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僕は実習生に問いかける

今回は光晃が実習生にとある問いかけをします

さて、どんな問いかけでしょうか?

では、どうぞ

「岩崎君!大丈夫!?」


 水沢先生が慌てた様子で僕に駆け寄ってきた。どうやら騒ぎを聞きつけて駆け付けたらしい


「平気ですよ。未遂で終わりましたから」


 別に殴られてもよかった。そうしたらあの男の実習は確実に終わるから。結果としては殴られても殴られなくても実習が終わるのは変わらないけどね


「よかった……」


 ホッとしたのか水沢先生はその場にへたり込んでしまった。この人の前では口が裂けても殴られた方が都合がよかった。なんて言えない


「岩崎、君にはこれから校長室に来てもらう」


 うわっ!めんどくさっ!ん?僕だけ?秀義は?証人としてはうってつけなんだけど……


「わかりました。ですが、秀義───名倉君は?僕は名倉君と話している時にさっきの実習生に絡まれたんですけど?」


 本当に迷惑だ。生徒同士の話に割り込んでくるなんて……あんなのが教師になったら生徒はさぞ苦労するんだろうな……


「当然、名倉も一緒だ」


 僕と秀義は真理姉さんに連れられて校長室へ向かった。どうして僕が教育実習生(問題を起こしたバカ)の為に校長室に行かなきゃいけないんだか……


「光晃、あの実習生どうなるんだろうな?」


 ここでようやく口を開いた秀義がさっきのバカの処遇について聞いてきた。


「さぁね。僕と秀義がアレを庇えばもしかすると実習は継続で厳重注意で済むと思うけど、本当の事を言ったら実習は中止、大学に報告だろうね」


 つまり、アイツを生かすも殺すも僕等────主に僕次第。まぁ、気が向けば生かすけど、それ以外だったら生かさない


「光晃……」

「何さ?頼むからあの実習生を許してやってくれとでも言うつもり?」

「ああ……元々は教師や実習生の悪口言ってた俺達が悪いわけだし……」


 バカか?コイツ?悪口を言ってた僕達が悪い。それは認めるけど、生徒にちょっと言われたくらいで暴力に訴えようとする奴に指導力があるとは思えないし、そもそも、大人としてどうかしている


「気が向いたら庇うけど、向かなかったら庇わない」

「光晃……」


 別に僕が助ける理由なんてないし、助ける義理もない。教師や実習生を助ける?利用価値がある奴ならいざ知らず何の価値もない奴を助けても仕方ない


「そんな事より着いたよ?」


 秀義と話している間に校長室の前まで来ていた。今から帰っていいかな?


「小谷です。今お時間の方宜しいでしょうか?」


 真理姉さんが校長室のドアをノックした。悪い事をした覚えがないのに校長室に来るなんて入学してから初めてだ


『どうぞ。入ってきて構いませんよ』


 中から校長が入室を許可したので中へ入る。職員会議が終わったばかりだっていうのに実習生が問題を起こすなんて災難だな校長も。同情はしないけど


「失礼します」


 最初に真理姉さんが入った。そして────


「「失礼します」」


 僕と秀義も真理姉さんに倣って入る。僕としては早く終わってほしい


「今回はどのようなご用件で?」


 僕達の前に立つ初老の女性────校長が用件を聞いてきたけど、そこは真理姉さんが説明してくれるから僕が喋る必要はないだろう


「───という事がありました」


 真理姉さんは自分が女子生徒に呼ばれて現場に駆け付けた事、行った時には僕が実習生に殴られる寸前だった事を話した。


「事情はわかりました。騒ぎの原因はそれでしたか……」


 校長は眉間に手をやり、頭が痛いと言わんばかりのポーズを取っていた


『校長先生はいらっしゃいますか?』


 外から別の教師の声が聞こえた。おそらく僕を殴ろうとした実習生を連れてきたんだろう


「中に入って構いませんよ」


 校長は2つ返事で入室を許可した。さっきも思ったけど、校長って暇なのか?


「失礼します」

「……失礼します」


 入ってきたのは僕のクラスの担任とさっきの実習生。担任の方はともかく、実習生の方は不機嫌そうだな


「話は小谷先生から聞いています。どういう事か説明してもらえませんか?」


 校長は実習生に説明するように促がす。こういう時の言い訳って確か……


「ち、違うんです!僕はただ、そこの生徒に指導をしようとしただけなんです!」


 そうそう、こんな感じだ。自分は生徒を指導しようとしただけ、自分は悪くない。コイツの場合は多くの生徒が見ていたからそんな言い訳通用しないけど


「本当ですか?岩崎君?」


 実習生の話が終わり僕の番がやってきた。どうしてやるかは決まっている。正義感とか関係なくコイツに実習を続けられたらいつ絡まれたものかわかったもんじゃない。


「指導?何の事ですか?あれを指導?そこの実習生は面白い冗談を言いますね」


 コイツを助ける必要も義務も義理もない。された事をそのまま言ってしまおう


「なっ!?き、貴様!!」


 実習生は顔を真っ赤にして怒っている。そこはどうでもいいとして、生徒に向かって貴様か……あの数学教師といい、この実習生といいバカだな……大学で習わなかったのか?生徒にも人権があり、呼ぶときは君やさんをつけろって


「岩崎君、続けてください」


 校長が僕に話を続けるように促がす。この人、この実習生を完璧に無視してるな。


「まず1つ、確かに僕はそこにいる名倉と話している時に教師や実習生に対し辛辣な意見を口にしました。ですが、考え方は人それぞれです。そして、実習生が生徒の話に割り込み、空き教室まで使って指導する。人の考え方を否定した。それのどこが指導ですか?2つ、教師もそうですが、実習生が生徒より偉いと思っている事自体が思い上がりだって自覚してます?ってことですが、校長はどうお考えですか?」


