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【過去編35】二枝は何となく僕がした事に気づいていたみたいだ

今回は二枝姉妹の意外な身内と小5になってから光晃がした事に何となく気づいていた二枝の話です

結局、光晃と二枝の関係はどうなったのでしょうか?

では、どうぞ

「何ですか?それ?僕が付き合いきれないって言ってショックを受ける意味が理解できないんですけど?」


 僕は智花さんの言った事が理解できなかった。言葉の意味が理解できないと言っているんじゃない。1人の児童に『付き合いきれない』と言われただけで落ち込む事に対して理解できなかった


「そのままの意味だよ。って言っても小5の光晃君じゃちょっと難しいかもね……」


 たはは……と笑って空気を和ませようとしている智花さんだったけど、僕からしてみれば小5理解できない。二枝は教師。僕は児童。年だって10個以上は離れている。小学生に付き合いきれないと言われただけで世の中の教師はショックを受けるものなのかな?と真剣に考えてしまった


「今のは多分、小5じゃなくても難しいと思いますよ?大体、小学生に付き合いきれないって言われた程度で落ち込む先生なんて僕は聞いた事がありませんよ」


 探せばいるんだろうけど、小学生にキツク言われただけで落ち込む教師なんて早々いるもんじゃないと思う。少なくとも小4までに関わってきた教師はみんな面の皮が分厚かった記憶がある。


「普通はそうなんだけど……さ、光晃君は似ているんだよ」

「似てる?誰に?」


 唐突に似ていると言われても僕は困る。だって、誰に似ているか言われてないから。


「死んじゃった私達の弟にだよ。生きていればちょうど中3だった」


 二枝に弟がいた事もその弟が死んでいた事も僕にとっては初耳だった。そりゃそうか。これまでそんな踏み込んだ話なんてした事なかったし、興味もなかった。知らなかったんじゃない。知ろうとしなかったんだ


「そうですか。で、その死んでしまった弟さんと僕はどこが似ているって言うんですか?」


 智花さんは生きていれば中3だったと言っていた。つまり、亡くなったのはそれよりも前って事になる。それがどれくらい前なのかは知らないし、担任の家庭事情なんて知ろうとも思わなかった


「その口調と冷めたような感じかな。でも、私達の弟は何だかんだで私達が甘えるとそれに付き合ってくれた。でも、君はどう?お姉ちゃんが謝れって言った時に突き放したでしょ」


 決めつけとも取れる言い草の智花さん。でも、突き放したというのは合っていた。僕は小4の時に二枝を突き放した。でも、それがなんだって言うんだ?二枝のような聞き分けのない大人なんて教師じゃなかったら相手にしてない


「そうですね。確かに僕は小4の頃に二枝先生を突き放しましたよ。だからどうだって言うんですか?この際ですから母さんや真理姉さん、先生本人がいる前で言いますが、小4の頃の二枝先生なんて僕からしてみれば聞き分けのない大人でした。教師じゃなかったら相手にすらしてませんよ」

「「「「………………」」」」


 僕の本音を聞いて黙る女性陣。みんな思うところがあったのか、僕をクソガキと思ったのかは定かではなかった


「そもそも、僕は学校の先生とそれになろうとしている人は大嫌いです。話聞かないし、無理矢理他の子と遊ばせようとする。そして、自分の思い通りにならなかったら実力行使。そんな連中をまともに相手するだけ時間の無駄です。それなら読書するなり予習復習してた方がずっと有意義だと思います」


 自分の言っている事が全て正しいとは言わない。自分の持っている知識が全てだとは言わない。でも、教師の言う事を全て聞く、教育実習生の思い通りになるだなんて都合のいい児童(生徒)じゃないんだよ。僕は


「「「「………………」」」」


 教師が嫌い、教育実習生が嫌い。僕はハッキリと自分の考えを言った。でも、それに対して女性陣は黙っているだけ。小学生が自分の意見を言ったのに黙ったまま。いや、言い返せないのかな?


