【過去編36】僕は迷惑な教育実習生に目を付けられた
今回から小6編です
小6になった光晃の担任は言わずもがなあの人!そして、久々に教育実習生が登場します
では、どうぞ
二枝が家庭訪問に来た日から月日は流れ僕は6年生になった。5年生の頃は1学期に二枝がやらかしてくれた事以外は特にこれと言った出来事はなく平和だったと言えるだろう。そんな僕も小学校の最高学年に上がったわけだけど……何の因果か担任が二枝だったのは偶然だろうか?そんなこんなで6年の時に来た教育実習生の話でもしようと思う
「……………今年もこの時期がやってきたか」
朝のHR。二枝の話が全くもって耳に入らなかった。
「え~、今日からみんなと一緒に勉強する事になった畑中舞先生です。みんな仲良くしてあげてくださいね。では、畑中先生、何か一言お願いします」
二枝に促され一歩前に出る畑中。だけど、僕からしてみれば教育実習生の話なんてどうでもいい。そんな事よりも早くHRが終わってほしいという気持ちの方が強かった
「畑中舞です!短い期間ではありますが皆さんと楽しく勉強出来たらと思います!よろしくお願いします!」
小学生の頃は小学校の教育実習期間なんて知らなかったけど、今思い起こせば4週間のどこが短い期間なんだ?教師と実習生が大嫌いな僕にとっては十分すぎるくらい長いと感じる。
「はい!みんな畑中先生に拍手!」
クラスメイト達は大盛り上がりで拍手してたけど、僕はそうじゃない。教育実習生なんて家族や同級生、自分の担任以上に一緒にいる期間が短い。そんな奴と楽しく勉強?冗談じゃない。家族や同級生、担任の下りはともかく、教育実習生と関わり合いになる事だけは絶対に嫌だった
「はぁ……今年も去年みたいに大人しい実習生だと僕としては非常に助かるんだけどなぁ……」
小5の時に来た実習生はよく言うと大人しいタイプ。悪く言うと根暗。そんな感じだった。だから僕にこれと言った被害なんてなかった。でも、明るいタイプの実習生だったら話は別だ。こういう奴は度の過ぎたお節介を焼く。頼んでもいないのに集団の輪に入れようとしたり、望んでないのに絡んできたりとか
「後で先生に言っておこう」
二枝を依存させてからというもの、何かにつけて僕を呼びだし甘えてくるようになった。智花さんの場合はよく家に泊まりに来ては甘えてきた。まぁ、その時は二枝同伴で甘えてくるのが二枝、智花さん、真理姉さんと面子が決まっていた。真理姉さん達が満足するのに半比例して僕の疲労も溜まる。見事なまでに悪循環だ
「今回は中々に活発そうな人が来たね」
「僕にとっては迷惑な事この上ないよ。宮村さん」
これまた何の因果か同じクラスになった宮村さん。クラスが同じで席も隣。二枝にも言える事だけど、本当に何の因果だろう?
「あ、あはは……岩崎君は畑中先生が苦手なの?」
「苦手じゃない。ただ、余計なお節介焼かれないか心配なだけ」
小さな親切余計なお世話とはよく言ったもので、教育実習生が良かれと思って僕にする事のほとんどが余計なお世話だったりする
「わ、私もできればあまり実習生の先生には踏み込んできてほしくないかな……」
宮村さんは僕と同じとは言わないけどあまり集団の中が得意だという方じゃなかった。小3の時は気づかなかったけど、こういうところは似ていると思ったね
「んふふ~、光晃♪光晃♪」
朝のHRが終わった後、僕は二枝に手伝ってほしい事があるという名目で会議室へ呼ばれていた。目的?そんなの僕に甘える以外の目的なんてないでしょ。この人には。ちょうど僕も話があったから呼ばれたタイミングはよかったんだけどさ
「はいはい。で、知佳にお願いがあるんだけどいいかな?」
割と高い頻度で家に泊まりに来ていた二枝姉妹。それに対して何も言わない僕の両親。対抗するかのように家じゃ僕に甘えてくる真理姉さん。こんな面子じゃ嫌でも二枝が甘えてくるのは慣れてしまう。しかも、二枝の両親は『娘達の事をよろしくお願いします』だなんて言ってきた。当時小学生だった僕に
「うん!光晃のお願いなら知佳頑張る!」
姉というよりは幼い妹を持った気分だった。そんな二枝が公私を使い分けられているから世の中は恐ろしいものだ
「あー、そこまで頑張らなくていいんだけどさ、教育実習生の畑中先生を僕と宮村さんになるべく近寄らせないで」
畑中に何かされたわけじゃなかった。でも、警戒しておいて損はないし、何か問題があってからじゃ遅い。僕達との間でも教師との間でもね。
「光晃のお願いなら近寄らせないようにするけどぉ~、理由を聞かせれくれない?」
「理由は簡単だよ。宮村さんはともかく、僕はいきなりやってきたポッ出の奴に絡まれたくないから」
本音を言えば理由はこれだけじゃなかった。でも、絡まれたくないというのが強かった
「光晃がそう言うなら注意するけど……昔教育実習生の先生に何かされた?」
不安げな表情をする二枝を見るとつい比較してしまった。二枝が初めて僕の担任なりイジメ問題から逃げ出したあの時と。人って変われば変わるもんだな。
「まぁね。その辺は他の先生に聞いた方がいい。僕がされた事に対してどういう対応したのかとかいろいろわかるから」
