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【過去編27】授業中に保護者(母)が怒鳴り込んできた

今回は授業中に保護者(母)が怒鳴り込んでくる話です

保護者が怒鳴り込んできたってどういう事?

では、どうぞ

 二枝癇癪事件から1週間が経ったある日。この日の出来事は今でも鮮明に覚えている。だってこの日は──────


「出来ない子に勉強しろって言って放ったらかしとはどういう事ですか!!二枝先生!!」


 授業中に保護者(母)が教室まで怒鳴り込んできた日なんだから。


「お、落ち着いてください!江口(えぐち)さん!今は授業中です!」


 怒鳴り込んできたのは江口という人。で、江口と言う人の後に続き教室に入ってきたのは手の空いてた先生だろう。


「え?え?いきなり何ですか?」


 いきなり怒鳴り込んできた江口さんを目前に目を白黒させている二枝。4年生の時の大きな問題は僕のイジメ問題だけだったから授業中に保護者が怒鳴り込んでくるなんて事はなかった。でも、5年の時の問題はそうはいかない。言っちゃ悪いけどイジメ問題はイジメのターゲットとなる子が学校を拒絶し、保護者が重大な事だと思ったら学校に怒鳴り込んでくるだろう。あくまでもその保護者の価値観によるところが大きいと僕は思う。でも、勉強が出来ない子に対してただイタズラに勉強しろって言ったままで何もしないのはクラスの子全員に関わる問題だ。怒鳴り込んでくる保護者がいたとしても不思議じゃない


「いきなり何ですかじゃありません!貴女!ウチの知恵が国語を出来ない事に対して勉強しろとしか言わなかったらしいじゃないですか!!」


 知恵……国語が出来なくて泣いていた女子。江口という人はその知恵の母親で怒鳴り込んできた理由は苦手科目のある娘に対してただ勉強しろとしか言わなかった事。思い返すと二枝は癇癪事件が終わった次の日も別の教科ではあるけど苦手科目がある児童に対して勉強しろしか言わなかった


「そ、そんな事は言ってません!私は苦手科目があるならじっくり勉強してみたらって言ったんです!勉強しろとは言った覚えがありません!」


 二枝は物忘れが激しいのだろうか?そう思ったのは僕だけじゃないはず。クラス全員が唖然としている中、二枝のどうしようもない言い訳をする声と二枝を咎める声だけが教室に響いた。止めに来た先生がどうして喋らなかったのかは知らない。二枝のどうしようもない言い訳に呆れたのか江口さんの物凄い剣幕に圧倒されたのか。それを知る由はない


「やっぱりこうなったか……」


 二枝と江口さんのやり取りが続く中、僕は保護者が怒鳴り込んできた事を嘆いた。


「岩崎君、こうなったってどういう事?」


 誰に言ったでもない僕の呟きを拾った宮村さんは心底理解できないと言った顔をしていた


「どういう事も何も僕に対してもそうだけど江口さんに対しても勉強が出来ない事を怒って苦手だって言ったら勉強しろとしか言わない。そんな話を聞いた親は二枝は学校の先生として仕事をしてないんじゃないか?って思うでしょ?」

「そ、そりゃそう思うよ?でも、何も授業中に教室に来なくてもいいんじゃ……」


 宮村さんの言う事にも一理ある。だけどそれは1度や2度の話。何回も続けば保護者は不審に思うのは当然の事


「確かに宮村さんの言う事も合ってるけど、それは1回や2回ならって話だよ。江口さんは二枝が怒鳴り散らした日から数えて何回怒鳴られたと思う?」

「お、覚えてない……」


 宮村さんが覚えてないのも当然だった。二枝は事ある事に江口さんが出来ない事に対して怒鳴り散らしていた。怒鳴ってる方はいいとして怒鳴られた方は堪ったもんじゃない。それを毎回家で親に話していたんだろう。親なら家の娘がどうして毎日のように怒鳴られなきゃいけないんだって思うのは当然だし、あまりにも多いとストレス解消の為に家の娘は怒鳴られているんじゃないかという結論にも至るだろう


