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【過去編32】計画が失敗に終わったと思ったら新たな悩みが増えた

今回は二枝が狂った日の翌日の話です

今回の二枝は誰だコイツ感が拭えません

では、どうぞ

 二枝を僕に依存させた次の日。この日は早めに登校した。


「こんなはずじゃなかったのに予定が狂ってしまった……」


 僕の計画じゃ二枝を自分に依存させるという展開じゃなく、むしろ学校に来れなくするつもりだった。まぁ、宮村さんが一緒に残った時点で計画が狂い始めた。終わってから騒いでも仕方のない事だったから僕は甘んじてそれを受け入れたけど。


「秀義やクラスメイト達になんて説明しよう……」


 計画開始当初は二枝を学校から追い出す算段だったのに追い出すどころか依存させました。だなんて口が裂けても言えなかった。してしまった事に対して後から何かを言うつもりなんてのはなかったけど、予定が狂ったのは確かだった


「その場にいた宮村さんはともかく、秀義に説明するの面倒だなぁ……」


 宮村さんは二枝が狂った時、一緒にいた。でも、秀義は下校したか体育館に隠れていたから二枝が狂った場面には遭遇してない。クラスメイトに説明するのもそうだけど、秀義に説明するのも憂鬱だった


「はぁ……悩んでても仕方ないよね……」


 悩んでいても仕方ないのは理解していた。でも、小学生が教師を依存させました?こんな事を誰が信じる?逆に言えば教師が自分の教え子に依存しましたって……傍から聞けば危ない人だよ


「何はともあれ、計画は失敗……なのかもしれない……」


 二枝にゴチャゴチャ言わせないっていう面では計画は成功なのかもしれなかったけど、追い出す事を考えれば計画は大失敗に終わった


「何が失敗なんだ?光晃」

「あ、秀義……」


 この日は珍しい事に登校中に秀義と鉢合わせた。本当に珍しかったよ


「おう!」

「おはよう……」


 今も昔も秀義はいつだってテンションが高い。この日に限ってはそのテンションの高さに少しだけ救われた日だったのかもしれない


「おう!おはよう!で、何が失敗なんだ?」

「ああ、実はね──────」


 二枝が狂った日、秀義が下校したか体育館に隠れていたかは置いといて僕は秀義がいなかった時の事を全て話した


「はぁぁぁぁぁぁ!?二枝先生を自分に依存させた!?」

「うん……」


 秀義が驚くのも無理はない。僕だって依存させるつもりはなかったんだから


「ちょ、おま、どうするんだよ……」

「それは僕が聞きたいよ……」


 北南高校でも教師を1人依存じゃないけど、いけない方向へ目覚めさせてしまった僕。でも、高校は自主退学があるから逃げようと思えばいくらでも逃げられる。でも小学校は違う。不登校になる以外に逃げ道はない


「お前なぁ……当初の計画じゃ二枝先生を学校から追い出すって計画だっただろ?それがどうして依存させてんだよ……」


 秀義の言う事は尤もだった。当初は二枝を狂わせ学校から追い出す計画だったはずなのに実際は二枝を依存させてしまった


「僕1人だったら確実に二枝を学校から追い出せたはずだったんだよ……宮村さんがいなければね」


 自分の失敗を他人に押し付けたくはなかったけど、正直言って宮村さんが一緒だったのは予想外だった。仮に保健室に一緒に来たとしてもその後で別行動だったらまだ勝算はあったけど、教室まで付いて来た挙句、そのまま一緒に残る事になるとは思いもよらなかったよ


「つまり、お前の計画が失敗したのは宮村のせいだって言いたいのか?」

「いや、そうじゃないけどさ……追い出すつもりが依存させましたじゃクラスメイト達が納得しないでしょ?」


 宮村さんがいた事は問題じゃない。問題だったのは追い出すはずが依存させてしまった事、そのまま二枝が僕達の担任を続ける事だった。


「あー……その辺はどうなんだろうな?俺や他の連中は二枝先生の傲慢な態度さえ治ればそれでいいって考えてたからな。無理に学校から追い出したかったわけじゃない」


 僕は二枝を追い出したかった。傲慢で無能なあの女を……でも、秀義やクラスメイト達はそうじゃなかった。二枝の傲慢な態度さえ治ればそれでいい。僕は自分が悩んでいたのが急にバカらしくなってきた瞬間だった


「じゃあ、秀義からクラスメイト達に説明しておいてくれない?二枝は僕に依存したから授業中に騒ぐ必要はもうないって」

「お、おう……」

「じゃあ、僕は先に行くから……」

「お、おう……」


 せっかく会ったんだから一緒に登校してもよかったんだけど、この時の僕はそんな気分にはなれず1人で登校した。何て言うか、誰かに依存されるのなんて初めての事だったからどうしていいかわからなかった


「これからどうしよう……」


 僕に依存させる事で二枝の傲慢な態度は少し改善された。そう思ったし、実際そうだった。それとは別の不安要素が出てきたのも確かだった。そう、二枝が僕だけを贔屓して秀義や宮村さん、クラスメイト達を邪険に扱うのではないかっていう不安が


「やっぱ依存させたのは拙かったよね……」


 今もそうだけど、当時の僕は学校の先生について詳しく知ってるわけじゃなかった。それもあったんだけど、1年生の頃から4年まで教師が児童を贔屓するだなんて場面に遭遇した事なんてなかったから単純に依存させてしまった。どうしよう程度にしか考えてなかった


