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【過去編28】僕はとんでもない事を思いつく

今回は光晃がある意味でとんでもない事を思いつく話です

我ながらなんつーもんを書いてしまったんだ・・・・と若干後悔してます

では、どうぞ

 二枝が学校に来なくなりこの日で1週間が経った。


「いよいよ明日だな」


 昼休み、秀義のこの一言により僕達は二枝が明日には戻ってくるという現実を目の当たりにした


「そう……だね……」


 秀義の言葉に不安を隠しきれていない様子の宮村さん。江口さんの事が心配だったんだと思う。でも、そんな宮村さんの不安とは裏腹に時は無情にも過ぎ去り、二枝は戻ってくる。これが現実だった


「また二枝(アレ)が戻ってくるのか……」


 宮村さんの不安とは裏腹に僕は憂鬱でしかなかった。二枝が戻ってくるという事はまた出来ない事をイタズラに怒鳴るだけの無能が戻ってくるという事に他ならなかったから


「光晃、俺達はどうすればいいんだ?」


 秀義も秀義で二枝が戻ってくる事に対して少なからず不安があったみたいだけど、ハッキリ言ってどうすればいいかなんて事を僕に聞かないでって思った


「どうすればいいって僕に言われても困るんだけど……僕は先生の仕事の事なんて知らないんだしさ」


 僕が教職について知ったのは真理姉さんが教育実習に行くと知り、訳あって真理姉さんの手伝いをした時だった。それだって少し齧った程度で詳しくない


「それでも……私は……楽しく勉強したいよ……」


 宮村さんの言ってる事は正しかった。どうせ学校で勉強するなら楽しい方がいいに決まっている。でも、言い方を変えると二枝が邪魔だから排除したいと言っているようにも聞こえた


「そりゃ僕だって学校に来て勉強するなら楽しい方がいいけど……()()には二枝を排除する事なんて出来ないよ」


 僕達には……ね。校長が出てくるまで事を大きくするには誰かの犠牲が必要不可欠だった。じゃあ、どうするか?答えは簡単!二枝が自分から担任を降りるように仕向ければいい


「だな……俺達に二枝先生を追い出す事なんて出来ないよな……」


 宮村さんに釣られ秀義まで意気消沈してしまった。僕は僕達には二枝を排除する事は出来ないとは言ったけど、僕達だけじゃ無理だって話であって絶対に無理とは言ってない


「うん。僕達だけじゃ無理だけど、クラス全員でならいけるかもしれないよ?」


 数人が教師の言う事を聞かないというのはどの学年にもある。ただ、その学年が大人しいタイプだったらそう言った奴は悪目立ちしてしまう。でも、クラス全体───いや、学年全体だったらどうだろう?1人の教師を学校から排除する事なんて簡単な事だと思う


「クラス全員……?」

「どういう事だ?光晃?」

「簡単だよ。二枝は問題が起こった時に真っ先に逃げ出す奴だから何か問題を起こせばいいって事」


 4年の時に僕は二枝が問題から逃げ出す奴だって事を知った。それを利用すれば二枝をクラスから……いや、学校から追い出す事なんて簡単だと思った


「でもよ、光晃」

「何?」

「二枝先生を追い出す為にクラスメイトの誰かをイジメるって事だろ?」


 小5の頭じゃ問題=イジメという公式が成り立つらしい。まぁ、イジメが目に見える問題だってのは否定しないでも、そんな事をすればそれをされたクラスメイトは人間不信になる可能性があった


「確かにクラスメイトの誰かをイジメれば学校は多分放ってはおかないだろうけど、リスクが高すぎる」


 1人の教師を追い出す為にクラスメイトをイジメる。二枝の無能が露呈して学校からも追い出せるような気はする。だけど、それは僕達も相当なリスクが生じる


「じゃあどうするの?」

「クラスメイトじゃなくて二枝をイジメる」


 小5にして我ながら最低な提案だった。


「「え……?」」


 僕の提案にキョトンとする秀義と宮村さん。


「クラスメイトをイジメるのはバレた時に僕達も怒られる可能性がある。それは秀義と宮村さんがよく理解しているはずでしょ。じゃあ、どうするか?答えは簡単だよ。クラスメイトじゃなく教師をイジメる」


