【過去編42】僕の入ったところは中学校ではなくヤクザかヤンキーのたまり場だったようだ
今回から中1編スタートです
中学ではどんな事が起こるのでしょうか?
では、どうぞ
中学時代の楽しい思い出ってあったかな?ふと中学の思い出を振り返っても特にこれといったものがない。でも、思い出はなくても僕の通う中学の立地は珍しかったよ。隣に保育所があったから。そんな中学校3年間を振り返るとしよう
「中学に入学しても秀義とクラスが一緒じゃ変わり映えと思うのはどうしてだろうか?」
僕が中学に入学してから1週間。小学校同様に秀義と同じクラスになったという変わり映えしない現実を突きつけられながらも登校していた。違うのはせいぜい服装くらいかな?小学校は私服で登校してたけど、中学は制服だったし
「お前、何気に酷いな」
「あ、秀義、いたの?」
小学校の頃はバラバラに登校していた僕と秀義だけど、中学に入学してからは一緒に登校していた。秀義が部活動に入部する前まではね
「いたよ!つーか、本人隣りにいる前で本音をぶちまけるなよな!」
「そんな事言われてもねぇ……幼稚園から小学校6年間ずっと同じクラスで中学に入ってまで同じクラス。いい加減新しい刺激が欲しいと思うんだよ」
「だからって俺をディスる必要ないよね!?」
確かに秀義をディスる必要はなかったと思うけど、何だろう?恋愛ドラマとかじゃ女の幼馴染と幼稚園から小学校、中学校、高校と同じクラスでこれは運命なんじゃないか的な展開があるけど、僕の場合は相手がむさ苦しい男だ。そんな奴に運命なんて微塵も感じない
「秀義が女の子だったら僕だって少しマイルドな言い方をするけどさ……むさ苦しい上に声だけデカい。幼馴染がこれって割と本気で悲しくなるから」
別に女好きってわけじゃないけど、むさ苦しい上に声がデカいだけの幼馴染よりはマシでしょ
「………………俺だってこんな辛辣な幼馴染じゃなくて可愛い女の子がよかったっての」
どうやら秀義も幼馴染は男子より女子の方がよかったみたい。まぁ、気の合う人間なら別に同性でもいいんだろうけど、コイツと僕じゃ全てが逆だから仕方ない。
「ま、今更変えられない事にゴチャゴチャ言っても仕方ない。ところで最近は畑中から連絡来てるの?」
小学校を卒業し、中学校に入学した事で僕も秀義も若干浮かれ気味になってた。でも、秀義にとって忘れちゃいけないのが小学校6年の時に来た教育実習生である畑中舞の存在だった
「あー……教育実習が終わってから毎日のように家に来てる」
「へ、へぇ……そう……」
聞いちゃいけない事を聞いてしまった。この時の僕は素直にそう思った
「まぁ、俺も怒鳴ってしまったという負い目や年上の女性に甘えられるというのは悪い気しないから無理に追い出すような真似はしない。両親もなんか喜んでだしな」
またも聞いちゃいけない事を聞いた気がした
「そ、そっか……おじさんとおばさん喜んでたんだぁ……」
「ああ。俺に姉が出来たってスッゲー喜んでた」
「そ、それはよかったね……ほら、秀義ってだらしない部分があるからいいんじゃない?」
「元はと言えば光晃のせいだぞ」
「ごめん」
と、まぁこんな感じで中学校に入学してから最初の1ヶ月は平穏な学校生活が送れた。でも、そんな平穏も長くは続かなかった
中学校に入学してから1ヶ月が過ぎたある日の4時間目が終わった時にそれは起きた
「アホ!!」
長かった授業が終わり、給食の用意をするために廊下に出た時に聞こえた男性の怒鳴り声。多分教師の声だろうけど、何をそんなに怒鳴ってたんだろう?
「何?今の声?」
「怒鳴り声だよね?何かあったのかな?」
僕と同じように怒鳴り声を聞いた女子2人が何事かと話していた。彼女達の事は知らなかったけど、学校で怒鳴り声なんて聞いた事がないであろう事はすぐに解った
「忘れましたじゃないだろ!!」
再び廊下に響く怒鳴り声から察するに怒鳴られている方は何かを忘れたみたいだった。でも、何を?怒鳴られるって事は何か重要なものを忘れたのかな?