「黙ったままで言い返せないか……まぁ、所詮こんなものだよね……僕に死んでしまった弟さんの面影を重ねるのは構いません。ですが、僕の考えはこれからも変わりませんし、変えるつもりもありません。それと、この中で誰が1番好きかって質問ですが、皆さん自分が1番好かれているって思っていてもらっていいよ」


 この頃の僕は好意というものに無頓着だった。だから、誰が1番かと聞かれても答えられるわけがない。そんな僕は自分が1番だと思いたければ勝手にしろという無責任な回答をするしかできなかった


「光晃……」


 沈黙する女性陣の中で最初に口を開いたのは真理姉さんだった


「何?文句があるなら聞くけど?」


 僕は教師や教育実習生と違って他人の意見は聞く。ものによっては聞き入れるけど、ものによっては聞き入れない。ま、教師は人の意見を聞きすらしないからそれに比べればマシだと思う


「いや、文句はないよ。どっちかって言うとこれはお願いなんだけど……」

「お願い?」

「うん。もう少しだけ智花と知佳さんに優しくしてあげて」


 僕だって二枝が教師じゃなきゃ優しく……できたかな?できたよね?多分……いや、それ以前に教師じゃなかったらガン無視決め込んでたか


「……………考えておくよ」


 教師が嫌いになった原因の一端は二枝にある。でも、それと真理姉さんからされたお願いとは別問題だ。すでに学校でいいだけ甘えさせて僕にとって真理姉さんのお願いは今更のような気もしなくはなかった


「うん!」


 真理姉さんの満面の笑みと共に話し合いは終了した。




「どうしてこうなった」


 話し合い終了後、僕の中では智花さんは家へ、二枝は学校へ戻るものだとばかり思っていた。でも、実際は違った。智花さん曰く『今日泊まり込みで勉強するから』との事。で、二枝曰く『智花だけ泊まるだなんてズルい!私も泊まる!』という事で姉妹仲良くお泊り。なのはよかったんだ。ツッコミどころはあったけど


「えへへ~」


 夕食を終え、各々が風呂に入り、後は寝るだけになった。泊まると言っても泊める側も泊まる側もやる事は普段と変わらない。それは僕も例外じゃない。そんな僕の部屋には何故か二枝がいた。っていうか、抱き着かれている


「あ、あの……暑いんだけど?」


 智花さんは真理姉さんの部屋で寝るらしい話は夕食の時に聞かされた。で、二枝も真理姉さんの部屋で寝るのだと思っていたけど僕の部屋に来るとは思ってなかった。大体、自分の担当している児童の家に泊まるか?普通って話なんだけど


「え~!せっかく2人きりなんだしいいじゃん!それとも、知佳に抱き着かれるの光晃は嫌なの?」


 会話だけ聞くと恋人同士のそれと変わらない言い草の二枝。小学生相手に上目遣いしないでほしい。今でもそう思う


「嫌とかいいとかの問題じゃなくて暑いんだけど?」


 暑いってのもそうだったけど、それ以前に智花さんは前から泊まる話を真理姉さんとしていたらしいけど、二枝が泊まるのはこの日に決まった。それなのにどうして着替え一式があるんだろう?葵衣はどうか知らないけど僕の周りの年上女性はお泊りに限定で用意がいい


「ぶぅ~!光晃がつれない」

「はいはい。で、知佳にはいろいろと聞きたい事があるんだけど?」

「え!?なになに?何でも答えるよ?」


 二枝の目が幼い子供のように輝く。でも、どんな事を聞かれるかって考え……ないよね。物事を考えられてたら僕のイジメ問題は早々に解決ないし解消してたはずだし


「そう。じゃあ、早速1つ目だけど、知佳はどうして僕にそんなに甘えてくるの?僕が知佳に何を言ったか、何をしたか知らないわけではないんでしょ?」


 4年の頃僕は二枝に『アンタには付き合いきれない』と言った。その時は泣かせた方ばかり庇い感情論しか言わない二枝との話し合いを切り上げる為に言った言葉だったけど、二枝にしてみればそれがショックだったと聞いた


