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【過去編26】僕は初めて教師の仕事に興味を持つ

今回は光晃の興味と二枝の癇癪です

前回もそうですが、個人的には出来ない人に「どうして出来ないの!!」って言うのはすごく時間の無駄だと思います

では、どうぞ

「光晃、少しいいかしら?」

「何?母さん」


 二枝から電話があった日から数日が経った休みの日。リビングでゲームをしていた僕は珍しく母に声を掛けられた。偶然にも父と真理姉さんはどこかに出かけていないかったから僕と母の2人だけ


「数日前に担任の二枝先生から電話があったのは知ってるわね?」

「うん。学校で電話するって言われたからね。それがどうかしたの?」

「別にどうって事はないんだけど二枝先生ってどんな授業をしているのかなって気になってね」

「どんな授業って言われても……」

「そうよね……小学生の光晃には難しかったわね」


 母にどんな授業をしているかって聞かれた時僕は何て答えればよかったんだろう?普通の授業?違う。じゃあ、面白い授業?これも違う。二枝の授業を面白いと思った事なんてなかった。つまらない授業……これがしっくりくる


「別にいいよ。どんな授業って聞かれて答えに困ったけど、母さんには必要な事だったんでしょ?」

「まあね。この前の電話では『光晃には言っておきます』だなんて言ったけど、そんなのは二枝先生を納得させるための建て前だったからね」


 社会に出たら本音と建て前を使い分ける事が大切なんだという事を僕はこの母の発言から学んだ。まぁ、あんまりこの教訓が生かされてない気がしてならないけど


「そう。で?話はそれだけ?」

「うん」

「じゃあ僕は部屋に戻るね」

「うん」


 癪な話だけど、二枝からの電話のお蔭で僕は普段あまり会話をしない母とこの日久しぶりに会話をした。




「どうして出来ないの!!」


 母と久しぶりに会話をした日から1日が経ち僕は面倒だなと思いつつ登校。そして、1時間目、2時間目の授業をボーっとしながら受けていた。そんな感じで3時間目も受けていたんだけど、二枝の怒声はそんな3時間目の授業の最中、教室内に何の前触れもなく響いた


「だ、だって……わ、私、国語が苦手で……」


 言い忘れていたけど、この日の3時間目は国語の授業。授業中に怒声が響くなんて事は本来ならほぼないと言ってもいい。でも、この日は違った。二枝の怒声に涙目になっている女子はどうやら国語が苦手らしい。多分、二枝はそこが気に入らなかったんだと思う


「苦手だって知ってるなら勉強しなさい!!」


 二枝は僕に言った事と同じ事を言っていた。ただイタズラに勉強しろと


「し、してます……で、でも……」

「でもじゃない!!苦手なら勉強するの!!そんな事も知らないの!?」


 二枝の言っている事はただの暴論だった。確かに二枝の言っている事にも一理あるような気がするけど苦手な科目を自分1人でやっても上達するはずがない。って言うか、苦手科目は自分1人だと勉強する事はあんまりない


「で、でも……でも……」

「でもじゃないでしょ!!」


 二枝の怒声が怖かったのか女子は泣き出してしまった


「泣けばいいってものじゃないでしょ!!」


 女子の鳴き声が響く教室。クラスメイトのみんなは無言のままだった。


『岩崎君、何とかならないかな?』


 隣に座る宮村さんから紙を渡され中身を読んだ後、宮村さんの方を見ると困ったような顔をしていた。仕方ないので僕はノートの端を千切った


『何とかならないかって具体的に何をすればいいのかな?』


 僕はメッセージを書いた紙を隣に座る宮村さんに渡した。何とかならないかと言われても具体的に何をすればいいのか言われなきゃ困る


『それは私にもわからないけど、あれじゃ知恵(ちえ)ちゃんがかわいそうだよ……』


 宮村さんからのメッセージを読んだ僕は二枝に怒られている女子の名前が知恵だという事を初めて知った。だけど、具体的な案が浮かんでこなかった。二枝は勉強が出来ない事の何に怒っているのかが理解できなかった。


『僕は二枝が何に怒っているのかがわからない。何とかしろと言われても困る』


 僕はメッセージを書いた紙を宮村さんに渡す。そんなやり取りが何回か続いた時だった


「岩崎君!!宮村さん!!あなた達は授業中に何をしているの!!」

「「──────!?」」


 二枝の怒りの矛先が僕と宮村さん向いたのは。当然、僕と宮村さんはいきなりの怒声に驚く


「何って……二枝先生がそこの女子をずっと怒鳴っているので暇潰しですよ」


 驚いた僕だったけどすぐに体制を立て直した。無能な教師が怒鳴るのなんて僕にとっては犬がキャンキャン吠えているのと同じだから怖くもなんともない


「岩崎君!今は授業中よ!」


 二枝の言ってることは見事なまでにブーメラン発言だった。今は授業中と言うなら自分はその授業中に1人の児童に怒声を浴びせ挙句泣かせている。それはいいのかと問いかけたくなった


「そんなの知ってますよ。でも、先生は授業中にも関らず1人の子をずっと怒っているじゃないですか。それはどうなんですか?授業中だって言うなら先生も授業中なのにそんな事をしてていいんですか?」


 クラス全員が不安そうな表情で僕を見つめていた。先生に盾突いた事に対する不安なのか、それとも、僕まで二枝に怒られるんじゃないかという不安なのかは定かではなかったけど