「どこかでちゃんと言っておかなきゃいけないよね……」


 教師が児童を贔屓している場面に出くわした事なんてなかった僕にだって明らかに他の児童に接する時の態度と僕への態度が違うのがよくない事くらいは理解できた


「とりあえず学校に着いてから考えよう」


 登校中に考えても仕方のない事だ。僕は自分にそう言い聞かせた




 学校に着いた僕はいつもだったらそのまま教室に向かうところなんだけど、この日僕が向かったのは教室ではなく職員室だった


「失礼します」


 登校していた児童の数は大して多くはなかった。でも、教師は来ていると踏んだ僕は二枝がいようとなかろうと職員室へ来た。目的はもちろん、二枝に会うため


「あら、おはよう。岩崎君」


 出迎えてくれたのは二枝ではなく養護教諭だったけど、二枝に辿り着くのなら最初に誰に会おうと関係ない


「おはようございます。二枝先生はいらっしゃいますか?」

「二枝先生ね。ちょっと待ってて」


 養護教諭は僕の元を離れると二枝の方に向かい、何かを話し始めた。多分、僕が会いに来ているって事を伝えていたんだと思う


「おはよう。岩崎君。朝からどうしたの?」


 少しして来た二枝はこれまで通りと何ら変化はなさそうに見えたけど、1対1で話し合った時にどんな行動に出るかは予測不可能な状態だった。自分がそうしたとはいえ、二枝の狂い様を目の当たりにしたら油断大敵だったし


「少し2人だけで話したい事があるんですけど……」


 言葉だけ聞いたら教え子と教師のイケナイ関係を彷彿とさせるけど形振り構ってられる状態ではない僕


「うん。いいよ。会議室でいいかな?」

「はい」

「じゃあ、カギ貰ってくるから少し待っててね」

「わかりました」


 教師と密室で2人きり……いよいよもってイケナイ事を連想させてしまいそうだけど、考えてみてほしい。この時の僕は小5だよ?そんな事しないし、そんな展開にはならないよ?


「お待たせ。行こっか?」

「はい」


 僕と二枝は職員室を出て会議室へ向かう。その道中僕は二枝の後を付いて行くだけだったし、二枝にも変わった様子はなかった。問題は会議室に入ってからだったけど。


「カギ開いたから入っていいよ」

「ありがとうございます」


 二枝によって開けられたドアを何の疑いもなく入る僕。この時の僕はなんて愚かだったのだろうか?と今でも後悔する事がある。その理由はすぐにわかる


「2人きりだね。光晃君」


 後から入ってきた二枝はドアにカギを掛け、恍惚とした表情で僕を見つめてきた。


「そうですね。2人きりですね。二枝先生」


 恍惚とした表情で僕を見る二枝に対して一瞬、誰だコイツ?と思ったけど、狂った日の二枝を目の当たりにした僕は何となくだったけど、ある程度の察しはついた。狂った際に幼児退行した二枝はどんな行動に出てもおかしくなかった


「むぅ~!2人きりの時は知佳って呼んで!」


 さっきはどんな行動に出てもおかしくなかったって言ったけど、下の名前で呼ばれるとは思ってなかった。いや、こんな事になるだなんて誰も予想できないでしょ!


「ち、知佳先生……」


 自分がそうしてしまったとはいえ、ドン引きだった。


「むぅ~!先生はいらないよ!知佳って呼んで!」


 しつこいようだけど、どんな行動に出てもおかしくないとは言ったよ?でも、下の名前を!呼び捨てで!呼ぶように言われるだなんて考えもしなかったよ!


「い、いや、ここ学校ですし……他の子や先生に聞かれたらマズいんじゃないんでしょうか?」


 僕に対する呼び方もそうだけど、他人に対する呼び方にも特に拘りがあったわけじゃない。悪口やイジメに繋がる呼び方以外だったらある程度は受け入れる僕でも先生を学校内で呼び捨てで呼べる度胸はなかった。それは今も変わらない


「光晃は知佳の事嫌いなの……?」

「……………………………………………………」


 空いた口が塞がらないとはこの事だろうか?幼児退行するのは狂った時限定かと思ってたよ……


「ねぇ?光晃……?知佳の事嫌い?」


 これは完全に恋人同士のそれと寸分違わなかった……。それに気が付いたのは後になってからだったけど


「き、嫌いじゃないです……」


 目の前の現実を受け入れられなかった僕はやっとの思いで言葉を発したけど、いろんな意味でいろいろと限界だった。本当にどうしてこうなったと嘆いたものだよ


「嫌いじゃないのにどうして知佳って呼んでくれないの?どうして敬語で話すの?」


 そりゃ、アンタが先生だからだよ!とは口が裂けても言えるはずがなかった。平静を装っているけど、頭の中は大パニックを起こしていた


「だ、だって、先生ですし……」


 児童としては模範的な回答だったと思う。僕はどんなに尊敬できない大人でも一応は敬語で話す。二枝だって例外じゃない


「私がいいって言ってるんだからいいの!」


 これが教師なんだろうか?なんか違う気が……


「ち、知佳……」

「うん!光晃!」


 二枝は事もあろうか僕に抱き着いてきた。こりゃ先が思いやられる。僕の悩みが増えた瞬間だった





今回は二枝が狂った日の翌日の話でした

二枝先生……完全に今までの二枝先生じゃないですね……誰だコイツ感が尋常じゃないですね。ぶっちゃけこのままいくと葵衣と付き合う前に二枝と付き合うんじゃないかって勢いでキャラぶっ壊れてますね。らしいっちゃらしいんですけど。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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