「何を怒鳴ってるんだろうね?」
「そうだよね~、隣は保育園なんだからもう少し考えてほしいよね~」
会話に参加しなかったけど、僕の意見も女子2人と同じだった。怒られている方が何を忘れたのかは知らないけど、隣は保育園だ。それに、忘れ物なんて人間誰しもするだろうから怒鳴る事ないでしょ。なんて思っていたし生徒に対して怒鳴るのは1人の教師だけだ。この時の僕はそう思って気にも留めてなかった
教師の怒鳴り声を聞いた日から2日が経ったある日。3時間目の社会が終わった時だった
「ちょっと来い」
他の生徒が次の授業の準備を進める中、社会科の教科担任が1人の男子生徒を廊下へ呼び出した。当然、呼ばれた方は大人しく従うしかないんだけど……この時の僕は嫌な予感しかしなかった
「お前!!俺の授業中に寝てただろ!!俺の授業がつまらないって言うのか!!!!」
嫌な予感的中。社会科の教科担任は男子生徒を呼び出して怒鳴った。授業中の居眠りって怒鳴りつける程の事なの?
「い、いや、それは、その……」
呼び出され、怒鳴られていた方はしどろもどろになっていた。小学校では怒鳴られる事なんて命に関わるような悪事を働いたりでもしない限り怒鳴られるなんて事は多分ない。でも、この中学校は違う。どんな些細な事でもすぐに怒鳴る教師が多いっていうか、そんな教師しかいなかった
「ハッキリ言えよ!!」
「あ、いや、それは……その……」
僕はこの日を境に自分が入学してきたのは中学校ではなく、ヤクザの事務所かヤンキーの吹き溜まりと思う事にした。でも、怒鳴られるだけだったらまだマシだったのかもしれない。
「何だ!!俺の授業がつまらないって言いたいのか!!」
隣りに保育園があるというのに怒鳴るのを止めない男性教師。後で保育園側やそこに子供を預けている親から苦情が来るだろう事は全く考えてないみたいだった
「ち、違います!最近眠れない事が多くて……そ、それで……その……」
眠れない事が多い。これを聞いた普通の人なら何かの病気を連想するだろう。まぁ、夜更かししている可能性もあるけど
「そんな事知らねえ!!今聞いてるのは俺の授業がつまらないのかって事だ!!」
男子生徒が眠れない事が多いと言った事はお構いなしで自分の授業がつまらないか否かを問いただす男性教師。遠回しに自分の授業は面白いから居眠りするだなんてあり得ないと言っているように聞こえた
「い、いえ、そんな事は……」
自分の言い分をガン無視された男子生徒が可哀そうに見える。そりゃそうか。だって、話がかみ合ってないんだもん。
「じゃあ次からは寝るなよ?」
「は、はい……」
男子生徒は面白いともつまらないとも答えてない。でも、つまらないとハッキリ言われなかった事に満足したのか男性教師は職員室に戻って行った。些細な事で怒鳴る教師が1人だけだと思って気にも留めてなかった僕だったけど、まさかの2人目がいたとは思ってなかった。
男子生徒が呼び出され怒鳴られた次の日の朝。いつも通り登校した僕はいろいろな意味で衝撃的なものを見てしまった
「……………」
この日登校した僕は開いた口が塞がらなかったよ。だってそうだろ?前の日まで首にギプスも何もしてなかったクラスメイトが次の日登校したら首にギプスを巻いている。何かあったとしか言いようがない
「よ、よぉ、光晃……」
「おはよう、秀義。あの子どうしたの?」
声を掛けてきたのは先に登校していたであろう秀義。心なしか顔が引きつっていた
「あー、アイツ剣道部らしいんだけどな、その……顧問に説教された時に……な?」
首にギプスした生徒が何部でも僕には関係なかったけどその後の顧問に説教された時にってのが気になった。説教されたってだけなら自分が悪いじゃんで済ませた話だ。でも、いくら説教するにしても首にギプスを巻くほどの大ケガを負わせるだろうか?いや、教師がそんな事をしていいんだろうか?
