【過去編24】僕は最終決戦に臨む(後編)
今回はイジメ問題最終の後編です
光晃はイジメっ子達をどうするのでしょうか?
では、どうぞ
「はぁ……学校の備品にこんな事をしていたとは……」
秀義達が僕の机に落書きしている瞬間の映像が終わり校長は怒鳴るでもなくただ溜息を吐き呆れた様子だった。人間、心の底から呆れると眉間を手で押さえる事すらしなくなるんだという事をこの日学んだ
「「「「……………………」」」」
二枝もそうだけど映像が流れている最中もずっと無言だった秀義達は皆一様に顔を伏せて俯いていた。秀義達はまさか自分達の行いが映像として残っているとは思ってなかっただろうし、二枝は僕がこんな事をしているだなんて予想外だっただろう
「校長、この事はどうなさるのでしょうか?」
男性教師が聞いたどうするとは保護者に言うか否かの事だろう。落書きごときで大袈裟なと思うだろうけど、学校の備品はPTAの会費で賄われていると言う話を聞いた事がある。秀義達が落書きした僕の机も当たり前だけど、PTAの会費。つまり、親が汗水垂らして働いた金で賄われているという事になる
「ふむ……これは一応、保護者に連絡する」
「「「──────!?」」」
校長の言葉に秀義達の身体がビクッと跳ねた。校長に呼ばれたのもそうだけど、親に連絡すると言われて本格的にマズイとおもったのだろう。
「ですね。たかが落書きとはいえ映像を見る限りじゃ油性のマジックで書いてたみたいですし」
男性教師の言った通り僕の机の落書きは油性マジックだった。鉛筆とか水性マジックとかだったら水拭きしたら消えるだろうけど、油性マジックの落書きは簡単には消えない。僕の机にされた落書きはマニュキュアの除光液で落としたけど、それだって有効な手段とは言えない
「では保護者への連絡は任せたよ」
「はい」
当事者である僕を差し置いて話がどんどん進んでいく。イジメに遭ったのは僕だ。でも、学校の備品に手を出してしまった以上は仕方のない事だったと思う。校長達決断は正しい。
「こ、校長先生!いくらなんでも保護者へ連絡するのはやり過ぎじゃありませんか?」
「「「に、二枝先生……」」」
秀義達を庇う二枝を見て僕の扱いと随分違うよう思った。僕の時はこれ以上問題を起こすなで済ませておいて秀義達は庇う。まぁ、秀義達のしでかした事もそうだけど、事が大きくなったら二枝が無能だとバレてしまうからそうするしかなかったとも取れる
「どこがやり過ぎなのかね?二枝先生」
「全てです!名倉君達が岩崎君の机に落書きした事は事実かもしれません。ですが、それだけの事で保護者へ連絡するのはやり過ぎだと思います!」
「はぁ……二枝先生」
深い溜息の後、呆れた様子で二枝を呼ぶ校長の姿を見て僕は校長に少しだけ同情してしまった。何もできない奴だとは思っていたけど、ここまでとは思ってなかった
「な、何でしょうか?私は何か間違った事を言いましたか?」
あくまでも自分は間違ってないという態度を崩さない二枝には心底関心してしまった。学校の備品は余程酷い破損がない限りは前の世代から次の世代へと引き継がれていくという話だ。つまり、僕の使っていた机も例外じゃなく、次の4年生に受け継がれていく。でも、落書きによって学校は無駄なものを新たに購入しなきゃいけない事を考えると再発防止の為にもちゃんと保護者に連絡は入れるべきだと思うし、他の子にもちゃんと言うべきだと思う
「保護者への連絡がやり過ぎだと仰るのなら貴女の給料から机代を天引きしていい。そういう事ですね?」
「はい?どうしてそうなるのでしょうか?」
どうしてってアンタのクラスにいる児童が学校の備品を使えなくしたからだよ!なんてツッコミを小学生の僕ができるはずもなく、ただバカな教師のバカな考えを聞くしかなかった
「当たり前でしょ?二枝先生のクラスにいる児童が学校の備品を使えなくしたんですから。担任である貴女が責任を負わないと」