 僕達がしようとしている事は俗に言うモンスターチルドレンと呼ばれても仕方のない行為だろう。でも、二枝が担任を続け出来ない事に対して理不尽に怒られるのがいいか、それとも、自分達がモンスターとなるかの二択で選べって言われたらどっちがいいか?僕ならモンスターになる


「光晃……本気で言ってるのか?」

「うん。このまま二枝に理不尽に怒られるか二枝を精神的に追い詰めて学校から追い出すか。やるかやらないかは自分で決めてよ。提案はしたから」


 僕には二枝がいようといなかろうと関係なかった。それに、二枝に対する情なんて微塵もない。だって僕はただ平穏な学校生活を送りたかっただけだから


「俺は光晃の案に乗る……」

「へぇ……僕はてっきり拒否するかと思ったけど、意外だよ。秀義がクラスメイトじゃないとはいえイジメに加担するとはね」


 秀義が本気で言ってるのかの確認をしてきてから僕の案に乗るという答えを出すのに大した時間は掛からなかった。決断が早いのか、それともただのバカなのか……


「4年の時に光晃をイジメて冷たくされた時にはもうこんな事したくないと思ったけどよ……でも、お前に冷たくされんのも嫌だけど楽しくない学校なんてもっと嫌なんだよ!!」

「ふ~ん。ま、案に乗るかどうかは秀義の自由だから好きにすれば?」


 秀義がどう思っているかなんてこの時は関係なかった。ただ、大切なのはどんな事をしてでも二枝を追い出す覚悟があるかどうかだったから


「私も岩崎君の案に乗るよ」

「宮村さんまで乗ってくるとは……それは自分の為?それとも、江口さんの為かな?」


 宮村さんも秀義と同じで僕が冷たく接した奴の1人だった。最終的には彼女が涙ながらに思いを話す姿を見て興味が失せたから好きにしろって言って終わったけど


「自分の為にも知恵ちゃんの為にも私は岩崎君の案に乗る!!」


 決意に満ちた目で僕を見る宮村さんは今までとは違って見えた。何が違うかと言うと上手く説明できなかった。強いて言うなら何かを守りたいって思いが目に宿っていたくらい


「あ、そう。秀義も宮村さんも僕の案に乗るのはいいけど、僕達だけじゃ二枝を追い出すだなんて到底不可能だよ?この案にはクラスメイト全員の協力が必要なんだからさ」


 教師を追い出すという事は簡単じゃない。不正を暴くくらいしなきゃいけない。でも、小学生である僕達はその不正を暴く手段を持ち合わせていない。だから、協力して二枝を追い詰めるしかなかった


「クラスの連中はいつまでに集めればいい?」

「明日には二枝が戻ってくるからできれば今日中がいいかな」

「わかった!そこは任せろ!光晃!」

「期待しないで待ってるよ。秀義」


 やると決めた秀義の行動は早かった。その日の内に放課後教室に残ってほしいという旨が書かれた手紙がクラス内で回った。当然、僕と宮村さんのところにも回ってきたけど、提案したのは僕だし宮村さんは案を出した時にその場にいたから




 その日の放課後。手紙に書かれていた通りクラス全員が教室に集まっていた。中には不満を言っているのもチラホラいたけど、貴重な放課後の時間を貰っている立場の僕達は文句を言えた立場じゃなかった


「おい!名倉!これから何が始まるんだよ?」


 1人の男子が業を煮やし秀義を問い詰めた。それが引き金となり、他の連中も次々と秀義に文句を言い始めた


「静かに!今日残ってもらったのは他でもない!明日になれば二枝先生が戻ってくる!それはお前らも解っていると思う。で、二枝先生が戻ってきたら例えどんなに小さい失敗でも怒られるだろう……お前らそれでいいのか!?」


