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【過去編34】家庭訪問は思わぬ展開に発展する

今回は光晃の家に二枝が家庭訪問に来る話です

担任が家庭訪問に来るのはいいとして、どんな展開に発展するのか

では、どうぞ

 二枝を依存させてから1ヶ月が経過した。依存させてからというもの、僕は細心の注意を払い、二枝と会議室で会い続けた。拒絶してもよかったけど、そうした場合の反動が怖かったから仕方ないかった。おっと、そんな話は置いといて、今回はそんな二枝が家庭訪問に来た時の話をしようと思う


「初めまして~光晃の母です」

「は、初めまして、光晃君の担任をさせて頂いております二枝と申します」


 方や母、方や担任。そして、2人とも初めましてじゃないでしょ!去年も家庭訪問してるでしょ!そんな言葉が喉元まで出かかったけど、余計な事を言って家庭訪問が長引いたりしたら面倒な事になるのは目に見えていたので黙っておいた。


「………………」


 そんなツッコミどころ満載な対面を果たした母と二枝を黙って見続ける僕。どうして家庭訪問の場に僕まで同席しなきゃいけなかったんだろう?え?家庭訪問って教師が児童の学校での様子を、保護者が家庭での様子を報告し合う場だよね?僕いる必要なかったんじゃないの?


「いつも息子がお世話になっております」

「い、いえいえ、私こそ息子さんにはいつもお世話になってます……」


 何かがおかしい。母と二枝のやり取りは夫と会社の部下がやるようなやり取りだ。この時は夫と部下のやり取りとか考えずにただ何かがおかしいとしか思わなかったけど


「何か僕必要ないみたいだから部屋戻るね」


 ただでさえ僕は学校で二枝にこれでもかってくらい甘えられ、家では……うん、思い出さない方がいい事ってあるよね。とにかく!学校でも家でも心休まる機会がなかった。そんな僕が女性だけの空間にいて耐えられるはずがなかった


『ただいま~』

『お邪魔します』


 話に夢中になっている母と二枝に一応、声だけ掛け、部屋に戻ろうとしたところで真理姉さんが帰宅した。しかも、友達を連れて。母よ、事前に真理姉さんに予定言ってなかったの?真理姉さんに限って知ってて連れてくるなんて事は多分ない。


「さて、部屋に戻ろう」


 母と二枝が話に夢中になり、真理姉さんが友達を連れてきた。家庭の様子と学校での様子を話し合う場にも真理姉さんと友達の輪にも僕は必要ない。僕は部屋でゲームをする事にした。


「あれ?光晃?どうしたの?」


 リビングから出た僕は帰ってきた真理姉さんと鉢合わせしてしまった。今はそんな事ないけど、この当時の真理姉さんは僕に何かと絡んできたので面倒な事この上なかった


「今家庭訪問で担任の先生が来てて母さんと話してて僕がいても仕方ないから部屋に戻るの」

「そうなんだ」

「うん。ところでそちらの人は真理姉さんの友達?」


 僕は真理姉さんの隣にいた女性を見て誰かに似ていると思った。それも、ほぼ毎日会っている誰かに


「そうだよ。私の友達の二枝智花(にえだともか)ちゃん」

「ふ~ん。……え?二枝?」


 運命のイタズラか真理姉さんの連れてきた友達の苗字は二枝。僕の担任も二枝。偶然とは恐ろしい。できれば偶然であってほしいと僕は心の底から思った。でも、そんな願いは粉々に打ち砕かれる事になる


「初めまして。弟君。真理の友達の二枝智花です」

「は、初めまして、光晃です」


 僕はあえて苗字を伏せ、下の名前だけ名乗った。真理姉さんの友達の智花さんが担任である二枝知佳の関係者だとは言い切れなかったけど、警戒しておいて損はないからね


「ふ~ん……君があの光晃君かぁ~……ねぇ、苗字は何て言うの?」


 品定めするような視線を送ってくる智花さんは僕に依存させる前の二枝とどこか被って見えた。偶然だとは思いたかった。でも、二枝と被る部分があったのは否定できない


「べ、別に苗字なんていいじゃないですか!それより、真理姉さん!僕部屋にいるから!」

「あ、うん」


 僕は智花さんの品定めするような視線から逃れ、部屋に戻る。智花さんが担任の二枝の関係者だったらと思うと生きた心地がしないのはもちろんの事だったけど、真理姉さんの交友関係にも関わる問題になる可能性があった。補足として僕は小学校5年に上がった時に真理姉さんと呼び始めた事を言っておこう