「そ、それはそうかもしれませんが、岩崎君の机に落書きしたのは名倉君達で私は何も指示してません!」
二枝の言っている事はズレていた。指示をしているとかしてないとかの問題じゃない。学校の備品に落書きしたというところが問題なんだよ
「そういう問題ではありません。名倉君達が学校の備品に落書きをし、次に使えなくなったのが問題なのです」
「……………」
「「「………………………」」」
校長の言葉に言い返せない様子の二枝と秀義達を見て後悔先に立たずという諺は本当にあるんだと思う。でも、それと同時に自業自得という言葉もこの状況にピッタリだ。そう感じてしまった
「待ってください。校長先生」
「何かね?岩崎君」
これまで男性教師や二枝と校長のやり取りを見ていた。僕は校長の判断に口を出すつもりはなかったけど、落書きされた机が使えない前提で話をされるのは止めよう。二枝や秀義達に同情したわけじゃない。でも、言うべきことはきちんと言う。それだけだった。秀義達や二枝は僕を期待の眼差しで見ていたけど
「名倉君達が僕の机にした落書きはマニュキュアの除光液で消しました。なので今じゃ見る影もありません」
「ほう。それで?君は机の落書きは綺麗に消えてるから保護者に連絡するのは止めろと言いたいのかな?」
校長は僕が秀義達の味方をすると思っているみたいだったけど、僕が秀義達の味方なんてするはずがない。僕が次に言う事は決まっている
「違いますよ。名倉君達の保護者に連絡するのも二枝先生をどうするかも校長先生の判断なので僕から何かを言うつもりはありません。ただ、名倉君達がした机の落書きは綺麗に消しましたって事を言いたかっただけです」
「光晃!!」
「「「岩崎君!!」」」
「そうか。わかった」
僕を非難する視線を向けてくる秀義と二枝達。そして、僕の報告に一応は納得して見せる校長。校長はいいとして、秀義と二枝達は本当にバカだ。この場で僕が君達の肩を持つなんて事をするわけないのに
「落書きを消すときにマニュキュアの除光液を使ったので机を傷つけてしまったかもしれません。そこに関してはごめんなさい」
「そのくらいなら別に構わんよ。落書きまみれで机が使えなくなるよりはマシだからね」
この校長は器が広いのか、それとも机が落書きまみれで使えなくなる事を天秤にかけ、多少の傷を見逃す方を選び経費削減を選んだのかは知らない。でも、僕のした事が多めに見られたのはよかった
「ありがとうございます」
「うむ。では次に行こうか」
この後、僕の机にイタズラされている映像を一通り見た。その中には僕の教科書が落書きされているのもあった。でも、言いたい事はただ1つ。イジメの方法がワンパターンで助かったという事だけだった
「「「「……………」」」」
一通り映像を見終わり黙り込む秀義達の表情はまるでこの世の終わりだと言わんばかりの表情だった。まぁ、須山、宮村さん、二枝はともかくとして秀義は親同士が知り合いだからね。僕にしている事がバレると両親の今後の関係にも関わる。今の僕と秀義の関係を見てもらえれば解ると思うけど、表面上の関係は良好だよ。あくまでも表面上はね
「さて、この映像に関して何か言い訳はあるかね?」
校長の鋭い視線が黙ってしまった秀義達に向く。それでも黙っている秀義達にはある意味で感心した。二枝が黙っている意味が理解できなかったけど
「…………………ありません」
校長室に沈黙が流れる中で一番最初に口を開いたのは秀義だった。誰が最初でもした事は変わらない。でも、自分のした事を素直に認める潔さだけは褒めてもいいと思う
「そうかね。他の2人はどうだね?」
「「…………………ありません」」
秀義が自分のした事を認めたため、他の2人も自分のした事を認めたみたいだったけど、そもそもが映像が証拠としてあるんだから認めない方が見苦しい
「…………ふむ、では今後の事だが───」
「校長先生待ってください」