「覚えてなくて当然だよ。江口さんはあの日以来ほぼ毎日のように怒鳴られていたんだからね」


 小学生を毎日のように怒鳴りストレス解消をする教師に指導力があるとは思えない。昔だったら怒鳴って拳骨して終わりだったのかもしれないしそれを家で話したらお前が悪いって言われたのかもしれない。でも、この一件に関して言えば二枝に非があった


「知恵ちゃんはずっと耐えてたのかな……?」


 授業中にも関らず泣きそうな顔で僕を見る宮村さん。イジメられてた時はその辺の石ころ程度にしか思ってなかったので彼女の表情とか人柄なんて全く見てなかったけど、本来は優しい子なのかもしれない。不覚にも僕はそう思った


「さぁそれは僕にはわからない。でも、江口さんのお母さんが怒り心頭だって事はそうなんじゃないの?」


 僕は宮村さん程江口さんの事を知らない。だから何とも言えなかったけど、家に帰って親に愚痴るくらいにはストレスを感じていたと思う


「江口さん!二枝先生!一先ず職員室へ行きましょう!これ以上は子供達を不安にさせてしまいます!」


 二枝と江口さんのやり取りをこれ以上僕達に見せるのはダメだと判断したのか付き添いで来た教師が職員室に場所を移すという提案をし二枝も江口さんもそれに従った結果、授業は途中で中断。自習となった。本来なら手の空いてる先生が二枝の代わりに授業をするところだけど、江口さんの怒り具合を見て自習という決断を下したんだろう。職員室で話し合えっていう提案が出た時も江口さんの顔は真っ赤だったから賢い選択と言えば賢い選択だけど


「自習になっちゃったね……」

「だね」


 僕は退屈な授業が自習になってくれて嬉しかったけど、宮村さんは突然の自習に戸惑っていた。クラス内を見てみると自習になって喜んでいる子と戸惑っている子に分かれていた。喜んでいる子は多分、授業が退屈だと思っていた子。で、戸惑っている子は二枝と江口さんのやり取りを見て驚いた子だろう


「これからどうなっちゃうんだろう……?」


 この時の宮村さんの台詞はまるでゾンビ映画のヒロインが言いそうな台詞だった


「どうなっちゃうんだろうってなるようにしかならないよ」


 この時の僕は教師の仕事に関して何も知らなかった。でも、二枝の様子と江口さんの怒りようを見てどちらが悪いかは判断しかねたけど、これからどうなるかなんてある程度は予想できた。きっと二枝のした事が本当かどうかの事実確認の為に僕達はアンケートを取られる


「だよね……」

「うん。宮村さんは二枝にこのまま担任を続けてほしいの?」


 4年の時の事を考えると宮村さんは二枝に庇ってもらったという恩があった。本人が二枝に庇ってもらったという事を自覚しているのかは本人次第だったけど


「う~ん……どうなんだろう……4年生の時は庇ってもらった事もあったけど……先週のアレを見ちゃうと……ね?」


 宮村さんが言う先週のアレとは癇癪事件の事を指すのだろう。確かに過去に助けてもらったとしても癇癪事件の一件があれば担任を続けてほしいとは思わないだろう


「まぁ、そうだね……さすがにアレはね……」


 江口さんが怒鳴り込んできたのも癇癪事件が発端と言えなくもなかった。


「何とかならないかな?岩崎君」


 この時宮村さんはどういう意味で何とかならないかと聞いてきたんだろう?二枝を助けたいという意味だったのかな?それとも、二枝をこのクラスから追い出したいという意味だったのかな?それを知る方法はないからわからない


「僕達じゃ何ともならないよ。何とかするのは校長先生なんだから」


 二枝の処遇を決めるのは校長だ。校長が一言クビと言えばクビになるし担任を外すと言えば担任から外される。これは僕の予想でしかなかった。もしかしたら保護者説明会が開かれるかもしれない。一児童である僕の口からは何も言えなかったのは確かだ


「そう……だね……」


 二枝は授業中に癇癪を起し児童に迷惑を掛けた。だというのに宮村さんは二枝を心配しているみたいだった


「とにかく僕達は成り行きを見守るしかないんだよ」

「うん……」


 児童である僕達は事の成り行きをただ見守るしかなかった。




 授業中に江口さんが怒鳴り込んできた次の日。二枝はクビにはならなかった。だけど、学校に来る事もなかった。それを知ったのは本来なら二枝が教室に来る時間に別の先生がやって来て二枝は1週間程学校を休むという話を聞いたからだ