「タイミング悪すぎでしょ……」


 部屋に戻った僕はドアを閉めるとその場にへたり込んだ。タイミングが悪すぎた。よりにもよって担任である二枝が家庭訪問に来る日に真理姉さんの友達の二枝が来るだなんて神様は意地が悪い


「僕の担任が二枝。真理姉さんが今日連れてきた友達も二枝……。偶然だよね?」


 二枝という苗字はそんなに多い方じゃないとは思う。でも、僕の担任が二枝で真理姉さんが連れてきた友達の苗字も二枝だなんて偶然を認めたくなかった。


「僕は担任と真理姉さんの友達の苗字が被ったくらいで何を気にしているんだろう……」


 本来なら気にする必要がない事。僕には担任の苗字がどんなのだろうと関係ないし、従姉が連れてきた友達の苗字がどんなのだろうと関係ない。


「バカバカしい……」


 ドアの前にへたり込んでいた僕はベッドに移動し、そのまま意識を手放した。


「今何時だろう……?」


 ベッドに移動してそのまま意識を手放した僕は自分がどれくらい寝ていたのか全くわからなかった。ただ、外を見ると日が暮れていた。小学生の僕でも智花さんと二枝が帰ったんじゃないかというのは解った。智花さんはともかくとして、二枝は教師だ。教え子の家に何時間も居座るわけない


「智花さんはいるとして、二枝はさすがにもう帰ったでしょ……」


 寝起きという事もあり、水分を求めてリビングへ。でも、これが間違っていた事に気づくのはリビングに入ってからだった。いや、智花さんにあった時に気づくべきだったのかもしれない


「…………………何?この状況?」


 リビングに入った僕の目に飛び込んできた信じられない光景。それは────────────


「光晃が1番好きなのは私!!」

「違います!叔母さん!私です!!」

「真理さんもお母さんも間違ってます!光晃は私が1番好きなんです!!」

「………………………」


 僕が誰を1番好きかで言い争っている母達と死んだ目をしている智花さんの姿だった。


「どうやらまだ夢見てるみたい」


 二枝と智花さんがどんな関係なのかとか、家庭訪問が終わってからどれくらいの時間が経ったのかとかそんな事は考えなかった。だって自分の母と従姉と担任がアホみたいに言い争っている姿を目の当たりにしたら現実逃避くらいしたくなるでしょ。そんな僕が取った行動は部屋に引き返すだった


「これは夢に違いない。うん、きっと夢だ。じゃなかったら母と従姉と担任が言い争うだなんて事あるはずない。よし!寝よう!」


 部屋に戻った僕はリビングの光景を忘れる為に必死で眠りに就こうとした。多分、寝るのに必死になったのはこの日が初めてだ。普段は眠いから寝る。授業中だったらつまらないから寝る。感覚としては吸い込まれるような感じだけど、この時は何て言うか、飛び込む感じ?だった


「「「「光晃!!」」」」


 寝ようとしていたところで部屋のドアを勢いよく開ける4人の女性達。言うまでもなく母達だったんだけど、リビングに行った時は母、二枝、真理姉さんの3人で言い争いしていた。それが何という事でしょう。部屋に勢いよく入ってきたのは4人の女性達でした。


「何?僕は今から寝るんだけど?って言うか、智花さんはともかくとして、二枝先生はどうしてまだ家にいるの?」


 自分の家に見慣れない人がいるという違和感よりも目が覚めてリビングに行ったら自分の母と従姉と担任が修羅場でしたっていう衝撃の方がインパクト強かった。そりゃ、ドアが勢いよく開けられた事がどうでもよくなる程度に。そのおかげで一周回って冷静に何故家庭訪問が終わった二枝が家にいるのかってツッコめた。うん、人間どんな状況でも冷静でいられないといけないと思った


「「「「そんな事どうでもいいから誰が好きなのか答えて!!」」」」


 どうでもよくないからね?教師が学校に戻らず教え子の家にいるってかなり問題だからね?