話が学校の備品に落書きした話から今後の事に切り替わろうとしているところで僕は待ったをかけた。別に秀義達に同情していたとかじゃない。ただ単純に飽きただけ。今後の事?そんなの表面上の仲直りと僕にしてきた事を親に言って終わり。そんな展開は見え透いてる
「何かね?岩崎君」
「今後の事を話すのなら僕は必要ありませんよね?」
「そんな事はないが?どうかしたのかね?」
「これ以上名倉君達と一緒にいても時間の無駄なので僕は帰りたいですが……?」
時間の無駄だとは思っていた。そもそもがイジメの事を話し合う場所で当事者である僕は必要ない。
「だが、岩崎君と名倉君達の仲直りがまだだ。君にも残ってもらわないと困るのだが?」
この校長にはよくしてもらったし、残ってあげたい気持ちはあった。でも、僕には秀義達と仲直りする気なんて微塵もなかった。仲直りする意味を見出せない僕がいた
「そうですか。ですが、僕は名倉君達と仲直りするつもりはありません。仲直りした後で何かされちゃ堪ったもんじゃありませんから」
僕はイジメを行っていた奴を簡単に信じはしない。高校生になった今でもその考えは変わらない。イジメを行った奴はその場では謝って見せるけど、裏では仕返しをしてくるという事を何となくだけど知っていた。
「岩崎君の気持ちも解るがこちらとしては残ってくれた方が助かる」
校長のはあくまでも自分達の都合でしかない。でも、秀義達がどうしてイジメなんてしたか?その理由は録音機に収められているので僕が残る意味がない
「名倉君達が僕の机に花瓶を置いたり落書きしたりした理由なら録音機に音声が入ってますよ」
「そ、そうかね……ではその音声を確認している間岩崎君は外の空気でも吸ってくるといい」
「は、はあ……校長先生がいいと言うならそうしますが……帰っちゃダメなんですよね?」
「うむ。帰宅は許可できない。まだ確認する事があるからね」
「はぁ……わかりました。僕は少し外の空気を吸って来ます」
本当なら被害者である僕も最後までその場にいるべきだったんだろう。でも、映像と音声が証拠としてあるのに僕がいる意味があるのか?と思いつつ外へ出た。
「気持ち悪ッ!」
校長室を出てグランドにやってきた僕は今まで溜まってきたものを吐き出した。別に嘔吐はしなかった。でも、秀義達を見ていると気持ち悪かった。何が気持ち悪いか説明は今でもできないけど、とにかく気持ち悪かった
「校長室に戻るの嫌だなぁ……」
校長室に戻ると絶対に仲直りさせられる。そんな考えが僕の頭を過ぎった。僕にとってクラスメイトというのはどうでもいい存在だ。協力するべきところだけ協力し、その後は放置する程度の認識でしかなかった。特定の誰かと仲良くする意味が見出せない
「もう少しだけ……」
グランドで何をするわけでもなかったけど、校長室にいるよりはマシだった。何よりも秀義達と同じ空気を吸いたくなかったから
「さて、戻るか……戻りたくないけど」
本当は戻りたくない。でも、戻らないとイジメ問題は終わらない。僕が校長室に戻る唯一の理由だった
「ただいま戻りました」
「うむ。少し頭は冷えたかね?」
「まぁ……一応は」
校長室に入った僕は俯く秀義達を一瞥し、校長に視線を向けた。
「そうか……録音された音声を一通り聞いてみたが……君はクラスメイトに冷たいように思えるのだが?」
校長が秀義達の肩を持つなんて事はないと思っていた。でも音声を全て聞いたであろう校長の言いたい事も何となく理解できる。だからと言って態度を変えるつもりなんてなかったけど
「校長先生がそう言うならそうなんでしょう。でも、だからと言って人の机に花瓶を置いたり学校の備品に落書きしていいって理由にはならないと思いますけど?それに、僕達ももう小学校4年生です。伝えたい事があれば言葉にするべきなんじゃないでしょうか?言われれば僕だって直しますし」
クラスメイトに冷たいと言うのは間違ってないと思う。でも、だからと言って人の机に花瓶を置いたり、学校の備品に落書きしていい理由にはならない。伝えたい事があるなら言葉で伝えるのが当然だ。幼稚園児じゃあるまいし