「先生は勉強が出来ない子に対しての指導をしているの!だからいいの!!」


 指導……小学5年生ともなれば言葉の意味を教えてくれなくても何となくニュアンスでわかる。でも、二枝のしている事が指導?そんなバカな話はない。


「指導ね……ふっ……」


 小学5年生の僕は指導の意味は知らなかったけど、二枝のしている事が指導じゃない事くらいは理解できた


「何がおかしいの!!」


 教室内に二枝の怒声が響くけど、それは僕に向けられたものだった


「別に。ただ、この前母に聞かれたんですよ。二枝先生はどんな授業をしているのかって。その時僕は何て答えたと思います?」


 僕は母に二枝の授業がどんなものかと聞かれた時答える事が出来なかった。興味のないもの立ったのかもしれない。真面目に授業を受けてなかったからなのかもしれない。でも、この一件の後に聞かれたら答えられる。二枝の授業はつまらないと


「知らないよ!!私はいつも素晴らしい授業をしているから!!」


 自画自賛……二枝程この言葉が当てはまる奴は中々いないだろう


「素晴らしい授業ね……じゃあ、なぜ僕は算数のテストで30点しか取れず、そこで泣いてる女子は国語が出来ないままなんでしょうか?」


 素晴らしい授業をしていたのなら僕は算数のテストで30点しか取れないという事はなかったし、泣いている女子は国語が苦手だ言わなかっただろう


「ふんっ!そんなの岩崎君達の頭が悪いからでしょ!!私の知った事じゃないわ!!」


 自分の教え方を棚に上げ、僕達に責任転嫁した二枝は最早教師の器ではなかった


「そうですか。ところでクラス全員がいる教室の中でしかも授業中に今みたいな事言っていいんでしょうか?」


 無能教師は自分で墓穴を掘る事が大好きなだというのは僕が小学生の頃から変わってない。二枝がそうだったように


「どういう意味よ!?」


 どういう意味ってそのままの意味なんですけど……


「どういう意味も何もここにはクラス全員がいるんですよ?僕1人とか僕と宮村さん、あるいは秀義だけじゃ人数が少ないので他の先生に言っても信じてくれないでしょうけど、クラスのみんなで他の先生……そうですね。教頭先生とか校長先生とかに言いに行ったらどうなるんでしょうね?」


 僕が初めて教師を脅迫した瞬間だった


「先生を脅す気なの!?岩崎君!!あなた腐ってるわ!!」


 僕が腐ってるならただ人の出来ない事に対して怒るだけしかしない二枝はどうなんだって話なんだけど


「腐ってて結構です」


 僕は腐ってて構わない。無能教師に平穏な学校生活を脅かされるよりかはマシだ


「そう!!でも、今回の私への発言はお家へ連絡するからね!!」

「どうぞ。勝手にしてください」


 知恵という女子への怒りはどこに行ったのかと言いたくなったけど、二枝が忘れているのならいいやと思い言わなかった。でも、4年の時は問題解決能力がないのかと思った。でも違った。二枝には指導力がなかった


「その余裕がいつまで持つのか楽しみだよ!!」


 僕は余裕なわけじゃない。ただ、ありのままを伝えるからいいやと投げやりなだけで


「僕は余裕ぶってるつもりはありませんけど?どこが余裕に見えますか?」

「見えるよ!!現に私が家に電話するって言っても表情1つ変えないじゃない!!」


 そりゃたかが小学5年生に対してすぐに家に電話するって言う奴にビビる奴がどこの世界にいるんだよ……


「先生がそう見えるならそうなんじゃないですか?」


 この日の3時間目の授業はバカな二枝の癇癪で終わった。授業時間は数えてないけど多分、15分だけで残りの30分は二枝が癇癪を起していただけのように思う。




「ただいま……」


 二枝の癇癪により潰れた3時間目の授業が終わり、その後も4時間目、5時間目と何事もなかったかのように残りの授業が行われたかと言うとそうではなかった。4時間目と5時間目も二枝の癇癪により授業15分、癇癪30分という児童にとって迷惑な事この上ない結果に終わり、帰宅した僕は疲れ切っていた


「学校の先生が授業潰して喚き散らしていていいのかな?」


 帰宅した後、すぐに部屋に戻った僕はこの日、初めて教師の仕事に対して疑問を持った。それは小さなものかもしれなかったけど、小学生の僕にとっては大きな進歩となった。でも、この疑問を誰に聞いたらいいんだろう?とも思ったね


「母さんに聞けば答えてくれるかな?」


 小学生の頃はまだ自分のパソコンを持っていなかった僕は教師の仕事について調べる事が出来なかったわけじゃないけど難しくはあった。パソコンが家になかったわけじゃない。でも、父の書斎にしかなかったからネットで何か調べるとなると父の書斎に行くしかなかった。まぁ、ネットで調べたところで僕の知りたい事は多分、載ってないだろうけど


「先生の仕事かぁ……」


 結局僕は学校の先生の仕事について誰に聞いたらいいかわからず悶々としていた。そもそも癇癪だけで授業が潰れました。なんて僕の両親含めて保護者が知ったら何て言うんだろう?それは後にわかる事になるけど今は言わない。そうだなぁ……二枝は無事じゃなかったとだけ言っておくよ










今回は光晃の興味と二枝の癇癪でした

前書きでも書きましたが、あくまで個人的な意見としては出来ない人に「どうして出来ないの!!」なんて言うのはすごく時間の無駄だと思います。「どうして出来ないの!!」って聞くよりもどこが出来ないのか、どこがわからないのかを聞いた方がよっぽど有意義だと思います


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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