本当は自分の口から言うのが嫌だった。言ったら二枝に八つ当たりしそうな僕がいたから。頭では無関係だって解っても教師となるとみんな同じに見えてしまうあたり僕は小学生の時点で拗らせていたんだと思う
「う、うん、職員室に戻ったらそれとなく聞いてみるよ……」
「そうして。多分1年の時の担任が詳しく知っているはずだから」
二枝は小4からの付き合いだったとはいえ僕は完全に信用したわけじゃなかった。教師だってのもあったけど、1番はそこじゃない。そんな事ないと言いたかったけど、二枝は何か問題が起こると逃げ出すんじゃないか。そんな不信感から1人の大人として信用しきれなかった。たった1回の過ちで何言ってんだって話だけど、子供からしてみればそのたった1回の過ちが後に響くことだってある
「わかった……」
教育実習生───教師もそうだけど、教育実習生も僕にとっては疎ましい存在でしかない。短い期間での付き合いでしかないクセに人の踏み込んできてほしくないところにまで土足で踏み込んでくる。学力があったってデリカシーがないんじゃどうしようもない
「知佳が言ってダメだったら僕は畑中の心を容赦なくへし折るから」
僕はそれだけ言って会議室を後にした。
畑中を僕や宮村さんに近づけさせないように言ってから3日が経過した。その間二枝に確認ところによると関わらないようにとは言えなかったけど過度な干渉はしないようには伝えたとの事だった。職員室で伝えたとの事で他の先生にも確認したところ二枝は嘘は吐いてなかった。でも──────
「岩崎君!たまにはみんなと一緒に遊ぼうよ!」
デジャヴ……こんな事を1年の時に来た実習生にも言われたけど、小6になってまで言われるとは思わなかった
「僕は1人が好きなんですよ。それに、みんなで遊ぶって言われましても困ります」
集団の中にいるのが苦痛に感じる人間も世の中にはいる。それでも僕は必要な時にクラスメイトと協力して物事に取り組んでいたから問題ないと思っていた。事実二枝を追い出そうとした時にはクラスメイト達と協力したし
「そんな寂しい事言わないで。ほら、みんなと遊んだ方が楽しいよ?」
こういうのを余計なお世話と言うんだ。それに、1年生じゃあるまいし小6になってまでクラスメイトと遊ぶだなんて事はしない。仲の良い奴同士で集まって遊ぶ奴だっている。畑中の言っている事はどこか的外れだった
「1年生の時ならいいとして、僕は6年生です。今更みんなで遊ぼうだなんてのは幼稚だと思いますけど?」
みんなで遊ぶという事を全否定するつもりはない。しかし、みんなで遊ぶ事なんて週に1回あればいい方でそれ以外は好きなように過ごさせてほしいというのが僕の本音だった
「そうかな?先生が子供の頃は毎日のようにみんなで遊んでたけど?」
親に対してもそうだけど、自分の子供の頃がそうだったから今の子供もそうだという考えを押しける。考えを押し付けるという時点で教師って言うよりも人として視野が狭いんじゃないか。そう感じる。でも、言っている本人はそんな事思ってないから悪質だ。この畑中もそういった大人の1人だった
「それは先生の子供の頃の話でしょ?今の子供は違うんですよ。1人でいたいと思う子もいればみんなで遊ぶのが楽しいと感じる子もいますよ?先生の考えを僕に押し付けないでください」
友達が欲しくないのか?と聞かれれば答えに困ってしまう。僕は大人数よりも少人数の方が楽でいいと感じる。友達だって大勢はいらない。でも、本当に気の合う友達が数人いればそれでいい
「で、でもッ!みんなで遊んだ方が楽しいよ?」
本人が1人でいる方が好きだと言っているにも関わらず集団の中に僕を放り込もうとする畑中。多分彼女はいつも1人でいる僕をどうにか集団の輪に入れ、自分が僕をクラスメイト達と仲良くさせたという実績が欲しいだけだったんだと思う
「それはあくまでも先生の考えであって僕は1人でいたいんです。短い期間しかいない人間が知りも知りもしないのにデカい口叩かないでくれます?」
今でも思う。たかが数週間しかいない人間が知ったような口を利かないでほしいとね
「君は可哀そうな子だね。友達の輪に入れなかったからそんなに歪んでしまったんだ……でも、私がその歪みを正してあげるよ。君を更生させてあげる!」
教師や教育実習生というのは話が通じない。いや、論点がズレていると言った方がいいのかな?1人でいたいっていう児童(生徒)の意見はガン無視して自分が更生させてみせるだなんて言うんだもの……僕はそうはなるまいとは思わない。自分だっていつかはそうなってしまう可能性があるから。でも、そうならないように気を付けようとは思う
「はぁ……」
面倒な事になった。僕は心の底からそう思う。世の中の教師や教育実習生はみんな人の話を聞かずに自分の意見を押し付けてくるの?
「大丈夫だよ!絶対に君を何とかして見せるから!」
こうして畑中の大きなお節介が幕を開けた。
今回から小6編でした
小4、小5と続きまして小6でも担任は二枝!この作品では腐れ縁が多いって事に最近気が付きました。という事で、久々に教育実習生が来た話になりましたが・・・・いまいち恩着せがましさが足りない
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




