【過去編25】僕の担任は去年と同じだった
今回から小5編スタートです
光晃の担任は引き続きあの人!
では、どうぞ
秀義達がしでかしたイジメ騒動から時は経ち僕は小学5年になった。宮村さん達と一応和解したあの日、僕は校長にどうなったか聞かれて好きにしろとしか言ってない事を伝え、校長は僕がそれでいいのならと納得してくれたし、男性教師も渋々ながら納得。でも、秀義達のした事は伝えると言ってきたので僕の名前を伏せる事を条件にOKした。で、二枝はと言うと減給で済み、その後も前と変わらずに勤務している
「4年の時は大変だったけど今年こそは穏やかに過ごしたい」
4年の時はイジメ騒動があった。小学校生活も小5を除くと残すところ後1年。せめて小5、小6は穏やかに過ごしたいとそんな事を考えていた。でも……
「おう!光晃!」
バカみたいに声がデカい奴に見つかったせいで僕の穏やかな生活が小5開始からブチ壊された
「声がデカいよ」
「すまんすまん!でも許してくれ!」
「はぁ……」
これが高校生になっても治らないんだから不思議だ。アレかな?身体だけ成長して精神は全くもって成長してないとかいうアレかな?見た目は大人で中身は子供的なヤツかな?
「お、おはよう。岩崎君」
「おはよう、宮村さん」
秀義よりは数百倍マシな宮村さん。僕はふと宮村さんと秀義を足して2で割ったらちょうどいいのではないか?ふとそんな事を考えてしまった。
「今年もよろしくね?岩崎君」
「うん。よろしく」
宮村さんのあいさつは新年のそれと勘違いしそうになるけど、新しいクラスだからこれでいいような気もした
「毎度の事ながら新しい学年になる度に担任が変わるというのは面倒だよ……」
この学校の方針なのか毎年のクラス替えと担任の入れ替え。社会に出た時にどんな人ともある程度会話できるようになるいい訓練だとは思う。でも、児童達の中には不安を抱く子、僕のように面倒だと思う子も中にはいた。クラス替えと担任の入れ替えが必ずしもいい結果を生むとは限らない
「うん……私も……」
「俺もだ……」
面倒だと思っていたのは僕だけじゃなく、秀義と宮村さんも同じだった。宮村さんはともかくとして秀義がクラス替えと担任の入れ替えを面倒だと感じていたのは意外だった。でも、それ以上に僕は二枝のような教師が担任じゃない事を祈った。
クラスが変わってから初めてのHRが終わり、僕は何となくだけど秀義と宮村さんと一緒に帰ろうとしていた。須山は別クラスらしい事は出席で確認できた。そんな事はどうでもよくて、問題は担任だった。
「夢なら覚めてほしいんだけど……」
「「あ、あはは……」」
珍しく絶望に打ちひしがれて机に突っ伏していた僕と珍しく苦笑いをしていた秀義と宮村さん。それもそのはず。だって5年の担任が4年の時に担任だった二枝なんだもん
「何が楽しくて担任が同じなんだ……」
騒がしい教室内で絶望に打ちひしがれる僕。4年の時に秀義達がやらかした騒動で僕と二枝は相性が悪いって校長は気付かなかったのかな?普通なら相性の悪い児童の担任なんか任せるはずないのに……
「さ、災難だったな、光晃」
「…………………はぁ」
「げ、元気出してよ!岩崎君!」
「…………………はぁ」
秀義達は僕を何とか元気づけてくれようとしたけど、僕の気分は晴れなかった。どうして僕の担任が二枝なんだという思いが頭の中をグルグル回り続けていた
「光晃……」
「岩崎君……」
「クラスはいいから担任だけ変えてくれないかなぁ……」
クラスには何も文句はなかった。僕は平穏な学校生活さえ送れればそれでよかった。でも、担任が二枝だという事には大いに文句があった
「今更無理だと思うよ?」
「だな。決まっちまったモンはしゃーねーよ」
宮村さんと秀義の言葉により僕の絶望感はより一層深まってしまった。小4の時にあったイジメ騒動をロクに解決するどころか解消すらできなかった二枝を信用するなんてできなかった
「決まった後でゴチャゴチャ言っても仕方ない。帰ろっか?」
「ああ!」
「うん!」
担任が二枝。決まってしまった担任を変えるだなんて小学生の僕には無理だった。当然、余程の権力者か担任を変えざる得ない事情がない限りそれは変わらない。例えば、学級崩壊とか
二枝が担任だという現実を何とか受け入れ、新しいクラスに慣れてきたある日、事件は起きた
「どうしてそう言う事を言うの!」
教室にいた僕達にも聞こえるくらい大きい二枝の声が廊下全体に響いた
「早速問題発生か……」
「みたいだな」
「喧嘩かな?」
僕は教室で秀義、宮村さんと談笑していて事の経緯はわからないけど、声のトーンから察するに喧嘩みたいだ。『どうしてそう言う事いうの』というワードから殴り合いの喧嘩ではなく口喧嘩だと思う。
「“どうしてそう言う事を言うの”か……」
僕は今まで両親に怒られた時に『どうして〇〇するの!』なんて言われた事がなかった。だから二枝の『どうしてそう言う事いうの』と言って怒る理由が理解できなかった。だってそうだろ?どうしてって聞いて答えられるなら誰も苦労はしないでしょ