「…………小4の頃に光晃が名倉君達にイジメられてた時に付き合いきれないって言われた。5年生になってからはテストの点が悪い子や苦手科目のある子に勉強しろって言ったきり何もしなかった。それで光晃が私を学校から追い出そうと名倉君達を焚きつけた事も何となくだけど気づいてたよ」


 僕は言葉が出なかった。僕が聞きたかった答えとは全く違ってた


「付き合いきれないって言ったのは合ってるよ。でも、僕が秀義達を焚きつけた事はよく気づいたね。てっきり気づいてないと思ってたのに」

「光晃は何となく死んじゃった弟に似ているから……だからかな……光晃に付き合いきれないって言われた時は本当に悲しかった。それに、1週間前まで大人しかった子達が突然授業中に騒げば何かあるって思うでしょ?例えば、誰かに入れ知恵されたとか。名倉君はクラスのリーダー的な存在だったけど、そんな知恵はない。そんな事が思いつくのは私のクラスじゃ光晃だけでしょ?」


 二枝は何も気づいてないと思ってた。でも、本当は違った。しかし、それはあくまでも僕に亡くなった弟の面影を重ねているだけで僕自身を見ていたわけじゃない


「全部知ってたんだね……僕に亡くなった弟さんの面影を重ねていたのなら勝手に絡んできて泣いた奴に謝る事はしないって解ってたんじゃないの?」


 二枝が僕に亡くなった弟の面影を重ねていたのなら勝手に絡んできて泣いた奴に謝る事なんてしないって予想できたはずだ。なのに、あの時、二枝は謝れしか言わなかった。


「ううん。私の弟は冷めた子だったけど、私や智花が謝れって言ったら形だけでもちゃんと謝る子だったから……そこは光晃とは少し違ってたかな」


 言いたい事はいっぱいあった。二枝の弟は多分、姉に言われたから理不尽だと感じても一応謝る事をしていたんだろう。でも、僕は二枝の言う事を聞かなかった。極めつけには付き合いきれないと言われてショックを受けた。今まで自分に反抗してこなかった弟が反抗し、自分を突き放すような発言をした事によってね


「そう。リビングでも言ったと思うけど、僕に死んだ弟さんの面影を重ねるのは構わない。でも、僕は死んだ知佳の弟じゃない。そこだけは覚えておいて」

「うん、そうだね……」


 この時はなんかやりづらかった。二枝が妙にしおらしいかったせいかな?


「弟さんは友達いたの?」


 二枝が弟の面影を重ねてしまうという事はそれだけ僕が死んでしまった弟さんに似ていた。そう言う事だと思う。となると、弟さんには失礼かもしれないけど、友達がいたとは思えなかった


「うん。いたよ。それもたくさんね」

「そう」

「前に光晃みたいな性格の悪い子と友達になろうだなんて子はいるわけないって言ったけど、光晃は友達が欲しくないの?」


 4年の時に二枝から言われた『岩崎君みたいな性格の悪い子と友達になろうだなんて子はいるわけない』って。でも、そんな事を言われたところで僕には何も響かなかった


「僕は友達を必要と感じてないから友達が欲しいかって聞かれても困る」

「そっか……」

「うん」


 特に話す事がなかったのでこの後は普通に寝た。僕が二枝に抱きしめられる形で。ちなみに、二枝の亡くなった弟さんについて詳しくは聞いてない。担任の身内になんて興味ないし。でも、その代わり、この日を境に僕と二枝は家族ぐるみの付き合いをする事になった。ここだけは納得がいかない



今回は二枝姉妹の意外な身内と小5になってから光晃がした事に何となく気づいていた二枝の話でした

結局、光晃は二枝の弟に関して何も聞かずに終わりました。で、その後は家族ぐるみの付き合いになりましたが、恋人ってわけじゃありませんよ?

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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