「二枝先生1週間学校を休むらしいな」


 2時間目の授業が終わり、僕の席にやってきた秀義と隣に座っている宮村さんと談笑している時、ふと二枝の話になった


「らしいね。理由は何となく想像できるけど」

「そうだね」


 直接言われなくても2日前に保護者が怒鳴り込んできて二枝が学校を休む理由なんて少し考えれば子供でも何となく想像が付く。昨日のアレが原因かと。でも、それを誰も口にしようとはしなかった。


「誰も口にしないけど原因は昨日のアレでしょ」

「だな」

「うん」


 僕達にとって二枝が1週間学校を休むという事がいい事なのか悪い事なのかの判断はできなかった。少なくとも江口さんにとっては平穏な学校生活を送れるからいい事なのかもしれないけど


「僕達にとって二枝が休む事はいい事なのか悪い事なのかはわからないけど江口さんにとってはいい事なのかもね。出来ない事で怒鳴られる心配とかないし」


 僕も怒鳴られた事があった。でも、僕の場合は言い返す事をする。だけど江口さんは違う。言い返す事も出来ずに怒鳴られてるだけ。普通の小学生が教師に盾突くなんて事が出来るか?と聞かれれば僕のように教師なんて怖くもないって子はやるだろうけど、普通の子はそんな事出来ない


「江口さんにとってはって……光晃、お前は二枝先生が休んでよかったって思わないのかよ?」


 秀義の質問は遠回しに『お前も二枝に怒鳴られた事があるだろ?』と聞いているようにも聞こえた


「僕は二枝が無能だって4年の時には気づいてたからね。いずれはこうなるんじゃないかとは思ってたから何とも思ってないよ」


 いつまでもイジメの事を持ち出すのはよくないと思う。だけど、二枝が無能だと僕が思い知らされた瞬間でもあった。僕の持論で悪いけど嫌われ者と無能な奴に限って自分が嫌われている、自分が無能だと自覚していない。自分が嫌われている、自分が無能だと自覚している奴は可能性があるけど自覚してない奴に可能性なんてない。


「「………………………」」

「あれ?どうしたの2人とも黙っちゃって?まさか僕が二枝に何か思っていると思ったの?」


 秀義と宮村さんは揃って無言。僕が教師に何かを思うだなんてあり得ない。


「「うん」」


 どうして僕が二枝に対して何かを思わなきゃならないのか聞きたくなった。聞いたところで意味なんてないんだけど


「僕は二枝に対して何も思ってないよ。学校をクビになったらなっただし、1週間休むならそれはそれでいいと思うだけだから」


 どうして二枝がクビにならなかったのかは今でも謎だ。きっと教師の数が足らないから二枝みたいな奴でもいないよりマシだと思ってクビにしなかったのか、それとも、教育委員会が決めた懲戒免職の指針に抵触してなかったからなのかは知らないけど


「光晃って意外と冷めてるって言うか達観してるよな」

「うん、私もそう思う」


 揃いも揃って何を言っているんだろう?僕は冷めてないし達観してもいない。ただ、1年生の頃は教育実習生に、2年生の頃は教師と教育実習生に。そして、3年生・4年生は教師に。学校に入学してからウザい大人に絡まれたら嫌でもこうなる


「小学校に入学してからというものウザい大人に毎年絡まれてたら嫌でもこうなるよ」


 僕は小5の時点ですでに教師が嫌いだった。多分、教師嫌いに拍車をかけたのは二枝だと思う。実際いつから教師が嫌いになったかなんてのは覚えてない。ただ、気が付いたら教師が嫌いだったし教育実習生も嫌いだった。よくあるでしょ?原因は覚えてないけど気が付いたら嫌いでしたってね






今回は授業中に保護者(母)が怒鳴り込んできた話でした。

私の小学校ではありませんでしたが・・・・今はどうなんでしょう?授業中に保護者が怒鳴り込んでくる事ってあるのでしょうかね?

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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