「確かに岩崎君の言う通りなのだが……これじゃこの問題の解決にならないのだが?」
校長の狙いは僕が態度を改め、秀義達が今までのイジメを謝罪するというものだったらしい。確かに僕の態度にも問題があったかもしれない。でも、それとこれとは話が別。態度が悪い奴はイジメてもいいという理由にはならない。でも、校長の狙いは僕の思っていた通りの展開だった
「そうですか……では、僕と名倉君達だけで話をさせてもらえませんか?」
僕の提案は学校側としては相当のリスクを負うものだったと思う。だけど、それはあくまでもイジメを行っている時に暴力を振るっていたとされる人間だったらの場合で秀義達は暴力は振るっていないかった。僕の提案はそれを考慮してのものだった
「ダメだ。イジメの被害者と加害者だけにはできない」
僕の提案をバッサリ切り捨てたのは校長でも二枝でもなく男性教師だった。コイツの言いたい事も何となく解る
「やっぱりダメですか……」
「ああ。岩崎はイジメの被害者で名倉達はイジメの加害者だ。岩崎が何を思って名倉達だけと話をしたいと言ったかは知らない。でもな、お前の身に何かあってからじゃ遅いんだ」
学校としては校内で何かあったら保護者に説明しなきゃいけない。場合によっては保護者会を開き校長が説明しなきゃいけないかもしれない。男性教師はそれを危惧して許可しなかったんだと思うけど、秀義達のしてきた事を鑑みるにそれはない。僕はそう確信していた
「先生の言っている事も理解できます。ですが、名倉君達には僕に危害を加える度胸なんてありませんよ。できて机に花瓶を置いたり机に落書きしたりするのが関の山です。話はここでしますから」
職員室から近い校長室。何かあったら教師がすぐに飛んでくる事ができる場所で問題を起こすバカなんていない
「ダメだ」
校長室で話をすると言っても許可してくれない男性教師。今どうしているか知らないけど多少は柔軟に物を考えられないようじゃコイツの出世はありえないだろう。コイツが教頭か校長になっていたら是非とも見てみたいものだ
「ダメですか?校長先生?」
頭の固い奴と話をしていても埒が明かないと思った僕は校長に話を振った。
「ふむ……本当はダメだと言いたいところだが、映像を見るに名倉君達は岩崎君に暴力を振るう事はしないだろう……」
「では!」
「名倉君達との話し合いを許可する」
校長からは許可が出た。しかし、それでも納得いかない人物が1人いた
「校長!私は許可すべきではないと思います!」
男性教師だ。コイツは頭が固すぎる。こんなんで教師としてやっていけるかと不安になる
「まぁまぁ、私だってただ許可したわけじゃない。岩崎君達が話し合っている間私達が外で待機するのが条件だ。いいね?岩崎君」
「はい」
別に聞かれて困るような話じゃなかったから外で待機するくらいは許した。
「君もそれでいいかね?」
「まあ、それなら……」
男性教師も渋々と言った感じで納得してくれた
「では、私達は外にいる。何かあったら遠慮なく叫んでくれ」
校長は一言言い残し二枝、男性教師と共に出て行った
「さて、どうして僕が君達と話がしたいって言ったと思う?」
「「「……………」」」
校長達が出て行ったのを見届け、話を切り出してみるも秀義達は黙ったままだった。
「校長達が出て行っても黙ったままか……まぁ、いいや。黙ったままの方が都合がいいし」
秀義達が黙ったままというのは実に都合がよかった。理由の1つとして反論されるのが面倒だったというのがある。で、もう1つは喋れる状態だと話が長くなるから。僕のする提案は多分、小学生が考える事じゃないしね
「黙ったままの方が都合がいいから君達は何も言わなくていいよ。で、僕の話なんだけど、君達さぁ……もう僕に関わらないでくれないかな?」
「「「……………!?」」」
驚いた顔で僕を見る秀義達。自分達が僕にした事ってのはそう言われても仕方のない事って自覚してなかったのかな?
