ」


 やっぱり、朝の件か……朝はHRもあったし、目が腫れた状態で他の生徒の前に出させるわけにもいかなかった。別に僕はこの人がどんな状態で生徒と接しようがどうでもいい。だけど、それは僕が知らない状態での話でだ


「朝の件?何の事でしょうか?」


 物忘れが激しくなったとかじゃなくて、興味がない事や興味がない人間の事は基本的に覚えていない。


「殴られそうになった事だよ」

「ああ、その事ですか」

「うん……」


 真面目だった水沢先生は途端に泣き始めた。たかが1人の生徒の為に涙を流すなんて、この人は相当なお人よしなんだろう


「しばらくこうしてますからさっさと泣き止んでください」


 僕は水沢先生を抱きしめ、泣き止むまで待つ。ま、当分はかかると思うけど


「うん、しばらくこうしてて……」

「わかりました」


 この人が泣こうが喚こうがどうでもいい。それよりもさっさと泣き止んでほしい


「ぐすっ……ひぐっ……」


 泣くならさっさとしてほしいなぁ……女性が泣いてたら優しく慰めるけど、同じ女性でも教師や実習生ともなれば話は別だ。優しくする理由はない。


「先生、泣きたい時は思いっきり泣いてもいいんじゃないですか?」

「う、うん……」


 思いっきり泣いていいと言ったけど、それは貯め込みすぎはよくないという意味で言ったわけじゃない。さっさと終わらせろという意味だ


「葵衣、ごめんね。心配かけたね」


 いつまでもグズグズしていられても仕方ない。僕の方から泣けるきっかけを作り、一気に貯め込んだものを吐き出させる


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!よかった……何ともなくて本当によかったよぉ……」


 僕の腕の中で泣く水沢先生。この分だとすぐに終わりそうだね。家出した時にも思ったけど、この人は本当にすぐ泣くな……


「落ち着きましたか?」

「うん……」


 数分後、大泣きしていた水沢先生は落ち着きを取り戻した。これで僕もようやく解放されたな……


「さて、僕はもうしばらくここにいますけど、先生はどうしますか?」

「私ももう少しここにいる」

「────!?」


 落ち着きを取り戻した水沢先生は僕から離れていて、目に涙が浮いているだけだった。だけど、僕はその姿を見て不覚にも可愛いと思ってしまった。これが恋かどうかなんてわからないけど


「どうしたの?顔赤いよ?」

「な、なんでもありません」


 この人に悟られまいと何でもないと誤魔化した。僕は教師にも教育実習生にも自分の心を曝け出すなんて事は絶対にしたくない





今回は光晃が葵衣を意識し始める話でした

意識し始めたはいいけど、葵衣の教育実習はあと10日もあります。土日を外すと後8日

残り8日で光晃はどう変化していくのか?

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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