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【過去編38】秀義が珍しく怒鳴り声を上げた

今回は普段デカい声で喋る秀義が珍しく怒鳴る話です

秀義が怒鳴ったのは誰?

では、どうぞ

 会議室で二枝と密会し、畑中の実習を途中で打ち切りにさせないと約束してから4日が経過した。大きなお節介宣言した日から畑中は何かにつけて僕に絡んできた。言う事は1人でいないでみんなと遊べのみだったけどね。で、もう1人のお節介実習生はというと……


「岩崎君!今日こそは私に従ってもらうわよ!」


 畑中同様に僕に絡んできた。朝からご苦労な事で……


「はぁ……従うも何も僕は貴女の名前すら知らないんですけど……」


 この実習生……伊藤は二枝と会議室で密会したその日に僕に絡んできたとってもとぉっても迷惑な奴だ


「はぁ!?私初日に自己紹介したわよね!?覚えてないの?」


 コイツはそもそも担当するクラスが違うという結論に行きつかなかったのか?まぁ、児童を従わせようとしている時点で気が付いてなさそうだったけどさ……これを二枝が知ったら何て言うかなんて僕には目に見えていた


「覚えてるも何も貴女は僕のクラスじゃないでしょ。それに、畑中先生と同じ大学だか何だか知りませんが、貴女に従う理由が僕にはありません」


 大人しく言う事を聞いてほしいなら下僕とか奴隷で十分。児童である必要もまして僕である必要もない


「は?私は先生なの。で、岩崎君は児童。児童が先生の言う事を聞くのは当たり前でしょ?」


 そんな理屈があってたまるか。大体伊藤は先生じゃなくて先生擬き。言い方を変えるのなら先生の卵。断じて先生だって威張れるような立場じゃない


「児童が先生の言う事を聞かなきゃいけないっていう決まりがどこにあるんですか?これ以上しつこいと二枝先生か教頭、校長に言いますよ?」


 僕1人でも何とかなったけど、こういうのは現場の教師に怒られた方が指導にはなる。なんて事は一切考えず、脅しのつもりで言ってみた


「言ってもいいけど二枝先生も教頭先生、校長先生も私の味方をすると思うわよ?現に何も言ってこないし」


 二枝には実習を打ち切りにするような事はするなって言ってあったから実習打ち切りだなんて事は言わないのは百歩譲っていいとして、何も言ってこないからって伊藤は調子に乗りすぎだと思った。僕としてはそっちの方が後の楽しみが増えるからよかったんだけど


「そうですか。きっと二枝先生は畑中先生の事で忙しいんでしょう」

「そう?私は岩崎君の指導を任されていると思ってるんだけど?」


 コイツは本物のバカだ。僕がそう感じた瞬間だった。4日前の口論を振り返ってもらえればいいけど、必要以上に児童に関わるなって言われてた。それがどうして手のひらを返したように実習生に児童の指導を任せるのか全く理解できなかった


「指導って言われましても……」


 二枝を始めとする現場の教師が僕に絡んでも何も言わない=指導を任せているという構図にどうやったら辿り着くのか教えてほしい。実習生に児童(生徒)の指導を任せる教師がどこにいるんだろう?そんな教師普通いないと思うけど、伊藤はそこに気が付かなかったのかな?


「大丈夫!岩崎君の事は舞じゃなくて私が責任持って更生させるわ!だから安心して!ね?」


 変わる気なんて微塵もない僕を余所に勝手に意気込んでいる伊藤。こういう奴が仕事を始めて想像と違うとすぐに辞めるタイプなんだ。小6の僕はそう感じた。


「はぁ……まぁ、やるだけやってみてください」


 畑中もそうだったけど、言って聞かない奴は1度失敗させればいい。中学や高校だと年齢も年齢だったりするから容赦なく言われたりする場合もあるだろうけど、小学校だったら容赦なく言われたとしても多少は優しい。主に言葉のチョイスが


「ええ!私に任せなさい!」

「期待しないでおきますよ」


 このやり取りの後僕はいつも通りに過ごした。畑中と伊藤に絡まれた事以外は。




 伊藤が頼んでもない僕の更生を開始してから競うように伊藤達に絡まれ、クラスメイトの雑談に突撃するという僕達にとっては迷惑行為が続いた。クラスメイトの皆、ホントごめんね?それが続いたある日の朝


「さぁ!岩崎君!今日もやるわよ!」

「そうだよ!岩崎君!」


 伊藤と畑中に絡まれ続け、1人で大人しく過ごしたい僕の精神的疲労はピークを迎えていた。なんて事は一切なく、逆にクラスメイト達の精神的疲労がピークを迎えているんじゃないかと思い始める始末。それくらい伊藤と畑中のしている事は迷惑だった。


「はぁ……今日もですか……」


 僕は教育実習生に絡まれるのには慣れっこだからちょっと絡まれた程度で参ってしまうなんて事はなかったし今もない。でも秀義も宮村さんも僕みたいな教育実習生に絡まれ慣れているわけじゃない。何が言いたいかって?中には外部から来た人間を警戒する子もいるって事


「当たり前よ。私は岩崎君の指導を任されているんだから!」


 伊藤は勘違いしているみたいだけど、僕が二枝にお前達の教育実習を全うさせろって言ったから過激な事をしても許されるだけであって本当ならとっくの昔に実習打ち切りになってもおかしくないと思うんだよなぁ……


「伊藤ちゃん!岩崎君の指導を任されてるのは私だよ!勘違いしないで!」


 勘違いしてたのは畑中も同じだった。さて、どうしたものか……。そんな事を僕は考えていたその時だった


「いい加減にしろよ!光晃が迷惑してんのが解らねーのか!?」


 秀義が伊藤達を怒鳴りつけた。年上女性好きを公言している秀義が初めて年上女性を怒鳴りつけたのはこの時が初めてなんじゃないかな?