「………………さて、飲み物でも飲みに行くかな」


 僕は母達のくっだらない質問を全身全霊全力でスルーし、部屋を出た。そもそも、真理姉さんと智花さんはいいとして、母と二枝までアホな言い争いをするとは思わなかった。後ろで4人が僕を呼んでいたような気がしたけど、この時の僕はそんな事を気にしてられる余裕なんてあるはずもなく……


「で?説明してくれるんだよね?」


 リビングで軽くコーラを飲んだ僕は後を追って来た母達をテーブルに着かせた。


「「「「うん……」」」」


 怒鳴りつけたわけでも何でもないのにショボくてる母達。言い争いになった経緯とかはどうでもよく、智花さんと二枝がどんな関係なのかだけ知れれば僕はそれでよかった


「言い争いになった原因は後で聞くとして、まずは二枝先生と智花さんの関係から聞こうか?」


 本音を言うと言い争いになった原因は聞きたくなかった。


「え、えーっと……光晃君の担任の先生である二枝知佳は私の姉です……」

「はい……智花の姉の知佳です……」


 二枝という苗字で何となくそんな気はしてたけど、本当に二枝が智花さんの姉だとは思わなかった。というか、思いたくなかった


「はぁ……まぁ、智花さんの苗字が二枝って聞いた時に何となくそんな気はしてたから驚きはしないけどさ……マジか……」


 現実を突きつけられ、溜息しか出ない僕はこの時点で言い争いの原因を聞く気力なんて残ってなかった


「こ、光晃……?大丈夫?知佳何か悪い事しちゃった?」


 母達がいる前で2人きりになった時と同じように二枝は甘えモードに入っていた


「悪い事はしてないけどさ……母さん達がいる前でよく甘えモードが出せたね」


 もうツッコむ気力すら残ってなかった


「その事については私から説明させてもらうね。光晃君」

「お願いします智花さん」


 教え子の母と従姉、自分の妹がいる前で教え子に甘える。それも小学生に。普通なら恥ずかしすぎると思うけど、二枝はお構いなしだった。それにどんな理由があるんだろう?って思ったけど、聞いてみたらしょうもなかった。って事で聞いてみよう!


「はい。任されました。早速だけど、光晃君はさ、去年お姉ちゃんに『アンタには付き合いきれない』って言ったらしいね?」


 去年って言うと4年生の頃の話だ。確かに僕は宮村さんに謝れと言ってきかない二枝に対してそんな事を言った。でも、それがどうだと言うんだ。依存する前の二枝はハッキリ言って教師じゃなかったら相手にもしたくない大人だった


「言いましたね。それがどうかしましたか?妹である智花さんにこう言っちゃアレですけど、今までの二枝先生は教師じゃなかったら相手にもしたくないような人間でした。それに、片方の話だけ聞いて片方の話は聞かない。そんな人間に付き合ってられる程僕は優しくないんで」


 男だ女だって話をするつもりはない。でも女の子を泣かせてって言うのは違うと思った。だから、それをハッキリ言った。それが二枝に何の関係があるかは知らないけど


「うん。それは私も同意する部分はあるけど、光晃君に付き合いきれないって言われた日、お姉ちゃんは泣いていたんだけど、どうしてだと思う?」


 教師が家で泣く理由なんて僕には関係ない。そもそも、小学生に付き合いきれないって言われた程度で泣く教師の方に問題があるんじゃないの?こう思った僕は異常なのかな?


「さあ?興味ないんでわかんないです」


 人間というのは興味のない事にはとことん無関心な生き物だと思う。そもそも、教師に興味がない奴にそんな事言われてもって感じはあった


「答えは簡単だよ。お姉ちゃんにとって君に付き合いきれないと言われたのが何よりもショックだったからだよ」


 智花さんのこの言葉がある意味で衝撃的だった。







今回は光晃の家に二枝が家庭訪問に来る話でした

はい、真理が久々の登場でした。ついでに新キャラである二枝の妹も。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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