 校長がどう思っているかは知らないし、興味もないけど、一応は意見を聞いておきたい


「そうですね、実習生の先生は原則として現場の教師の意見を仰がなきゃいけません。そして、岩崎君の言う通り考え方は人それぞれです。中には教師が嫌いな生徒もいます。貴方の実習はここまでのようですね」


 校長が言った事は実習打ち切り。つまり、この実習生はこれ以上はこの学校で実習する事ができなくなったという死刑勧告だ。


「そ、そんな……」


 実習生はその場にへたり込んでしまった。まぁ、苦労して内諾活動をして受け入れてもらったのに実習中止だなんてご愁傷様


「じゃあ、僕はこれで失礼します」


 これ以上この場にいる意味はない。校長に一声掛けてから校長室を出ようとした。しかし────


「──いだ」


 実習中止を言い渡された奴がなんか言ってる。


「何ですか?」


 ブツブツと何か言われても聞こえない。もっとハッキリ喋ってほしい


「貴様のせいだ!!」


 僕に責任を擦り付けられても困るんだけど……


「貴方に忍耐力がなかったせいでしょ?僕には関係ありません」


 僕は今度こそ校長室から出ようとした。だが────


「黙れ!!」


 叫びながら実習生が僕に殴り掛かってきた。秀義もそうだけど、言葉に困ったら殴り掛かるの止めろよ……


「光晃!!」

「「岩崎!!」」

「岩崎君!!」


 秀義、真理姉さん、担任、校長が悲鳴を上げるようにして僕の名前を呼ぶ。秀義は昨日コイツと同じ事をして反撃喰らってるでしょ?


「うるさいよ」

「ぶへっ!!」


 殴り掛かってきた実習生の顔に手加減なしの回し蹴りを喰らわせる。昨日、秀義にもやったけど、今回のは手加減なしだ


「し、信じられません!実習生が生徒に暴力を振るうなんて……」


 校長は信じられないと言った表情だ。この際だコイツには自分の手が何のためにあるかを考えてもらおう


「ううっ……どうして俺がこんな奴に……」


 まだこんな事言ってるし……どうして?アンタの攻撃が単調すぎるからだろ?


「このままじゃ済まさないぞ……岩崎!!」


 今度は悪役のような事言ってるし……学習しない奴だな


「そうですか。じゃあ……」

「ぐあっ!!」


 僕は実習生の手を踏みつける。これが原因で停学になっても構わない。


「光晃!!止めろ!!」


 秀義が止めてくるけど、僕にとってはコイツの手がどうなろうと関係ない


「別に踏み潰すわけじゃない。ただ、反撃されたらウザいから手を封じさせてもらってるだけ」


 別に手を踏み潰すわけじゃない。殴ろうとするならこのまま踏み潰してもいいけど


「岩崎!!」


 今度は真理姉さんが止めてくる。こういう時には邪魔だな


「邪魔すると先生でも容赦しませんよ。黙って見ててください」

「…………」


 真理姉さんは無言で下がった。さて、邪魔者が静かになったところで始めますか


「アンタがどうなろうと知った事ではないけど、1つだけ聞いておこうか?」

「な、何だ?」


 僕に手を踏まれてうつ伏せ状態の実習生にこれだけは聞いておこう


「アンタの手は何の為にある?」

「え……?」

「聞こえなかった?もう1度聞くけど、アンタの手は何の為にある?」

「何の為……?」


 ここで大人として、教師を志した者としての教養が試されるところだ。僕を指導しようとしていたなら答えられるよね?


「アンタの手は人を殴る為に存在するの?」

「ち、違う!!」

「じゃあ、何の為に存在するの?今のところ僕はアンタから殴られそうになっただけなんだけど?それで違うって言うの?」


 違うと言うなら答えてほしいものだ。無理だと思うけど


「そ、それは……」


 ほら、無理だっただろ?こういう奴は大抵この手の質問は答えられないのは知っている


「答えられると思ってはいなかったけど、本当に答えられないとは……」

「答えられる!!」

「じゃあ、答えてみろよ。アンタのその手は何のためにある?」


 答えられるものなら答えてみろ。少なくとも言葉でダメなら暴力に訴える奴に答えられる問いかけじゃないと思うけど


「そ、それは……」


 さっきからこればかりだな……そろそろ終わりにしよう


「その手は人を殴る為にあるんじゃなくて職業によってはその手から人を笑顔にする何かを創り出す為にある。職業によっては人を助ける為にある。つまり、人の手って言うのは誰かを傷つける為にあるんじゃなくて誰かを助けたり笑顔にするためにあるんじゃないの?」

「…………」


 僕の言葉に反論できないのか、無言の実習生。僕だって持論しか言っていないのに……


「そんな事もわからないのによく教育実習に行こうなんて思ったね。暴力しか能がないくせに。バカなの?ま、僕にはアンタがどうなろうと興味ないけど」


 僕は黙ったままの実習生と秀義達を放置し、校長室を出た。


「はぁ、生徒の問いかけに持論でもいいから答えろよ……」


 生徒の問いかけ1つに答えられない、もしくは上手い返しが思いつかないようじゃ教師として終わりだな……HRが憂鬱だなと思いながらも僕は教室へと向かった

今回は光晃が実習生に自分の手は何の為にあるのか?を問いかけました

まぁ、暴力に訴える実習生は答えられませんでしたが・・・・

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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