 文句を言っていた連中を一瞬で黙らせた部分に関しては素直にすごいと感心した。でもね、秀義。この時の君は若干独裁者にも見えたよ


「い、嫌だけどよ……俺らじゃどうしようもないだろ……?」

「そうだよ……知恵ちゃんお母さんが怒鳴り込んできても二枝先生は明日戻ってくるんだよ?親が何かしても1週間学校を休んだら戻ってこれるんじゃどうしようないよ……」


 秀義に次ぐ男子のリーダー格と女子のリーダー格の弱気発言により僕達以外のクラスメイトはほぼ全員が弱気になってしまった。皆口々に『そうだよ……無理だよ……』とか『どうにもできねぇよ……』等の弱気発言を口にする。


「それが何とかできると言ったらどうする?」

「「「「「「「えっ……………?」」」」」」


 秀義の言葉で弱気発言が止み、皆顔を上げた


「二枝先生を追い出せる作戦があるとしたらみんなはやるのか?」


 秀義がした問いかけは僕が昼休みにした問いかけそのものだった。担任教師から理不尽に怒られ続けるのか、それとも、理不尽に怒る他人教師を追い出して平穏な学校生活を送るのか。口には出してないけど僕が昼休みにした問いかけ、秀義がこの瞬間にしている問いかけ。どちらも同じものだった


「「「「「「「…………………………」」」」」」


 秀義の問いに口を紡いでしまったクラスメイト達を見て僕は仕方ないと思った。教師を追い出せる作戦があるとは言われたものの具体的な内容を聞いてない。そんな不確かなものに乗っかるのは余程のバカだ。しかも、駆け引きが下手な


「わ、私は名倉君の作戦に乗るよ……」


 クラスメイト達が決めあぐねている中、最初に乗っかってきたのは他の誰でもない江口さんだった。彼女も僕と同じように二枝から理不尽に怒られた事があり、終いには親が乗り込んでくるまでに発展した。でも、結果は二枝が1週間学校を休むという結果だった。彼女としては納得がいかなかったんだろう


「おし!江口さんは乗ったぞ?他のみんなはどうするんだ?二枝先生から理不尽な理由で怒られ続けるのか?それとも二枝先生を追い出して楽しく過ごすのか?」


 僕も秀義と宮村さんに同じように選択する事を迫ったから人の事は言えた義理じゃなかったけど、客観的に聞いてると随分と酷い選択を迫っていた。あの頃の僕はどうかしていた


「お、俺は……乗る!」


 1人の男子の言葉が迷っていたクラスメイト達の心に火を点けたのか、この男子に続くようにして他の連中も秀義の案に乗ってきた。正確には僕が出した案を秀義がクラスメイト達に説明しているんだけどね


「じゃあ、全員乗るって事でいいな?」

「「「「「「「うん!!」」」」」」


 クラスメイトが一致団結してめでたしめでたし────────────


「おい!岩崎と宮村がまだ賛成か反対か言ってないぞ?」


 とはならなかった。1人の男子が余計な事を言ってくれたからね


「光晃と宮村は昼休みの内に聞いておいたから大丈夫だ!って言うかこれを最初に言い出したのは光晃だぞ?」

「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」

「「──────!?」」


 クラスメイト達が上げる驚きの声に思わず耳を塞ぐ僕と宮村さん。いきなり大声を出すなと言いたくなったけど僕も宮村さんもクラスでは大人しい方だったので驚くのも無理はない。ちなみに秀義とこの話になると『お前は大人しい方じゃなかったろ?』なんて言われる


「うるせぇよ!お前ら!って事で光晃!説明よろしく!」

「了解」


 面倒だとは思ったけど、秀義には具体的に何をするかを伝えてなかったので仕方なかった。今にして思えば大勢の前で喋らされるのなら秀義にある程度の事を教えておくべきだったと後悔している




今回は光晃がある意味でとんでもない事を思いつく話でした

連載当初から光晃は教師と教育実習生嫌い設定で事ある事に教師・教育実習生をバカにしてましたが・・・・小学生の頃の光晃はある意味でとんでもない奴だなと思いました。主に今回の話を書いてて。今更ながら光晃は教師と教育実習生にもう少しマイルドに接するべきか、厳しく接するべきか・・・・


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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