「いやそんな驚いた顔されても困るんだけど?って言うか、関わるなって言われても仕方ない事したって自覚ある?あ、もしかして悪ふざけとかで済ませようとしている?学校の備品や僕の教科書に落書きしといて?そんな事ないよね?」
秀義達がした事というのは小学生だから親が頭を下げれば何とかなるけど、大人がやったら犯罪になる事も中には混ざっている。例えば僕の教科書と机。目立った破損がなくたって器物損壊に当たる事がある。
「「「…………」」」
秀義達は依然として黙ったままだった
「僕の質問にまだ答えてもらってないけど……まぁいいや。僕の話はこれで終わり」
僕は黙ったままの秀義達を後目に校長室を後にしようとした。しかし────────────
「待って!」
宮村さんに引き留められてしまった。
「何かな?まだ僕に何か用?僕には君と話す事なんて何もないんだけど?」
宮村さんに引き留められた。だけど、僕には話す事なんて何もなかったから応じはしたけど、留まる意味はなかった
「お願いだから……待って……話を聞いて……」
蚊の鳴くような声で懇願してくる宮村さんを見て将来は女優だね!なんて勝手な想像をしていた僕は呑気な小学生だったと思う
「聞くだけなら聞くよ。で?何かな?」
自分で言うのもなんだけど僕って優しいと思う。イジメっ子の話を聞くだなんて優しいと思わない?小学生の頃は僕って優しかったんだ……
「私、引っ込み思案だからあんまりお友達いなくて……。小3までそうやって過ごしてきたの……で、小3の頃初めて岩崎君を見て自分と同じ匂いを感じたけど、話し掛ける勇気がなかった……」
「それが今回の事と何の関係があるの?」
宮村さんの引っ込み事案とイジメ問題は何の接点もない。浮気した妻の『寂しかったから』とか浮気した夫の『出来心でつい』なんて言い訳が通用しないのと同じで宮村さんの言っている事は言い訳にすらならなかった
「そう……だよね……関係ないよね……」
「うん。関係ないね。君は何を言いたいのかな?」
宮村さんの過去なんてどうでもよかった。僕が知りたいのは宮村さんがどうしてイジメに加担したかだったから
「私……寂しかった……小3の頃は普通に話してた岩崎君が急に態度変えて……離れて行く気がして寂しかった……」
今でも寂しいという感情は理解できない。僕は誰かがいなくて寂しいなんて思った事ないから
「そう。で?君はどうしたいの?僕の側にいたいの?」
上から目線で物を言っているようで気が引けた。でも、宮村さんがどうしたいかを聞いても罰は当たらないだろうという短絡的発想からなのか、僕の気まぐれなのか僕は宮村さんがどうしたいかを聞いてしまった
「友達になってなんて贅沢は言わない……でも、岩崎君の側にいたい……側にいたいんだよぉ……」
宮村さんはとうとう泣き出してしまった。女の子を泣かせるなって叔父さんに言われたなぁ……小学生の時でさえこれだったんだ。葵衣や真理姉さんを泣かせてしまっても仕方ないか
「…………勝手にすれば。宮村さん」
本当は下僕にしてもよかったんだろうけど校長達は出て行く前に外で待機していると言っていた。そんな状態で下僕になれなんて言えるはずなかった。本当は下僕がよかったけど
「うんッ!勝手にするッ!」
宮村さんの顔は涙でグチャグチャだったけど、その表情は笑顔だった。でも、宮村さんとの蟠りがなくなっただけで秀義と須山との蟠りは消えたわけじゃなかった
「宮村さんはそれでいいとして、君達はどうするの?」
僕は宮村さんから視線を外し秀義達を見た
「お、俺達は……」
話を振られ言いよどむ秀義と無言の須山
「話を振られてだんまりか……まぁ、いいや。君達も勝手にしてよ」
僕は言いよどむ秀義達と笑顔の宮村さんを残し校長室を出た。とりあえずイジメ問題はこれで解決したと言っていい。別に周囲が何をしてようと興味なかったし
今回はイジメ問題最終の後編でした
イジメっ子達を下僕にする展開でもよかったのですが、それだと光晃と秀義が第1話のような会話をできないだろうし、家出した光晃を連れ戻す為に秀義が力づくでっていう展開にならなかったのでこのような曖昧な終わり方になりました。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