「あなたいきなり何?私達は岩崎君の更生をしてるの。邪魔しないで」

「そうだよ!名倉君!指導の邪魔しないでよ!!」


 いきなり怒鳴りつけた秀義も秀義だけど、迷惑だって言われて逆切れする方もどうかしている。


「はぁ!?これのどこが指導なんだよ!!ポッと出の分際で光晃や俺達に干渉すんなよ!!迷惑なんだよ!!」


 秀義の言う事に宮村さんやクラスメイト達は『そうだ!そうだ!迷惑だ!』とヤジを飛ばす。どんなにバカでも僕と秀義を除くクラス全員からヤジが飛んだらさすがに止めるだろう。この時はそう思っていた。しかし────────


「うるさいわよ!!私達はいつも1人でいる岩崎君に友達を作ってあげようとしているの!!これは指導よ!!邪魔しないで頂戴!!」

「そうだよ!!これは指導なんだよ!!私達が岩崎君を更生させる為の指導なの!!君達が岩崎君を輪の中に入れてあげれば私達だってこんな事しなくて済んだんだよ!!」


 完全に逆切れしてる伊藤と畑中。でも、秀義や宮村さんは僕が大人数を好まない事や学校行事の時は協力する事を知っている。それに、クラスの中には5年の時に一緒だった子が秀義と宮村さん以外にもいた。つまり、5年の時にクラスが一緒だった子達は知っている。普段は1人でもいざとなると僕がクラスに協力する事を


「嫌がる奴に無理強いする事のどこが指導なんだよ!!」


 秀義の言ってる事の半分は当たっていたけど半分は外れていた。指導と称して絡まれるのは嫌だった。でも、伊藤と畑中の心をへし折る為に従ってたフリをすると決めたのは僕だ。無理強いされた覚えはない


「指導よ!!友達に話し掛ける勇気のない岩崎君に友達を作ってあげるんだから!!」


 伊藤の言ってる事は完全に好意の押し付けだった


「そうだよ!!私達は岩崎君を更生させてあげてるの!!これは立派な指導だよ!!」


 畑中も同じだった。大人が2人して自分のしている事は好意の押し付けだと気が付かないとは……今この2人がどうしているのかは知らないけど、教師になっても親になっても碌な事になってないのは確かだと思う


「俺達は迷惑してるんだよ!!それに、光晃!お前はどうして何も言わないんだ!!」


 伊藤・畑中の迷惑実習生コンビに向いていた秀義の怒りが僕にまで飛び火してきた。


「それは──────」

「これは一体何の騒ぎ?教室の外まで怒鳴り声が響いてたよ?」


 僕の言葉を遮って二枝が入ってきた。


「先生実は……」


 宮村さんが二枝の元へ駆け寄り耳打ちで何かを話している。十中八九伊藤・畑中の迷惑実習生コンビが僕に絡んだところから秀義が2人を怒鳴りつけた事だと思うけど


「わかったよ。みんな、悪いけど朝の会は読書の時間にするから。それと、伊藤先生と畑中先生、名倉君、岩崎君は会議室に来て」


 教育実習生がいい気になって指導とか始めるから僕まで会議室に呼ばれる事となった。ついでに隣のクラスの担任と思しき男性教師も




「それで?何があったの?名倉君」


 会議室に入って最初に口を開いた二枝がしたのは秀義への質問だった


「伊藤先生と畑中先生が光晃に絡んでるのを見て頭にきて怒鳴りました」


 ぶすっとした秀義を僕はこの日初めて見た。いつも声がデカいだけの事はあっても人を怒鳴りつけるだなんて事はほとんどない。今も時々秀義が最後に怒鳴り声を上げた日を忘れるくらいだもん


「そう。次に伊藤先生と畑中先生はどうして岩崎君に対して過度な干渉を?」


 伊藤と畑中にした質問に意味はない。二枝は多分それを理解していたと思う


「「指導です!!」」


 ほら。過度な干渉とか迷惑行為とは思わず指導って何の躊躇いもなく言ってのけたでしょ?


「はぁ……」


 溜息を吐いたのは僕でも二枝でもまして秀義や伊藤・畑中コンビでもなく隣のクラスの担任と思しき男性教師だった


「ほら見てください!名倉君と二枝先生が余計な事をしたせいで小林先生が呆れてるじゃないですか!!」


 男性教師……小林の溜息が呆れからくるものなのか、怒りからくるものなのかこの時点でハッキリしなかったのにどうして伊藤はこの溜息を呆れからくるものと捉えたんだろう?


「確かに呆れてるよ。伊藤先生と畑中先生にね」


 普通に考えれば児童が怒鳴り声を上げるほどの事をした実習生の肩を持つ教師なんていないって事くらいすぐに解る。それが解らないのは伊藤と畑中くらいで


「どうして私達が呆れられなければならないのでしょうか?私達は岩崎君の更生をしようとしただけですよ?」

「そうです!私達は正しい事をしようとしただけです!私達は悪くありません!」


 自分に非がある事を認めようとしない伊藤と畑中は僕が小6までに見てきた大人の中で最も無様に見えた





今回は普段デカい声で喋る秀義が珍しく怒鳴る話でした

次回はどうなる事やら・・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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