「どうかしたのか?光晃」
「そうなの?岩崎君?」
不思議そうな顔をして僕の顔を覗き込む秀義と宮村さん
「いや、さっきの発言で気になったところがあってね」
「「気になるところ?」」
秀義と宮村さんは多分だけど『どうして〇〇するの!』って親に怒られた時に何回か言われた事があると思う。だから二枝の発言に何の違和感もなかっただろうけど僕は違う。親に怒られた時にそんな事を言われた記憶がない
「うん。さっき二枝先生が言ってたでしょ?“どうしてそう言う事を言うの”って」
「ああ」
「うん」
「僕は親に怒られた時にそんな事を言われた記憶がない。だから、二枝先生がどうしてあんな事を言ったのかが理解できないんだよ」
二枝には二枝のやり方があるだろう。それに関して僕が何かを言うつもりなんてなかった。って言うか、小5の僕に教職に関する知識があるはずもなく。言うつもりなんてなかったって言うよりも言えるはずがなかったって言った方が正しいか
「え?岩崎君って親に怒られた時に言われた事ないの!?」
「マジで!?」
驚いた顔で僕に詰め寄る宮村さんと秀義の顔にはバッチリと『信じられない』と書かれていた
「うん。僕も詳しい事は知らないけど言われた事なんて1回もないよ。“何があったの?”とは聞かれた事あるけど」
父はともかく、母は教育実習生だった。大学で教職課程を取っている最中に講師の誰かにでも言われたのかな?どうしてって聞くだけ無駄だって
「「嘘でしょ!?」」
「本当だよ」
秀義と宮村さんの反応から察するにみんな1回は二枝に問い詰められている奴みたいにどうしてって聞かれた事があるらしい
「し、信じられん……」
「わ、私も……」
この日は秀義と宮村さんから宇宙人を見るような目で見られ続けた。そして、僕はこの日、他所の家の子は親に怒られる時、1回は『どうして〇〇するの!』って言われているんだという事を知った。ちなみに怒られていたのは男子児童だった
二枝のどうして騒動から数日後。僕は二枝に怒られていた。それも放課後別室に呼び出されて
「どうして算数ができないの!!」
怒られている理由は僕が算数のテストで30点を取ったからだった
「はあ、どうしてって言われましても……勉強はしてますが算数だけは苦手なんですよ」
僕の小学校での苦手科目は算数と数式が関わってくる理科だった。中学・高校だと数学と理科だけど。それは置いといてだ。開き直るわけじゃないけど、苦手な科目で悪い点数を取った時にどうしてって言うのは変じゃないかな?
「勉強しているなら30点なんていう点数にはならないでしょ!どうして勉強していて30点なの!!」
小4の時にも思った事だけど二枝は教師に向いていない。苦手科目がある子もいればない子もいる。物覚えがいい子もいれば悪い子もいる。何でもそうだけど、出来ないものに対してどうして出来ないかを問い詰めるのって時間の無駄だと思う
「勉強していたから30点なんですよ。してなければきっと0点だったと思います」
勉強して30点だった。裏を返せば勉強してなかったらもっと酷い点数になっていたという事だ。過程を重視しろとは言わない。だけど、努力したってところは評価してもいいんじゃないの?
「じゃあもっと勉強しなさい!!この事はご両親にも報告するからね!!」
二枝の仕事は勉強を教える事はもちろん、苦手な科目に対する苦手意識を少しでも解消させる事。僕は教師の仕事ってそういうものだと思っている。でも、二枝がやろうとしている事はどうだろう?自分の仕事を放棄してないか?
「別に構いませんけどウチの親は帰るの遅いですよ?」
僕にとって家に連絡されるのなんて怖くもなんともない。両親が絶対に味方してくれるなんて思ってない。でも二枝の味方をするとも思ったなかったから
「構わないわ!出なかったら出なかったで留守電に入れておくから!」
これで本当に教師か?二枝は僕が今まで出会った教師の中でもダントツでバカだったと思う。テストの点数が悪いのは自分の勉強不足もあったから仕方ない。でも、ただ勉強しなさいで終わらせるなら別に教師じゃなくてもできる
「そうですか。話はそれだけなら僕は帰ります」
「ええ!さようなら!」
僕は不機嫌モードの二枝に軽く会釈してから部屋を出た。その日の夜、本当に二枝から家へ電話があった。内容はもちろん、僕の算数のテストの事。電話を取ったのが母だったけど、電話が終わるなり溜息を吐いていたところを見ると母も二枝に呆れていたんだと思う
今回は小5編でした
光晃の担任は引き続き二枝でしたが、小4編ではあまり二枝の無能っぷりを発揮できてなかったと思い二枝には引き続き光晃の担任をしてもらう事にしました。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