「説教されたって話だけなら自業自得で済ますんだけど、さすがに大ケガしたとなると説教レベルじゃ済まないと思うんだけど?」
「それはそうなんだけどよ……なぁ?光晃?何とかならないか?」
「何とかならないかってどうして僕にそれを?」
同じクラスの生徒が教師から説教され大ケガを負った。それでどうして秀義は僕に何とかならないかと言ってきたんだろう?僕は神様でも何でもないのに
「だってお前は小学生の頃教師を1人追い詰めただろ?だから何とかならないかと思ってな」
秀義が言っている追い詰めた教師は二枝の事だとすぐに解った。でも、僕はあくまでも知恵を出しただけで実行したのは秀義や当時のクラスメイト達。ま、知恵出した時点で僕も同罪だけど
「状況が違うのと被害者が彼1人だけだから何ともならないよ。被害者である彼の親が学校に苦情を入れない限りはね」
二枝の場合は授業中に児童を怒鳴りつけたのもあってか僕が入れ知恵しただけですぐに結託する事が出来た。でも、この場合は違う。最初に先輩や同級生の中から顧問に説教された時に大ケガを負わされた被害者を探すところから始めないといけない。それは剣道部員だけに留まるような話じゃないかもしれないし
「だよな……はぁ~」
「当たり前でしょ。それでも手が全くないわけじゃないけど」
「だよな……いくら光晃でも何ともならな──────って今何て言った?」
「何?聞こえなかったの?全く手がないわけじゃないって言ったんだよ」
「光晃!それは本当か!?」
肩を力いっぱい掴んできた秀義を見てもしかしたらコイツは男色の気があるんじゃないかとか、怖いとか感じたのは黙っておこう。本人に言ったら……考えただけでも気持ち悪い
「本当だよ。本当だから掴まないで。あと近い」
「おっと済まん済まん。で、手があるんだろ!?教えてくれ!」
大ケガを負わされた生徒は秀義と親しかったんだろうか?嫉妬したわけじゃないけど手を貸す以上理由は聞いておきたかった
「教えるのはいいけど、秀義は彼と親しいのかな?」
知恵を貸すだけだから秀義がなんて答えようと関係ない。僕はこの時そう思っていた。そう、秀義の答えを聞くまでは
「親しいも何もアイツは畑中先生の親戚だ。気に掛けるのは当たり前だろ?」
「…………………ごめん、何て?」
この答えを聞いた瞬間、僕は金縛りにあったような感覚に陥った
「だから、アイツは畑中先生の親戚だって言ったんだよ!」
僕の聞き間違いであってほしかった……大ケガ負わされた男子生徒が畑中の親戚?秀義の冗談にしては笑えなかった
「冗談は顔と声と存在だけにしてよ。畑中の親戚と同じクラスだなんて」
「いや、酷い事言ってるけど、マジだぞ」
「え?」
「え?冗談だと思った?」
「うん」
「マジなんだけど?ちなみに俺は入学前に初めて会ったが、初対面でお兄ちゃんってなつかれたぞ」
理解が追い付かない僕を余所に『同い年なのになー』なんて言って笑う秀義。
「世の中狭すぎでしょ……」
二枝の妹が真理姉さんの友達だったと知った時にも思ったけど、世の中って狭いと思う。担任の身内の次は教育実習生の親戚。人の縁って不思議だ
「それはそうと手があるなら教えてくれよ」
「あ、うん。そうだね。じゃあ、最初に秀義は何か部活動してるかな?」
「は?いきなり何だよ?」
確かにいきなりだったかもしれない。でも、僕にとっては必要な事だった
「これからする事に必要なの。いいから答えて」
「あ、ああ、一応、野球部に入ってる」
「そう。じゃあ、先輩とも仲良かったりするんだ?」
「まぁな!野球ってチームプレーだろ?」
野球がチームプレーかどうかなんて僕にはどうでもよかった。僕が気にしてたのは秀義が先輩と仲がいいかどうかだったから
「そうだね。じゃあ、先輩と仲がいいって事は同級生とも?」
「もちろん!なぁ、光晃。そんな事聞いてどうするんだよ?」
「それを今から説明するんだよ」
僕は秀義の親じゃないから部活動の様子や人間関係になんて微塵も興味はなかった。問題なのは秀義が人を集める事が出来る人間かどうかだったから
「よ、よろしく頼む……」
「了解。説明って言っても大した事じゃない。ただ、剣道部顧問の評判と他に彼と同じように大ケガ負わされた人間がいたら集めてほしいってだけでね」
「は?それだけ?」
「うん、それだけ。あとは集めた人達の親から学校に苦情を言ってもらえば何とかなるでしょ」
ケガを負わせた教師を退職に追い込めるかどうかは知らない。でも、親からの苦情──────それも教師を指名しての苦情は学校にとってはかなり痛手になると思う。やるかやらないかは本人達次第って事で
今回から中1編スタートでした
小学校では怒鳴る教師は1人しか出しませんでしたが、中学では怒鳴る教師多めでいきたいと思います
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




